その10
読んでくださっている皆様方へ
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おかげさまで登録数千件を越えました。
又、いいねと寛厳な感想と、ちょくちょくエスパーな感想も、誠にありがとうございます!
そして遅筆と、誤字脱字は申し訳ありません。
仕事が多忙で時間が取れず、執筆中に寝落ちしている事もしばしば・・・。
誤字脱字は、うっかりと語学力の乏しさで、しばしば・・・。
後、とある方から、方言についての感想を貰うたんですけんど・・・マジで正解ですわ、おうとりますけんね!
只、似て非なるなぁ、海向こうの本場の方言は、私全く解らんけん、こらえてくださいや。
知ったかで、安芸様の方言を使うたら、レッドヘル(赤い地獄の)軍団に、ブチ殺されるかもしれんけん・・・ブルブル。
まぁそれは置いといて、設定的に涼州と董卓は、仁義無き世界擬きを表現したかったので、ニュアンスだけでもと思い、敢えて方言を使いました。
解り辛かったら、申し訳ありません。
涼州漢陽郡隴県慰霊廟
「只今是より、涼州会議を始める。」
「「「「「ははぁ!」」」」」
糜芳の宣言を受けて一斉に拱手する、各郡・県と涼州軍閥の代表者・代理人達。
慰霊碑を背にした糜芳を最奥に、左右に成公英と龐徳を侍らせ、糜芳から見て左側に郡・県の代表者達が、郡から県の序列順に並んで座り、右側に涼州軍閥の代表者達が、盃の義理や勢力関係順に並んで座っている。
「先ずは此処にいらっしゃる、誇り高き英霊に拝礼の後、故郷・涼州の未来の発展と涼州民の為に、私利私欲を貪らず、好悪の私心無く、公私混同せず、誠心を以てこの会議に臨む事を、貴君自身が霊前に誓うべし!」
そう言って真っ先に拝礼し、慰霊廟に宣言する。
「「「「「ははぁ!我々は・・・。」」」」」
糜芳に倣って出席者も慰霊碑に拝礼し、各々異口同音に宣言した。
(ひ~ん・・・何でこんな事にいぃ・・・)
外面はキリッとしながら、内心で泣く糜芳。
188年6月に州牧に任命された糜芳は、とりあえず涼州の現状把握の為、先ずは各郡・県の代表者・代理人を、7月に召集したのだが、何故か軍閥達までも集まって来たのだった。
(まぁ、それはそれで良いんだけど・・・。
涼州の政治体制、もう無政府状態じゃねーかコレ)
代表者達から、ろくでもない涼州の現状を聞き、人知れず溜め息を吐く。
雍州が新設されて分割される前の、現在の涼州には12の郡と、各郡内に合わせて約90の県が存在しているのだが、郡太守は自分以外の現任では、地元出身の敦煌郡太守だけが生き残っており、他の10郡の太守は、逃亡兼行方知れず(ほぼ死亡)or誅殺の2択で居らず、代わりに郡官吏が代行している有り様であった。
又、各県の県令も半分近くは、太守達と同じ末路を辿っており、実質殆どの郡県で責任者不在という、スカスカの虫食い状態であった。
(な~にが郡県の人事権を与えるだよ!?
実際はただ単に実態が把握出来てねぇから、俺に丸投げしてるだけじゃねーかボケェ!!)
頭を抱えて、罵詈雑言と呪詛を脳内で唱える。
(と、とりあえず確か後一年ぐらいしたら、白アン○ンマンがポックリ逝く筈だから、そん時までの辛抱じゃい。
なんとかそれまで、生き延びれる様にしないと・・・チクショーもうやだ!お家に帰るぅ~)
リアル生存ゲームの鬼畜難易度に嫌気が差し、ブンブン頭を振って、脳内で幼児退行する糜芳。
糜芳の目論見として最善は、霊帝崩御時に喪に服すと称して退任、円満退職で徐州に帰還。
次善は最短で部下達の、不始末・不祥事の責任をひっ被って辞任、実態を知る涼州民からは惜しまれて、知らない人達の心証は多少悪くなるが、結果良ければまあ良し。
三善は何進横死後に、政情確認の為洛陽に行くと見せ掛けて、ドサクサに紛れて逃亡、そのまま涼州帰還不能と適当に言い訳して、しれっと御役目返上して徐州に帰る。
最終手段は董卓暗殺後に、王允達の誅殺回避の為と銘打ちつつ、浮屠暗部の手引きに依って、密かに涼州脱出を実行→帰還の、4つのルートを考案し、何れかで逃げれる様に、お金を払って暗部に下準備を依頼していた。
(けどなぁ・・・最善は最も安パイだけども、何進に霊帝の遺勅とか言われて、慰留されそうで、円満退職出来る成功率が、かなり低そうなんだよなぁ。
次善以降は、円満退職出来る確率は上がるけど、反面危険性も上がるリスクがあるしなぁ)
最善は無理そうだよなぁと、脳内思考する。
(どっちみち俺は曹操が徐州侵攻まで・・・いや、曹嵩の親父さんが殺される前に、帰らないと・・・)
恩義には恩義で返す主義なので、最終手段でもギリギリ帰還出来る様に、算段をつけていた。
それはさておき、
「・・・お~い?聞こえとんのか、お~い?」
「はっ!?」
脳内思考から気が付くと、強面のヤ~さん面が糜芳の顔の前で、手の平をブンブン左右に振っている。
「おい、どがいしたんや(どうしたんだ)州牧殿?
大丈夫か?しゃんしゃん(しっかり)せいよ。」
涼州軍閥と州内随一の顔役で、オブザーバーとして会議に出席して貰っている、ヤ~さん面こと董卓が、心配気に糜芳を見つめる。
「あ、いやこれは失礼。
涼州の余りの惨憺たる有り様に、つい茫然自失になってしまいました。」
ぺこりと謝罪した後、やおら憤怒の表情を浮かべ、
「おのれ~!此処まで痴政を敷いていたとは!
八徳(仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌)処か恥すら忘れた、人面獣心(人でなし)の輩共が!!」
ダァァン!と机を強く叩き、激しく罵る。
(そんな人でなしの、忘八者(江戸時代の遊廓で働いていた、男性従業員の通称。八徳の忠以外と、恥を忘れた職業と謂われた。つまりは忠を持っているだけマシ)にも劣るアホ共の尻拭いを、失敗ら誅殺されるリスク背負ってまで、なんで俺がしなきゃなんねーんだよ!?ざけんな!)
理不尽な状況に、溢れる涙が止まらない。
今現在なら間違いなく、後に中央で権力を握った董卓に依る、名家・宦官の両アホ共大量虐殺行為に、心底理解した上で率先して協力するのに、全く躊躇いを感じないのであった。
まぁ、糜芳の十倍以上に、アホ共を始末したいと思っているのは、間違いなく何進だろうが。
「・・・お前さんたまげるぐらい、ホンマにええやっちゃ(好人物)なぁ。
儂等涼州民の惨状を聞いて、泣いてくれるんか。」
糜芳の涙を勘違いした董卓が、「ありがたいこっちゃ」と、感心しきりに頷いている。
観れば董卓と同じように勘違いして、何人かの人が鼻を啜っていた。
「あ、度々済まない、話を進めて行こう。
先ずは敦煌郡太守・費戴。」
「はは!」
30~40代ぐらいの、官吏というより商会の会頭然とした、武骨というか質素な装いの多い会議出席者の中で、派手な衣装を纏った男に声を掛ける。
「貴君をそのまま、敦煌郡太守に留任と致す。」
「はは!・・・しかし州牧様、私で宜しいので?」
拱手しつつ周りを見渡し、訝しげに糜芳に尋ねる。
実はこの費戴、結構奢侈な生活をしており、余所に根拠地に持つ軍閥や、他郡の官吏からの評判があまり良くなく、漢陽郡でも留任を忌避する意見もあった。しかし、
「貴君自身が進退を問うのは、自覚を持って敢えてしているのだろう?
「襤褸(ボロ)に身を装おえど、心は錦」の質実剛健も良かろうが、我らが漢帝国の国門(玄関口)である敦煌郡の太守が、襤褸を纏っていては、国家の恥を国外に晒す事になる。
国家の見栄や面子を保つ為には、貴君の行いは必要な仕儀と私は観ている。」
費戴の行いに理解を示した上で、
「それに貴君が治める敦煌郡は、涼州随一の財源地でありながら、税率は他郡とあまり変わらず、郡民に他郡以上の重税を課さずに、奢侈な生活を送っているのは、貴君自身が蓄財に走らず、収入の全てを国家と郡民の為に使っているからだろう?
誠に天晴れな心意気である。」
素晴らしいと褒め称えた。
「なぁ、糜芳殿。どういうこっちゃいな?」
「どういう事って董卓将軍、費戴の装いについては理解していますよね?」
一応の確認をとる。
「それついては理解した。
言われて観りゃあ、確かに敦煌郡ちゅうのは、交易と国交の玄関口、漢帝国最大の交易品の荷駄場(集積地)と、最初の諸外国との外交窓口所や。
色んな国から交易商人が、がいいと(結構)来るし、外交使節も大概敦煌郡を経由して、洛陽に向かう。
そがいな(そんな)諸外国の耳目を真っ先に集める、漢の最初の顔役・敦煌郡の管理官が、びんだれな(だらしない・貧乏臭い)格好は出来せんわな。」
そりゃそうやと頷いて、納得顔の董卓。
「董卓将軍の仰る通り、敦煌郡の太守は政務官と共に、外交官としての側面を有している。
つまりは費戴の派手な服装は、贅沢でしているのではなく、寧ろ必要不可欠として着ている訳である。」
あくまで、外交上の理由であると皆に説明する。
他の面々もなる程、それなら確かにと頷いている。
後漢時代の主な北方交易路、「陸のシルクロード」は大きく2つルートがあり、司隷・洛陽or長安から涼州・敦煌付近で分岐し、1つ目は砂漠を避けつつ北上して、モンゴル側からのステップを経由、中央アジア→ペルシャ方面に向かうステップルート。
2つ目はタクラマカン砂漠をなぞる様に南下して、かの有名なワンマンア一ミ一・乱暴参が活躍されたアフガンを経由して、インドやペルシャ方面に向かう砂漠ルートである。
その為涼州・敦煌郡は、2つのルートと国内の流通路が交わって、国内外の様々な物品・交易品が集中する、漢帝国でも有数の国際貿易都市となっており、色々な国々から人が集まっていた。
後一応、涼州からチベット地域を経由して、インド方面に直通するチベットルートもあったが、険しいエベレスト山系を縫うように移動する為、上記の2ルート程の需要はなかった模様。
(日本の江戸時代風に例えれば、北に北陸道、南に東海道が走り、自国に中山道が走っている、美濃の国(現・岐阜県)に近いだろうか?)
因みにだが、涼州からの北方交易路と対照に、交州・交趾郡からの南方交易路、「海のシルクロード」も存在し、交趾→ベトナム・トンカン湾を経由、カンボジア・タイからインド洋を経て、インド→ペルシャ湾・紅海のペルシャ・エジプト方面に出る、近洋航海(陸地に沿って船を運行する航海術)路ルートも存在しており、北方交易とは毛色の違う、海路ならではの交易品(珊瑚・真珠等)が特徴だった。
ただまぁ、航海・造船技術がこの時代は未発達(遠洋航海は困難だった)で、天候不順(台風・嵐等)に拠る難破率も高く、かなり不安定であり又、交州から司隷方面迄の移動も、ほぼ中国大陸縦断になる為遠く、後漢の首都圏(長安・洛陽)での流通量は、陸のシルクロードに比べると少なかった模様。
それはさておき、
「やけどが(だけど)、費戴太守が奢侈な生活をするのは、外交上の必要性とは別モンやろがい?
なんでお前さんが褒め称えたんかが、儂にはいよいよ(さっぱり)解らんのじゃ。」
首を傾げて尋ねる。
大半の出席者も、「そうやそうや、何でや」と董卓に同調している。
「え~とですね、彼が奢侈な生活を送る中で、何処ぞのアホ共と違って、重税を課して搾り取ったり、不当に略奪していないのは解りますよね?」
「ああ、糜芳殿の話を聴いた限りでは。」
「つまり、敦煌の郡民達は何の不利益も被っておらず、利益だけを得ているんですよ。」
「利益?どんな事をや?」
頭上に疑問符を浮かべて聞き返した。
「間違いなく1番は、「雇用の創出」ですね。」
「雇用の創出?」
「ええ、費戴が奢侈=多額の金銭を消費する事で、色んな商売の売り上げに貢献しています。
それにより、商売繁盛→経済活動の活発化→利益を得てより増益を計画→各商品・商材の増産拡大=新規雇用の需要増大に繋がり、戦災で生活手段を失った人々の、間接的な救済策になっているんです。」
董卓だけでなく、周囲にも分かり易く説明する。
「ふ~む、商人は儲かれば儲かった分、手ぇ広げようとするもんやけん、商人から発注を受けて飯喰っとる関連業者も、どんどん新規雇用する様になって、結果異民族に生活手段を奪われた者達の、救済になっとるっちゅう事か・・・。」
腕を組んで唸る。
「それに公的な雇用に加えて、私的にも雇用が拡大しますから、尚更良しですしね~。」
「私的な雇用?」
未だなんか有るんかいなと、首を傾げる。
「ええ、懐が潤えば大概の人は、色々と購入して消費したり、大きい家を買ったり建てたりして、自身の見栄えを良くしようとするものです。」
「ふむふむ。」
「そうなれば自然と、使用人等の必要性が増し、戦災で未亡人になった婦女や、母子にも生活手段獲得の機会が増えますので。」
私的な利益の実例を上げる。
「なる程のう・・・大人の男だけやのうて、女子供にも恩恵がちゃんと有るんかや。」
「そう言う事です董卓将軍。
その辺が奢侈な生活を送って観えつつ、民衆を豊かにしている費戴と、民衆を顧みずに搾取して苦しめつつ、奢侈な生活を送っているだけの、アホ共との大きな差です。
又、そんな人物だからこそ、地元出身の県令・郡太守でさえ誅殺される中で、郡民・地元軍閥・部下達に支持を受けて、当然の如く生き残った訳です。」
費戴とアホ共との、明確な差を示す糜芳。
糜芳の言を受けて、「正しく州牧様の仰る通り!」と軍閥席の後方から、敦煌郡の軍閥と思しき者達や、郡内の県代表者達等、複数の賛同の声が上がる。
(いや~ホンマに真っ当な且つ、優秀な人材が居て助かったわ~。
少なくとも敦煌郡は、費戴に丸投げ出来るし。
まぁ、一応は浮屠暗部の監視は付けるけど)
内心で思わぬ逸材に喜ぶ。
唯一残った太守だった為、暗部に調査を依頼した結果、残って当然の実績と人格者だったのであった。
(身内や親族に財産を分け与えて、余財無しってゆう清廉紛いな人物よりも、全財産を叩いて景気・経済を活発化させて、数多くの民衆の生活を豊かにする方が、よっぽど賢くて清廉だよな)
凡百の胡散臭い、清廉アピールしている人物よりも、数十倍は上手い費戴のやり方に感心する。
糜芳的には前世から、三国志の人物伝にちょいちょい書かれている、「財産を私せず、殆どを身内・親族等に分け与え、自家に余財無し」等と書かれた人物の、清廉アピールの記述に、非常に懐疑的な考えを持っていた。
(いやコレって現代で言えば、自分の財産の名義を、名義上は身内・親族に変更しただけで、一族単位で財産を保持・分散して、結局は裏でプールしているのと、同じなんじゃねーの?
大体本人が一族の当主だから、最悪幾らでも分け与えた財産を、当主権限で回収可能だろうし)
疑問に思いつつ、
(要するに自分は財無しの清廉です、けど親族周りは自分のあげた財産で皆お金持ち、いざとなったら金の入った引き出しは、幾らでもあるので困りませんってこったろ?
・・・それで清廉って言われても、何処が?としか思えねーんだよなぁ)
寝言は寝て言えやと、言いたくなるのであった。
現代社会で例えれば、会社の経営者や資産家=金持ちが、自身の財産を嫁さんや子供の名義を使って分散して裏金としてプールし、非常時のリスク軽減・回避をして、実態は余裕綽々の癖に表面上、
「余裕なんて無い無い、食っていくので精一杯。」
如何にもそうでございと周囲に見せかけて、バレバレな戯言をほざいている、一般ピーポーが見聞きすれば、リアルライトニ○グボルトを放つのは必至な、あからさまなスカした輩共とどう違うのか、真剣に理解出来ない糜芳であった。
(まぁ、そんな清廉擬きと違って、私財を市場にばら撒いて、経済を活発化させて豊かにする事で、結果的に敦煌郡の税収が上がるんだからなぁ。
「税を取る前に先ず与えよ」っつう管仲の経済理念を、地で実行している訳だ。
・・・よし、費戴のやり方をトレースしよう。
ど~せ涼州から出る時は、ろくすっぽ財産なんぞ持ち出せねーんだから、パーッと使っちまおう)
費戴の管仲式経済理念を、ちゃっかり丸パクリする気満々であった。
立つ鳥跡を濁さずというより、身の安全の為に悪行をしたりして濁せないので、景気良く給料を使い込もうという保身的な考えを、清廉(裏は真っ黒)でコ一ティングする気な男・糜芳。
「ほうか(そうか)、ほうやったんかや・・・。
費戴太守、誠に申し訳ない。
儂は貴殿の事を、よー(本当)に誤解しとったわ。」
糜芳の話を聞いて、深刻な認識違いをしていたのを知った董卓は、費戴に向けて拱手しつつ謝罪する。
「いえいえとんでもない!お気になさらず!?
私が勝手にやっているだけの事ですから!」
手を左右にブンブン振って、アタフタする費戴。
「董卓将軍、どうかその辺で・・・。
費戴の立場が、悪く成りかねませんので。」
「ほういやほうやな(そう言われればそうだな)。」
やんわりと董卓に、「下手に頭を下げ過ぎると、貴方の子分・兄弟分が、親分・兄弟分の面子を潰して辱めたと、費戴に敵意を持ちかねない」から、止めるよう諭す。
「さて、改めて諸君等に問うが、費戴の太守留任に異論を唱える者は居るか?」
「「「「「いえ、ありませぬ。」」」」」
「宜しい・・・と言う訳で費戴、涼州の為に敦煌郡の事を宜しく頼んだぞ。」
「はは!州牧様のご期待に添える様、粉骨砕身務める所存にございまする。」
笑顔で拱手して了承する。
「次に敦煌郡内の県代表者達に告ぐ。」
「「「「「はは!」」」」」
「敦煌郡は費戴に一任するので、県令が居ない県は、費戴に選任して貰う様に。
そして県令が居る所は、費戴と同じく留任とする。」
「「「「「はは!承知しました!」」」」」
一斉に頷く。
「次に郡太守と県令が居ない、県代表者達に告ぐ。」
「「「「「はは!」」」」」
「貴君達は一刻も早く自身達の代表者を、自身達で選んで決める様に。」
「え?私達で決めるのですか!?」
代表者の1人が、素っ頓狂な声を上げた。
「ああ、そうだ。
漢陽郡は私が兼任しているから、私の方でどうにか選任するが、余所の郡に関しては現状手が回らんし、ハッキリ言って私自身が余所者であるので、誰彼の良し悪しの判断が付かない。
故に県になれば尚の事である。
依って実情を知る県役場全員で、自分達の代表者を決めて欲しいのだ。」
「はぁ、仰る事は解りますが・・・。
具体的にどのように決めれば良いのでしょうか?」
一定の理解を示しつつも、困惑気味に問い掛ける。
「基本的には話し合いで決定、候補者が多数居る場合は、入れ札(投票)で決定するべし。」
「入れ札ですか?」
「ああ、1番支持数が多い者を県令とせよ。
最も支持数が多い事は即ち、その者が1番人望と能力が有る証左であろう?」
「確かに左様ですね、承知しました。
話し合いで決まらない場合は、入れ札を行います。」
「「「「承知しました!」」」」
県令の居ない、県の代表者達が頷く。
「宜しく頼む・・・では次!
漢陽郡・敦煌郡以外の、現任の県令は留任とする。」
「「「「はは!承知しました!」」」」
「漢陽郡は例外でございますか?」
「いや、例外云々の問題ではなく、そもそも県令すら生き残っていないんだよ・・・はぁ。」
溜め息を吐いて、ガックリとうなだれる。
元々漢陽郡自体が、涼州の行政府の中心であり又、首都圏の司隷(洛陽)に近い為に、刺史・太守・県令全員漏れなく、悉くアホ共が着任しており、当然の如く韓遂達反乱軍に粛清されていた。
「費戴に郡内の県令を選任させるのに、言い出しっぺの私がしない訳にはいくまい。」
「はぁ、まぁ確かに・・・。」
「ああ、それとそれぞれの郡内で、各自県令が決まり次第、今度は県令達同士で話し合い、協力して郡太守を選出する様にな。」
県令選出と同じく、地元民に丸投げをする。
「理由は県令選出と同じだな。」
「はぁ、解りました。
もし話し合いで郡太守が決まらない場合は、県令選出と同じく、入れ札で決定で宜しいので?」
「いや、それだと太守選出の場合は、どうしても大きい県の県令が、絶対に選ばれる仕組みになるから、不平等過ぎる事になってしまうので駄目だ。」
首を左右に振って否定する。
「確かに・・・では如何様にしましょうや?」
「太守選出が決まらない場合は、地元軍閥の推薦で決める事とする。」
「「「「「へ?俺らが決めんのかいな?」」」」」
突然話を振られた軍閥達が、自分達を指差して、何でやと首を傾げる。
「あの~俺らは政なんぞ、いよいよ(からっきし)解らんのですけんど?」
「だからこそだ。
貴君達軍閥、言わば軍部視点から観て、誰が郡太守になった方が、自分達軍部にとって良いかで、判断をして欲しいのだ。」
首を傾げている軍閥達に、理由を説明をする。
「はぁ、俺ら軍閥視点でですかいな・・・?」
「ああ、民部の方は、県役人や県民から支持を受けて、県令に選出されたり、現任でやっている訳だ。
つまりは民意に沿って、代表者に選出されているって事である。
それに加えて、軍部の支持も受けれれば、軍民が一致して推戴した立派な郡太守が、貴君達の地元の郡に擁立される訳だ。」
「「「「「あ!なる程確かに!?」」」」」
糜芳の話に、拳を手の平でポンッと叩いて、理解する軍民部の代表者達。
「貴君達、現状中央からのアホ共や、地元出身の悪吏・汚吏達はとある事情で排除されており、今が涼州復興と発展を行い又、自分達の民意に沿った郡県の代表者を選べる、最大の好機でもある。
世に言う「窮地は好機」と捉えて、奮起してくれる事を願う。」
「「「「「ははあ!承知しました!お任せを!」」」」」
糜芳の演説を受けて、軍民一斉に拱手する。
こうして郡・県の新しい代表者を、自分達で決める様指示を出し、大まかな目処を立てた糜芳は、次にアホ共が遺した負の遺産である、不当な税制を州一帯で即時廃止を決定。
そして税制の一部を改正し、間もなく開設する施療院の維持費と、民部・軍閥達本人及び直系家族が、ほぼ無償で診察・治療を受けれる様、医療保険費に充てる事を提案、コレも即時了承された。
両方に利益のある提案を掲げ、害になる事=アホ共と敵対関係に成る事に、躊躇せず取り除いた糜芳に、軍閥・民部両方から賞賛の声が上がったのであった。
「さて、民事の方は粗方終わったかな?
では次に軍事的な話に移ろうと思う。」
「「「「「はは!」」」」」
今度は軍閥連中が、拱手して声を上げる。
「まぁと言っても貴君達は、今まで通り異民族対策に、精を出してくれれば良いのだがな。
一応浮いた税収で、貴君達に渡す必要物資の補給量を、少しは増やす事は出来ると思うが、あまり期待しないでいて欲しい。
浮いた税収の殆どは、アホ共の搾取で疲弊し尽くした、涼州民の手当てに当てる積もりだ。
苦しい台所事情だとは思うが、どうか民衆の為に協力をお願いしたい。」
ペコリと深々と頭を下げる。
「ああ、気にせんでええ、気にせんでええよ。
儂等軍閥ちゅうんもんはな、民衆の生活が有ってこそのもんやけん。
民衆の生活が成り立たんなったら、儂等も終いや。
今までやんちゃい(ろくでもない)アホ共に、散々っぱら難儀(迷惑)掛けられても、どうにかこうにか遣り繰りして来てるんやけん、どうって事ないわい。」
手を左右に振りながら、董卓が真っ先に返事して、
「それに民衆の懐が豊かになりゃあ、儂等の懐も豊かに成るんやけん、後先考えりゃあ儂等にも利益になる話やけんなぁ、おどれらもそう思うやろ?」
笑顔で同意を求めるゴッドファーザー・董卓。
「「「「「ヘイ!その通りですわオヤッさん!」」」」」
若干引きつった笑みで、総同意する軍閥連中。
(・・・うん、凄く良いこと言っている筈なのに、董卓が軍閥関連の話をすると、不思議と只のヤーさんのシノギの話にしか聞こえないのは、何でなんだろうか?・・・解らん)
董卓のセリフが、どうしてもノ一仁義ワールド用語に、自動変換されてしまう糜芳であった。
「貴君達の賛同、非常にありがたく。
まぁ董卓将軍の言う通り、民衆が疲弊から回復して豊かになれば、貴君達にもちゃんと恩恵があるので、それまでは辛抱して欲しい。」
「「「「「はは!承知しました!」」」」」
董卓の時みたく仁義な返事ではなく、普通に返す。
「あ、そうだ、それと貴君達軍閥はそのままだが、州軍は軍の運用方法に、大きな変更点が有るので、この場で周知しておきたい。」
「州軍の運用?どがいしたんや?」
董卓が首を傾げる。
「はい、今まで各郡にそれぞれ分散させて、配置していた騎兵隊約3千を一括統合し、州牧直轄の治安維持部隊として再編成し、運用する事にしまして。」
「・・・ほう、治安維持部隊・・・のう。」
顎に手を添えて、測る様に糜芳を見つめる。
「その治安維持部隊とやらの指揮官は誰や?
そして儂等軍閥との(上下)関係は、どがいになるんじゃ(どうなるんだ)?」
「正式名称は「飛連隊」と名付け、指揮官は飛連校尉として、此処にいる龐徳が務めます。
軍閥との関係性は、基本的には軍閥が上位です。
又、飛連隊は州内に蔓延る流賊(異民族出身で部族から離れた、はぐれ者の盗賊集団)討伐が主任務になるので、軍閥が主任務としている異民族討伐・撃退には、軍監(戦場に於ける監視兼功罪の記録係)や、増援として参加するぐらいですね。」
大まかな運用説明をする。
「州牧様より、飛連隊の指揮官を拝命しました龐徳と申します。
若輩者の身ではありますが、どうかお見知りおきくださいます様・・・。」
糜芳の説明の中で紹介され、バシッと拱手しつつ出席者達に一礼する。
「ほう、中々の偉丈夫やが随分若いのう。
よう他のモンが納得したもんやな。」
「まぁ、実力を示して納得させましたから。」
物理的に纏め上げたと話す糜芳。
此処涼州は、実力(物理)さえあれば「力こそ正義」という、あ~たたたな何処ぞの殉星を持つ男と同じ思想というか、思考がスタンダードな世紀末社会なので、年功序列関係なく上に立てれるといった、非常~に数少ない利点があった。
「ほうほう、見た目にそぐわずやるもんやのう。
ほいでまぁ軍監は軍閥同士が、異民族討伐の功で揉めた時にゃあ、居った方がええ時もあるけん、悪くはないわな。
そいで増援に関しては素直に助かるわ。
ほやけんどがなぁ(だからと言ってな)・・・。」
言葉を切って糜芳に目線を向け、
「流賊討伐は儂等軍閥もやっとるけん、要らん事いろわんで(触らないで)くれるか?
どうしても言うんやったら、儂も考えにゃあならん成るんじゃが?」
厳しい視線を送る。
軍閥連中も董卓と同じく、厳しい視線を糜芳に向け、仄かに殺意が見え隠れしていた。
「あの~飛連隊の治安維持と言うのは、涼州内の県市町村に略奪や襲撃をする、流賊を討伐して涼州民の安全と、生活の安定化を図るモノですので、董卓将軍が懸念している、交易商隊とかに関しては、そもそも任務外なんですけども・・・。」
勘違いしてない?と、ポリポリ頬を掻く糜芳。
実は涼州軍閥連中にとって、流賊の絶滅は死活問題になる、非常に困る事であった。
コレは涼州に限った事では無いが、なにせ朝廷から送られる物資は、アホ共が物資輸送の過程で、片っ端から中抜きや横領をしまくって、軍閥連中に渡る頃には、微々たる物であった。
何進の登場でかなり改善されたが、それでもあの手この手で中抜きや横領をする、悪知恵と悪行だけは超一流のアホ共が絶えず、必要物資が十全に行き渡る事は無かった。
かと言ってもう1つの収入源である、地元からの支援も、これ又アホ共が搾取の限りを尽くした為、マトモに貰えず、充てにならない状態だった。
其処で物資不足を補う為、自分達の縄張りを通過する、国内外の交易商隊から流賊護衛の名目で、みかじめ料(通行料)を徴収しており、自らが稼いでいる貴重な収入源であり、生命線でもあったのである。
みかじめ料と言っても、暴利を貪っている訳でもなく、たった一往復(約1年)の交易で、莫大な富を築いたと言われる交易商隊相手に、郡毎に存在する軍閥(1~3軍ぐらい)がそれぞれ、往復で1人頭一律50銭(約5千円)を徴収するといった具合で、かなりリーズナブルであり、良心的値段設定であった。
現代風に例えれば、料金をちょこっと払えばほぼ安全が約束される、掛け捨て型の安い簡易保険に加入する様なモノである。
まぁ、とは言え交易商隊の人数は、平均数十から数百人と言われ、塵も積もればの言葉通り、かなり多額の稼ぎな模様であるが。
コレは個人的な予測ではあるが、董卓横死後から無政府状態になり、曹操が官渡戦役以降に、涼州経営を本格化させるまでの約10年間、ほぼ無支援でも涼州軍閥が崩壊せず、独立採算・独立独歩で生き残ったのは、この通行料の収入源があったからだと思われる。
(時代も国も規模も違うので、あくまで参考程度だが、日本の「海賊大名」と言われ、瀬戸内海で活動していた村上水軍の村上家は、当時最大の商業都市・堺を往来する、国内外の商人から通行料を徴収し、徴収料を合わせて、約10万石(1石=約30万円、10万石=約300億円)の収入を得ていたと言われているので、これ以上の収入が涼州軍閥に、齎されていると思われる)
それはさておき、
「へ?そうなんか?
儂はてっきり儂等の収入源を、ジワジワ奪って儂等軍閥を、州軍に取り込む算段かと思たんじゃが?」
「全然違います。
そもそもそんな事をして、軍閥を弱体化させても、異民族が活発化するだけで、州にとって何の利益にも成りませんよ。」
無い無いと手を振って否定する。
(大体んな事したら、最悪俺が司令官になって異民族共と、戦闘しなきゃなんなくなるだろうが!?
冗談じゃねーよ、ぜってーイヤじゃい!)
脳内で、面倒くさいのは御免じゃあ!と吠える。
「まぁ、ほらほうじゃが・・・。」
「大体州軍と言うのは、州内の治安維持即ち、州民の生活の安全を司る、公的な組織であり、外交使節なら公務上護るのはまだしも、交易商隊といった私的な団体の、安全の面倒をみる義務・義理もありませんから。」
はっきりと言い切る。
糜芳の設立した飛連隊は、現代風に言えば警察の広域機動隊であり、時代劇で言えば火盗改めであり、そして糜芳の言っている事は、民事不介入の原則を端的に表していた。
公的警察機関として、盗賊討伐は義務として当然するけど、「襲われるかもしれない、可能性がある」という、未犯罪に対する思い込み状態までは、面倒をみきれないし、普通に「自分の身は自分で守れ」が、後漢末だろうと現代だろうと、時代をとわず世界万国共通で、当たり前の大原則である。
(そもそもが、そんなもん職務化なんぞしたら、担当官の首が幾つ有っても足んねーわい)
無茶苦茶だろと脳内でボヤく。
義務化・職務化すれば言わば、不特定多数往来する商人の、未遂を含めた襲撃事件を責任を持って全て処理する羽目になり、最悪の場合は与り知らず、関わってすらいないのに、事件の責任を負わされ、
「州軍の職務怠慢で襲撃を受け、被害を被った!
義務をキチンと果たせよ!税金ドロボーが!!」
商人の防犯対策・意識に問題があるのに、謂われのない苦情が数え切れないぐらい出た挙げ句、クビになるという荒唐無稽な話になってしまい、人手が幾ら処か人っ子1人寄り付かない、超絶ブラックな職種になってしまうのである。
(不可能を可能にしろ、って言うレベルの無茶振りだよな、どう考えても。
伝説の狸風猫型ロボでも居ないと無理だろうなぁ)
狸風猫型ロボを思い浮かべ、喉から手が出る程欲しいと止まない、ブル一な気分な今この頃の糜芳。
それはさておき、
「今この場で断言しますが、公的組織の州軍が、交易商隊関連といった私的な事由には、事件性でもない限り関与しません。
但し、流賊討伐は州軍の義務であり、州民の安全を高める職務遂行の為、軍閥には縄張り内の通行の許可、状況に依っては物資補給の要請、場合に依っては救援要請をする可能性があり、その場合はどうかご協力頂きたく。」
ぺこりと軍閥のドン・董卓に頭を下げる。
「そういう事やったら、喜んで協力するぞな。
すまんすまん、儂のがいな(変な)勘違いで、要らん事になってしもたの。
皆の衆もなんちゃ(何にも)異存は無かろうがい?」
「「「「「ヘイ!異存ありやせん!!」」」」」
厳しい視線と表情から一転、にこやかな笑顔になると、軍閥連中に「可、問題ない」の視線と、問い掛けを行い、それを見聞きした軍閥連中も、ホッと胸をなで下ろし、笑顔で答えた。
こうして第1回目の涼州会議は、民部からは大量粛清に依る、人材というより人手不足が課題に挙げられ、軍閥からは新規運用組織、「飛連隊」の持つ権限の明確な範囲と、軍閥との力関係の調整が、今後の課題に挙げられた。
次の会議の議題として各自持ち帰り、次回に改めて議論する事に決定し、ハイ終了としたかったが、
(コレだけは、一刻も早く始末しとかねーと、何時爆発するかわかんねーからなぁ。
・・・まぁ、我が身の安泰を考えたら、放っておけないし・・・ハァ、頑張ろう)
人知れず溜め息を吐く。
糜芳の直ぐ横、軍閥連中の上位席に座る、隣同士で全く顔を合わせようともしない、今や涼州の爆弾と化した、韓遂と馬騰の義兄弟を型に嵌めるべく、策謀を巡らす糜芳であった。
続く
え~と、後1話を書いて閑話を書いたら、この章は終わりになります。
ゆっくりと進行していきますので、生暖かい目と菩薩の如しな、寛容なお心でお願いします。
あ、後、涼州軍閥の運用資金源としている、みかじめ料に関しては、私個人の予想ですので、悪しからずご了承ください。
長々とスミマセン。
楽しんで読んで頂ければ嬉しいです。
優しい評価をお願いします。




