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糜芳andあふた~  作者: いいいよかん
76/111

後漢・龍の落日・・・その1

読んでくださっている方々へ


いいね・感想をありがとうございます!

励みになりますので、今後とも宜しければお願いします。


又、誤字脱字のご報告してくださり、お手数をおかけしております。


さて、新章を今回から始めます。


基本的には冒頭に中央の話、後に糜芳の周りの話になりますので、宜しくお願いします。


作中に書かれている事柄は、多分に個人的な解釈で、書かれている所がありますので、悪しからずご了承ください。

        後漢王朝の現状


188年8月、朝廷では相次ぐ反乱に対処するという名目で、朝廷上層部(中央名家・宦官)により、「何進率いる軍部とは別に、即応性の高い軍を新設するべきでは?」と上奏が為される。


上奏を聞いた霊帝に依って、その有意性(ゆういせい)が認められ皇帝直属の近衛兵である、虎憤(こほん)羽林(うりん)を中心に編成された新設軍、「西園三軍(さいえんさんぐん)」が、霊帝自身の私費に拠って創設された。


一見すると名家・宦官閥連中が、珍しくマトモな事を言っているのだが、実情は軍部から徹底的に締め出しを喰らった、武官系名家・宦官閥連中の就職先が、虎憤・羽林の2部署しか無く、極端な飽和状態になり就職難に陥っていた。


その為、派閥上層部への不平不満が殺到、突き上げを喰らった両上層部が、結託(けったく)して宮廷占い師等を抱き込み、天啓だのとそれらしい理由付けをして、新たな就職先=西園軍創設に持って行ったのである。


約1万から成る西園三軍は「三軍」の通り、上・中・下軍の3つの部隊で成り立っており、10月の閲兵(えっぺい)式に於いて、それぞれに「校尉(こうい)」=将校兼指揮官が据えられ、上軍校尉には宦官の十常侍(じゅうじょうじ)1のやられ役・蹇碩(けんせき)が、中軍校尉には四世三公の袁家2位のバカ坊・袁紹が、下軍校尉には失脚した宦官閥・張温の元配下の()下・鮑鴻(ほうこう)なる人物が就任した。


その上中下3校尉の補佐官に、左・佐・右の3校尉が付けられ、それら実務系とは別に、三軍全体の経理担当官・(じょ)軍校尉と、三軍全体の監督官=軍監・(てん)軍校尉の、事務系2校尉が加わり、合計8人の校尉で運営された事から、(そう)じて「西園八校尉」と呼称(こしょう)される事となる。


そして閲兵式に於いては、霊帝自らが豪奢な鎧に身を包んで、自身を「無上(むじょう)(これ以上に上は無いという意味)将軍」と名乗り、演説を行って集結した西園軍を激励した。


演説の中で霊帝曰わく、「壮健にして、武略の才知が有る」上軍校尉・蹇碩が、軍全体の最上位に位置し、大将軍・何進でさえも彼の下で有ると明言、物議を(かも)したので有った。


霊帝のトンデモ演説を受けて何進は、さぞや自身の立場を(おびや)かす内容に、戦々恐々としているのかと思いきや、外面は兎も角、内面では「ふ~ん、へ~・・・だから何?美味しいのそれ?」とばかりに、余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)で耳ホジ&鼻ホジしていた。


そんな余裕綽々な態度を、何故とれるのかと言うと、ぶっちゃけ典軍校尉を霊帝直々に指名された、曹操を除いた他の7名は、「売官」で地位を買ったに過ぎない、(にわ)か校尉だったからである。


つまり曹操以外は、納めた金銭の多寡(たか)で地位を割り振られたに過ぎず、閲兵式での蹇碩に対する霊帝のレビューは、「多額の金さえ出せば(売官で買えば)、君達にもこういう()()が有るよ?」という言わば()()()()から、出席者である西園軍達(ほぼ全員が名家・宦官閥出身のエリート=ボンボン)への、宣伝的なヨイショであり、実効性が皆無であった。


実際に大将軍・何進よりも、上位者で有る三公=特に後漢王朝に於ける、軍全体のトップ・太尉でさえ、何処ぞの世界的機関の事務総長の如く、組織内では重要な決定権の無い、只の関係資料室・保管庫の管理人という、お飾りに過ぎなかった。


階級最高位の太尉でも、何進に遠く及ばないのに、全く軍務との関わりが皆無だった蹇碩が、いくら霊帝の発言とはいえ、いきなり最上位の軍人と言われても、信憑性(しんぴょうせい)が欠片も無かったのである。


そんな訳で何進は、全く動揺する事もなく、柳に風と受け流していた。


まぁ、もしも蹇碩が霊帝の発言を真に受けて、ノコノコ大将軍府に行った日には、「党錮(とうこ)の禁」等で恨み骨髄に達している軍部連中に、秒で往生(暗殺)されて()()()()になるのが、関の山であったが。


流石の蹇碩も、其処(そこ)までお目出度(めでた)い頭はしておらず、大将軍府に近づく事はなかった。


では何故多額の金銭を払ってまで、特に蹇碩や袁紹が、西園八校尉の地位を買ったのかというと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()である。


蹇碩は政敵に等しい曹操の父・曹嵩が、最近に於いて殊更(ことさら)に、霊帝から寵を得ている事に危機感を抱き、曹嵩と何進が結び付くのを恐れた、宦官トップ・趙忠(ちょうちゅう)と協力して讒言、太尉から引き摺り降ろすも、大司農として残留した事に焦りを覚えて、曹嵩以上に歓心を買うのに必死だった。


袁紹の方も、叔父の袁隗(えんかい)が失脚した後に復権する事が叶わず、何進からは使い走り程度にしか見なされておらず、周囲からも見離されつつあり、自分の代処か当代で没落しかねない状況に陥っており、寵を得て復権する事に必死になっていた。


そして曹操以外のその他も、蹇碩・袁紹程ではないが、似たり寄ったりな考えの持ち主達だった模様。


まぁ只悲しいかな蹇碩達は、幾ら(はべ)っておべっかを言っても、霊帝は冷徹なまでの現実主義&能力主義者なので、効果はかなり薄く、何進・皇甫嵩・盧植達の様に、仕事に精励(せいれい)して実績を出さないと、寵愛を得れない事に気付いていなかったのである。


(曹嵩の場合は、莫大な財を霊帝に供出した尊皇(そんのう)の志を、高く評価されたモノである)


因みに曹操が典軍校尉=監査役に指名されたのは、洛陽北部尉(ほくぶい)(洛陽北門管理と、周辺の治安維持担当官)の際に於ける、厳格な法の遵守・適用に依る任務遂行力の実績と、実父曹嵩の太尉解任(蹇碩達に依る讒言(ざんげん)に加えて、荒事に向かない温厚篤実な人柄なので、不適格だった模様)に対する、詫びの気持ちからだったようだ。


しかし、当の曹操からすれば有り難迷惑(がためいわく)処か、実質左遷に等しい処置であった。


折角軍部で功績・実績を積んで、実力で将軍位を目指していたのに、半ば強引に虎憤・羽林に転任させられ、自力出世の糸口が、潰えてしまったからだ。


基本的に霊帝自身が親征する事は無い為、西園軍の殆どが遊んでしまい、精々が司隷地域近郊の、ショボい賊討伐ぐらいしか任務が無く、功績の立てようがなかった・・・。


ついでに曹操が就任した典軍校尉は、監査役という後方部隊=事務系統に属する部署なので、役割的に軍監を派遣するぐらいで、実戦に出る可能性自体が低く、より一層出世する機会が無いのである。


トドメに虎憤・羽林共に、武官の最高位が中郎将(ちゅうろうじょう)であり、それ以上の上位は衛尉(えいい)等の文官にシフトチェンジするという、(いびつ)な組織体系となっていた。


つまり武官としてのキャリアを積んでも、中郎将以上は文官としてキャリアの積み直し兼、バック(後ろ盾)が無いので、売官(金銭供出)をもう一度やり直しになるという、最悪の状態に陥っていた。


此処までいくと、最早霊帝の悪意じゃないの?と勘ぐりたくなる程だが、当人は至って善意でした事なので、余計に質が悪かった。


何気に名短体コ○ンさん、今回の西園軍騒ぎに依って名誉は得たが、文字通り「とどのつまり」になってしまい、出世の道が殆ど閉ざされるという、最大の被害者に成ってしまったのである。


まぁ、今までのほほんと、故郷で遊び回っていたツケが、一気に押し寄せて来た様なモノであったが。


尚、何進達軍部から観た虎憤・羽林連中は、「武官系名家・宦官閥共=DQNなバカ坊達」であり、2つの部署は、「バカ坊達の最終処理場or(馬鹿)捨て山」という認識で有る為、皇帝の代替わり時には、容赦なく大量処分セールをする予定であり、悲しいかなコ○ンさんには、追い討ちまで確定していたのであった・・・合掌。


そうした動きが有る中、とある地方では・・・


     涼州漢陽郡隴県州牧居館(きょかん)自室


「う~ん・・・。」

自室に於いて、側に影の護衛兼家令に収まったイーを侍らせ、竹簡を手に持って唸る糜芳。


元々は刺史の住居だった居館は、そのまま州牧の居館として接収され、刺史殺害事件後にとってつけた修繕を施されて、再利用されていた。


10月、8月に開催された涼州会議の結果、9月には殆どの郡県で、トップ不在の後任が入れ札で決まり、現在新体制でアホ共の搾取と、反乱騒ぎに依る戦災の復興が、少しずつ始まっている。


糜芳が直接統治している漢陽郡でも、復興に向けて皆が頑張っていた。


先ず真っ先に糜芳が行った事は、必要最低限の給料だけ貰い、残りは全て州・郡(太守も兼任している為、太守分の給料も発生している)に返還し、復興費用に充てた事であった。


コレにより益々名声が上がったが、当の糜芳はいくら銭を貯め込んでも、故郷の徐州に持って帰れないのは判っているので、只単に捨て銭になるモノに、全く関心が沸かなかっただけである。


かといって飲む打つ買うにも、飲む=飲酒は自殺行為に等しいので、断固拒絶しているし、現代程の娯楽性や施設が存在しない為、打つ=博打にも精々チンチロリン(食器等に賽子(さいころ)を投げ入れ、出目で勝ち負けを決める遊戯(ゆうぎ))や、双六(すごろく)ぐらいしかないので、やる気が起きなかった。


最後の買うはまぁ、搾取や戦災の被害にあった、女性の割合がかなり多く、人の不幸に付け入るのはちょっと・・・という気後(きおく)れがあるのと、買うぐらいなら、使用人として雇用すべきという理性が働き、食指が動かなかったのである。


(まぁ、ど~せ(あぶく)銭になるんだったら、人の為になった方が遥かにマシだしな。

偽善も善の内って言う言葉もあるし・・・)

そう割り切った糜芳であった。


次に行った事は、州治所が有る隴県以外の、各県の県令の選任であった。


(史実に名を残してる、涼州出身者の文官系を使い倒して、復興事業をしね一と内政が回らん。

筆頭格は無論賈詡さんなんだけど・・・けどな~、う~ん、う~ん・・・やっぱ歴史上の影響力がデカ過ぎるから、流石に(まず)いか?

地元で活動していた奴等に、限定するか・・・つうか他州(よそ)の出身者だと、俺みたいな庶民階級出身者の勧誘に、対象者は大概名家出身だから、先ず殆ど応じねーしな~。

・・・まぁ、一応俺が涼州脱出後の()()()()()()()()()()()は当てが有るんだけどね)

そう思考して、行動をとる糜芳。


そうして史書に名を残した涼州出身から、馬超キラー・楊阜(ようふ)や中国版鳥居強衛門(とりいすねえもん)閻温(えんおん)、蔡文姫・黄月英と並ぶ才女にして賢妻(けんさい)王異(おうい)の内助の功に支えられた、中国版山内一豊(やまのうちかずとよ)趙昂(ちょうこう)らを抜擢。


それぞれを漢陽郡内の各県令に任命し、県の統治を委ねた。


因みに最初は皆が皆共(みなとも)


「「「「「若輩者(じゃくはいもの)の私達には、幾ら何でも荷が重過ぎます!!無理です!」」」」」

大体平均年齢20歳前後の楊阜等が、若年を理由に血相を変えて、ブンブン首を左右に振り、拒否反応を示したので、


「・・・いやあのね?貴君達よりも若年者(15歳未満)の私に、それを言うか普通?

貴君達よりも若年者で、余所者(よそもの)の私でさえ涼州の為に頑張っているのに、貴君達は断ると?」

「「「「「うぐぅ・・・それは確かに・・・。」」」」」

先ずはド正論をかまして、ジャブを放った。


「しかしながら幾ら何でも、年功序列を無視するのは流石に・・・。」

「・・・その年功者達がバカやらかして、(ことごと)くクビ(物理)になって(現世に)居ないから、若手の中で有能と名高い、貴君達を抜擢するのだがね?」

「「「「・・・・・・。」」」」

さり気なく某司令官スタイルで、楊阜達と面談しつつ、言葉のストレートを放って口を封じる。


実際に、「朱に交われば赤くなる」という(ことわざ)の通り年功者・年長者程、悪徳太守・県令とズブズブの関係になり、何処ぞの老害政治家の如く、悪事に手を染めている割合が多かった様で、韓遂達反乱軍に依り粛清されていた。


粛清の影響で州内に於ける、文官全体の割合で半数以上を占めていた、30~40代以上の中高年層が激減しており、残った文官達の3分の2近くは、30歳未満の若手で有る為、今回の抜擢を起用したのであった。


「貴君達も理解している通り、今は漢陽郡処か涼州全体が内政面はボロボロ、言わば倒壊した家の基礎を、1からやり直しの状態だ。

当然倒壊した家屋の、瓦礫(がれき)の撤去=バカやらかした者共の、後始末から始めなければならず、その不毛な労力を強いられるのを、(いと)う気持ちは非常に、非常に良~く解る。

なんなら貴君達の()()()()()()は、理解しているぞ?現在進行形でなぁ・・・。」

理不尽な現状に対する、怨念と怒りが入り混じったドス黒い気炎を上げて、に”っごり微笑む糜芳。


「さて諸君に改めて聞くが、私と比較して観れば、()()()()()()ぐらいの些事(さじ)懸念事(けねんごと)で、故郷復興の協力を拒むという事かな?うん?」

「「「「「い、いえ・・・そう言う訳では決してありませんが・・・。」」」」」

糜芳の空虚な笑みを観て、たじろぐ楊阜達。


「まぁ、私も温情の無い人でなしでもない。

依って貴君達には、3つの選択肢を提案しよう。」

「3つの選択肢、ですか・・・?」

楊阜が代表して聞き返した。


「ああ、1つ目は今の通り、私の推挙を受けて県令に就任する事だ。

推挙する以上貴君達には、最大限の協力をする事を約束しよう。」

ビッと人差し指を立てる。


「2つ目は、貴君達がそれぞれ各自に、県令に相応しいと思う人物を、私に推挙する事だ。

それならば、私が貴君達を推挙する理由が無くなるので、貴君達は県令就任を回避出来る。」

「おお、それなら・・・。」

ホッと安堵の息をついた瞬間、


「但し!推挙した人物が、問題を起こした場合は、容赦なく貴君達を含め、一族も連座させるから、そのつもりでな?」

きっちりリスクを述べて、中指を立てる。


「な、私達個人だけでなく、一族までも!?」

「推挙する以上は、貴君達にも累が及ぶのは、当然の話だろうが?

しかも州牧(州内最高位)である、私の推挙を断っての話なのだから、一族も只で済む訳ないのは当たり前だろう?」

「「「「・・・・・・確かに。」」」」

そう言われればと、糜芳を見つめる楊阜達。


曲がりなりにも県・郡・州の1役人が、系列トップ州牧の推挙を断って、他人を推して推挙を回避するという、面子(メンツ)を潰すド非礼をするのだから、個人的な話で済む筈がなかった。


「最後に3つ目、涼州の英霊を奉っている、慰霊廟に詣でて貰い、公衆の面前で「私達の不徳不才(ふとくふさい)では、涼州復興の任は務まりません!」とキチンと詫びて貰う事だ。

其処まで言うのなら、流石に無理強いは出来んので、私も潔く諦めよう。」

出来るモノならばと、意味深な笑みを浮かべ、親指を横に伸ばして、怒濤のデンプシー・ロールで連撃を放ち、フィニッシュを決める。


「そ、それはちょっと・・・。」

「え?それだけで宜しいので?」

サーッと顔面蒼白になる楊阜と、首を傾げて疑問符を浮かべる趙昂。


残りの者達も多数派の、楊阜の顔面蒼白型と、少数派の趙昂の疑問符型に別れて、困惑していた。


「ちょっ、ちょい!?お前はアホか!?

そがいな事してみぃや、周りから非難囂々(ひなんごうごう)の雨嵐を喰ろうて、涼州に我がだけやのうて、一族一門が()れんくなるんぞな!?解っとんのかオイ!?」

楊阜が友人・趙昂の暢気(のんき)さに思わず、方言丸出しの非難めいた声音で、注意喚起する。


「は?何でや?」

「趙昂・・・今、涼州民の皆が州牧様の音頭(おんど)で、復興事業を行っとんのは解っとるよな?」

「そりゃそれぐらいは理解しとるわい。」

バカにすんなと、憤慨(ふんがい)気味に答えた。


「そんな中で、州牧様が仰った事を慰霊廟で堂々と言ってみ?「自分は復興事業に、協力する気は有りません」と言っているのと、ツイな事言いよる事になるんぞなお前、ホンマに言うつもりか?」

「い!?」

奇声を発する趙昂。


選択肢1番を回避するには、2・3番を選択するしかないのだが、


2番・・・県令就任は回避出来るが、推挙した人物が問題を起こせば、連座させられて身内まで累が及ぶ為、四六時中監視状態にしないといけない。


はっきり言って、自身がやった方がマシ。


3番・・・全涼州民から「非州民」のレッテルを貼られ、怨恨と嘲笑を買い、本人処か一族一門も巻き添えを喰らい、()()()()()()()()()()()()()()()()可能性大。


はっきり言って、身の破滅を招くので論外。


・・・であった。


「さあ貴君達はどれを選択するのかな?

返事を聞かせて貰おうか?」

最初(はな)から選択肢なぞ、有って無いような提案をしている、人でなし処か鬼畜な男・糜芳。


絶対に逃さん!テメー等も道連れじゃあ!?という意思が、ありありと透けて見えた。


そんな糜芳の意思・意図を、十二分理解出来た楊阜達は、


「「「「「・・・州牧様の推挙に喜んで従い、謹んで県令の任、お受け致します。」」」」」

そう言って、受けるしかなかった・・・。


(まぁ、余所者の俺が、復興事業を頑張ってるんだから、楊阜達地元の者が協力しねーのは、筋が通らねーだろうしな・・・クックック)

ドス黒い笑みを浮かべ、強制徴用を完了する。


そうして隴県と漢陽郡の、トップ以外の選任を終えた糜芳は、入れ札などで選出された、他の各郡・県トップや役人達に対して、


1つ、各郡太守・県令の指示・命令に、違法性や問題が無いにも関わらず、個人的な感情や好悪で抗命(拒否)する者は、例え地元豪族だろうが、親族だろうが容赦なく処罰せよ。


逆にそれらを、己の不徳・不祥事として明るみにせず、隠蔽(いんぺい)隠匿(いんとく)した場合は、涼州と民の為に成らず、悪しき前例を作ったとして、その太守・県令も同罪とする。


要請が有れば、飛連隊や内別駕従事(悪吏殺害マン)を派遣するので、遠慮なく(まつりごと)、即ち職務を全うするべし。


1つ、各郡・県に勤める者達は、上司・同僚が不正等の悪事を行った場合は、例え親兄弟身内と言えど、太守・県令と言えど遠慮なく訴え出よ。


俗に「父母の悪を告言(告げ口)する者は死罪」と言われるが、コレは庶民或いは私人なら「※不孝罪」に成るモノであるが、国家に奉仕する身に於いて、国家に対する罪を犯した、身内を訴えざるは天下の大罪にして不義・不忠と成り、「※不道罪(ふどうざい)(道理に外れた行い=謀反と同等)」に相当すると見なし、該当者も族滅の罪に服すとする。


大体の悪事・悪行は、「天網恢々(てんもうかいかい)()にして()らさず」の言葉通り、大概は周りに知られているモノだから、素直に上告して慈悲を乞うべし。


親兄弟身内の罪を上告した場合は、温情を以て罪を犯した者だけを罰し、連座制の適用外とし、一族一門の名誉を守る事を、州牧の名において保証する。


もしも己の身に余るのなら、コレも飛連隊・内別駕従事の派遣を要請せよ。


この様な内容の布告を発布した。


一見すると相互監視、密告の奨励をしている様に観えるが、あくまでも公的機関に属する者達への、横領等の犯罪行為に対する抑制策であり、一定の温情も提示しているし又、パワハラや上役の罪に関して上告出来る事にして、中間管理職や一般役人を守る措置をとっている。


※不孝罪・・・端的にいうと、私的な犯罪=窃盗・殺人等を犯す事。


個人的な事件扱いなので、連座制が適用され難い。


「父母の罪を告発すれば死罪」というのは、親の罪は隠蔽しろと言う意味だけでなく、免罪させるべく努力しろと言う意味もある。


この時代は庶民でも大金を積めば、私的犯罪での死刑の場合は、回避する事が可能だったし、名家で有れば金銭を払うか、宮刑(きゅうけい)(男性器を切断する刑罰で、強制的に宦官に成る事)を選べば免れる事が出来た。(例:史記の著者・司馬遷)


※不道罪・・・端的にいうと、国家規模な犯罪=反乱・謀反等を犯す事。


即座に国家に仇なす反逆者に認定され、問答無用に一族(直系・近親者)~五族(姻戚・血族族滅)までが、連座させられる。


基本的に天下の大罪に成るので、先ずマトモに助かる事は殆どなく、史実で朝廷の混乱に依り、有耶無耶になった馬騰・韓遂は、例外中の例外。


因みに反逆者の最上位は「朝敵(ちょうてき)」だが、後漢代に於いてはっきり朝敵認定されたのは、ボ○ビーこと劉備ぐらいである。

(理由:漢王朝で最も神聖視されていた、漢高祖・劉邦が名乗った王名、漢中王(かんちゅうおう)=漢王を僭称(せんしょう)(勝手に名乗る事)したから)


それはさておき、


糜芳が発布した布告内容の過激さに、仰天した新太守・県令達は、こぞって質問というか詰問の使者を糜芳に送り、真意を尋ねてきたので、


「この様に布告を明文化して、貴君達がキチンと守っていれば、やがては州の法として確立され、中央から派遣されてきたアホ上司・部下共を、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だが、問題あるかな?」

明朗と答えた。


詰問して来た当初は、眉間に険の有る表情をしていたが、理由を聞いた途端、


「素晴らしい!流石にございます!」

「正しく金科玉条(きんかぎょくじょう)というべきですな!」

表情を一変させて、目をキラキラと輝かせる。


余程自分達の手で、中央のアホ共をクビ(物理)に出来る事が、嬉しかった様だ。


こうして公布した内容の裏を理解した、州・郡・県の役人達は、満場一致で賛成して遵守する事を、連判状に書いて誓ったのであった。


(ふぅ・・・これで空白だった郡・県のトップは、殆ど埋まったな良し良し)

涼州内の各郡・県から送られた、現状報告書と公布賛成の連判状を読んで頷く。


(う~んしかし・・・どこもかしこも韓遂達の粛清騒ぎで、純粋な人手不足が深刻化してんな)

殆どの郡・県からの報告書で、筆頭問題として挙げられている。


前述の通り全体の約半数が、悪吏・汚吏として処断されていて、労力が半減しているのだから、当然と言えば当然だった。


(労力半減だけでなく、ベテラン層がごっそり居ないから、作業効率・処理能力なんかは、半減処じゃねーだろなコレは)

涼州全体の事務処理能力が、大幅減になっているのは、想像に難くない。


現状の対応策として、残った文官の子弟を早期雇用する事で、マンパワーを確保をして、事務処理の対処を試みている様だが、効果は薄い模様。


(まぁ、右も左も判らん新人を、5人10人雇って仕事を任せても、ほぼミスや失敗をやらかして、却って効率が下がるだけだしなぁ・・・。

熟練者を1人か2人雇って任せた方が、間違いなく早くマトモな仕事するし・・・)

前世の職場経験上の、実体験を思い浮かべる。


例えばバケツリレ一の様な、よっぽどの単純作業でも無い限り、大概の職業・職場は、ズブの新人5人よりも熟練者1人の方が、当たり前に経験・技能的に処理が早く、優れている事が多い。


(早期雇用も将来的には、文官育成の観点では悪くないんだけど、現状欲しいのは、事務処理に長けた即戦力なんだよな~。

・・・かと言って文官以外で、1番熟達した即戦力になる筈の商人も、徐州と違って涼州では零細商人が殆どで、中堅・大手は長安か洛陽の支店ばっかりだから、スカウトに応じる筈もないし、応じてくれたらくれたで、ろくでもない事になるし・・・)

故郷・徐州との状況の違いに、頭を抱える。


徐州の場合は食糧を中心に、様々な商材を扱う商会が多く、各郡には糜家の様に1~2軒は大手商会があり、各県には幾つもの中堅規模の商会が有って、「寄り合い」と呼ばれる組合を形成していた。


反面涼州の場合は、シルクロードの交易商隊(キャラバン)をメインターゲットに、商売をしている商店・商会が殆どで、現代風に言えば観光業が主流であり、宿屋や飲食店等の個人営業が多かった。


そして中堅以上は、長安・洛陽に本店を持つ交易商の、交易品の先買いと安く買い付ける為の、専門店=支店・営業所が殆どであり、涼州に本店を持つ大店は極僅かで、仲買業(なかがいぎょう)(仲卸(なかおろし)とも。売買の仲介役を仕事とする業者で、この場合は交易商隊から交易品を買い付け、多数の小売り業者=行商等に交易品を売って、利ざや=中間マージンを得る業者を指す)をメインに中堅商会がちらほらといった感じである。


つまり、帳付け(帳簿記載)などの事務処理をキチンとしている商会と従業員が、徐州に比べて非常に少ない且つ貴重で有る為、即戦力として従業員をスカウトしたら即倒産して、貴重な現金税収入源の消失になってしまうのであった。


(所変われば事情も変わるって、父上も言ってたけどさ、難易度ハードモード過ぎひん?これ?)

徐州で容易な事が、涼州では難しい事に嘆く。


(各郡・県の文官達の、子弟早期雇用でも質量共に足りず、商人からの補充もままならず・・・か。

う~んう~ん・・・・・・あ、これならいけるか?ダメ元で頼んでみるか・・・)

ピカリと電球が脳裏に灯り、実行に写す糜芳。


「イー家令。」

「はい導師様。なんでございましょう?」

「済まないが、羅深(らみ)女中長(じょちゅうちょう)(女性使用人頭)を呼んで来てくれ。」

「は、承知しました。」

拱手して部屋を出るイー。


「旦那様・・・お召しにより参りました。」

暫くするとイーと共に30代中頃ぐらいで、中東系の血を引いているのか、若干地肌が濃くてで彫りの深い、整った容姿の女中長・羅深が入室してくる。


そして羅深が入室するや否や、


「ボソ(ド)、羅深さ~ん助けて~!?」

臆面もなくブルーカラーな猫型ロボットに、泣きつく某主人公の如く、情けない表情で羅深に拝み倒して縋り付く糜芳。


某主人公に匹敵する駄目っぷりである。


「えっ?えっと・・・いきなり言われても、何がなんだか解らないのですが・・・?」

当然の如く理解不能で、困惑する羅深であった。


~~只今説明中、暫くお待ちください~~


「・・・という訳なんだよ、ボソ(ド)羅深さん。」

「何か変な枕詞(まくらことば)つけてません?旦那様?

・・・とりあえず事情は理解しました。

つまり()()()()()()()()()である、私の力を借りたいと言われるのですね?導師様は。」

穏和な顔付きから、有能キャリアウーマンの如く、ビシッとした表情に変化する羅深。


(きょ)の姿は女性使用人のリーダー・女中長、実の姿は涼州に於ける、浮屠の裏組織・暗部のトップという肩書きを持っていた。


最初の出会いは、元々前漢陽郡太守が殺害された後、太守屋敷の使用人が逃げ散ってしまい、がらんどうな屋敷管理に頭を抱えていた糜芳に、イーがどこからともなく連れて来たのが羅深だった。


それから羅深経由でドンドン使用人が増え、州牧就任時に郡治所のある()県から、州治所がある隴県に移る際にも、淡々と一緒に付いて来た。


その為此処の居館に勤めている使用人は、全員が浮屠暗部の者であり、糜芳の為にガッチリと防衛網=結界が張られている。


それはさておき、


「そうなんだよ、ボソ(ド)羅深さん。

絶望的に人手不足の文官の補填を、浮屠暗部の人達にして貰えないかな~っと・・・。」

両手を合わせて「お願い」のポーズをするの○太。


「やっぱり変な枕詞言ってますよね?

確かに我々暗部は性質上、情報収集や伝達に通暁(つうぎょう)している、商人に表向き扮する事が多いので、読み書き算盤(さんばん)に長けた者も多く、文官としても通用する者が多数いますが・・・。

う~ん・・・ちょっと判断が難しいですね。」

チラッとイーを観る羅深。


「フム、導師様。

導師様の御提案に協力した場合、如何なる()が浮屠に有りましょうや?

又、我々暗部は、裏家業に身を置く者も少なからずおり、表に出るのは(いささ)か難が有りまする。」

伸びた顎髭(あごひげ)(いじ)りながら、糜芳に問い掛ける。


「今回の私の提案に乗って、()()()()()()()()()()協力してくれた場合、浮屠教の影響力が増して此処涼州は、余所で迫害を受けて逃げてきた者達の、安息の地になるだろうな。」

「!!・・・成る程。」

糜芳の発言にピクリと反応し、頷くイー。


現状の浮屠教(月氏(がっし))は、後に仏教と呼ばれ国教と成り同化した隋・唐時代と違って、伝来したばかりの黎明期(れいめいき)であり、浮屠教・月氏自体が他宗教・他民族に迫害されて、インド方面から中国に流れて来た様に、常に排斥(はいせき)のリスクを背負っていた。


現代では想像もつかないが、漢代の仏教は「まつろわぬ民」・「さすらいの民」と呼ばれた、ユダヤ人が信仰する、ユダヤ教に近かったのである。


それ故に共通点も多く、ユダヤ教徒が自身を守る自衛手段として、住居する地域の文字の読み書きや、哲学・算術などの多彩な学識を身に付け、学者・商人となって人脈・財貨を蓄えて、同胞とコミュニティーを形成し団結、地域の経済的な影響力を得て、定住権を手に入れた様に、浮屠教徒も似たような経緯を辿っていた。


その為今の浮屠教徒=暗部にとって、「安息の地」とは、喉から手が出る程の渇望であった。


「お前達の同胞が、各郡・県の文官として精励し、民衆に尽くせば尽くす程、()()()()()()()()()()()()、浮屠教に民衆も親しみを持って感化し、信者に成って益々安息の地になるやも知れんしなぁ。」

良いことだよねと微笑む。


「正しく、正しく左様ですな!」

目を爛々と輝かせて、真剣そのものな表情のイー。


「後、暗部の裏家業云々は大丈夫。

御仏は「悪人正機」を唱えていた()()()から。」

「「悪人正機?」」

微妙な予防線を張って、逃げ道を作る極悪人。


うろ覚えの前世知識で、「ブッタの本願は悪人救済であり、悪人を正道に戻す機会を与えるべし」、という都合のいいテキトーな教えを、ガチの信徒2人に話し、デーヴァダッタ(仏教版ユダ・背信者)も真っ青な発言をかます、真正のユダこと糜芳。


「おお!!おおぉぉ・・・なんと、なんと慈悲深いお方なのだ御仏は!!

我々の様な汚れた者達にまで、救いの手を差し伸べてくださるとは・・・ありがたやありがたや。」

「本当にそうですね。

私の信心は間違っていなかった・・・うう。」

間違いなく目の前に居る、悪徳州牧よりは確実に清い2人は、涙を流して御仏の慈悲の心に、手を合わせて五体投地(ごたいとうち)する。


「え、え~と、どうかな協力してくれるかな?

最も上手く行けばさ、「ガンダーラ」みたいな理想郷を、涼州に築けるかも・「ガンダーラ!?導師様それは如何なる理想郷ですかな!?」

ドン引きして、しどろもどろに説得に当たっていた糜芳の、「ガンダーラ」の単語に機敏に反応し、五体投地からガバッと起き上がって、途中で話を遮って問い詰めるイー。


「顔が近い近い!話すから、離れて!?

え~とガンダーラって言う地域が有って、其処には色んな民族・人種と、ヒンドゥ・浮屠とか色々な宗教が、混在して信仰されているんだけど、迫害もせず非難もせず、平和に仲良く皆が暮らしているんだってさ。」

有名な名前だしなぁと、補足説明する。


「なんとなんと!?

そんな理想郷が実在するとは・・・。

一体何処に在るのですかガンダーラは?」

「さぁ?行けた人は殆どいないぐらい、辺鄙(へんぴ)な所らしいから、分かんない。」

ブンブンと首を左右に振り、肩をすくめた。


「まぁ、それは置いといて。

どうかな(ド)羅深さん?協力お願い出来るかな?」

「お任せください導師様!!

我ら暗部総力を挙げて、ご協力致しますぞ!」

「え?ちょっ・・・ええ、イー家令の仰る通り、全面協力をお約束しますよ導師様。」

イーが先に答えたのを聞いた後、若干引きつった笑みで頷く羅深。


「では早速全国に居る浮屠暗部に、今の導師様のお話を知らせなければなりませぬので、これにて失礼致します!」

「あ!?総教区あー、イー家令!?・・・もう。

私も急いで情報伝達をせねばなりませんので、失礼しますね。」

弾丸の様に飛び出して行った、イーに憤慨しながら羅深も辞去する。


(ふぃ~・・・ミッションコンプリート。

これで文官の人手不足は、何とか解消の目処が立ちそうだな。

ど~せ2百年後ぐらいで、仏教が国教化すんだから、誤差の範囲だろ。

んな死後の世界よりも、現世が大事だよな。

とりあえず人事面では、こんなもんかいな、と)

両腕を伸ばして、う~んと唸る糜芳。


こうして深刻な文官の人手不足を、学識の高い浮屠教徒を充てる事で、目処を立てたのであった。


後日・・・イー達に依って、「安息の地、ガンダーラ計画」と、名付けられたこの一件は、前述の通り安息の地を渇望していた、全国の浮屠教徒・暗部から選抜された精鋭が、()()()()()で涼州に押し寄せ、漢陽郡総出で対処する羽目になるのであった。


                    続く


え~と、少しずつ月日が進行していく予定です。


毎度の遅筆については、申し訳ありません。


仕事をしながらコツコツ書いているので、この更新頻度が現状限界でして・・・。


何卒ご理解の程をお願いします。


楽しんで読んで頂けたら嬉しいです。


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― 新着の感想 ―
[一言] >其処には色んな民族・人種と、イスラム・ヒンドゥ・浮屠とか色々な宗教が、混在して信仰されているんだけど、 まてマテ待て……この時代にイスラム教は影も形もありません……この発言残ったりせんよな…
[一言] なんて劇薬を
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