その7
読んでくださっている皆様へ
前回、前後書きをうっかり忘れていました。
それと相変わらずの遅筆ですみません。
仕事が忙しく、思うように更新が叶わず・・・平にご容赦を。
後、なんかPV?の数が、エラい数になっているのは一体?・・・ヨクワカラナイ・・・。
誰か教えて欲しいです・・・謎過ぎる。
いいね、感想をありがとうございます!
非常に感謝感激であります!
司隷河南尹洛陽付近
曹操との歓談?を終えて就寝した糜芳は、翌早朝に夏侯淵邸を出発、喪中で出られない曹操と、夜通し寝ずの番を果たした夏侯淵を除く、曹仁・曹純兄弟を加えた豪勢な護衛隊で、一路洛陽を目指した。
先日は地元徐州東海郡から豫州沛国迄は、東海郡太守として糜芳自身が知られていたので、小休止以外ほぼノンストップで通過。
そして、洛陽に向けて沛国から司隷州境の穎川郡までは、汝南郡を避けて陳国を通過する、北側ルートを選択。
すると沛国・陳国・穎川郡の太守や、各郡内の県令らは、許家か袁家の足止めの指示を受けていたのか、歓待だの何だのと、やたら引き留めをするので、最初に歓待を申し出た県令に、
「え?良いのですか!?ありがとうございます!
止ん事無い事情で、皆様にご迷惑を掛けないよう、駆け抜ける積もりだったのですが、無下にするのは悪いので、遠慮なくお世話になります。
もし管理区域内で僕に危害があった場合、とある大名家に依って管理責任を負わされ、貴方ご本人だけでなく、一族か三族族滅ぐらいはなるかもしれませんが、宜しくお願いしますね!」
にこやかに、遠慮なく歓待を受ける糜芳。
「え”?」
何故か笑顔のまま硬直する県令。
恐らく足止めの指示だけ受けて、その結末がどうなるかまでは、全く想定してなかった模様。
「さあさあ惇殿、ご厚意に預かって休ませて頂きましょうか?
勅命とはいえ、時間の余裕もありますし。
何せ族滅の覚悟で歓待してくださるのです。
あ、案内宜しくお願いします。」
「は、左様ですなぁ。
馬も疲弊しておりますから、丁度良いですなぁ。」
糜芳の意図を汲んで、此方も同調する夏侯惇。
「お、お待ちを!お待ちください!?
勅命でお急ぎの処を知らず、誠にご無礼仕った!
又の機会に致しましょう!」
糜芳が自身にとって、最強最悪の疫病神だと理解した途端、必死に出発を促すのであった。
名家連中の十八番「蜥蜴の尻尾切り」に、このままだと確実に遭うのだから、無理はなかった。
「いや~そう言われましても、馬が疲弊しているので1日は休もうかな~と。」
「それでしたらウチ(県)管理の馬を、幾らでも換え馬用に、どうぞどうぞ乗っていってください!」
どうにかして、出て行って貰おうとする。
「いや~返しにいく時に、止ん事無い事情に巻き込む可能性がありますし、正直恥ずかしながら、手許不如意(金銭不足)で、飼い葉代や宿泊費も乏しくて・・・。」
ポリポリと頭を後ろ手で掻きながら、臆面もなく堂々と、状況を逆手にとって宣う。
「いやいや返さなくて結構ですよ!?
今すぐ(お金)お持ちしますし、飼い葉・食糧等必要な物は、自由に好きなだけ持って行ってください!
荷馬車も付けますから、お願いしますぅ!助けてください!お願いですからぁぁぁぁ!!」
何処ぞの通信販売も真っ青のサービスを宣言し、必死に縋り付いて泣きつく。
「はぁ、其処まで言われては仕方ありません。
では、遠慮なく頂戴致します。
曹洪殿、曹仁殿宜しく~。」
「え?ちょっ、そっちは某の役宅・・・!?」
そう言って県役場ではなく県令の自宅に赴き、金目に敏い曹洪と馬の目利きに鋭い曹仁に頼み、容赦なく県令の馬・金銭・食糧を毟り取った。
「いや~県令殿個人の寸志、快く頂戴しました。ではさようなら~。
ちゃんと三公や大将軍様に、貴方様の事をキチンと伝えますからね~。」
ぺんぺん草も生えないくらい取るものを取って、尚且つさりげな~く、お宅が袁家・許家を裏切ったと、三公(許相)にチクりますんでと離間策を施しつつ、茫然自失状態でへたり込んでいる県令を尻目に、にこやか~に手を振って立ち去る疫病神。
この一連の行動を、引き留めてくる太守・県令共に悉く行い、しっかり仕返しをするのであった。
(どんな経緯だろうが、袁家や許家に組した以上、俺の敵と見做す。
そんな輩に容赦する必要ねーし。
彼奴等も俺という疫病神との、手切れ金だと思やあ安いモンだろうしな~・・・ケッケッケッ)
己の襲撃の危難すら利用する外道な男・糜芳。
「うひひひ、儲け儲け。」
そうして善意の寄付を募った結果、州境を越える頃には、元手ゼロで大金持ちの資産家状態に成るという、錬金術も裸足で逃げ出すぐらいの、えらい有り様に成っていた。
「「「えげつない・・・えげつなさ過ぎる。」」」
「すげーよ、スゲーわ、先生と呼ばせてくれ!」
どす黒い笑顔を浮かべて笑う、糜芳の背後で余りのえげつない仕返しに、ドン引きしている夏侯惇・曹仁・曹純と、キラキラとした瞳で尊敬の念を送る、守銭奴兼銭ゲバの曹洪。
「太守・県令達から毟り取っただけなら、やり過ぎと私も流石に責めるんだが、貧しき者達に施しをしているから、何とも言えん・・・。」
司隷に入ってからは歩を緩め、早足程度で移動しながら、馬上で頭を抱えて呻く夏侯惇。
最初の段階では苦言を呈した、清廉潔白な質の夏侯惇だったが、「まぁまぁ、ちゃんとした理由がありますから」と糜芳に言われ、貧しい村々を発見する度に、小休止して村に立ち寄り、馬に水分補給の為の水を求めて、そのお礼と称して過分な銭と食糧を渡しているのを観て、何も言えなくなったのであった。
「そんなに気に病む事ねーよ惇兄、糜芳殿がやっているこたぁ立派な善行だろうに。
飽食でブクブク肥えてる奴等から取って、貧窮している民百姓に配ってるんだからよ。」
えげつないやり方にドン引きしつつも、やっている事は良いことなんだから、気にする事はないと夏侯惇に諭す曹仁。
「それはそうなんだが・・・糜芳殿、見た所だいぶ銭が残っているようですが、如何なさるので?
まさかそれらを懐に入れるおつもりか?」
訝しげに糜芳を見つめる。
「う~ん、そうですねぇ・・・先ずは夏侯惇殿達に、手厚いお礼を払う、ですかね。」
「なんと!?某達にですか?
ありがたい事なれど、叔父上に言われてやっているに過ぎません。
それで謝礼を頂くのはちょっと・・・。」
頭を振って拒否反応を示す。
「いやいや、幾ら曹嵩様から言われたとはいえ、厄介事に進んで参加してくださったのですから、謝礼を出すのは当然でしょう?
貴殿達烈士を、無報酬で扱き使ったとあらば、僕の面子に関わりますし、何よりも夏侯淵殿の為にも、是非受け取って欲しいのです。」
「はて?淵の為・・・ですか?」
理解が出来ず首を傾げる。
「正確には亡き添殿の為ですけどね。
貴殿達が受け取らないとなれば、淵殿も一本気な御仁の様子なので、受け取らないでしょう。
さすれば添殿のご息女に、将来嫁入りの際の支度金、持参金の足しを渡す事も叶わないのです。」
「な、何故その様な事を?」
目を見開いて驚く。
「亡き添殿に出会ったお蔭で、貴殿達とも縁が出来、今こうして助けて貰っております。
それ故に、添殿にご恩返しをさせて頂きたく。
どうか受け取ってください。
それと後の残りは軍部に、軍資金・軍馬として供出するつもりですので、気に入った馬がいたら、各自で確保してくださいね。」
ぺこりと馬上で頭を下げる。
「糜芳殿・・・有り難く、有り難く頂戴致します。
其処までのご配慮、一族の頭領として厚くお礼を申し上げます。
又、某の浅慮、平にお許しを。」
馬を停めて拱手しながら、頭を下げる。
(まぁ、無料程怖いモノはないからな~。
恩には恩で返しとかないと、居心地悪いし)
内心ぶっちゃける。
こうして色々とキッチリしながら、洛陽に入った糜芳一行であった。
司隷洛陽内曹嵩邸
「おお、おお、ようこそお出でくだされた。
歓迎致しますぞ糜芳殿。
無理を言って済まんかったのう、惇。」
そのまま難なく入京した糜芳は、夏侯惇達の警護の下曹嵩邸に到着、一家総出で歓迎された。
「は、お邪魔致します曹太尉様。
急な事を言って、ご迷惑をお掛けします。」
「いやいや此方こそ、儂が主上に要らぬ事を言ったばかりに、迷惑を掛けてしまって申し訳ない。」
温和な顔に眉間を寄せて、謝罪する曹嵩。
「さて挨拶はそこそこにして、だ。
旅路で疲れている処申し訳ないが、実は大将軍府から早速、糜芳殿に使者が訪ねておってな。」
「使者ですか・・・。」
仕事がはえ~なと感心する糜芳。
「何進閣下の使者とあらば、直ぐに会いましょう。」
「左様か、では此方へ・・・。」
挨拶もそこそこに、曹嵩に案内されて庭の東屋に赴くと、荀攸が座って待っていた。
「ようこそ洛陽へ、糜芳殿。」
「これはこれは荀攸殿、お久しぶりです。
まさか荀攸殿がいらしていたとは。」
「なに、軍部から太尉様への、連絡事項があったものですので、ついでにと言うことで・・・。」
「はぁ、成る程。
あ、荀攸殿、コレをお納めくださいませ。」
毟り取った残りの金銭等が書かれた、目録を渡す。
「うん?コレは?」
「洛陽に入る前の、豫州の各太守・県令殿達から寄付された、金銭・軍馬・食糧の目録です。
許家との諍いを話した途端、何でも好きに持って行って良いから、管理区域を出てくれと言って来たので、遠慮なく私財から頂戴したモノです。」
いけしゃあしゃあと宣う糜芳。
「成る程、では遠慮なく預かります。
ああ、後でその太守・県令達に、大将軍府と軍部から、感謝状を送っておきましょう。
それと、曹嵩太尉兼大司農様?」
「うん?何かな?」
「近々豫州の郡県で勝手に増税したり、国を騙って不当に取り立てたりする輩が出るやも知れません。
監査役の派遣を大司農府(財務)で、是非とも実施して頂きたく。」
糜芳の話を理解した荀攸は、遠慮なく貰った上で、予防線を張りに掛かる。
「なんとそれは由々しき話。
分かった、直ぐ様実施する様取り計らおう。」
コクリと頷く曹嵩。
因みにだがこの時点で、豫州の太守・県令達は、感謝状を送る=軍部と大将軍府が、お前らの寄付を糜芳経由で有り難く受け取ったぞ?なんか文句あんのか?あぁん!?という意味であり、例え訴えても、糜芳に毟り取られた私財の回収は不可能となり、泣き寝入りが確定。
ついでに監査役が派遣される=勝手に増税して搾取したり、勝手な名目で税金を取ったら、国家の罪になるのは理解しているよね~?ねぇ!?という意味であり、コレによって私財の補填も不可能となり、強制大質素生活も確定したのであった。
「宜しくお願いします。
さて、余談はさておき本題に入る前に、曹嵩様?」
「何か?」
「これより話す内容は、国家規模の秘事になりますが、聴かれる覚悟は有りますか?
無ければ退席願いたく。」
覚悟を問う。
「うむむ、儂とて三公の1人じゃ。
国家の秘事の1つや2つで怖れていては、太尉など務まるまい。
荀攸殿、覚悟を決めて聞こうではないか。」
「了解しました・・・では、早速。
糜芳殿が計画した策謀ですが、主上が正式に了承なされました。」
「ブホッッ!?ゴホッ!しゅ、主上~!?」
急に皇帝の名が登場して、大いにむせる曹嵩。
「え~と、では?」
「はい、糜芳殿が年始の挨拶の際に、歌曲を披露した後に計画が始動します。
とりあえず主上が演奏を喜び、糜芳殿に褒美云々を言う手筈に成っていますので、それとなく許劭の名前を出してください。
後は閣下と主上で話しを運び、三公にして許家当主・許相の責務に於いて、許劭を朝廷に出仕させるよう、持っていきますので。」
「了解しました、その様に持っていきます。」
荀攸の説明に頷く。
「しかしながら糜芳殿、敵に等しい許劭を尚書台(公文書の上奏可否の取り扱い・皇帝への取り次ぎの有無が主な業務の機関で、それらの影響力から人事権にも影響が大きかった)に出仕させ、許劭と許家の破滅を画策するとは、中々剛胆ですなぁ。」
「ご迷惑をおかけします。
一歩間違えば僕自身に返ってくる諸刃の刃ですが、閣下や主上にはどう転んでも、損はさせませんのでご安心ください。」
ぺこりと頭を下げた。
2人の密議を聴いている曹嵩は、「許家を破滅!?諸刃の刃って!?」と、息子と同じリアクションをとり、ワタワタしているが、当の2人は無視して密議を続けていく。
「まぁそれに関しては間違いないので、問題視していないのですが、もう一つの策謀について・・・。」
「ああ、それならこうして・・・。」
ボソボソと質疑応答をしていく2人。
曹嵩は、出るわ出るわの際どい話に、「聴くんじゃなかった」と後悔したそうな。
そして、密議を聴いて眠れない夜を過ごす、曹嵩に反比例して、ぐっすり快眠の糜芳は、正月の新年の主上への挨拶に、遂に臨むのであった。
洛陽宮中謁見の間
前回の謁見の時と同じく、待合室で周囲の視線をかわす為に、「俺は樹木、俺は樹木」と木になる文言を唱えつつ過ごし・・・たかったのだが、行事進行役の役人に、しっかり役職名・官位・姓名を、大声で呼ばれた挙げ句、代表して挨拶する事と、歌曲を御前で発表する事をバラされ、前回以上に居心地の悪い思いをした糜芳。
(ぬぉぉ・・・腰が、腰に来るぅぅ・・・。
誰かこのけったいな礼法を改正してくれ~)
相変わらず拱手して頭を下げた状態で、銅鑼が鳴るまで小走りに走る。
そして銅鑼が鳴った所で拝礼して停止、霊帝の2度目の呼びかけで頭をあげて、挨拶開始。
(うん?白アン○ンマン、前より肥えたか?
なんか益々白くなって、不健康に観えるし・・・。
確か来年ぐらいにポックリ逝くんだっけか?
・・・こりゃ不摂生に拠る病死だろうな~)
挨拶が終わった後、チラチラ観察して感じる糜芳。
それはさておき、
「さて、糜芳よ。
朕に良き歌曲を聴かせよ。」
「はは!精一杯楽しんで頂けるよう、努めまする。」
拝礼して演奏を開始する。
(予定通りチャンポン組曲にすっか・・・)
事前に考えていた曲を演奏していく。
霊帝の要望に応えて、幾つもの曲を演奏した後、宮廷楽士のお偉いさんらしきオッサンから、「雅が足りない」とかイチャモンを付けられたので、「栄光的ノブの欲望」から雅っぽい曲を幾つか弾いた後、
「では宮廷楽士様、どうぞ雅な音色で僕以上の、新曲の演奏をお願いします!
まさか他人に言っといて、自分は弾けないなんて事はないですよね?宮廷楽士様と在ろうお方が?」
しっかりと煽って仕返しをする。
案の定顔を真っ青にして、しどろもどろになり、霊帝に急かされても演奏しなかったので、「不粋且つ不愉快である」と霊帝から強制退場させられた。
強制退場の後に、今度は中年文官の1人が進み出て、
「貴様!名士とは血筋・家柄で成るものでなく、生き様で成るものとほざいているそうだが、如何なる根拠を以てほざいているのか!?」
いきなり論戦を仕掛けられる。
(は?いきなり何言ってんだ?コイツは)
論戦をふっかけて来た、オッサン文官に呆れつつ、
「貴方様は、かの著名な史家・司馬遷公が著した「史記」はご存知ですか?」
「無論、当然知っているわ!」
「なら史記に登場される、漢高祖様の生い立ち・生き様を知っておられる筈。
それを踏まえて、まさか漢の一臣たる貴方様が、高祖様が名士では無いとは言いませんよね?」
しっかり論破する。
肯定すれば不忠・不敬になり、否定すれば「学の無い馬っ鹿で~す」と自身が証明する事となるため、顔を真っ赤にして沈黙、これ又強制退場となった。
(エラいやたら突っかかってくんな?・・・うん?)
そう訝しんでいると、
「・・・・・・・・・。」
心配顔で糜芳を観ている太尉・曹嵩の隣で、無言で敵意剥き出しに睨み付ける中年と、目があう。
(・・・ああ、彼奴が許相って奴か。
成る程な、許劭と同じく公衆の面前で、恥を掻かせようって魂胆かよ)
2人の異常な行動を示唆した、首謀者を睨み返す。
「フホホホッ!相変わらずお主は面白いのう。
さて、恩賞を授けようか、何を望むのじゃ?」
霊帝から計画開始の合図が入る。
「は、実は先日、人物鑑定・批評の大家と言われる、許劭なる御仁と出会いまして・・・。」
チラッと許相を観ると、何か言いたげに口をパクパクしていた。
「ほう、許劭とな?」
「はい、中々に我が故郷・徐州でも知名度が高く、優れた鑑定眼をお持ちとか。
それにも関わらず無官であり、日々只無為に過ごされており、日の目を観ないのは惜しい御仁かと。」
心にも無い事と有る事を喋る糜芳。
「ほう、何進大将軍、お主は存じておるか?」
「は、名前ぐらいは・・・某めよりも、司徒殿の方が存知よりでは?
確か司徒殿のご一門だったかと。」
「何と許相、誠か!?」
「は、はは、左様でございます、私めの族弟に当たる者ですが・・・。」
急展開にしどろもどろな許相。
「ふむふむ、有為な人材登用も、国家繁栄には必要な事よのう・・・。
よし、その許劭なる者を召してみるか。
司徒・許相に命ずる。
お主の責任を以て、許劭を召喚せよ!」
「は?はは!承知致しました。」
責任はお前に有るぞと何気に宣言し、許相は二つ返事で了承する。
「ふむ、頼んだぞ許相、尚書令・盧植よ。」
「はは!」
「お主の下に、許劭とやらを就けるので、宜しく指導をしてやってくれ。」
「はは!承知致しました!」
拱手して快活に答える盧植。
(お~お、そう言や人事部門トップは、謹厳剛直の盧植だったっけ?
益々俺には都合が良いわこりゃあ)
人知れずニヤリとほくそ笑む。
(さぁ~て、仕上げをご覧じろ。
計画の始まり~始まり~ってか)
こうして、許劭が朝廷に仕官する事となり、許劭及び許家滅亡計画が開始されたのであった。
そして・・・
「おのれ~あの小僧が!まんまと逃げおおせたか!
何時か必ずや、受けた恥辱を返してくれるわ!」
地団駄を踏んで、興奮しきりの許劭。
許劭にとって憎き小僧・糜芳は、1月の謁見を終えると、賊徒討伐に赴く軍部の軍勢に便乗し、サッサと帰郷していた。
挙げ句に暗殺依頼をした事が、どこからともなく漏れて騒ぎになった上、袁家が許家に泥を被せて、失脚を画策しているという情報まで流れ、それを防ぐ為に暗殺する処か、不本意にも警護依頼に変更する有り様だったので、余計に苛立ちが募っていた。
2月、族兄の許相からの推挙という形で、許劭は朝廷に出仕。
盧植に次ぐ次官として、尚書台に所属する事となり、現在は洛陽の本家邸に逗留していた。
「せ、先生!先生大変です!」
「何事だ!?後貴様も儂の副官になったのだから、先生呼びは止めろ!」
「は、失礼しました、許劭様。
門前に人集りが出来ておりまして、許劭様に要件が有るから取り次げと、騒いでおります!」
「なにぃ!?」
元弟子・現副官の話を聞いて、驚いた声を上げる。
(フフン、大方儂の声望と役職に釣られて、批評希望の輩が大挙してきたのだろうな)
そう思って鼻を鳴らし、
「良かろう、会ってやろうではないか。」
スタスタと門前に赴く。
そして、門前に行くと、
「「「「「おお!許劭先生、一別以来お久しぶりにございます!」」」」」
一斉に拱手して頭を下げる。
「うん?・・・おお、久しいな皆の者。」
見知ったというか、見覚えの有る顔を観て、自分が批評した者達なのが判明する。
「先生に於かれましては、朝廷への仕官が叶い、誠におめでとうございます!
なんでも尚書台の役職に就かれたとか。
其処で我々、先生から名士認定を受けた者達が、先生の御為に駆けつけた次第です。
どうか我々を存分にお使いくださいます様!」
「「「「「宜しくお願いします!」」」」」
一斉に拱手して頭を再び下げる、批評を受けて許劭から名士認定された者達。
「・・・ハハハ・・・。」
引きつった笑い声を上げる許劭。
策謀その1、「自縄自縛の計」発動。
全国の許劭から名士認定を受けた者達に、許劭が尚書台に仕官した事を、浮屠の情報網を利用して糜芳は、意図的に流した。
結果、「我こそは許劭先生に認められた名士なり。今こそ世に出て名を馳せん!」と意気込み、仕官を求めて許劭の元に、わんさか集ったのであった。
ハッキリ言って名前すら曖昧な者達でも、許劭は無下に扱う事は、難しいと言うより出来なかった。
何故なら、名士認定した彼等を無下にするのは、自身の批評家としての存在意義を、全否定するのに等しいからである。
拒否すれば自身の批評を覆す事になり、詐欺師の誹りを受けるのは確実であり、許家という三公の家柄と、自身の泰山の如き自尊心が、それを認める事は出来ず、己の批評を絶対視してしまう。
そして彼の目の前には、朝廷内の一定の人事権という、自分の自尊心と存在意義を満たす事が出来る、甘~い果実がぶら下がっており、それを貪るのに許劭には躊躇が、否、それ以外の選択肢がなかった。
コンボ、「反間の計」が連鎖発動。
許劭が自分で選択したと思っている事は、三日月形の邪悪な笑みを浮かべた、とある悪辣外道に選択肢自体を狭まれて、誘導されたものであり、自身が頭上から悪辣少年に依って、糸を引かれて動いている、哀れな操り人形に成っている事には、気付く事は無かった。
3月、外面的には許劭が、精力的に人事を一新して批評家の面目躍如をした・・・様に観えたが、内面的には強引に人事権を濫用する許劭と、それに組していると思われている許相に対する、怨嗟の声に満ち満ちていた。
なにせ役職のパイには限りが有り、功績を立てた人物に役職を奪われて、降格・解任されるのでも恨み辛みが募るモノなのに、何の功績処か実績も碌に無い、ポッと出の輩に役職を奪われたのだから、当然の帰結であった。
無論、それらを承認した尚書台トップの尚書令・盧植に、真っ先に抗議・非難の意見が届いたが、
「今は未だ始めたばかりで、許劭の人事の良し悪しを述べる段階ではなく、成敗を断じる時ではない。
しかし、降格・解任された者達は、職務に対する勤務態度が悪く(サボり)、適応性に欠け(無能)、公私混同(賄賂受領等)が著しい者達である。
他人の事を非難する前に、職務に於ける常日頃の己の所業を、省みてから物を申せ!」
盧植は許劭の成敗は保留とし、抗議に対して降格・解任した事由を述べて一喝、一刀両断して退ける。
策謀その2、「怨恨指向の計」発動と同時に、コンボ「離間の計」・「2者2得の計」が連鎖発動。
許劭が行った一連の行動は、現代で言えばリストラ対象の選定役という、首切り役と同様の事をしており、当然リストラを敢行した会社・役員よりも、直接名指しでリストラを宣告した分、許劭の方が遥かに怨恨を買っていた。
つまり、許劭に名家・宦官閥の怨恨を、集中させて押し付けながら、しれっと中間管理職の悪吏・汚吏の排除を行っており、2者(何進・霊帝)にとっては、国家予算の中抜き・横領・給料ドロボーや、無能の尻拭い・不徳がウンたらと無茶ぶりな、責任転嫁等が減るという、かなりの大儲けであった(1得)。
因みにだが、優秀な人材に対しての人事権濫用は、盧植(荀攸)が却下してしっかりとブロックしており、ちゃんと悪吏・汚吏のみ排除されている。
そして、許劭が推挙した形の人材が、優秀で有ればそのまま留任させて使い、無能で有ればサッサと解任にして、空いた穴に何進配下を繰り上げるなり、優秀な人材を抜擢するなりと、自由にカスタマイズ出来、ついでに無能な人材の責任は、当然推挙した事になる許劭の責任になり、当人の失脚や連座で許家ごと潰す、大義名分を得れるというオマケ付きである(2得)。
これにより許劭の人事一新が、成功しても失敗しても損失が殆ど無く、「悪吏・汚吏排除に依る国家の清浄化と、優れた人材獲得の可能性」という、利益を得れる何進・霊帝であった。
これが糜芳が荀攸に言っていた、「両者にはどっちに転んでも、利益になる」の内訳であり、失敗したら何進には、「優れた人材のお蔭で、民部の負担が減るor無くなってラッキー!」という、最大の利益になる理由である。
それはさておき、
知らず知らずの内に、「得れる利益・成功は何進・霊帝のモノ、被る損失・失敗は許劭(許家)のモノ」という、状態に陥っているのに気付かず、哀れな許劭は、益々状況を悪化させるのであった。
4月、前述の通り役職パイには限りが有り、最初の内は、政敵・宦官閥や何進からパイを奪って賄い、やりくりしていたのだが、遂には自勢力以外の名家閥の役職パイにも手を出し、他の名家閥勢力と深刻な関係悪化を招き、派閥内で孤立化を深めていく。
しかしそれでも許劭は、自身の批評家としての体面を保つ為に止められず、後見人的立場である許家頭領・許相も止めなかった。
何故ならパッと見は、自分の息の掛かった人物を、どんどん管理職に就かせている事で、自勢力が飛躍的に大きくなっている、様に観えたからである。
このままいけば、「四世太尉の楊家を凌いで名家閥筆頭に、四世三公の袁家を抜いて、豫州の名家筆頭格になれるかも」という野心を抱き、猛プッシュをしていた。
確かにこのまま何事も無く、許劭の人事登用が上手くいけば、許相の思惑通りになったかもしれないが。
5~6月、許劭が推挙した形で登用された、許劭公認名士達が、横領・賄賂受領といった不祥事、職務を全う出来ずに滞らせて、機能不全を引き起こす不始末をしでかし、証拠・証人・証言の3拍子揃った状態で、次々と告発された。
しかも告発したのが、政敵の宦官閥だけでなく、身内の名家閥からも告発されるという、前代未聞の珍事を現出させる程である。
余程の怨恨を買っていた模様である。
丁老師の如く、長年の付き合いでその人物の、人柄・能力・適性を観たうえで、内面的要素を厳選して評価して推挙したのとは違い、許劭の場合は、家柄・血筋が良い=良いから自然と出世出来る=出世出来るという事は、優れている証=名士認定という、外面だけを観て評価し、野放図に大勢の人物を、家柄・血筋を観点に評価して、役職に推挙した結果であった。
助けを乞おうにも恨み辛みを、身内の名家閥にすら買っており、孤立無援になっていた。
7月、これらの告発を受けて、許劭公認名士達は次々と逮捕され、厳しい取り調べ(拷問付き)を受け、自白の後処断される。
一連の騒動を見定めた盧植は、
「許劭の批評は全く当てにならず、それ処か国家に害悪を齎しました。
それに加えて、虚言を弄して悪人達を名士と評し、世間を誑かす事もしております。
依ってを厳しい処罰を以て、綱紀粛正に努めるべきかと心得まする。」
霊帝に上奏し、霊帝も有る意味、面子を汚された形になるので、2つ返事で了承される。
8月、不祥事を起こしたとして、役職を解任されて蟄居謹慎中の、許劭・許相の下に勅使が訪れ、許劭は「虚言を弄して世間を欺き、国政を乱した」と責を問われ、許相は「許劭の悪罪を知りながら、頭領として、これを正さず処罰せず放置し、国政を乱したのを助長させた」と責を問われ、両者共々「国家騒乱罪」に処せられた。
これにより許家一族は、一応父祖の功績が考慮されて死一等を減じられ、所有する財貨・土地屋敷等の全ての財産を没収、爵位剥奪の上で庶民に落とされる、改易処分となり、司隷(洛陽)を追放され没落。
事実上許家一族は、再起不能の滅亡を迎えた。
そして許家一族の処分後、同月に何進が上奏し、
「先の許劭同様、世には官爵を賜っているにも関わらず、出仕もせずに批評と称して虚言を弄し、世間を騒がす不届き者が、少なからず居ります。
又、世間を騒がせずとも、父祖の功績に臑を齧り、同じく官爵を賜っているのに出仕せず、国難を他人事の様に傍観している、不忠者もいるとか。
何故にその様な国家に害を為し、国難を放置する不義不忠の穀潰しに、官爵を与え俸給を与えなければいけないのでしょうか?
然るに穀潰し共の爵位・俸給を没収し、真に国家に尽くして、国難に立ち向かっている者にこそ、キチンと与えるべきです。」
適正な名誉授与と富の分配を訴えつつ、詐欺師紛いとクソニートの、社会的制裁も訴えた。
この時代属尽と呼ばれる、ボ○ビー(劉備)を含む劉姓の末端以外にも、官爵持ちの貴人=貴族の一定数が、五体壮健の癖に働きもせず爵位別俸給を貰って、遊び呆けているクソニートだった。
そのクソニートの中で、許劭の様に偶々生まれた家柄が良く、意識高い系がやっていたのが、人物批評家という名の、詐欺師紛いor占い師擬きであった・・・世も末である。
そんな羨ま怪しからん、怠惰な生活を送っている許劭の様な輩に、太守としてヒイコラ働く、糜芳の羨望と嫉妬と私怨が、三体合体して三位一体化した結果、「働け!!男授苦」が考案され、今実行に移されたのである。
早速朝議に諮られて、両派閥連中が形ばかりの反対をした後に可決され、霊帝の承認を得て正式に決まったのであった。
因みにだが、両派閥連中が何進の意見を、素直に認めた理由は、「自分達は、真に国家に尽くしているから、分配金が貰える」と考えたからである。
・・・面の皮の厚さと、それに比例する皮算用は、大したモノであった。
それはさておき、
そうして、「働け!!男授苦」計画が実施され、全国の出仕していない、官爵持ちの爵位を没収して民爵に落とし、庶民に落とした。
(因みに夏侯家は、民爵なのでセーフ)
これにより、大勢のクソニート連中は、生活保護費を貰えなくなった上、国家に納税の義務も果たす事となり、隠者気取りは余程の土地(農地)持ち以外は、税の取り立てに依って、生活難に陥って仕官を目指し、批評家連中は、自身が国家から批評されて、庶民に落とされたので、批評家としての声望を失い、面目丸潰れで失業した。
そして同時に、策謀「太閤検地に於ける、国人一揆顛末の計」が発動。
「もしも、不穏な動き(反乱)を元官爵持ち達が、企ていてそれを知った場合は、お上に訴え出よ。
高額の報奨金を、主上の名に於いて与える。
もし、不穏な動きを知って、それを未然に防いだ者・者達の場合(首謀者を討ち取る等)は、その元官爵持ちの財産(財貨・土地)を、全て分け与える。
例え奴隷・罪人であっても赦免し、布告通りに与えるものとする」
何進は全国に布告を出して告知された。
布告を告知した事で、クソニート連中の不穏分子・反乱分子に掣肘を加えて、反乱に加担するよりも、反乱を倒した方が遥かに利になると、官爵持ち連中の周囲に知らしめて、反乱抑制と制圧・鎮圧策を施したのであった。
実は荀攸がこの爵位没収に於いて、1番の懸念材料が元官爵持ち連中に依る、集団的反乱が勃発して全国に燃え広がる事だった。
しかし糜芳は前世の歴史知識に於いて、似たような事例を知っていたので、説き伏せたのが、曹嵩邸に於ける密議の内容である。
糜芳が参考にした、「太閤検地国人一揆」の内容は、かなり端折って言うと、豊臣秀吉の検地(土地の境界線と税率の確定宣告)に拠って、中間支配層と呼ばれた豪族(国人)の、既得権益である兵権・税徴収権等が失われて支配大名に奪われ、それに怒り狂った国人達が結託、北は東北から南は九州までと、全国各地で大規模な反乱を興したのであった。
これにより、さぞや豊臣秀吉や支配大名は、厳しい窮地に陥ったかと思われたが、全くそんな事は無く、殆どが即座に鎮圧されて、国人一揆自体ぶっちゃけ半年も保たなかった。
その理由は単純明快、今まで国人達の兵士として、働いていた領民が殆ど従わず、寧ろ国人達を、討ち取る側に走ったからであった。
何故そうなったかと言うと、単純に国人達に味方しても領民達には、全く利益が無かったからである。
同じ税を払うのなら、兵力が数十・数百の豪族と、数千・数万の大名、どちらの下が身の安全か?
豪族に与して戦って手柄を得ても、雀の涙程の報奨と、大名に与して戦って手柄を得たら、滅ぼした豪族の土地を分け与えられる報奨の、どちらが利益になるか?と、天秤に架けた結果だった。
・・・まぁ、言わずもがなの選択であったが。
皮肉にも散々国人連中が大名の間で、利害得失を天秤に架けて、離合集散していたのと同じく、領民からも利害得失の天秤に架けられ、女子供の区別無く一族一門が悉く、元領民兵達に依って討ち取られ族滅、しっぺ返しを喰らって滅亡したのである。
領民達からすれば、国人の一族一門を生かして置けば、最悪再興が認められて復讐されたり、貰った土地の返還をさせられたりと、己達の将来の禍根になると判断して、徹底的に滅ぼしたのだが、結果的にその行為が、豊臣秀吉の残虐的行為として、後世に残す事となり、結構な風評被害を、己の預かり知らぬ所で被った太閤さんだった。
それはさておき、
そうした内容の話しを、対象者を国人=官爵持ちに、既得権益を税徴収権=生活保護費に置き換えて、実際の史実の結果を、荀攸に説明した所、
「お、恐ろしい結末ですな。
しかも非常に説得力が有るのが何とも・・・。」
真冬なのにダラダラと冷や汗を流し、若干震えているようだった。
因みに密議を聴いていた曹嵩は、許容量オーバーして、意識を失っていた。
「しかしながらコレでは、何進閣下の中央・地方名家の支持を失って、後々面倒になるのでは?」
という疑問を荀攸がしてきたので、
「寧ろ地方では大歓喜されますね~。」
はっきりと地方の実情的感想を述べた。
「大歓喜、ですか?」
「ええ、真っ当な地方名家は大体州・郡・県に出仕して働いています。
ハッキリ言って属尽や、出仕しない官爵持ちを、穀潰しと毛嫌いしている人達が、圧倒的ですね。
遊び呆けている輩を、真面目に働いている人々が、快く思う筈が有りませんから。」
間違いなく閣下の声望が上がると、太鼓判を押す。
「それに、中央名家・名家閥自体が閣下に取って、政敵なのですから、今更阿っても無意味です。
そして、名家出身ではない、閣下ならではの意見として、支持母体である軍部や、真っ当な名士達には高く評価されましょう。」
「う~む、確かにそうですな。」
糜芳の意見に頷く。
こうして発動した策謀、「許家一族破滅に託けて、朝廷内部清浄化及び、クソニート撲滅計画」の成功により、糜芳は許家から身の安全を十全に確保。
何進は政敵の減退と、内部権力の拡大に成功。
霊帝も無駄飯喰らいから国家予算支出を取られる処か、税徴収してしっかり回収出来る事となって、大喜びであった。
因みに、この策謀計画の成功を収めた何進は、「絶対に糜芳君とは、敵対しないぞ儂は!」と心に誓い、ご機嫌取りに国家最高権力者が、せっせと涼州に居る一地方官の糜芳に逆賄賂を贈るという、珍事態を起こしたのであった。
続く
え~と、これで許家一族との、確執とその結末は終わります。
作文構成が下手で、起承転結が長くなり、申し訳ありません。
作中に書いている、「太閤検地に於ける国人一揆の顛末」については、個人的な独自解釈ですので、悪しからずご了承ください。
次話からは、作中の末尾にちょっぽり書いてあった地域をメインに、話を書いていこうと思っております。
楽しんで読んで頂ければ嬉しいです。
優しい評価をお願いします。




