その8
読んでくださっている方々へ
いいね・誤字脱字報告と、エスパーな感想ありがとうございます!
今話は、糜芳が涼州に行った理由と、その裏事情的な話になっております。
相変わらずの遅筆に、平にご容赦を願いますと共に、ご理解ご協力をお願い申し上げます。
涼州漢陽郡隴県
9月、後漢・三国時代初期に於ける、リアル修羅の国の涼州は漢陽郡に、4月には表向きは許家に対する、配慮したと見せかけた、偽りの懲罰人事な感じで、腰掛け郡太守として赴任していた糜芳。
「栄枯盛衰、盛者必衰の理あり・・・か。」
執務室の窓から木の葉が紅葉して、ハラハラと舞い落ちる様子を観て、ポツリと呟く。
元三公にして許家当主・許相並びに、人物批評家の大家と呼ばれた許劭が、2人揃って自死(自害)。
家を没落させて罪人となった、名家・名士達が辿る末路を彼らも辿った事を知って、複雑な気持ちと何とも言えない感傷に浸る。
(お互いに殺るか殺られるか、一歩間違えれば自分がそうなっていた・・・わけねーわな。
官位官職も降って湧いたモンで未練無いし、財産も裏金をプールしてるから、全然無問題。
自殺するぐらいなら、とっとと他国に移住して、新天地で新生活送っとるわ)
複雑な気持ちは抱いたが、共感は出来なかった。
(まぁ、自ら進んで自殺したのかも怪しいしな)
恐ろしい思考を、脳内で思い浮かべる。
この時代の名家・名士達は、権力抗争等で敗れ没落して庶民に落ちると、表向きは恥じたり、父祖に不孝をかけたとして、自害する事例が一般的だった。
しかし本当の理由は、実は庶民に落ちると言っても、殆どが何らかの罪を得て、罪人=賎民(奴隷・商人と同等)になる事を指し、官爵持ち=貴族階級から、爵位を持てない奴隷階級になる事で、周囲の民衆から壮絶なしっぺ返し=リアルざまぁをされるという、生き地獄に遭って絶望、自害を選択する場合が1番多かった。
そして2番目が結構闇深い話だが、連座を免れた親族から、自害を強要される場合である。
基本的に後漢朝廷から罪を問われて、罪人=賎民となった人は、赦免(大赦、犯罪行為・履歴を抹消されて免除されること)が出されない限り、社会復帰は不可能であり、先ず滅多に出される事は無かった。
その為、特に今回の許相の様に、一族一門の惣領(頭領)が罪人となった場合は、当人が生きていると連座を免れた親族(一門)にも、「罪人一家の身内」という悪評が纏わり付くのと、惣領の家督継承も絡んで、親族達の同調圧力で強制されたり、最悪自害に見せかけて・・・と言った事も珍しくなかった様だ。
まぁ大体は本人が自害して、当人とその直系一族自体が、家系図から抹消されるのと引き換えに(残すと家の恥になる為)、連座した直系が免れた親族に養子縁組みされて、連座から免れる裏技(免れた親族の身内になるので、連座の枠組みから外れる)を使って、子孫だけでも遺す様にしていた様だが。
(by.糜家商会会頭兼当主・糜董談)
(う~ん、許劭が1番で、許相が2番って感じか)
脳内で予測する。
そうして糜芳が、窓の景色を観ながら現実逃避していると、
「何を呆けていらっしゃるのですか、州牧様!?
一刻も早く決裁してくださらないと、なんぼでも書類が溜まる一方ですよ!?」
「成公の申す通りです・・・。」
民政主簿(民部担当秘書)の成公英と、軍政主簿(軍部担当秘書)の龐徳が、血走った目でせっせと書類処理しながら、糜芳に作業開始の催促をする。
「・・・なんで腰掛けの郡太守だった筈なのに、いきなり涼州牧なんかに成ってんだよ俺!?
どういう事やねんこれ!?おかしいやろが絶対!
嵌めがったなぁ!?畜生ったれめ!!」
聳え立つ竹簡の山脈に囲まれて、洛陽方面に天高く呪詛を叫ぶ糜芳であった。
糜芳がこの様な事情になったのは、約半年前に遡る。
約半年前・・・
洛陽大将軍府執務室
3月、宮中が許劭に依る、人事一新騒ぎに揺れる中、皇族で元幽州刺史の劉焉が、史実通りに刺史(州監視者)に州軍部の統帥権と、州民部の裁量権を付与させて軍民部を統括し、各州に反乱・災害に対する、即応性を持たす為の州牧の創設を上奏した。
黄巾の乱以降、各地で反乱が頻発したが、刺史に軍の統帥権が無いため、碌に対応出来ず又、州軍自体も独自の統帥権を持つ、幽・并・涼州の軍閥以外は軍内部に於ける、指揮権の奪い合いに終始して機能せず、中央から司令官が派遣されて、官軍と共に統帥するまで満足に動かないという、非効率の極みであった。
そして民部も災害が郡内であれば、太守の独自裁量で対処可能だったが、他郡を跨ぐ様な大規模なモノになると、太守同士が州に上告するが、これも最終的な決定権が刺史に無い為、結局朝廷(皇帝)の裁可が無いと、どうにもならないのが今の現状だった。
後手後手になっている現状を打破するべく、上奏された州牧位創設は、利に聡い霊帝の裁可を以て承認され刺史の上位、州統治の最高位として、軍部統帥権と民部裁量権が付与された州牧が創設される。
因みに刺史位自体はそのまま残り、州牧の監視と弾劾権が付け加えられた。
そして言い出しっぺの劉焉は、自ら蛮族が跳梁跋扈して蔓延る、古代から糜芳の生きている後漢時代でも現役の流刑地、益州に赴任を志願。
率先してそんな魔境に近い、僻地に赴く姿勢に、周囲は劉焉を褒めそやした。
まぁ、実際は占い師の、「益州に天子の気があり(蜀の地に皇帝が誕生する気配が有る)」という胡散臭いお告げを、ええ年扱いた爺が真に受けたのが、益州に志願した理由であったが。
劉焉に続いて同じ皇族の劉虞も、未だ張純が反乱継続中の幽州に赴任を志願、こっちはフツーに裏表無しの、純粋な行動だった模様。
そして大小様々なバリエーションで、反乱が頻発している、苛政・暴政と名家・宦官のメッカ(汝南・穎川郡)=豫州には、名家出身の黄琬なる者が牧に任命され、喫緊を要する地方を重点的に、州牧を配置していっていたのだが・・・
「う~ん、う~ん・・・涼州の人選が決まらん。」
頭を抱えて呻く何進。
「閣下一旦状況整理して、落ち着きましょうか。
幽・益・豫州はとりあえず確定。
黒山賊が蔓延る并州には、元并州刺史にして軍人としての武略に長け、同時に政治に理解力の有る、涼州の雄・董卓将軍が内定しております。」
副官の荀攸が状況整理の為に、現状説明を始めた。
「比較的落ち着いている荊・揚・兗・青州はそれぞれ、荊州に八駿の劉表、揚州に弟・劉繇と兗州に兄・劉岱の二龍兄弟、青州に孔子の末孫・孔融が、刺史もしくは州牧として赴任予定です。」
「ふむふむ・・・しかし改めて観ると、政治家というより、皇族と儒者ばっかりだな。
大丈夫なのか、これ?」
「さぁ?今の所は何とも・・・。
少なくとも今までの人選よりは、マシかと・・・。」
心配げに2人共首を傾げる。
「そして我らが軍部の食糧庫・徐州には、大将軍府より陶謙が州牧として、派遣される段取りとなっております。」
「徐州は安定的に食糧を供給出来る、軍部と大将軍府に取って、重要度が最も高い州だ。
徐州だけは必ず我らの直轄で押さえて、管理下に置かねばならん。」
「左様ですな。
華北随一の食糧地帯だった、冀州が荒廃している今、徐州が軍部の食糧供給の生命線ですので。」
何進の意見に同意する荀攸。
「最後に未定なのは、涼・冀・交州の3つの州になっておりますね。」
「交州はまぁ焦る必要がないが、冀州は誰か立候補者は居ないのか?」
荀攸に尋ねる。
「私の実家経由の情報ですと、高位名家・宦官連中は中堅名家・宦官連中に丸投げし、丸投げされた中堅名家・宦官連中は、自分以外の誰に復興と賊徒討伐が義務化された、冀州の貧乏くじを引かせるか、せめぎ合いの真っ最中だそうです。
最も立場の弱い人物が選ばれるでしょうねぇ。」
呆れた口調で答える。
「なる程、利権や役得は己達高位のモノ、責務や危険は部下のモノ、か・・・ハァ。
何時の世も何処も変わらんなぁ・・・政に携わる者共の身勝手は。」
溜め息を吐いて、しみじみと呟く。
「最高権力者に上りつめた閣下が言うと、妙な違和感と同時に、何故か説得力が有りますね。」
「そりゃそうだろう?
儂が大将軍の地位に就いて、権力を得たのが僅か4年近く、名ばかりの外戚になったのが約10年、それ以前の20年以上は商人として、身勝手な役人共に平身低頭してたのだからな。
身に沁みて痛感した経験があるからなぁ。」
「ああ、ご自身の実体験に基づいているからですか、道理で。」
なる程と納得した荀攸。
「あ~コホン・・・話が変な方向に逸れましたね。
元の話に戻します。
とりあえず冀州は、いずれは誰ぞには決まります。
が、涼州はそもそも赴く名家・宦官閥の関係者・係累達が、全く居ません。」
「だよな~やっぱり・・・。」
其処なんだよなぁと、肩を落とす何進。
「ええ、冀州は両派閥達にとっては、身に危険を及ぶ危地(危険地帯)に相当します。
それに比べて涼州は、十中八九殺される死地です。
いくら脳天気な両派閥連中でも、わざわざ死地に赴く者はおりますまい。」
涼州の問題と理由を説明する荀攸。
史実でも冀州は黄巾賊残党が、并州の黒山賊や幽州の張純達の、反乱兵力供給源となって暴れており、郡治所・県役場を襲われた太守や県令が、逃げ惑う事態が多く、特に中央から派遣された太守等は、洛陽に戻るには黒山賊蔓延る并州か、黄河を渡って兗州経由で戻る事となり、行き帰り共に危険だった。
それに引き替え涼州は、韓遂達反乱軍という名の、涼州軍閥に中央派遣の官吏が殺される状態であり、危険云々以前の問題だった。
「只でさえ宦官閥は傲慢無礼な態度と、搾取を繰り返して、涼州民から憎悪と殺意を抱かれて、涼州に近づけず、名家閥も宦官閥よりはマシだった涼州民感情が、崔烈の薄情下劣な発言のせいで、肩を並べてしまいましたからねぇ。」
「本当にあのアホタレが。
最初(黄巾賊)から最後(三公解任)まで、不始末をしでかして、他人様に迷惑掛けやがって。」
嫌悪感丸出しで吐き捨てる。
「まぁ、そういう訳で、ウチの大将軍府から涼州牧を選出せざる得ないのですが・・・。
やはり海千山千の涼州軍閥を纏めるには、ある程度の実績(軍歴)が、有る方が望ましいかと。」
「うん?それなら幽州の劉虞はどうなんだ?」
「あの方は皇族という肩書きと、民政の実績が有りますし、現状の閣下と軍部の様に、事務(軍政)と実務(戦場指揮)が上手く噛み合えば、相乗効果が期待出来ますので。」
「なる程確かに。」
自身を実例に挙げられて、納得する。
「そ~なると・・・。」
「ええ、皇甫嵩将軍は同郷の縛りが有るので無理。
となれば・・・。」
2人して横を向いてジ~っと、2人の会話を傍観して聞いている朱儁将軍を見つめ、「涼州に逝ってくれる?」と目線で催促した。
「・・・・・・(ブンブンブン!)」
無言で左右に激しく振って、「事務仕事はイヤイヤ!!」と、良い年したむつけきオッサンが、駄々っ子の如く拒絶の意を示す。
「・・・・・・と為れば、盧植殿は?」
軍部最上位将軍の、余りの見苦しい有り様に目を背けて、見なかった体で、朱儁の向かいに座っている盧植に目を向け、候補者として提案する何進。
「現状では無理です。
盧植殿を尚書から外せば、許劭の暴走に歯止めが掛からなくなります。
それに伴い、老獪と言うか老害、いえ国害に等しい派閥連中の、節穴人事も横行し、崔烈・張純の再来待った無しになりますぞ。」
何進の提案通りにすれば、涼州よりも中央の方に、深刻な悪影響が出ると警告する。
「一応先に言っておきますが、同じく蔡邕殿も無理ですからね?
蔡邕殿が、正確にはお弟子さん達が大司農府で、金銭出納の管理をしていて、それを蔡邕殿が矢面に立って、守っているから正常に機能し、健全な財政運営が成り立っているんです。
故に蔡邕殿を外せば、国害共に国家予算を食い荒らされて、財政破綻まっしぐらになりますからね?」
ついでに予防線を張って、言われる前に告げる。
「蔡邕殿も駄目か、う~ん・・・あ、そう言えば王允が居たな!
あいつならどうだ?豫州刺史の経験が有るし、黄巾賊の時にも軍事行動を、積極的にしてただろう?」
ポンッと手を叩いて、王允を推す何進。しかし、
「・・・閣下、王允殿は最も不適格な人選ですので、お止めください。
間違いなく後々我々に、災いが降りかかりますぞ。」
荀攸に真顔で頭を振られ、強く諫められた。
「へ?何でだ?」
「確かに王允殿は、豫州刺史の折りには遵法を重んじて、厳格に法律の適用を徹底しました。」
「うん、良い事ではないか。」
別段良い事やんと頷く。
「ええ、表面的に観ればそうですね。
厳格にし過ぎて、些細な罪でも連座が適用されて、連座的犯罪者が急増。
巻き込まれるのを恐れた豫州民が、田地を捨てて棄民化し、結果、黄巾賊に身を投じる要因になった事を、良い事と判断すればですが。」
「うぇ!?本当なのかそれ!?」
意外な話に、素っ頓狂な声を上げる。
「勿論、穎川・汝南郡に於ける黄巾賊発生の大元は、名家・宦官連中と汚吏・悪吏の、横暴と横行が主要因ですが、王允殿の行き過ぎた法の厳格化も、一因なのは確かです。」
穎川郡出身者は、キッパリ断言する。
「又、王允殿は黄巾賊終息後も、賊徒の親族を大勢連座させており、最早その厳格さは酷吏といっても、差し支えありませんでした。
その様な苛烈な処置を、涼州ですればどの様な事態を招くか、火を見るより明らかです。」
「あ~・・・良くて韓遂達反乱分子の粛清、それに依る軍閥の弱体化、悪くて苛烈な処置の反発と、軍閥達の同郷意識の影響で、涼州丸ごと韓遂達に組して謀反・・・か?」
腕を組んで考え込み、予測する。
「恐らくそうなる可能性が高いかと。
そうなれば異民族の侵入を易々と許し、最悪涼州軍閥と共に、洛陽に襲いかかって来る場合も。」
「本当に最悪だなそれは!?」
ゾッとした表情で叫ぶ。
「それと今から言う事は、下手すると讒言に捉えられかねないのですが・・・。」
「讒言?お前がか・・・一体何だ?」
クソ真面目な荀攸の、思わぬ台詞に驚く。
「は、黄巾賊の際、確かに素早く軍を編成して、迅速に対処されました。
しかし黄巾賊撃破後、直後に王允殿は何をなされたか、憶えておられますか?」
「うん?え~と・・・あ~確か宦官閥筆頭だった、張讓を糾弾したんだったっけ?」
脳内検索をして、自信なさげに答えた。
「その通りでございます閣下。
黄巾賊撃破をして真っ先にした事は、刺史として戦災復興をやるべき所をせず、張讓の糾弾を最優先しております。」
「はい?執金吾(警察庁長官)じゃないんだから、刺史として、戦災復興をするのが先だろうが!?」
何考えてんだ?と憤慨する何進。
「ええ、それが当然の話でしょう。
しかも軍事的行動は迅速で的確だったのに、政治的行動は優先順位があべこべ。
余りに両極端に反比例しているんです。」
王允の刺史としての、行動の不自然さを指摘する。
「う~ん・・・どういう事だ?」
「あくまでも私見ですが、黄巾賊討伐は目に見えて目立ちますし、誰からも明らかな功績と行動を賞賛されるでしょう?悪宦官・張讓糾弾も然りです。
しかし、戦災復興は地味で目立たず、当然の義務ですから、誰かに賞賛されたりする事も無く、注目・関心を持たれません。」
何気にエグい私見を述べる。
「と言う事はだ何か?
王允は自身の名声・功績に繋がるような、目立つ出来事を重要視して、打算で動いている、あざといゲスな人物と言いたい訳だな?お前は。」
「・・・はい、率直に言えばそうです。
個人的にその感情が、どうしても拭えません。」
コクリと頷く。
「フ~ム・・・。」
「一応補足ですが、黄巾討伐の行動と功績を持っている王允殿ですが、豫州内では賞賛する声や人望が全く有りません。
寧ろ解任されて、喜んでいる人が多数派ですね。」
「ん?解任される時、それを止めようとする、多数の擁護が有った筈だが?」
矛盾してないか?と尋ねる。
「実際は単に死刑になるのを、止める様擁護しただけで、しかも声を上げていたのは、名家閥の中堅から下の連中が殆どですよそれ。」
「どういう事だ?」
「名家閥の中堅以下からすれば、勝手に自分達の代わりに、宦官連中の糾弾や追及をしてくれる、利用価値のある田舎者ですから。」
「ああ、身代わり兼捨て駒としての存在価値か。」
しょうもないと呆れる。
現代風に言えば、どこぞの国の国会答弁に於いて、敵対政党を責め立てたり、追及したりする時限定で、答弁を行う鉄砲玉議員の様なモノであった。
(稀~に自身の発言が跳ね返って来て、被弾して辞職に追い込まれるのがデフォ)
「荀攸の言う事には一理ある。
王允を州牧に使うのは危険過ぎる、止めておこう。」
「その方が宜しいかと。
王允殿自身、かなり名家閥寄りの人物ですし。」
「厳格でも公平無私では無いか・・・。
それなら尚書としても不適格だな。」
盧植と交代案も潰える。
(・・・通りで主上陛下が、王允を盧植の様に讒言で解任されても、別の役職で再任を為されない筈だ。
王允が己の利益に成らぬと、見切っておられたか?)
霊帝の功利的な思考を、推察する何進。
史実として王允は、豫州刺史を解任されて以降、蔡邕・盧植・皇甫嵩・朱儁達の様に、讒言や喪に服しての辞職等で失職しても、霊帝から改めて再任されたのと違って、在位中二度と再任される事は無く、董卓に依って三公に推されるまで無官であった。
そして、燻っていた自分を引き上げてくれた、恩人の董卓を裏切って牙を剥き暗殺。
恩を仇で返した忘恩の輩だったので、有る意味霊帝の読みは、正しかったと言えよう。
(正直しょうもないアホな理由で、明確に敵対した袁紹の方が遥かにマシ)
それはさておき、
「さて、そうなると・・・適任者は?」
「無しになりますねぇ。」
「堂々巡りじゃねーか!?」
結局一周回って元に戻った。
「あの~、意見を述べさせて貰っても宜しいか?」
「おお、皇甫嵩将軍何か意見がお有りで?」
政治的事情には、基本ノータッチの皇甫嵩が、意見をするのに驚く荀攸。
「あくまでも参考なまでにだが、徐州東海郡で太守をしている、糜芳殿を州牧に如何なモノだろうか?
年齢こそ若いというか若過ぎるが、太守として評判が良く、悪らじゃなくて機知に富み、硬軟な対応と清濁併せ呑む度量も持っている。
昨今は名士の定義を提唱して、軍人の受けもすこぶる良いし、涼州軍閥の董卓将軍とは知己の間柄だ。
オマケに庶民階級出身者だから、涼州民の受けも悪くないとおもうのだが。」
かなり絶讃して、糜芳はどうかと意見する皇甫嵩。
「「ほう、なる程、成る程。」」
皇甫嵩の話を聞いて、キラーンと目を輝かす2人。
「流石は皇甫嵩将軍、糜芳殿を涼州牧に推挙なされると・・・閣下!早速皇甫嵩将軍の推挙と言う事で、糜芳殿を涼州牧にと、上奏しましょう!」
「うむ!!善は急げだな!早速上奏しよう!!」
先程とは打って変わって、機敏に動く2人。
「ちょ!?ちょっと待った!待たれよ!」
俊敏に動いて、筆と竹簡を奪い取った皇甫嵩。
「あくまでも参考!さ・ん・こ・う!
推挙なんぞ一っ言もしておりませんぞ某は!?
冗談じゃない!命が幾つ有っても足りんわ!」
ハァハァと、肩で息をしながら吠え、
「・・・あ!?さては2人共早い段階から、糜芳殿を候補者に入れておきながら、後難を恐れてワザと言わなかったのですなさては!?」
責め立てると、2人共サッと目を逸らした。
何進・荀攸・皇甫嵩の3人は、糜芳が只の能吏や音楽家ではなく、敵対する者や害になる人物に対して、突拍子もない機知で害敵に、致命的な損害を及ぼす、「機知害」なのを熟知していた。
なので今の東海郡太守という、平和で長閑な地方都市の市長から、極寒都市や南十字星都市、果ては監獄鬼哭都市までが混在する、世紀末修羅の国的地方(※あくまで何進・荀攸基準です)=涼州の知事なんぞに任命したら、どんな仕返しを喰らうのか判らず、非常に恐れていたのである。
「いや、儂には可愛い可愛い跡取り孫が、漸く生まれたばかりで・・・。」
「私にも、幼い子供が居るんですよ。」
「それを言うなら、某とて家族が居ますよ!?」
三者三様で紛糾して揉める。
「??お三方共、件の糜芳殿を推挙すると、何か問題でもあるのですかな?」
首を傾げて、揉めている三者に尋ねる朱儁。
「あれ?朱儁将軍は糜芳殿と、面識がなかったのでしたか?」
「いや、多少の面識ぐらいは有るが、じかに会話をした事は無いのだが。」
荀攸の質問に答え、
「うむ、儂もじかには無いのう・・・。」
「とんでもないクソ餓鬼ですぞ、盧植殿。」
盧植も朱儁に同調し、蔡邕がムスッとした顔で糜芳を批評する。
「え~とまぁ、率直に言うと糜芳殿は、自分に害を為す者や敵視する者に、容赦が全くこれっぽっちも無く、策謀で人を破滅させるのが大得意で、老若男女関係無く、殺る時はきっちり殺る外道です。」
荀攸が端的に、クソ味噌な人物評を宣う。
「へ?いやなんか・・・一般的な世評と、正反対に突っ走っている様に感じるのだが、誠なのか?」
「ああ、いえ一般の世評も間違ってはいませんよ。
普段は温和で情の深い人ですが、自身の害になる者には裏で策謀を練って、世間・現世から排除するのが、基本姿勢なだけですから。」
「表裏が両極端過ぎるだろ!?」
思わず突っ込む朱儁。
「知っている限りでは、涼州で反乱を起こしていた韓遂を、碌すっぽ戦えない状況に追い込んで敗走させ、先の三公・張温を宦官の趙忠ごと巻き込んで、徹底的に使い潰して失脚に追い込み、今現在は敵対した許劭を使って、能吏発掘と悪吏・汚吏を許家ごと撲滅計画を進行中ですね。」
ぶっ飛んだ策謀の結果と、経過を述べる。
「はぁ!?なんともはや・「待たれい!!その撲滅計画とは一体どういう事じゃ!?
お上から賜る役職を私情で利用し、己の敵対者を排除しようなど、公私混同も甚だしい、言語道断!由々しき事象ではないか!!」
謹厳実直というか剛直者の盧植が、朱儁の発言を遮り、糜芳の行いに激昂して叫んだ。
「確かにその面は否めません。
しかしながら韓遂の件では、敗色濃厚だった状況を策謀でひっくり返し、ほぼ無傷で勝利に導いており、その上異民族と韓遂を離間させ、異民族同士も離間させて、それ以降の異民族襲来を防いでもいます。
しかも、これだけの功績を挙げながら、全てを皇甫嵩将軍・董卓将軍に譲り、朝廷から一銭の報奨を受け取っていません。」
「な、なんと!?」
さり気な~く、大将軍府からの報奨金はスルーして、公的には貰っていない事をアピールする。
「次に張温の件では、将来的に悪吏・汚吏に成りかねない宦官閥の者共を、謀反人の韓遂にぶつけて消耗させる事を提案し成功。
黒山賊に於いては、重罪人を兵士に仕立てて潰し合いをさせた後、ノコノコ手柄欲しさにやってきた、張温に再びぶつけて失脚を立案。
これにより黒山賊の拡大及び、宦官閥の伸長の阻止、趙忠達に相当な金銭的な浪費をさせて、宦官閥の減退に結びつけました。
結果、官軍・地方軍閥の温存、異民族襲来に備える事に繋がり、朝廷に巣くう宦官共に不利益を被らせ、国益と転じさせたのです。
無論、この件も糜芳殿は功績を誇る事なく、一切の報奨は受け取っておりません。」
「・・・。」
余りの話の壮大さと糜芳の清廉さに、口をあんぐり開けて無言になる盧植。
まぁ、この件は1千万銭貰ったお返しなので、報奨を受け取っていないのは事実だった。
「・・・・・・。」
事実を知る蔡邕は、荀攸の絶妙な言い回しに口を挟まず、ブスッと不機嫌な表情をしているが。
「最後に許劭を使った撲滅計画ですが、これは元々名士の定義に憤慨した許劭が、太守の職務をキチンとこなしていた糜芳殿に突っかかって邪魔をし、怒った糜芳殿が要約すると、「名家出身のくせに、遊んでいないで出仕して働け口舌の徒、不忠・不孝者」と的確に面罵して論破。
論破された許劭が逆恨みをした上で、許家当主で三公・許相も許劭に加担、主上が糜芳殿を勅命で召喚したのを機に、暗殺を目論んだのが発端になっております。」
「な、なに!!誠なのかそれは!?
・・・道理で阿琰を同行させなかった筈じゃ。」
蔡邕が荀攸の話を聞いて立ち上がり、蔡琰が帰郷しなかった理由を知って驚き、
「なんたる事じゃ!?名家出身で三公ともあろう者が、暗殺を企むじゃと!?
情けなや!其処まで堕ちたのか許家は!!」
盧植はあまりに幼稚な行動を取った許家連中に、顔を真っ赤にして激怒する。
「偶然豫州出身の曹家と縁があり、曹家経由で事情を知った糜芳殿は、「この様な輩共をのさばらせて置くのは、己にも国家にも後世の災い」と排除を決意、同時に朝廷内の現存する悪吏・汚吏の排除・撲滅も企画。
主上の褒美に託けて、許劭をさり気なく知らしめ、許相に後見人として責任を負わせた上で、尚書台に出仕させ、今に至っております。」
「・・・うん?尚書台に出仕?確か許劭の出仕を命じたのはしゅ!?と言う事はまさか!?」
「ご想像の通りです。」
コクリと頷く。
「・・・左様か失礼をば、それならば是非もなし。
荀攸殿、儂は尚書令として如何な動きをすれば?」
「盧植殿は尚書令の役目を普段通り、公平無私で務めて頂いたらそれで。
許劭が人材を推挙して来れば、優秀且つ勤勉な人物は派閥を問わず残し、不要無能な人材と、随時入れ替える様にしてください。」
「・・・なる程、不要無能な人材を許劭の推挙に託けて排除。
もし許劭が挙げた人材が、不要無能な場合も排除して、優秀だが低い立場の人材を、穴埋めと称して抜擢する下地にする算段か・・・。」
顎に手を当てて推測する盧植。
「ご慧眼にございます。
許劭推挙の人材が優秀な場合は慰留し、残りの不要無能な人材を大義名分に、許劭を推挙した罪に問い、後見人の許相も連座させて、許家ごと朝廷から排除する予定になっております。」
「ふむ、一気に纏めて塵の大掃除するのか。
フンッ、クソ餓鬼にしては、中々やりおるわい。」
相変わらずブスッとしているが、心持ち機嫌良さげに鼻を鳴らす蔡邕。
(本当はもっと大きな大掃除になるのだが、まぁ、コレは黙っていよう・・・。
万一漏れると、取り返しがつかなくなるしな)
無職官爵持ちも排除する予定なのを、敢えて言わずに黙秘する。
「うむ、一切承知した。
陛下の御心に添える様、職務を全う致そう。
しかしそれはそれで閣下!それ程までに優れた逸材を、進んで推挙せずに燻らせるとは、一体何をお考えですか!?」
荀攸の話に納得し、協力を惜しまないと約束した後、糜芳を推挙しない何進に詰め寄った。
「いや~そう言われてもな~、盧植殿。
当の本人が、全く望んでいないのだよコレが。
太守就任自体も、本人の意思じゃなくて、周囲の推戴で半ば強制的に、就任したようだしなぁ。」
ポリポリと頬を掻いて、糜芳の意思を伝えつつ、
「それに平穏無事な徐州の太守から、幾ら州牧と雖も荒れている涼州だと、実質的に左遷と変わらんだろう?流石にそれはちょっと・・・。
何よりもそれで敵対者認定されると、良くて張温並みの失脚、悪ければ許家の如く破滅とあらば、躊躇してしまうのは、解るだろう盧植殿?」
保身に走ったのをぶっちゃける、最高権力者。
「解り申した!それならば儂が糜芳君を、涼州牧に推挙致しましょうぞ!
例え敵対者認定されようとも、儂が破滅しようとも、涼州の安定化は漢朝には急務!
それで漢朝の安泰が得れるなら、我が命・一族の繁栄なんぞ惜しくもないわ!!」
ドンッと胸を叩いて言い切る。
「「「おお~流石は硬骨の烈士!」」」
「あいや、盧植殿待たれよ!
クソ餓鬼・・・いや糜芳小僧に州牧は、幾ら何でも時期尚早であろう。」
感嘆の声を上げる3人と違って、蔡邕だけは盧植に異を唱えた。
「うむ?蔡邕殿時期尚早とは?」
「小僧は確かに遣り手じゃが、地元だからこそ融通性があり、一族縁者の協力も有って、それで上手くやっている面も少なく有るまい?
此度は勝手も約束事も違う、余所の土地でござる。
貴公とて地方の太守経験者故に、余所の土地での勝手の違いには、苦労なされたであろう?」
「まぁ、確かに左様でござったが・・・。」
コクリと頷く盧植。
「それ故に、先ずは太守として赴任させ、地域慣れさせて経験を積ませた後、様子を観て推挙なされた方が、宜しいかと存ずる次第。」
「ふむ、先ずは様子見をせよと・・・。」
「左様、地域特性に合わないのに、州を任せるは小僧・州民共に不幸の元。
又、万一失態が有っても、太守ならまだ取り返しが付きます故に。」
失敗しても、まだ修正が利くと説く。
「成る程、確かに。
下手を打てば、惜しい才を潰す事に成りかねない、懸念が有りますか・・・。
しかし太守とあらば、本当の左遷ですぞ?
どの様に糜芳君を説得すべきかの、問題点が発生してしまうのじゃが・・・。」
う~んと唸る。
「あ、それなら盧植殿ご安心を。
一応許劭を推した形になるので、後先では有りますが、懲罰的な禊ぎと安全確保の2点を説けば、糜芳殿は納得するでしょうから。」
「ほう・・・予め左遷という体にしておけば、其処で許劭の件のケジメとし、後々に推挙する際の障害にならなくなる算段か。」
成る程名案だと頷く。
「はい、後は許家の本拠地豫州と、赴任先の涼州は、司隷を挟んで離れております。
目に見える危険の涼州の方が、見えない危険の徐州よりも、身の安全を考えればマシでしょう。
洛陽に居る許家の動向を監視すれば、事前に察知も可能でしょうし。」
「確かにその方が安全よのう。
小僧が帰った時の如く、賊徒討伐軍と一緒に行動すれば、阿琰も安心して帰って来れようしな。」
頷きつつ、自身の願望を漏らす蔡邕。
「それならば長安に近い、隣郡・漢陽郡の太守はどうじゃろうか?
州治所も同じ漢陽郡じゃから、将来的に州牧に繰り上がっても、政治基盤がそのままで変わらんから、やりやすかろうて。」
「確かにそれは名案ですね。
ついでに新しい州牧の、補佐役的な事をさせておけば余計に、将来の州牧就任に弾みがつきますし。」
糜芳からの仕返しが、自分に来ない事を確信した途端、容赦なくこき使う気満々の策士・荀攸。
「ふむふむ、それならいっそお飾りの州牧を派遣して、太守職と別駕従事(副知事)を、兼務させても良いんじゃないか?
とりあえず最初は太守だけ任命して、後々功績うんたらと勅命でも送って、有耶無耶にでも。」
荀攸と以下同文の大将軍閣下。
とりあえず自分が「恐怖の大王」を召喚する、生け贄にならずに済んだので、非常に口が軽くなり、生き生きとした表情で語る何荀コンビ。
こうして何進達に依る、「有耶無耶の内に糜芳を、涼州牧に就任させて、涼州経営ポイッと丸投げ計画」が策定され、軍部の将軍の長老格で、大人しい気質の人物を涼州牧に推薦、栄転(地方軍総司令に相当)させて涼州に派遣する算段を付け、丸投げ計画が始動開始したのだが・・・
4月、糜芳が荀攸の予想通り、転任の内示を2つ返事で受け、洛陽に蔡琰と共に到着後歓待し、夕ップリと支度金という名の、州牧就任前祝いを渡して、ニヤリと黒い笑みで見送った半月後に、
「大変です閣下!州牧に派遣する予定だった、○○将軍が急死しました!」
「・・・ハイ?・・・ナンだってぇぇぇ!?」
突然死の急報に驚愕する。
「ど、どうする?どうする?」
「と、とりあえず主上にご報告を。
急ぎ後任の選定を、主だった者を集めて話し合っておきますので。」
「分かった頼む!」
慌てて霊帝に拝謁に詣でる何進。
丸投げ計画が、スタート直後にすっころんだ形になり、ドタバタになってしまった。挙げ句に、
「・・・という訳です陛下。
後任をすぐさま決めますので、ご寛恕を賜りたく。」
「ふむ、急死とあらば、仕方有るまい。
急ぎ後任・・・うん?そう言えば今涼州には、糜芳が赴任しておらなんだかの?」
「は、涼州の州都が有る、漢陽郡の太守として赴任しておりまする。」
糜芳の名前を聞いて、ビクッと体を震わせる。
「ほう・・・ならば糜芳を後任の州牧に任ぜよ。」
「お待ちください陛下!幾ら何でも若過ぎます!
皇族でもなく、刺史経験もないのに、1州の統括責任者たる州牧に任ずるのは・・・。」
内心で「止めて~陛下、マジで止めて!」と、叫びながら抗弁する。
「何を申しておる何進よ。
それならば朕はどうなる?糜芳の歳より若く、12の歳で皇帝の座におるぞ?
それに若年と申しても、先の任地での評判は頗る良いそうではないか。」
「は、確かに左様では有りますが・・・。」
「んなこたぁ分かってんだけど」と脳内で愚痴る。
「宦官閥の曹嵩に軍部の皇甫嵩、水と油の如き両所属の者から、褒められた者は糜芳が初めてじゃ。
余程の出来物ぞ?
それ故に使わぬ法は有るまいが?」
「は、はは・・・。」
「今はマズい!マズいんスよぅ陛下~!?」と半泣き状態の大将軍閣下。
「解っておる、察しておるぞ何進。
またぞろ名家共が、専断だの何だのと騒ぐのを、懸念しておるのであろう?依って勅命を下す。
糜芳を涼州牧に任ずる事を、朕の名に於いて命じる故、何進よ急ぎ勅命を糜芳に届けるべし!」
「は、はははぁ・・・承りました。では早速。」
「うむ、一刻も早く涼州の安定をと、よしなに伝えるようにのう。」
上機嫌に命令を下す霊帝。
(儂の心情を察して~陛下~うう・・・)
フラフラとした足取りで、大将軍府に戻る。
「お帰りなさいませ閣下・・・首尾は?」
「糜芳君を涼州牧に任ぜよと、勅命が下った。」
「・・・・・・お世話になりました閣下。
実家に帰らせて頂きます。お達者で・・・。」
「逃がすかぁボケ!?お前も道連れじゃい!!」
すったもんだと揉める、醜い主従。
「とりあえずどうする?どうなる?」
「糜芳殿視点からすれば、我々が嵌めて州牧を押し付けたと、見做しましょうな現況だと。
このままだと、確実に仕返しされますね。」
冷静になって、淡々と語る荀攸。
「ど、どうすればぁ!?」
「とりあえず釈明文と、我々の誠意を提示するべきかと・・・。」
「誠意?」
「コレですよコレ。」
小指を突き出した。
「ハイ?糜芳君に女をあてがうのかお前?
しかも仮にも婚約者の父君・蔡邕殿の前で、堂々と言うか普通?強心臓にも程が有るだろ。」
「え?ち、違います!金銭の事です金銭!」
「それならコッチだろうが!」
親指と人差し指で丸を、ビシッと作る何進。
黄金律並みに、キレイに銭マークが決まっていた。
「と、兎にも角にも、糜芳殿を懐柔するには、金銭贈与が1番効果的と思われます。」
「確かにそうだな・・・で、どれくらい渡せば、許してくれると思う?」
「さあ?」
判りませんと肩をすくめる。
「さあって、お前・・・。」
「貰った事ありませんので、判りません。
寧ろ閣下の方が我々よりも、商人時代的に賄賂関係には精通しておられるでしょうに。」
「それはまぁそうだが。
仕事上、目上の役人達に贈った事は有るが、部下に逆賄賂を贈った事は、流石にないのだが儂も。」
困惑顔で悩む。
「とりあえず10万程贈ってみては?
後は密偵を放って、様子見しましょう。」
「そ、そうだな。
やるだけやってみよう。
敵対しない!逆らわない!を目指そう。」
荀攸の意見を容れて、逆賄賂を贈る決意をする。
この様にして、糜芳は預かり知らない所で、妙なとばっちりを受けて、一足飛びに州牧になってしまったのであった。
「「こ・・・こやつ等は・・・。」」
清しい迄に保身にひた走る主従を観て、呆れ顔で嘆く蔡盧コンビであったという。
続く
え~と、次話から涼州経営を、ポツポツと行う予定であります。
楽しんで読んで頂ければ、嬉しいです。
優しい評価をお願い申し上げます。




