New Game/年下×年上 #1
【New Game】
<おめでとうございます。あなたは今日から村人Aに選ばれました>
「…え?」
<え?じゃなくてAです>
「え?」
<ですから、村人Aに選ばれました>
「ちょ、ちょっと待って?俺いま大混乱中」
<大丈夫です。慣れます>
「慣れとかの問題なの!?」
<はい。習うより慣れろってことですよお客様☆>
「そのことわざの使い方間違ってない!?」
俺は今、とある棒巨大オンラインゲームに初参加している。
このオンラインゲームの特徴はその身をそのゲームの中に仮想現実としてリンクさせられると言うもので、五感全てをその世界の中に取り込むのである。
早い話が肉体は自分のベッドの上に置き、精神はその仮想現実の世界へと行く。
的なニュアンスで受け取って欲しい。アニメとかでよくあるやつだ。
世界的規模で人気のあるゲームらしく、友人に「やってみたらいいじゃん?」と軽く誘われ、暇と時間を惜しげもなく持て余していた俺はホイホイとその誘いにまんまと乗せられ
SNSアカウントを作成して
アバターを作り
名前を決めて
さぁいざ行かん冒険の地へ!
と意気込みながらスタートボタンをクリックしたらいきなり村人Aに選ばれた。
正直何のドッキリかと思った。
「え~と…これ、チュートリアルで最初はみんな村人Aからスタートするとかそんな感じですか?」
そんな話、聞いたこともないけど。
<いいえ?最初は皆さん勇者やら魔法使いやら商人やらになっておりますが?>
いやそんな、「お前何言ってんの?RPGの基本ナメてんの?」みたいな声で言われましても…。
「あ…そうなんだぁ…。えっと、じゃあ俺も勇者になりたいんで勇者でお願いします」
<無理ですね>
「はい?」
<無理です>
「え、何でですか?」
いきなりの全否定。意味が分からない。職業くらい変えられるだろう普通は。
<選ばれたからです>
「…誰に?」
<神に?>
「なんで疑問形なんですか?」
<私もそこまでプログラムの事を理解していないので私に聞かれてもお答え出来かねます>
「あなたNPCですよね?」
<はい、そうですね>
「NPCがそんなメタ発言していいものなんですか?」
<そこら辺は開発者の茶目っ気として受け取ってください>
「無理なんですけどぉ!!」
俺は思わずその場で蹲ってしまった。もういい年した大人なのに。おもちゃを壊された子供の様に蹲った。
だってこんなのあんまりだ!横暴だ!
俺だって世界を救いたい!冴えない現実ではけっして起きない奇跡をこの世界で起こしてみたかった!
ヒーローになりたかった!ヒロインと結ばれて最終的に結婚したかった!
ぶっちゃけネット彼女欲しかった!!!!
なのに村人Aとか!何にも出来ないじゃん!
むしろ村人Aって何すんの!?農業!?俺ゲームの世界にまで来て農作業すんの!?
ねぇ!!嘘でしょ!?この現実を受け止めきれない!!!!
<大丈夫ですか?ここ現実じゃありませんよ?>
「うるせーよ!そんな事分かってるし!あと勝手に心を読まないで下さい!!」
なんでよりにもよって村人なんだ??
勇者になれないにしたって他にもなんかあっただろうが!
この際、遊び人でも賢者でも忍者でも良かった!ほら!バカな俺にだってこんなに職業がパッと思い浮かぶんだ!こんな凄いゲームを作る開発者がそこに気づかないわけがないんだ。
ん?ああ…そうか。ちょっと冷静に考えてみたら良かったんだ。
「あ、あの!」
<はい?まだ何か?>
「まだってなんだよ?まぁいいや。それよりさ、さっき勇者になれなかったのってもしかして俺の所持金が足りないからですか?」
<はい。現在の所持金50Gでは転職金が不足しております。転職を希望されるのであればそれに見合った代金をお支払いして下さいね>
良かった!!
俺はまだ神に見放されてはいなかったんだ!
開発者と言う神には弄ばれたけど!
「じゃ、じゃあ!勇者への転職金っていくらか教えて下さい!」
<はい分かりました。えーと、村人Aから勇者に転職ですと1000万Gとなります>
「…ん?」
<1000万Gとなります>
「いっせんまん…?」
<はい>
「えっと、それって仮に村人Aとして働いた場合、どれくらいで貯まるものなんでしょうか?」
<そうですねぇ、人にもよると思いますが…平均的に3~5年くらいではないでしょうか?>
「3~5年…あの、ここのゲームって現実と同じ時間が流れてるんですよね?」
<はい。その通りです>
「絶望の世界?」
<いいえ?ここは夢と希望が満ち溢れた世界ですよ☆>
そんなニッコリとした声で言われましても…。お前ちょっと姿現せ。声だけじゃぶん殴れないだろ。
「はぁ…リセマラしよう」
俺は本気でそう思った。別にここにガチャ要素はないが。
<再登録するおつもりでしょうか?>
「だってもうここに夢も希望もないもの」
<そうですか…とても残念ですね…>
「あんたNPCのくせに感情豊かだな…」
<そうでしょうか?残念なことに全てプログラムですよ?私に感情なんて存在しません>
「やだぁ達観してるぅ!」
<またのお越しをお待ちしております>
「はいどーも。ありがとうございましたぁ!」
もうここに用はないと俺がログアウトを選択しようとしたその時だった。
「ちょっと待って」
凛としたその声にその選択を遮られてしまった。
「え?」
「君、勇者になりたいんだよね?」
「え?あ、はい、そーですね?」
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