閑話・あの人は今・・・
読んでくださっている方々へ
毎度いいねプッシュと、感想を書いてくださり、おおきにであります!
今話でこの章は終わり、新章になります。
基本的には独自解釈とオリジナル要素を入れつつ、概ねは史実に沿った動きになりますので、よろしくお願い致します。
某州某郡某県暗黒街
世は常に「光有る所に闇有り」であり、繁栄・栄華を誇っている者の裏には、必ずその煽りを喰って没落・衰退を享受する者がいる。
このとある県でも例外ではなく、華やかな繁華街から1本道を外れれば、其処はもう脛に疵を持つ咎人(犯罪者)、落ちぶれて自然と行く所まで行き着いた者等、闇の住人が住む世界・暗黒街が、繁華街に比例する様に広がっていた。
そんなアングラな地域にも有る、そこそこ流行っている酒家の奥深く、闇の住人でも知る人ぞ知る暗部が存在していた。
「・・・と言う訳で、どうしても許せねぇ奴でして・・・どうかよろしくお願いします。」
そう言って、召使いらしき人物に目配せをすると、召使いらしき人物は、持っていた風呂敷から金の延べ板を見せつつ、コトリと床に置く。
それを長髭・虎髭・貧相な男達がそれぞれに猿・犬・鳥を模した、面を被っている中で鳥面の男が近づいて確認し、桃の絵が描かれた暗幕にいる人物に、コクリと合図を送ると、
「お前の願い、聞き届けたり・・・。」
暗幕の人物が、重々しく了承を告げた。
平伏して去っていく男が見えなくなると、暗幕から長い福耳を持つ長身の男が現れ、
「さぁ~てお仕事だ野郎共。
ひと稼ぎ、気ぃ入れてやりますかね~!
おい憲和、何時もの如く情報収集頼んだぜ?」
ドカッと胡座を掻いて座り込み、ニコッと鳥面の男に向かって微笑む。
「ああ、任せとけや大将・・・じゃねぇ!!
何やってんだよ俺達はよ!?」
バシッと鳥面を、怒りにまかせて地面に叩きつける、憲和こと簡雍。
孫呉の祖・孫堅がドッシリと長沙郡に腰を据え、飛躍の時を今か今かと剣を研いで待ち、曹魏の祖・曹操がドンヨリと洛陽にて肩を落として通勤、退勤時間を今か今かと待っている日々を送っている時、蜀漢の祖・劉備は何処と知れぬ地で、ドップリと裏社会に首まで浸かり、闇の仕置き人として鋭意活動中であった。
「なに急にキレてんだよ憲和。」
「ちったあ危機感持てよ大将!
つい最近まで県令に成ってたのに、あっと言う間に裏社会に逆戻りしている現状をよ!?」
のほほんと喋るボ○ビーに益々憤慨する。
「しゃあねぇだろうが・・・先の出入りで手下はほぼ全滅したから、人を再度集めねーと義勇軍として活動の仕様がねえ。
そいで人を集めたくとも、命からがら逃げ出したせいで、活動資金も空っ欠でねぇと来たもんだ。
手っ取り早く資金調達するには、コレが1番実入りが良いんだからよ。」
臆面も無く言い切るボ○ビー。
元々が根っからの遊び人であるので、「汗水垂らして働いて稼ぐ」という概念が無く、裏稼業を行う事に躊躇が全く無かった。
「まぁまぁ雍さん、そんな目くじら立てんでも。
裏稼業って言っても対象者が、本当の悪人じゃないと備兄が受けない様にしてるんだし、かなり真っ当な方でしょうが。」
犬面を外して張飛が劉備を庇うと、
「然り・・・長兄共々今は雌伏の時。
忍んで耐えるのも、必要で有ろう簡雍?」
猿面を外した関羽も張飛の意見に同調し、揃って劉備を擁護する・・・が、
「・・・ふざけるんじゃねーぞテメエ等コラ、こうなった元凶が何ほざいてんだ?特に玄徳・関羽!!
お前らが忍んで耐えれなかったから、こんな状況に陥ってんだろうが?オイコラ!?」
益々ヒートアップして、劉備と関羽を責め立てる。
初任地で何の罪も無い督郵を、勘違いでボコって逃亡したボ○ビー率いる一家は、指名手配をされて暫く身を潜めていたが、恩赦のお蔭で無事に無罪放免となり、義勇軍と言う名の傭兵業を再開。
そして傭兵業の過程で幾つかの軍功を立て、別県の県尉(警察署長)や県令に何回か就任したのだが、悉く問題や失敗を犯して、逃亡or追放の憂き目に遭っていた。
「いや、俺だってよ、前回の件で深~く反省して、公金に手ぇ出さねー様に忍従してたじゃん?」
「あのなバカ大将?それは一般的に言ってな、忍従じゃなくて常識なんだよ常・識!
そもそも俺がガッチリ公金を管理してたから、手を出せなかっただけで、放っといたら確実に使い込んでいただろうがテメエ・・・。」
非常識な一応主君に、ジト目で睨む。
「んなわけねーだろ!オレを信じろや!?」
「信じて付いて来てこの様なんだけどな。」
はぁ、とため息を吐いた。
「俺が言いてえのはよ、大人しく職務に励んでりゃあ良いモンを、縄張りにしようとして在所の奴らの背後関係を、ろくすっぽ調べずに抗争を起こして、後ろにいる大親分を敵に回し、夜逃げ同然に逃げる羽目を再々作った、浅はかさと堪え性の無さを言っとんじゃい!」
ビシッとボ○ビーを指差す苦労人・簡雍。
流石に「腐っても鯛」と言うべきか、地元幽州・涿郡では悪名が轟いている為に効果は殆ど無いが、曲がりなりにも「劉姓」持ちの属尽なだけはあり、孫堅よりも遥かにショボい軍功でもポンポンと、幾つかの県尉・県令に推されて就任していた。
しかしそうして折角得た、立身出世と自勢力根拠地化の好機なのに、じっくりと時間を掛けていけば良いものを、相変わらずの政治感覚の無さで、性急に勢力の根を張ろうとして、裏社会相手に実力行使に出てしまう。
結果背後の大親分と敵対関係になり、その為地元住民までそっぽを向かれ、敵地同然にしてしまい、報復を恐れて逃げる羽目になって、自然と自主退職状態に追い込まれていた。
又、黄巾の乱以降治安の悪い地域では、政治力よりも軍事力を重視する風潮が強くなり、ボ○ビーもド○ベエと同じく戦功に因り腕っぷしを買われて、数回県令にもなっている。
しかし賊徒に度々敗れて敗北、上司の郡太守に見限られてクビになったり、そのまま逃走して自然と解任、といったループを繰り返していた。
「うぐう・・・・・・。」
「おい、そんなに責めんでもいいだろう?
長兄なりに、我々の事を思ってした事だろうに。」
眉根を寄せて、髭を扱きながら反論する関羽。
「良かれとした結果あの辺一帯は、時間が経ってほとぼりが冷めるまで、近寄れもできねぇ危険地帯と化しているがな。」
反論に反論で冷静に返し、
「それに関羽、お前は大将だけで自分は関係ないって風に、何を他人事みたいに言ってんだよ?
こんな事態を招いた主要因且つ、手下達が壊滅状態になったのは、お前のへっぽこ軍略の賜物だろうが!?ええ?オイコラ!」
1番の問題要因である、関羽に矛先を向ける。
数多くあるボ○ビーの欠点の内、曹操と孫堅と同時期にスタートしたのに、自前の勢力基盤を形成出来なかった、最大にして最悪の欠点が「補佐役の関羽が、どうしようもないポンコツだった為、戦にマトモに勝てず弱かった」である。
曹操には夏侯惇、孫堅には程普、孫策には周瑜といった名軍事補佐役達が居て、元々軍事的才能に長けた3人の補佐として、結成間もない義勇軍の陣代(指揮官や軍統括の代理・調練)、軍政(軍需物資補給・募兵)、参謀(人員配置・編成・戦術の助言)をこなし、勢力基盤形成に多大な貢献をして、夏侯惇達は主君等の独立の成功・維持に導いた。
しかし関羽の場合は、お世辞にも名将とは言い難い劉備よりも、遥かに指揮官として指揮能力が劣ると共に、軍政・参謀役としても不適格だった。
哀しいかな関羽さんは自身が指揮を執って、戦に負けた記録は多く有れど、勝った記録が全くと言って良い程無いのである。
一般的に関羽と云えば、「義烈忠勇の名将」として有名であり、数々のエピソード=武勇伝に彩られ、後に忠武を讃えられて神格化した人物で有る。
しかしながら※千里行を始めとする、関羽に関するエピソードのほぼ99%は、三国時代よりも約千年後、明の時代に羅貫中が著した、「三国志演義」=正史「三国志」をモチーフに書かれた、所謂2次創作に依り創られた、後世の創作が殆どであった。
※(実際は官渡戦役中に、豫州汝南郡に張飛が居る事を知ると、隙を観て曹操の本拠地・許昌から脱出して張飛達と合流。
その直後に、汝南郡に袁紹から逃亡した劉備も合流して、荊州の劉表を頼って落ち延びている。
つまりは劉備の嫁さんである、甘夫人と糜夫人を関ジャイとボ○ビーは、敵地のド真ん中に置き去りにして見捨てていたのであった。
因みに夫と家臣に見捨てられた甘夫人達を、曹操は非常に非常~に哀れみ、キチンと保護して身の安全を図ると共に、ボ○ビー共の所在地が判明すると、丁重に送り届けている)
正史に於ける記述はどうかと言うと、「官渡戦役で、袁紹の配下・顔良を斬った」という、たったの1文のみである。
弟分の張飛や後輩の趙雲は兎も角、中途採用の馬超や黄忠でさえ、正史「三国志」の著者・陳寿に依って、幾つものエピソードが記されているのに比べ、非常にショボかった。
それにボ○ビー軍の動きを観ても、徐州に於ける曹操戦もそうだし、荊州の長阪戦や益州の入蜀戦も同じく、必ずと言ってもいい程関羽さんを、後方若しくは遊軍として遊ばせ、前線に投入する事も劉備と一緒に戦う事も無かったのである。
理由としては、関羽さんがボ○ビー入蜀後に曹魏討伐を、「自分の判断で部下の制止も聞かずに、勝手な独断専行で兵を挙げた」様に、「我が強く自分の意見を押し通し、人の話を聞かずに勝手な行動をする」のが原因と思われる。
しかもそういった理由と共に、「自尊心が異常に高く、自身に絶対的な自信を持っている為、ナチュラルに相手を見くびり、舐めてかかる」といった悪癖も有り、指揮官としては欠点・欠陥が多く、1軍の将処か1隊の将でも務まるかどうか、かなり怪しいレベルで、兵士達の調練なら辛うじてといった感じであった。
又、前述の人間性の為、参謀としても「傲慢な思考で敵を下に見積もり、視野狭窄に陥り易く、人の意見を取り入れる融通性が無い」ので、指揮官以上に不向きでなまじ学が有る分、正しく「生兵法は怪我の元」になるだけで有る。
当然の如く軍政などは論外であり、軍需物資は武器・食糧を扱う商人との交渉をせねばならず、商人の煽てに乗って、高掴み(相場よりも高い値段で買うこと)させられて大損するか、傲慢さで威圧的交渉をして、決裂するのが関の山であり、募兵も同じく傲慢さを嫌われて集まらずと、マトモに務まる余地が無かった。
つまりは関羽さん武勇だけはあるが、指揮能力の高さは劉備に劣り、軍政官としての才覚は簡雍に劣り、参謀としての適性は張飛にも劣る(その場の機転や、素直に人の意見を取り入れて、上手く活用が出来た)という、とてつもないポンコツなのであった。
他の人に例えれば、「武勇一辺倒なだけの、出来の悪い項羽」であり、現在一般的に知られている関羽は、ショートケーキをデコレーションして、ウェディングケーキに嵩増しされたかの如く、元の原形を留めていない全くの別人である。
そんな最早組織の癌とも言える人物を抱えて、マトモに勢力基盤を築ける筈も無く、流浪に流浪を重ねるのは、至極当然の事であった。
まぁ、功無き将でありながら、最古参の武将という年功序列の肩書きだけで、「五虎大将」筆頭に躊躇いもなく堂々と就任し、雲泥の差程の功績を持つ馬超や黄忠に対して、「彼奴等と同格は嫌だ」と、いちゃもんをつけれる面の皮の厚さと、自尊心は天下無双と言えるだろうが。
それはさておき、
「指揮を任せりゃ、他人の意見も聞かず暴走する。
じゃあ参軍をやらせりゃ、思い通りにいかねーと、周りにキレ散らかす。
かと言って軍政を頼みゃあ、ボロ損をするか商人と揉めて、物資調達が出来なくなるし。
・・・おめえマジで得意分野あんのか?」
項目を上げ連ねる度に、ドンドンとトーンダウンして、表情も沈んでいく簡雍。
「勝敗は時の運と言うだろう。
勝つ時はちゃんと勝っている。
敗れたのは周りが私の動きに付いて来れなかったり、偶さか相性の悪い相手だっただけだ。」
しれっと参謀と軍政の話は無視して、指揮能力についての言い訳を述べる関羽。
「勝つ時は殆どが真正面から攻撃して来る、猪武者が相手の場合だけだろうが。
少し知恵の回る奴相手だと、逆に殆ど勝ってねーじゃねーかおめえ?
安い挑発に乗って突っ込んで、不意打ちや伏兵を喰らう事が多々あるしよ。」
簡雍も指揮能力に焦点を当てて切り込む。
「フン、そんなちゃちな罠に、易々とやられる私では無いわ!」
「オメエや張飛はそうかもしんねーけどな、オメエと一緒に罠に巻き込まれた部下達は、バタバタと死んでんだよボケ!
ちったぁ周りの事も考えて動けや!?」
我が身オンリーのジャ○アンに、怒りを露わにして怒鳴る。
「うぐ・・・しかし兵は将に付いていくのが基本。
生き残れないのは、これ又時の運であろう。」
「はぁ・・・先ず罠に掛からないのと、兵を無事に全うさせるのが将の務めと思うけどな。」
ため息を吐いて正論を突っ込む。
「それにオメエさんちょっとよ、相性の悪い相手が多過ぎねーか?
オメエが負けた相手を、兵法のへの字も知らねー張飛に指揮を任せると、あっさり勝っちまう事が2度3度有るのも、一体どうしてなんだよ?」
「うぐぐ・・・。」
簡雍の指摘に、唸る様にくぐもった声を上げると、
「簡雍貴様!貴様の様なズブの素人に、軍事や兵法の何が解ると言うのだ!?」
怒声を上げて立ち上がり、簡雍に詰め寄る。
「ズブの素人の俺でさえ判る様な、自分勝手な行動でポンポン負けてっから、言ってんだろうが!?
その所為で、大将やお前らを慕って付いて来た、最初の奴らが今や全員死んでんだぞ!
欠片でも彼奴等の、死を悼む気持ちが有るんなら、ちったぁ考えて行動しろやテメエ!!」
負けじと怒声を張り上げて立ち上がると、関羽を睨み付けて対峙する。
「止めねーか2人共!!」
たまりかねた劉備が2人を制止する。
因みにスネ張さんはゴツい面相に似合わず、間に挟まれてオロオロしていた。
「長兄!しかし・・・!」
「大将!?止めんなや!」
「いいから止めろつってんだろうが!?」
再び大声を張り上げて怒鳴ると、
「憲和!テメエは言い過ぎだ!
雲長だって自分の子分を失って、辛くないわけねーだろうが!
表では平然と見えても、心では泣いている位は察してやれ!
傷口を抉る様な言い方をしてやんなや!」
簡雍を厳しくたしなめて、
「それと雲長も雲長だ!
憲和の言う通り、自分勝手な行動は慎め!
オメエの行動1つで、何人・何十人の子分達が死んでいくんだから、よくよく考えて動け!」
関羽にも苦言を呈す。
「・・・すまん大将。」
「・・・申し訳ない長兄。」
劉備に諭されて、頭を垂れて反省する2人。
「とりあえずその話は、終わりだ終わり!
でだ雲長、今回の依頼はオメエに任せる。
憲和の野郎の鼻を明かしてやれや。」
強引に話を断ち切ると、ニッコリと微笑んで関羽を励ますかの様に、闇の依頼を一任する。
「はは!お任せあれ長兄。
必ずや任務を達成して見せましょうぞ!では!」
任された事に、喜びながら拱手して立ち去る。
関羽が任務遂行の為、立ち去った後・・・
「・・・行ったか?」
「・・・大丈夫だ備兄、羽兄の姿は見えねえ。」
「はぁ・・・やれやれ・・・。」
関羽がいなくなったのを確認すると、簡雍が力を抜いて、ドサリと地面に寝転んだ。
「すまねえな憲和、憎まれ役をやって貰って。」
「別段、頭を下げられる事はしてねーよ大将。
オメーさんが関羽を下手に詰めて、義兄弟が不和に成る事に比べりゃあ、大したこっちゃねーわ。」
寝っ転がった状態で、手をヒラヒラと振る。
「俺もゴメンよ雍さん、何も言えなくて・・・。」
「弟分のオメーの立場なら、兄貴分に言い難いのは当然のこったろ。
それこそ気にしちゃいねーし、オメーが言えば余計に拗れるだけだしな。」
俯く張飛に、手を振って快活な口調で励ます。
実は冒頭のやりとりから、関羽の問題行動を指摘して、自戒と反省を促す為の茶番劇であった。
まぁ、最も簡雍の方はガチの言葉であったが。
「ま、オレを怒りに任せて殺っちまうと、己が1番嫌いな軍政を担わなきゃいけなくなるのを、彼奴自身も判ってやがるから、手を出さねーのを見越して言ってるしなオレも。」
ニヤリと笑う。
「雲長もコレでちったぁよ、良くなってくれりゃあいいんだがな・・・。」
「ありゃあ生来のモンだろう?
斬り込み役としては抜群だけどよ、指揮官には向いてねーぞどーも。
優秀な指揮官役を見繕って、副官に据えるなりしねーと無理だろうな。」
ボ○ビーの希望的楽観を、バッサリ切り捨てる。
「だよな~・・・はぁ、暫くは別働隊か後方部隊の指揮官として、上手く使っていくしかねーか。」
溜め息混じりにぼやいた。
そうしようと目論むボ○ビーだが、肝心の関ジャイが嫉妬して、その手の部下を次々に潰してしまう事に、後に再び頭を抱える羽目になるのであった。
それはさておき、
「それよか大将、これからどうすんだよ?」
「憲和、どれくらい金貯まってんだ?」
「う~ん・・・百人くらいは養えるかなって所。」
「良し、十分だ。
今回の依頼を終えたら、義勇軍を再結成すんぞ!」
膝を叩いて宣言する。
「よっしゃあ備兄!漸く復活するんだな!」
「ああ!やっとこさだけどな!」
義兄弟2人が喜びを分かち合う。
「そりゃ良いんだが、何処を活動拠点にすんだ?
このご時世だし、食い詰め者や破落戸がそれこそゴロゴロ居るから、すぐに人は集まるけどよ。
戦慣れしてねーんだから、下手な所を選択すると、即全滅しちまうぞ?」
義兄弟に冷や水を浴びせる。
「・・・はぁ、そうなんだよな~。
最初の頃は、雲長と益徳を前面に出して突っ込ませれば、あっさり勝ってたんだけどな~。」
昔は良かったなぁと、黄昏るボ○ビー。
黄巾の乱直後は、殆どの盗賊や賊徒達も戦争未経験者であり、関・張の武力ゴリ押しで勝つことが出来て、比較的楽勝だった。
しかし年月が経つに連れ、盗賊達も戦闘経験を積んでいき、生存競争を勝ち抜いて来た者達が台頭して来ると、地形を利用したり頭脳的な戦術を駆使し始めて、ドンドンと手ごわくなり、勝ち難くなっていったのである。
その為関羽と張飛に指揮を任せてみたり、参軍をやらしてみたりしたのだが、学問や兵法を嗜む関羽が斬り込み役以外の適性が無く、寧ろ無学の張飛の方が指揮・用兵に優れた適性を示すという、大誤算な結果になってしまう。
「嘆いてもしゃーねーだろうが。
んでどーすんだよ大将?何処にすんだ?」
「う~ん・・・とりあえず逆に行くのはやべー所を挙げて、消去法で考えてみっか・・・。」
腕組みをして唸る。
「それだと華南は駄目だな。
揚・荊・益の3州は、皇族が州牧か刺史に就任するみてーだから。」
「ああ、そりゃ駄目だ。
オイラが活躍すれば、嫌でも取り込まれて拒否出来ねーからな。」
簡雍の指摘に頷く劉備。
後漢時代に於いて、国姓である劉姓は、
・皇室(皇帝及び直系や近親者)
・皇族(王族・属尽の内、皇帝が一族と認定した者)
・王族(数代前に枝分かれした子弟の末裔で分家筋)
・属尽(皇室非公認の、遠縁の末孫)
この4つに大きく分類され、皇室(皇帝)を最上位として、皇族・王族・属尽は皇室に従う義務があり、属尽は皇族・王族に従う義務があった。
つまり、例えば荊州で活躍して武功を立てて、刺史で皇族の劉表に取り立てられると、基本的には拒否権が属尽の劉備には無く、劉表配下の1武将に成り下がってしまうのである。
独立独歩を目指している劉備にとって、皇族・王族のお膝元で活動するのは、頗る都合が悪かった。
特に現状は皇族・王族達がこぞって、自衛の為の私曲(私兵団)を、目の色を変えてかき集めている状態なので、尚更の事であった。
まぁ、そういった不文律も後少しで崩壊し、属尽の劉備には、厳しい逆風が吹くのだが・・・。
「そんなら憲和、徐州とかどうだ?
比較的落ち着いているって聞いたぞ?」
「落ち着いてるってのはそりゃ間違いねーが、アッコは余所者には厳しいって評判だぜ?」
「え、そうなんか?」
首を傾げて聞き返す。
「ああ、徐州は州境を州軍が展開して防衛に努め、州内は「屯田兵」つう、半農半兵みたいな集団が治安維持に努めてるって話でよ。
そんなんだから、先ず州内での仕事はねえし、俺達が配備されるのは州境沿いの、青州の黄巾賊残党退治に回されると思うぞ。」
「チッ、露払いの消耗品にされるだけかよ。」
つまらなそうに鼻を鳴らす。
「まぁそう言うこった。
再結成した義勇軍では、ちと荷が勝ち過ぎるわな。
それに比較的安全な県は、ガッチリ地元の奴らが県令になってて、手柄を立てても危険度の高い所しか、選択肢が無さそうだしな。」
「オマケに旨味がねー処か、厄介事を引き受ける羽目になるのかよ。」
「下手すりゃ前の二の舞だぜ大将?」
最悪の想定を告げる簡雍。
「当然無しだわな。
となると・・・どうだ?」
「いや・・・。」
額を合わせて議論百出する2人。
「「う~ん・・・此処って所がねえ・・・。」」
2人は徐州を排除して他の州を検討するが、再結成する義勇軍の質量を考慮すると、難易度の想定と調整が難しく、活動拠点の選定が暗礁に乗り上げる。
「・・・そうだ益徳、オメエはどうだ?」
「え!?俺かい備兄!?」
「ああ、オメエなら今の現状でどう動く?」
悪戯っぽい笑みを浮かべて、張飛に話題を振る。
「学のねえ俺が言ってもなぁ・・・備兄達の邪魔にしかなんねーと思うけど。」
「気にするこたぁねーよ張飛。
オメーさんの思う事を言やあ良いんだよ。
関羽の野郎も此処には居ねーんだし、別に遠慮する必要もねーよ。」
躊躇う張飛を、簡雍は快活に諭す。
(此奴は形はデケエし豪傑面してんのに、妙に気を使うんだよなぁ。
特に関羽が無茶苦茶をしても、素直に従うし)
何とも言えない複雑な感想を、内心で述べる。
同じ兄貴分でも劉備には、比較的自分の意見や考えを言う事があるが、関羽に関してはほぼ無条件に従い、自分の意見等は殆ど言わず、関羽に問題行動が有っても黙秘する事が多かった。
(まぁ張飛なりに、関羽の体面を傷付けねー様に、気ぃ使ってんだろうがな。
・・・どっちかつーと言っても無駄なのを、悟ってるのかも知んねーけど・・・)
ウンウン唸っている張飛を横目に、苦笑する。
「う~ん・・・俺なら今の現状なら、幽州に一旦戻るかな~。」
「ほう?地元に帰るってか?
幽州にゃあ皇族でも著名な、劉虞が州牧に就任して居るんだが、劉虞の下に付くって事か益徳?」
今までのオイラ達の話を聴いてなかったのか?と、おいおいと笑う。
「いやいや違うよ備兄。
劉虞のオッサンの所じゃなくて、備兄の兄貴分の公孫瓚?って言う人の所に、行った方が良い気がすんだよ俺的にはさ。」
「へ?公孫の兄ぃの所にか?何で又・・・?」
意図が読めず首を傾げる劉備。
「今までは独学で兵の運用とかしてたけど、やっぱり独学じゃ限界が有ると思うんだよ俺。
そんならさ、歴とした軍隊の公孫さんの下でしっかり学んで、募兵した兵も訓練を積んで鍛え上げて、力を蓄えるべきじゃねーかなぁと思うんだよ。」
タハハと自信なさげに、頭を掻きながら話す。
「ほうほう・・・良案じゃねーか大将これは?」
「確かに・・・幾ら手下を集めても、今のままじゃマトモに戦いになんねーしな。
そんなら無理せずに、手下を鍛えてオイラ達も戦術の幅を広げて、時節を待つ方が建設的だわな。」
2人して張飛の意見に頷く。
「それに公孫瓚殿の下ならよ大将。
劉虞のオッサンと違って配下・部下じゃなくて、上手く交渉すりゃあ、客将扱いで居座れるぜ?」
「よっしゃそうすっか!!
憲和、交渉の方は宜しく~。」
「集れる」と知った途端目を光らせ、躊躇いもなく即決するボ○ビー。
「俺か!?・・・わーったよ。
但しお願いの手紙は、テメエでちゃんと書けよ?
俺は公孫瓚殿と面識がねーんだから。」
「ああ、解ってるって。
さぁそいじゃあ雲長が、任務が終え次第何時でも出れる様、旅支度をしとくかね。」
いそいそと退出していく劉備。
「あ、俺も俺も・・・雍さん、仕事増やしてしまってゴメンな。」
「良いって事よ張飛、ほれ行った行った。
大将や関羽の尻拭いに比べりゃあ、よっぽどマシだし、やりがいがあらぁな。」
手をヒラヒラさせて、退出を促す簡雍。
「しっかし無知の張飛の方が、余程物事の本質を突いてるってのも、事実は奇なりだよな~。」
ガランとした部屋に1人寝転んだままの簡雍は、苦笑気味にぼやいた。
「関羽の野郎も、コレを機にちょっとはマシになってくれりゃあいいんだが・・・。
とりあえず彼奴に助言を聞くと、うんと言うまで強硬に意見を曲げねーわ、駄々を捏ねるわで面倒くさいから、これからも彼奴抜きで話を決めねーとなっと。」
そう独り言を言うと立ち上がり、部屋を出て行く。
(張飛の言う通りだ。焦ることはねえ。
じっくり実力を養って、少しずつ所帯を大きくしていけばいいんだ。
・・・もう、あんな目に遭うのはこりごりだ)
味方の死体に隠れて、敵の追撃をかわした前の戦闘を思い出し、ブルッと身を震わせる。
こうしてボ○ビーもとい劉備は、壊滅した義勇軍を再結成し、不足している力を養う為に、兄貴分の公孫瓚の下に寄生する事にしたのであった。
当然コレから20年以上に渡って、じっくりコトコト実力を養う羽目になるのは、知る由もなかった。
終
え~と、正直関羽という人物は、世界レベルで此処まで盛りに盛られて、虚飾塗れの人もなかなか居ないのでは?と思える人物ですね。
中国歴代王朝に於いて、政策の一環で神格化していく過程で、ドンドンと逸話が盛られて行ったのでしょうが、千里行を始めとして結構ガバがあるので、有る意味フィクションなんだなと、分かり易くはありますが。
(千里行の場合:甘夫人達を連れて許昌を出発→
途中の関門をパワーで強行突破→黄河を渡った冀州付近で劉備と再会→一緒に南下して汝南郡(許昌よりも南)で張飛とも合流→曹操軍に蹴散らされて汝南郡から敗走→同族?である荊州の劉表を頼って落ち延び、新野に駐屯する・・・が千里行の主な行程だが、冀州まで連れて行った甘夫人達を、どうやって再び曹操の勢力下の真っ只中、無事縦断して荊州に送る事が出来たのかが、ホンマに謎)
長々とすみません。
楽しんで読んで頂けたら嬉しい限りです。
優しい評価をお願いします。




