その11
涼州漢陽郡隴県慰霊廟
(さぁ~てと・・・ボチボチ始めますかねっと)
民部・軍閥からの意見と議論の声が、徐々に途絶えがちになり、何となしに倦怠ムードが、漂い始めたのを契機に、しれっと策謀を開始する。
「・・・とりあえず、民部・軍閥共に意見は出尽くしたと見なし、是にて閉会と致す。
次は年末に行う予定でいるので、その積もりでいて欲しい・・・あ。」
うっかりとばかりに、ポンッと拳で手の平を打ち、
「そうそう、最後に今を時めく期待の新星、韓遂と馬騰に問いたい。
今回の会議は、貴君達から観てどうだったか?」
にこやかに軍閥の中でイケイケな、2つの時限爆弾に問い掛けた。
(さぁ~てどう答えるかな、お2人さん?
まぁ、オメー等の今の立ち位置を考えれば、自ずと答える内容は、予想出来るけどね~)
内心ニタリとほくそ笑む。
因みにだが、韓遂とは約3年前に、策謀でコテンパンにした因縁があり、恨み辛みを買っているのでは?と懸念し、コッソリ董卓に確認を取った所、
「あん?そがいなもん、気にせんでも大丈夫やて。
あん時の韓遂を撃破した事は、韓遂が知りようもないし、例え万一知っとっても、我がで我が(自分で自分)の恥を晒す事に成る事なんやけん、しゃっちに(わざわざ)表沙汰になんざ、せえへんわいや。」
気にせんでも大丈夫と、手を左右にひらひら振って、頭も左右に振る。
「う~ん・・・大丈夫ですかね?」
「あんなぁ糜芳殿、あん時のお前さんは、年は幾つやったんぞな?」
「え~と、11歳ですね。」
「助けて貰うた儂や皇甫嵩殿も大概やけんど、軍事経験皆無で11歳のお前さんに負けた、韓遂なんぞ赤っ恥もええとこやけん、間違っても我がからはなんちゃよう言わんわい。」
「あ、確かに、言われてみれば・・・。」
納得する糜芳。
「やけん(だから)、知っとっても知らんでも、韓遂はなんも出来やせんけん、気にせんでええ。
逆に言うたら、お前さんがバラせば角が立つし、要らん怨みを買うけん止めときよ?」
董卓に忠告されたので、
(それなら遠慮する必要はね~な。
サッサと型に嵌めて、安全確保すんべや)
そう決めて、会議に臨んだのであった。
それはさておき、
「は、州牧様、お見事な差配かと。
今の所は有りませぬ、今の所は。」
「某も同じく。」
韓遂が無表情で拱手し、含みの有る口調で答えると、馬騰も同調する。
「ふむ、今の所とは?」
「は、今は州牧様は、立派な政を成されようと頑張っておられます。
しかしながら口幅ったい事ですが、いつ何時、悪い意味で「君子豹変す」のか、不安と疑念がどうしても消えません。」
「その通り。
常に我々涼州民は、中央から派遣された刺史様を筆頭に、代々泣かされて来申した。
それ故に今迄の惨事が頭を過り、州牧様の事を斜に構えてしまうのでございまする。
平にご容赦を・・・。」
仄かに慇懃無礼な態度を示す。
ザワザワ・・・ひそひそ・・・
韓遂達の話を聴いて出席者達が、真っ当な差配を指示している、糜芳への期待感があっさり消え、上目遣いで様子を探る様な、疑心暗鬼に捕らわれた表情を浮かべ始めた。
(そうだよね、そうだよね~?
涼州民達の、怒り・不満の「代弁者」である君達なら、当然そう言って注意喚起を促すよね~?
うひひひ・・・予想通り掛かったわ、ありがとさん)
外面は渋面を浮かべつつ、内心では2人にディスられているにも関わらず、「我が意を得たり」と、三日月型の黒い笑みを浮かべる。
「なっ!?きさ・「まぁ待て龐徳。
成る程、貴君達は私が今は普通でも、何れは驕って今迄に涼州に赴任して来た、腐れ者と同類になるのを、危惧しているのだな?」
恩人たる糜芳への無礼に、怒りで気色ばんで剣の柄に手を掛けた、龐徳を手を上げて制し、2人に問い掛けた。
「「然りにございます。」」
「ふむ、成る程成る程・・・他の者も韓遂達と同意見なのかな?」
「「「「「・・・・・・・・・。」」」」」
出席者達が周囲を見渡し、沈黙を以て肯定する。
(ホイホイ、じゃあこうし~ましょ)
機は熟したと判断し、
「宜しい、では私の覚悟を観て貰おうか。
成公英!準備していたアレを持って参れ!!」
「はは!」
糜芳の指示に従い、スタスタと慰霊碑の裏に回ると、黒い鞘に入った2振りの剣を持ってきて、丁重な仕草で糜芳の机上に置く。
「さて・・・韓遂!馬騰!此方へ参れ!!」
「「???・・・は、はぁ・・・?」」
突然剣を取り出した事に、訝しげな表情をしながらも、糜芳に近寄り並び立つ。
「韓遂文約!」
「は、はは!?」
1振りの剣を掴み、韓遂の前に突き出して、
「貴君を只今を以て、内別駕従事に任じ、この「破邪の剣」を授ける!」
刺史・州牧に次ぐ役職の任命を言い渡した。
「は、はぁ・・・如何なる事でしょうや?」
「うむ、内別駕として貴君には、涼州内に於いて悪事を働き、州民を苦しめ仇なす、邪な者を討つ破邪の任務を与える!
無論、州牧たる私も例外ではなく、万一私が涼州民に仇なせば、遠慮なく私を討つべし!!」
押し付ける様に剣を渡す。
「へ?へぇぇぇぇぇぇ!?」
「次に、馬騰寿成!」
「ハイはハイ!?」
口をあんぐり開け奇声を発して、茫然自失としている韓遂を無視し、ドモリがちに返事する馬騰にも、同じく剣を突き出し、
「貴君には、外別駕従事に任じ、この「顕正の剣」を授ける!」
韓遂と同列の役職に任命する。
「外別駕として、虎視眈々と涼州を付け狙い、民を脅かす異民族達の対応を一任致す!
己の信ずる正義を顕すべし!
又、韓遂と同じく、貴君の正義に外れる行いを私が行った場合、貴君も遠慮なく私を討て!!」
「お、おお待ちをぉぉぉ!?」
授かった剣を持ちながら、完全にパニクってオロオロする馬騰。
シーン・・・・・・ドォォォォォ!?ガヤガヤ!
暫くの静寂の後、廟内が揺れんばかりの悲鳴の様な喚声と、多少のどよめきが上がる。
「オイオイオイ糜芳殿!?
何言うとんやお前さんは!?我がの言うた事理解しとるかオイ?」
「何言ってるって、聴いての通りですけど?
無論理解してますし、涼州民に少しでも私に対する、不安と疑念が晴れる様にしているだけですよ。」
「いや、だけですよって・・・。」
あっけらかんと言う糜芳に、絶句する董卓。
「「しょ、正気ですか閣下!?」」
「何を狼狽えて居るのだ2人共?
正気も正気、悪事・悪行をしなきゃ良いだけだろうに、しなきゃ。」
ビックリして詰め寄る龐徳と成公英に、手をひらひら上下させて、事も無げに言い放つ。
(しょ~もない小遣い稼ぎをする為に、怒り狂った殺マニア兵に追い掛けられる程の、リスクを背負ってまでやる理由が、全くないしなぁ~・・・。
それにそもそも銭を稼いでも、持って帰れねーし)
絶対に割に合わない、バカな行為と断定する。
「あ、そうそう皆の者、もし万一私が韓遂か馬騰に、前述した状況で討たれた場合は、正当な理由を以て行ったとして、不問に付す事を明言し、証文に記す事を今この場で誓う。
此処にいる全員が証人である。」
ざわめきが静まらない出席者達を前に、キチンと韓遂と馬騰2人の、生命・名誉を守る事を宣言する。
「・・・と言う訳でだ2人共。
どうだろうか、これなら貴君達の不安と疑念を、解消する事が出来たと思うのだが?」
「「はぁ、それはまぁそうですが・・・。」」
「宜しい、では2人共内外の別駕従事就任を、受けてくれるであろうな?」
「え~と・・・。」
「その~・・・。」
しどろもどろな返事を返す、韓遂と馬騰。
(まぁ、いきなり言われて、咄嗟の利害得失の計算が出来ずに、焦っているんだろうなぁご両人?
大丈夫だよ?絶対に断れない殺し文句を、ちゃんと言ってあげるからさ)
にちゃあと、悪どい笑みを浮かべて、
「はて貴君達?余所者の私でさえ、涼州民の為に命を懸けると言っているのに、貴君達は故郷と同郷民の為に、身命を賭して務める事は、出来ないと申すのか?まさか?」
先程の慇懃無礼の仕返しとばかりに、糜芳も慇懃無礼に返した。
「!?そ、そんな事は有りませぬ!
この韓文約、無辜の民衆の為、故郷の為に謹んで受けましょうぞ!」
「!?然り然り!この馬寿成も、我等が涼州と涼州民の為ならば、喜んで!」
「涼州と涼州民」という、キーワードを聞いた途端、弾かれたかの如く機敏に反応し、躊躇い気味から一転して了承する。
(そうだよね~君達は「涼州の為」に成る事を、公衆の面前で提示されたら、断れねーもんね~?
何せ2人共が、それを大義名分に立ててるから、今の自分達の立場があるんだからなぁ)
アタフタしている2人を眺めつつ、実状を理解している糜芳は、清々しい笑みを浮かべる。
何故「涼州の為」と言うキーワードが、殺し文句になるのかというと、2人は涼州に住む涼州民の希望・願望を具現化し、代弁する事=涼州の為にしているを大義名分に、今日の地位=軍閥のトップに成り上がっているからである。
彼等はたったの2~3年という短期間に、韓遂は下っ端役人・馬騰は下っ端軍人から、韓遂は半ば強引に反乱騒ぎに、巻き込まれつつ乱を起こし、馬騰は自ら同僚と語らって、直属の上司・刺史にクーデターを起こしてスタート、それから自分の軍閥を形成しているのである。
両人共ろくすっぽ背景力も無しに(一応、馬騰は前漢の名政治家・馬援の末裔という、結構ちゃんとした血筋は持っていたが、馬騰の代には完全に没落していた)スタートして、涼州軍閥内で董卓に次ぐ勢力を得たのは、偏に代弁者として涼州民からの、熱烈な支持があったからこそであった。
解り易く時代劇風に例えると、両者は反逆者の汚名を被ってまで、自分達のアホ共=中央名家・宦官に対する、晴らせぬ怨みを晴らしてくれた、必殺仕○人みたいなモノであり、中央から観たら只の反逆者だが、地元涼州では英雄視されているのである。
だからこそ韓遂が、反乱に参加した軍閥頭領を殺害し、軍閥を吸収して勢力拡大をしても、馬騰が地元軍閥を乗っ取っても問題視されなかったのは、「自分達の代弁者だから」という観点で、涼州民から受け入れられたからであった。
涼州民の熱烈な支持が有る為に、ある程度の勝手気ままが黙認され、短期間で自軍閥を形成出来た両者だが、反面それ故の「代弁者」として反する行為や、逸脱する行動が許されないという、どでかい欠点もあった。
糜芳が前述に言った様に、「俺は命懸けで、涼州の為に頑張るのに、お前達は協力してくれないの?」と言われ断ると、「余所者でさえ、涼州の為に尽くすと言っているのに、何故お前達はしないのか?」と疑念を持たれ→「結局は私利私欲の為に、反乱しただけかよ」と失望され→「そんな奴を、軍閥の頭領としては認められん!」と、涼州民の部下達の支持を失い、下剋上or軍閥崩壊に繋がる危険性が高い為、NOとは言えないのである。
韓遂達の最大の武器を、逆手にとって絶対拒否出来ない、最悪の凶器に変えた悪辣な策謀であった。
(まぁ、この策謀って韓遂達には超有効だけど、董卓には全く効かない代物だけどな。
とりあえず軍閥頭領っていう、半官半民企業(国家機関と民間企業が共同で出資して、経営している企業形態の事)みたいな、曖昧な立場から2人を、別駕従事という直属の部下にした事で、俺が直接韓遂達を断罪出来る首枷を付けれたな。
後は手枷足枷を嵌めていきますかね~?うひひひ)
脳内でゲスな笑い声を上げる、悪辣州牧・糜芳。
因みに、今回の策謀が韓遂達には効いて、董卓には効かない理由は、両者の軍閥形成の成り立ちに、明確な違いがあるからである。
日本風に例えると、涼州基準的に韓遂達は新興の戦国大名であり、董卓は歴とした、名門守護大名と言えば解り易いだろうか?
基本的に戦国大名は、国内(州内)の同僚(国人=豪族)や家臣(部下)の支持を得て、大名(上司)に下剋上を起こして、大名(頭領)に成り上がった者達であり、守護大名は元は地方豪族が、幕府から領地領有を認められて、何代にも渡って地域支配を世襲化し、強固な基盤を持っている者達であった。
つまり、パッと見はイケイケの中堅軍閥を形成して、勢いに乗る韓遂達の実態は、個人的な能力・カリスマ性に拠って、従っている同志兼部下達に支持され、彼等との利害の一致で、代表者として頭領に君臨している、上下関係が非常に曖昧で脆い、常に下剋上の危険性を孕んでいた、現段階では砂上軍閥の頭領だったのである。
なので、自分達のカリスマ性と支持を損ね、後ろ指を指されかねない糜芳の策謀に、問答無用で嵌まるしかなかったのであった。
しかし豪族出の董卓の場合は、累代に及ぶ強固な主従関係で形成されている軍閥なので、中身も同志・部下ではなく譜代化した家臣団であり、個人よりも主家に仕えている認識が強く、董卓(董家)の利害=家臣(部下)の利害とイコールになっており、幾ら涼州の為と銘打っても、董卓の利害に反した場合は相手にされないので、糜芳の策謀は、殆ど効果なしに成るのである。
そして、「断罪出来る首枷」というのは、地方軍閥は機能性を持たす為に、刺史・州牧等の地方行政府には、軍閥に干渉出来る権限が無く、朝廷に直接紐付いた半独立勢力であった。
なので例え韓遂達が抗争を起こしても、州牧である糜芳では、反乱でもない限り直接討伐が出来ず、朝廷の許可を得なければならなかったのである。
しかも討伐許可を得ても、黄巾賊討伐に失敗した際の董卓の様に、朝廷上層部に多額の袖の下を送って、討伐・懲罰自体を有耶無耶にする裏技も、韓遂達は出来てしまうので、しっかり手綱を締めるのは、困難極まりなかった。
しかし、今回2人が別駕従事就任という、行政府の属官になった事で、トップである糜芳に懲罰権(不正等罪科に対し、制裁を科す事が出来る権利)が発生する為、裏技という逃げ道を塞いで、きっちりと始末する事が可能になったのである。
それはさておき、
「おお!そうかそうか、引き受けてくれるのか!
流石は反逆者の汚名を被ってまで、涼州の為に尽くした、義に篤き両名なだけはある。」
絶対拒否出来ない様仕向けた癖に、鹿爪らしい(真面目ぶった)表情で、しれっと宣う腹黒男・糜芳。
「「・・・は、ありがたく・・・。」」
全く嬉しそうにない両名を尻目に、
「別駕従事としての給与は物資供与とは別に、キチンと払うから安心してくれ。
後は任務内容的に、隴県や漢陽郡に常駐する必要性は無いので、各々自身の担当区域で、活動してくれて結構だ。
それと両名に任務の伝令役を、2~3名ずつ行政府から派遣するので、宜しく使ってやってくれ。
龐徳、人選を頼む。」
伝令役=監視役という、足枷を嵌めに掛かる。
「はは、承知しました!」
「はい!?ちょっとお待ちを、糜芳州牧様!?」
素っ頓狂な声を上げて、韓遂が待ったをかけた。
「うん?どうかしたのか韓遂?」
「どうもこうも有りませぬ!
行政府は我等軍閥には、不干渉の決まりが有ります事はご存知の筈!
朝廷が定めた決まり=不干渉の不文律を、蔑ろに為されるお積もりか?」
「左様にございますぞ州牧様!?」
韓遂と馬騰が揃って、糜芳に食ってかかる。
「はい?貴君達は何を言っているのだ?
私は一言も貴君達の持つ軍閥に、干渉するなどと言っていないし、するつもりも無いぞ?
貴君達に委託した任務は、正式な公務なのだから、任務の進捗状況の確認や、緊急時の円滑な連絡を行う為に、貴君達に伝令役を派遣するのだが。」
何言ってんの?と首を傾げつつ、
「まさかと思うが貴君達は、別駕従事という立場と公務にも関わらず、此方は貴君達に公使(州所属の公式な使者)を立てるのに、其方は曲がりなりにも上司の私に対して、自身の私兵(使用人)を使者に立てる様な、非礼極まりない不作法をするつもりではないよな?」
違うよね?と目線で訴える。
「「・・・あ。」」
「し、失礼しました!確かに必要でした!」
「申し訳有りません!平にご容赦を・・・。」
離れた場所から公務のやり取りをするのに、自分達に適任の代理人=官職に就いている者(使者)が、居ない事を忘れて抗議してしまった事に赤面し、慌てて謝罪する2人。
(ハイ、コレで監視役と理解しつつも、問答無用で受け入れざるを得ない状況にしました。
足枷を嵌めるのを完了・・・う~ん一応念には念を入れとくかな)
両名に観えない足枷を嵌めつつ、
「後、公務だから州予算から資金を、貴君達に与えるつもりなんだが、貴君達の軍閥の主計(経理)と混同しても拙いのと、掛かる予算出費平均を把握しておきたいので、経理担当を数人派遣するので、併せて頼んだぞ。
コレも無論、貴君達軍閥とは不干渉だから。」
きっちり財布を管理して、水増し請求等の不正防止に務める事を宣言、ついでに万一不正をやらかした時には、韓遂達を処断する大義名分にするという、鉄球型の重しを足枷に付けていく。
「「は、はぁ・・・。」」
ジワジワとプレッシャーを感じるのか、首筋や手首をさすり始める2人。
「最後に韓遂よ。」
「はは、何でございましょう?」
「涼州内の悪行・悪逆を討てと命じたが、個人的な好悪や利害得失、無用な内戦を起こす様な、私利私欲に走った場合は、「要らぬ内憂を招いた、涼州の逆賊」として公布し、容赦なく処断するので、その覚悟で任務遂行する様に。」
「へ!?はい!?」
糜芳の話に唖然とする韓遂。
「そして馬騰!貴君もだ!」
「え?ハイ・・・。」
「涼州外の異民族対策を一任するが、度を超した付き合いで、涼州民に害が及ぶ利敵行為や、下らない内輪揉め等で外患を招いた場合は、貴君も韓遂同様に「売国奴」と公布して処断するので、その覚悟でいるように。」
「な、何故に其処まで・・・。」
兄貴分の韓遂と同様に、唖然とする。
「私は命懸けで今回臨んでいるし、常に貴君達に観られ、道を誤れば命を奪われる。
それなのに貴君達が誤っても、お咎め無しではおかしい話だろう?
貴君達が言い出した結果なのだから、尚更にな。
故に私同様、貴君達にも命を懸けて貰う!」
キッパリと両名に宣言し、ガッチリ手枷を嵌める。
(良し、首枷・足枷・手枷の3枷と、代弁者としての世評的に、雁字搦めに拘束する事に成功っと。
是にて「3枷と似非3竦みの計」成れり)
ニヤリとほくそ笑んだ。
この3枷の策謀に依り、州の官職に紐付けて、軍閥独自の逃げ道を潰し(首枷)、堂々と軍監を派遣して、両名の動向を監視でき(足枷)、トドメに涼州民を敵意を持たれずに、始末する事が可能になったのである(手枷)。
それにより糜芳・韓遂・馬騰の3者は、誰か1人が問題を起こせば、即座に残りの2人に攻撃されて、潰されてしまうという、3者共が下手な行動が出来ない、3竦み状態になったのであった。
しかも、韓遂・馬騰の両名が今回の糜芳のやり方に、不満を持って反乱を起こしても、今までの涼州の為の反乱と違い、完全に個人的な我が儘で、起こした勝手な私戦としか見なされずに、誰からも支持されず、ついでに糜芳が両名を討ち取れば、両名の財産を与える策謀、「国人一揆の計」を発動させれば、即部下達に寝首を掻かれるオマケ付きである。
・・・因みに何故似非が付くのかというと、実はパッと見は3者共命懸けに観えるが、涼州に勢力基盤を持つ韓遂・馬騰と違い、余所者の糜芳だけはバックレれる事が可能なのである。
つまり、問題が発生しても、韓遂達は逃げれずに公私共に死亡してアウトだが、糜芳は涼州から逃げれさえすればセーフという、極悪非道な策謀だった。
(まぁ、問題を起こす気はサラッサラ無いけどな。
万一やらかしても、董卓パイセンを見習って何進に、袖の下を渡しゃあ良いこったし。
それに比べてご両人、ご愁傷様だね~?うひひひ)
ものの見事に引っ掛かってくれた2人に、脳内で悪代官も真っ青な外道な笑みを浮かべる。
そして、どうにか枷から免れ様と必死に言い募る、韓遂達の言い訳を聞き流していると、
「・・・おい、韓遂・馬騰。
さっきからおどれ等は何をボケた事を、ブツブツぬかしとんじゃコラ?」
遂には董卓が憤る。
「「オ、オジキ!?」」
「馬騰、おどれが散々言いよった、異民族との融和策に糜芳殿が、銭出してくれるて言いよるんに(言っている事に)、何の文句を垂れよんじゃオイコラ?」
「そら有り難いこったですけんども!?
流石に処断は・・・売国奴も心外ですけん!」
怒れる魔王に、必死に反論する馬騰。
「アホかお前は?
糜芳殿は適度な距離感を保って、異民族と友好関係を作っていけと、言うとるんじゃろうが。
度が過ぎりゃあ異民族に舐められて、物資を要求されたりせびられたり、最悪は惰弱と観られて却って侵略を促す結果を、呼び込みかねんのやぞ?オノレの言いよる融和策ちゅうんわな・・・。」
馬騰に半分呆れ顔で話し始め、
「そがいな状況に成ったら、誰が観てもオノレのやった事は売国奴やろうがい。
きにせーへんでも、そん時にゃあ皆がオノレの首を取るちゅう事を、糜芳殿は言いよるだけやろが。
なんの文句が有るんぞなおどれは?
まさかやが、そがいな後先も考えんと、融和じゃのとほざいとんのとちゃうやろなぁ?おうコラ。」
ヤ~さんガンづけで睨み付ける。
「・・・・・・いえ、解っとりますわオジキ。」
「んならグダグダぬかすなやボケ。
大人しゅうケツ持って(責任を持って)、しゃんしゃん(キチンと)せーや。」
しゃんしゃんシメると、
「韓遂、おどれもじゃ。
オノレのやった事は、お上(朝廷)はいざ知らず、儂等涼州民にとっては英雄的行動やし、名を惜しまん立派な義挙やと、それは認める。
まぁ、儂もそれなりの骨折りはしたがな。
そやけん、オノレが同志やった辺章達を討って、軍閥を奪う様な仁義はずれをしても、なんちゃ咎め立てせーへんかった。」
「・・・・・・。」
韓遂にも諭し始めた。
因みに董卓が心情的に韓遂達を応援しつつも、韓遂達反乱軍に同調せず、敢えて官軍に味方したのは、涼州軍閥のドン・董卓まで反乱軍に加担すると、涼州全体が朝廷に反乱を起こしたと、勘違いされるというか洒落抜きで、本当になってしまう可能性が高かった為であった。
そして強力な危機感を抱いた朝廷に、本格的な大規模な討伐軍が前方から攻め寄せ、プラス略奪・侵攻の好機と観た後背からの、異民族の大軍との挟み撃ちになり、涼州が両者に蹂躙されて、壊滅的被害を被るのを避ける意図があった模様。
結果的に朝廷からは過小評価されて、黄巾賊や黒山賊程の、大規模な討伐軍が派遣されず、異民族も韓遂が引き込みはしたが、混乱に便乗した大規模な襲来はなかったのである。
「オノレがアホ共を始末してくれたお蔭で、確かに涼州全体が風通しがよー成った。
けどが同時に、涼州全体がボロボロに荒れ果てたんも、又事実なんやが。
今は膿みを出し切った後とツイ(同じ)で、手当てと養生をするんが肝要なんよ。
やけん現状のう、だーれちゃ要らん揉め事を、求めておらんのやがね。
オノレかて解っとろうもんやろ?」
「・・・はい、オジキ・・・要らんモンで、迷惑かけてスンマセンでした。」
頭を下げて謝罪する韓遂。
「韓遂、馬騰。」
「「へい、オジキ。」」
「儂も涼州三明(異民族討伐で著しい功績を挙げた、皇甫規・張奐・段熲の事。3者共に字に明が付いていた為、そう呼ばれた)のオジキ達から、跡を引き継いで筆頭格なった様に、涼州軍閥筆頭は実力が有るモンが伝統や。
儂の後は間違いのう、お前達の時代になるやろう。」
2人に自分の後継者と示唆して、
「それやのに、オノレ等がつまらん事で揉めたりなんぞしてみいな。
それこそ内憂外患になるだけやろが。
馬騰はオノレ自身が、融和を唱えるんやったら、先ずは身内からやろ。
韓遂も兄貴分として、広い度量を見せたらんかい。」
義兄弟の内訌に、苦言を呈した。
「尚且つ糜芳殿のお蔭でおどれは、3年前の戦で死なずに済んだんやけん、恩返しせんかいや。」
「はい!?今何て言うた?オジキ!?」
聞き捨てならないキーワードを聞いて、聞き返す。
「あん?やけんな、3年前のいくさぁもがぁ!?」
(ちょっとぉ!?何言っちゃってんの将軍!?
自分が言っちゃ駄目って、言ってたやんけ!?)
慌てて糜芳は董卓の口を塞ぎ、小声で説教した後、エヘヘと引きつった愛想笑いを、韓遂に向ける。
「・・・どういうこっちゃか、要らん御託(言い訳)はええですけん、ちゃっちゃ(サッサ)と吐いて貰いましょうか?」
糜芳の愛想笑いに、半眼で答える韓遂。
「すまん糜芳殿・・・え~となぁ、3年前に長安近郊で儂と皇甫嵩殿が組んで、お前さんと戦った事あるやんか?」
片手で拝む様に、糜芳に詫びを入れた後、後ろ手でポリポリ頭を掻きつつ、説明し始める。
「ええ、よ~に(しっかり)覚えとりますよ。
私にとって手も足もでえへんかった、人生最大級の惨敗でしたけん。」
苦い表情を浮かべた。
「あ~それなぁ・・・そのう実はバッタリ居合わせた糜芳殿の献策で、勝ったんだわ儂等。」
「は!?州牧様って徐州出身ですやん!?
東果ての徐州から西果ての涼州に、どないして来たんですかいなそれ!?」
「それがなぁ、あん時偶々援軍に来とった、孫堅が拉致って来たんやがな。」
「はい!?どういう事!?訳解らん!?」
ドンドン頓珍漢になる話の内容に、動揺してパニクる、三十路のおっちゃん=韓遂。
「え、え、ちゅう事は俺、州牧様の策謀に依って負けたっちゅう事ですか?」
「まぁ、そやな。」
「どの位から、州牧様が関わってたんです!?」
「え~となぁ、皇甫嵩殿が儂の軍を接収したぐらい、からかいな。」
「あ!急にいなげな動きを、オジキ達がし始めた時ですやんけ!」
混乱から立ち直り、董卓と糜芳に詰め寄る。
「じゃあいきなり、ドンドン引き込んだ異民族達が、撤退していったんは?」
「中堅処を狙い撃ちに買収して、そいつ等が他の領地狙ってるて、虚報をばら撒いた。」
「・・・○△のボケが俺を裏切ったんも?」
「ああ、糜芳殿が○△の様な奴が、裏切らすんに適任つうんで、半信半疑処かダメ元で話したら、ホンマに寝返ったわ。
マジで儂も腰抜かしたなぁ・・・あれには。」
シミジミと呟く魔王・董卓。
「あの~3年前っちゅう事は、今糜芳州牧様て幾つなんです?歳は?」
「今年で14歳に成ったけど?」
「・・・っちゅう事は、11歳の時ですか。」
馬騰が恐る恐る尋ねた質問に、スラスラ答える。
「え~と・・・勝っちゃってゴメンね?」
「ハ、ハハハ・・・俺、10歳過ぎの子供に、人生最大の惨敗を喫したんかや・・・ハハ・・・ハハ。」
両手を合掌して、軽やかに謝罪をする糜芳を観て、ガクリと崩れ落ち、魂が抜け出した様な呆けた表情で、虚ろな笑い声を上げる、涼州随一の知将・韓遂であった。
約1時間後・・・
涼州会議を閉会して解散としたが、「新任の別駕従事達と、話しが有る」と言って、韓遂・馬騰に居残って貰い、それとは別に董卓と成公英も、見届け人として居残って貰っていた。
「・・・それで州牧様、子供にも劣る猿知恵の俺に、何用でございましょうか?」
「遂義兄、そがいに卑屈にならんと・・・。」
ヤサグレ気味の義兄・韓遂に、まあまあとフォローする義弟・馬騰。
衝撃の事実を知り、魂魄が昇天していた韓遂だったが、馬騰の某元プロスポーツ選手の如き、太陽神ばりの熱き声援をうけて、反魂(魂を呼び戻す事)に成功、ヤサグレてはいたが無事復活していた。
「いや~馬騰の融和策が、採用される形に為っていて、貴君の強硬策が蔑ろに為っているから、ちょっとこう・・・面白くないかな~と思ってな。」
「そがいなモン、州牧様に負けたんに比べたら、鼻糞以下ですわ。」
涼州随一の知将が、子供に完膚なきまでに惨敗した、唯一の知将(笑)になったのに比べたらと、物憂げな表情で語る。
「ま、まぁそう言わずに。
そんな気落ちしている貴君の為に、貴君の強硬策も採用しようと思う。」
「「「「はぁ!?どういうこっちゃい!?」」」」
糜芳以外のメンバーが、奇声を上げた。
「いやいやいや!?糜芳殿!?
今の疲弊した涼州には、異民族討伐をする様な、余力なんぞないぞね!?ホンマに!」
「そりゃそうでしょう。
別段私も単純に「武力」を用いろとは、一言も言っていませんよ?
使うのは「謀力」ですよ謀力。」
頭をトントンと指で叩く。
「「「「謀力?」」」」
なんじゃそら?と首を傾げる。
「表向きは馬騰に融和策を推進させて、裏では韓遂が友好部族と敵対している部族に、武器の援助や飛語流言を行って仲違いを煽り、互いに相争う様仕向け、潰し合いをさせる事ですよ。」
二虎競食の計を提案する。
「はい!?州牧様、某の融和策に賛同してくれてたんではないのですか?」
「うん、当然賛同しているぞ?
但し、董卓将軍が仰っていた様に、一歩間違えれば我々の災いになる可能性も、危惧せざるえない。
其処で敵対関係の部族と抗争をさせる事で、凶刃をそちらにむけさせ、馬騰が友好的に援助してやれば、安全に友好関係を築けるだろう?」
ニタァと含みの有る笑みを浮かべる。
「しかし・・・それは・・・。」
「馬騰よ、個人的な友誼までは否定しない。
だが私が貴君の外交策を良しとした理由は、あくまでも涼州民に益が有るからだ。
今涼州は長年の傷を癒やす時期。
だからこそ貴君に一任したのであり、如何に共栄共存を謳っても、根底は国益=我らが漢帝国の繁栄・維持に繋がるからこそだ。」
「・・・・・・確かに、その通りでございます。」
はっきりと言い切り、馬騰も逡巡しつつ頷く。
「ふ~む、糜芳閣下。
閣下は涼州にも并州に有る、「南匈奴国」の類を造るお積もりですか?」
「まぁ、理想としてはだけどな。
涼州民に被害が及び難い、緩衝地帯が欲しいなと。」
成公英の問い掛けに頷く糜芳。
南匈奴国と言うのは、前漢の武帝以降に成立し、北部匈奴族から離反して帰順した、南部匈奴族が万里の長城がある并州内で、漢帝国の後援を得て建国した、亡命政権に等しい国家の事である。
元々匈奴族は、モンゴル地域と中国地域との境目にある、ゴビ砂漠を中心に、南北に分かれてバラバラに生活していた。
しかし漢高祖・劉邦の時代に、冒頓というカリスマ単宇(族長)が現れて、匈奴族を統一して劉邦をも破り有利な条件で和睦、和睦条件で有る漢から貢ぎ物を貰う約定を結んだ後も、冒頓以降代々貢ぎ物を貰っておきながら、平気で約定を何度となく破り、度々漢帝国に侵攻を繰り返していた。
匈奴族の約定破りと、度重なる侵攻にキレた武帝が、匈奴族討伐(北伐)を敢行、激しく争った。
一般的には漢の名将達、衛青や霍去病等の活躍により匈奴族との戦闘に大勝、漢帝国の威を畏れた南匈奴族が、降伏したとされている。
しかし実態は、漢帝国との長年の抗争プラス、北匈奴族の侵攻・略奪に堪えかね、「こんな状況なら、漢帝国に降伏した方がマシ」という切実な理由で、降伏の道を選んだのだった。
匈奴族の内部事情は、日本の戦国時代と酷似しており、同じ大名(単宇)に属していながらも、冒頓以降の単宇は越後の大名・上杉謙信の如く、内部統制が殆どとれずに豪族(部族)間抗争が常に絶えず、特に外敵(漢)と接していない北匈奴部族達は、しょっちゅう砂漠を越えて南匈奴部族の、領土と家畜等の財産を奪う為に、侵略を繰り返していた。
その為このままいけば、北匈奴部族達の盾にされて、漢軍との戦争に擦り潰されるか、北匈奴部族達に領土・財産を奪われて、奴隷落ちするかの地獄の2択に、迫られた南匈奴部族達は、躊躇なく漢に降伏・従属を選択したのであった。
因みに現在は、度重なる漢帝国の徴兵強要に拠る不満が爆発、クーデター騒ぎの内乱に依り、分裂状態になっているが。
それはさておき、
「ふむふむ、実際に異民族討伐を敢行してもーたら、途轍もない位の大勢の人と、大量の物資を消耗するけんど、州牧様の策謀やったら多少の物資を提供して、煽動したらええだけですけん、安上がりでこっちゃの人的被害は無いですのう。」
ヤサグレ気味から、元の理知的な表情と思考に戻り、顎に手を当てて分析をする韓遂。
「ああ、その通りだ韓遂。
この策謀なら貴君の提唱している、強硬策に沿ったモノだし、より知的なやり方だろう?」
「確かに左様ですわ。
では、この裏工作を俺にやれと言われるんで?」
「ああ、涼州民の安全の為にも是非とも頼みたい。」
コクリと頷き、裏工作を依頼する。
「はっきり言って、この謀略は知謀だけでなく、判断力に長けて地縁が深く、知名度も高い人材でないと、遂行自体がかなり困難な厄介な任務だ。
此処涼州に於いて、工作をこなせる適任者は韓遂、お前しか居ないのだ。」
ガチで適任者が韓遂しかいないので、かなりヨイショして、韓遂のプライドをくすぐっておく。
純粋な知謀で言えば、涼州随一の明智・賈詡さんだが、残念ながら現在は董卓配下の末端文官(参軍)に過ぎず、地縁=異民族上層部を仲介して貰える縁が無く、知名度=全くの無名で、周囲関係者・異民族からの信用度がゼロな為、不適格だった。
「・・・成る程、其処まで買ってくださるのなら、是非もありません。
喜んで州牧様の策謀を推進しましょうぞ。」
丁重語に戻り、拱手して快諾する韓遂。
「おお、やってくれるか!ありがたい!
一応表向きは、州内で破邪活動をしていると世間を欺きつつ、裏工作に専念してくれ。
そっちの方は、ウチの飛連隊がやっていくから。
後、馬騰との調整役兼裏工作の参謀役に、この成公英を抜擢するので、上手く使ってくれ。」
「宜しくお願いします。」
糜芳の紹介を受け、韓遂に挨拶をする。
「ふむ、その成公英を経由して、工作活動費の監査に派遣された、経理担当を伝って馬騰と密やかに、連絡のやり取りをせよと?」
「ご名答、その通りだ。馬騰も宜しく頼む。」
「「は、承知しました。」」
拱手して頷く。
(コレで表の懐柔工作に馬騰、裏の内訌工作に韓遂と、お互いに主張がぶつかる事なく、それぞれが自分の考え方でやれるから、史実と違って仲違いしねーだろう)
少なくとも俺がいる間はと、脳内で付け足し、
(董卓横死後の抗争中に、大概何らかのキッカケで、お互いが自分の主張だけで、表裏を1人でやるんじゃなくて、それぞれが分担してやった方が良いって、気付いたんだろうけどなぁ)
予測する糜芳。
韓遂と馬騰が抗争を繰り広げた後、ピタリと抗争を止めて和解したのは、世間的に見栄えのいい看板、融和策を掲げた馬騰が表を受け持ち、涼州軍閥筆頭になり、世間的に目立たない方がいい、強硬策の韓遂が裏を受け持ち、次席として暗躍する事で、お互いの意見が衝突せず、揉める理由がなくなったからでは?と、糜芳は予測していた。
史実として涼州は、義兄弟抗争和解後から、馬超の乱迄の間は、完全に無政府状態=漢帝国の後ろ盾が無かったにも関わらず、殆ど異民族の侵攻・略奪を受けていなかった。
「さて、韓遂・馬騰両別駕従事。」
「「はは!」」
「今回の策謀は、悪くても涼州民の被害が軽減し、良かったら被害そのものが無くなるという、大事な謀である。
予算も出来るだけ融通するから、宜しく頼むぞ。
正直言って、異民族の侵略や略奪を受けた民衆に、補填や補助として捻出するよりも、及ぶべくもなく遥かにマシなのだから。」
「「はは!お任せを!我らは涼州民の為に!!」」
拝礼して両名は請け負うのであった。
こうして糜芳は、内憂外患のタネを排除しつつ、涼州復興に勤しむのであった。
「ウンウン、流石は糜芳殿。
ホンマもんに知恵者やのう、大したもんや。」
(このクソオジキ、要らん事言いやがって。
絶対にいつか泣かしたる!)
他人事の様に呟く、董卓に仕返しを目論みながら。
続く




