その6
徐州東海郡郡治所執務室
12月中旬、かねてからの浮屠暗部の情報通り、洛陽から勅使が訪れ、恭しく執務室にて拝礼しつつ、職員一同丁重に出迎えていた。
「上意である!東海郡太守糜芳に告ぐ!
主上より、新年の挨拶に参内せよとお達しである!
すぐさま参内に合わせて、準備を致すようにせよ。」
「はは、委細承知仕りました。
急ぎ準備に取りかかりまする。」
勅状を見せる勅使に、へへーと拝礼する糜芳。
「うむ、しかと申し付けたぞ。」
「はは!勅使様に於かれましては、遠路はるばるご苦労様にございます。
ささやかでは有りますが、慰労を兼ねて宴を開く予定ですので、どうかお楽しみくださいませ。」
「おお、忝い。有り難く相伴に預かろう。」
「はは~。」
糜芳の気遣いに、コクリと頷く勅使。
(めんどくせ~、父上も苦労したんだな~)
拝礼した状態で、内心で愚痴る。
前までは無位無官だったので、当主で父の糜董に丸投げしていたのだが、今回は自身が手配・段取りせねばならず、四苦八苦したのであった。
(まぁ、勅使は良いんだけどさぁ~・・・)
尹旋や金敦に目配せして、勅使を見送った後入れ違いにガチャガチャと、金属が擦れる音が聞こえ、
「糜芳殿、お迎えと洛陽迄の護衛に参上しました。
我等夏侯・曹家一党にお任せあれ。」
厳めしい面構えで完全武装した、夏侯惇が入室して来て、バシッと拱手してきた。
(いやなんでアンタらが此処に来んのよ!?
え~と・・・どないしょーこれ・・・?)
どうしてこうなった?と、頭を抱えるのであった。
東海郡太守館居室
「・・・殿?コレは一体、どういう事ですか?」
微妙に引きつった笑みを浮かべ、居室の出入り口処か、外側の窓際にまで歩哨に立つ、夏侯・曹家連中に目線を向けて、糜芳に詰問をする笮融。
「・・・判んない。」
「判らない訳ないでしょう?
誰がどう考えても殿が、曹嵩様に送った書簡が原因でしょうが。
どういった内容を、書いて送ったのですか一体?」
ジト~と老僕のフリをした、暗部の護衛隊長と共に、半眼でみつめる。
「え~と、普通に洛陽に行った際には、心苦しくて申し訳ないのですが、貴宅に泊めさせてください、ってお断りをして・・・。」
天井に視線を上げた状態で、思い出していく。
「そんで、もしかしたら私を泊めたら、其方にも危難が降り懸かるかも知れないので、ご無理なら使いの者に言ってくださいって、知らずに巻き込んだら申し訳ないから、一言添えたぐらいだけど・・・。」
「「それですよ、それ!」」
指差してつっこむ笮融達。
「お伺いを立てる処か、救援依頼の書簡に、なってしまってますよそれだと。」
こめかみに手を当て、困った表情を見せた。
事実糜芳の手紙を受け取った曹嵩は、ビックリ仰天して、すわ一大事と息子に確認・相談→父親から手紙を受け取った名短体は、名短体に相応しく即事情を把握→父に糜芳と許家の諍いを報告、同時に従兄弟に事情説明→名短体から事情を聴いた従兄弟さん大奮起、今こそ一族の恩義を返す時!ついでに無役で暇を持て余しているから、暇潰しを兼ねて皆の者、出陣じゃあ!!←今ココである。
「・・・どうしよう?」
溌剌とした表情で、歩哨に立つ夏侯・曹家一党に目線を這わし、困惑気味に笮融に尋ねる。
「どうしようも、こうしようも有りません。
このまま夏侯様に、護衛して頂く他ありませんよ。
此処までしてくださっているのに、断るのは曹嵩様の面子を潰す行為なり、角が立ってしまいます。」
素直に受け入れるべきと諭す。
「え~と、じゃあ例の暗部に依る、「八百長計画」はどうすんの?」
「無論全てご破算、1から練り直しです。」
苦虫を噛み潰したかの様な表情でボヤく笮融。
笮融の後ろに控えている、老僕風の護衛隊長でイー(仮名)と、襲撃側の代表と綿密に練った計画が、夏侯惇達というイレギュラーの存在のお陰で、あっさりと崩れていた。
「どうするイー?」
「こうなっては計画を中止して、別な方策を練るしかありませんな。」
イーは肩を竦め、
「強引に当初の計画を、実行出来ない事はありませんが、予測不能になってしまい、導師様に不測の事態が起きかねず危険です。
それに、夏侯惇と申された御仁と1人~2人程、かなりの武芸の手練れと見受けます。
加えて率いて来ている人数を勘案すれば、下手を打てば襲撃班が、大痛手を食らいかねませんぞ。」
懸念を示す。
(まぁ、夏侯惇と曹洪は、三国志ゲーム界隈だと、結構武力上位に入るからな~)
護衛隊長格の2人を思い浮かべて、イーの意見に賛成する糜芳。
「なる程、では何か良い方策は有るか?」
「こうなれば、襲撃計画が導師様側に漏洩している事を、ワザと広めましょう。」
顎に手を当て、思案するイー。
「それはどういう意図だイー?」
「漏洩している事を許家側にも話し、現状に於いて襲撃すれば、確実に疑われて却って害になると、許家に警告するのです。」
「ふむふむ。
ワザと知らしめる事で、抑止させる魂胆か。」
なる程と頷く。
「その上で許家が漏洩をしたと責め、向こうの非にして契約を破棄し、違約金として依頼料を没収して尚且つ、裏社会に「許家の口は軽い」と噂を流布しましょう。」
「え?それ大丈夫なの?」
糜芳が首を傾げて質問する。
「は、導師様。全く問題ありませんぞ。
許家はウチらと導師様の、繋がりを知りませんので、此方の裏事情など知り得ませんから。
それに古今より、寝物語や酒の席で重要機密を洩らすなど、枚挙に暇がないですし。」
「まぁ確かに、なる程な~。
そういう風に、許家の誰かが漏らしたとして、許家の非を責め立て様って事か。」
悪魔の証明に持って行く事で、許家側を紛糾させて、非を向こうに擦り付ける腹積もりな事を、理解する。
「左様にございます。
加えて口が軽いと知れ渡れば、有名処は相手にしなくなるでしょうから。」
「ん?そうなのか?」
「ええ、幾ら銭を積まれようとも、誰しもが依頼者のウッカリペロリで捕縛され、晒し台を架せられて、晒し首になりたくありませんので。」
命有っての物種ですからと、淡々と告げる。
「ふむ、良し、その作戦でいきましょう殿。」
「そうだね、そうしよう。」
「はは、承知しました。では早速・・・。」
糜芳と笮融の同意を得て、素早く去っていくイー。
「しっかし、夏侯惇殿も身内に太尉っつう高官が居るんだから、幾らでも朝廷に仕官の口が有るだろうに、こんな所で燻ってるなんて、勿体ないよなぁ、どう考えても。」
イーが去るのを見送った後、首を傾げて疑問をふと思い浮かべる。
「まぁ、なまじ高祖以来の最古参の家柄が、その仕官の口を阻んでいるのですよ殿。」
糜芳の疑問に笮融が口を挟む。
「どういう事?」
「軍部最高位・太尉に成ったと言っても、曹嵩様自身には軍部に伝手が殆ど有りません。
有るとしたら将校位の子息・曹操様ぐらいです。
そうなると精々将校の部下待遇が精一杯、曲がりなりにも最古参の家柄の当主、将軍位を持っていても不思議ではない人物が、成り上がりの曹家の部下、下士官の下に付く事となって世間体が悪く観られ、却って家を貶める羽目になってしまいます。」
夏侯惇を取り巻く周りの現状と、
「かと言って虎賁や羽林といった、皇帝の親衛隊も現状、袁家を始めとする名家や、宦官閥の十常侍の関係者がひしめいており、飽和状態とか。
此方方面にも伝手が弱い曹嵩様では、とても夏侯惇様を押し込む事は不可能でしょうな。」
非情な現実を説明する。
(う~ん、なる程なぁ。
家柄・血筋が有って、曹魏の大将軍に成る程の優れた名将が、無位無官で燻っていた理由が解ったわ)
出自に恵まれても環境が悪いと、どうにもならない現実に、世の中儘ならないモンなんだなぁと、つくづく思う糜芳であった。
豫州沛国譙県夏侯淵邸
笮融とイーとの談合を終えた糜芳は、元々暗部提供の情報で、主上に年始の挨拶・謁見が有ることを把握していた為、とっくに準備は万端整えており、勅使来訪の翌日夜明け前には夏侯惇達を護衛に、兼ねてからの打ち合わせ通り危険性を考えた体で、馬車ではなく騎馬で換え馬をしつつ移動。
徐州東海郡郯県から豫州沛国譙県までを、小休止を挟みつつほぼ駆け通しで移動して、昼過ぎには見慣れた夏侯淵邸に到着し、一泊する事となった。
「お待ちしておりました糜芳殿。
大したお持て成しは出来ませんが、ごゆるりとお休み頂けますよう・・・。」
鎧を着込んだ夏侯淵が、拱手して出迎えてくれる。
「ど、どうもありがとうございます。」
「ささ、此方へ。」
夏侯淵に案内されて、ギィィと扉を開けると、
「いやはやようこ・」バタン!
「失礼、少しょおうお待ちを!!」
何処かで見覚えのある、短体が見えた瞬間扉が閉められ、作り笑いを浮かべてペコペコ謝った後、夏侯淵は猛然と部屋に突入する。
ドタンバタンと音がした後、再び扉が開かれ、
「・・・スイマセン、ウチのバカ義兄がど~してもお話がしたいそうで・・・。
心苦しいのですが、ちょっとお願いします。」
諦念の表情で、糜芳に手を合わせる。
「はぁ、解りました。」
てくてくと入室し、曹操の対面に座った。
「あ~改めてようこそ参られた、糜芳殿。」
「久方ぶりです曹操殿。」
互いに拱手して挨拶を交わす。
「ま、ま、喉が渇いておられるだろう?一献。」
「いえいえ全然平気ですので、お気遣いなく。」
笑顔でコ○ンがおちゃけを注ごうとするのを、糜芳も酒杯に手を翳し、笑顔で拒絶する。
「まぁ、マァ!マァ!そ・う・い・わ・ず!!」
「い・イ・エ!おぅ・かまいぃ・なぁぁく!?」
力を込めて手を退けて、酒を注ごうとするコ○ンと、必死に抵抗して、拒否する糜芳の力が拮抗し、両者の腕がバイブの如く震える。
ドゴォォ!!
「うぼぁ!?」
「止めんかい操兄!ウチの賓客に何してんだよこの野郎!?無理強いすんな!」
近くに侍っていた夏侯淵が、曹操をシバき倒す。
「言ったよな俺?要らん事したらシバくって?」
「ヌォォォ・・・場を和ませようと、冗談でやったのに・・・わ、解ったから、追撃は止めて!?」
再び握り拳をし出したのを観て、両手を左右に振って、止めてアピールをするコ○ン。
「え~と、コホン・・・失礼した。」
「本当にな操兄。」
「茶化すなよ。悪かったから・・・。
え~と、糜芳殿、貴公何やら面倒事が出来しているようだなどうも。」
急にシリアスな顔になって、糜芳に話しを振る。
「え、ええそうなんですよ。」
緩急のギャップに戸惑いながらも、頷く。
「ちょっと許家の許劭殿と、いざこざを起こしちゃいまして・・・その影響なのか、良からぬ噂が耳に入って来たものでして。」
「ああ、許劭との諍いは聴いている、と言うか豫州では童でも、皆知っている話だからな。
しかし貴公はクソ度胸があるな。
あの批評の大家と称される許劭に、正面から喧嘩を売るとは。」
にたぁと笑みを浮かべて、感心するコ○ン。
「あ、そう言えば許劭殿は、曹操殿にとって批評して認めて貰い、名士入りのきっかけを作った、大恩人に当たる人物でしたっけ?」
やべえもしかしたら、曹操を敵に回した俺?と、戦々恐々と当人を観ると、
「ククッ、ハハハハハハ!!
あの許劭が俺の大恩人~?
んなわけ無かろうが。ハハハハ!」
腹を抱えて大笑いしていた。
「あのなぁ糜芳殿、彼奴とは俺の本当の大恩人で、無名だった俺を高く評価してくださり、就業先まで推挙してくださった、九卿・三公を歴任された橋玄様の紹介で会っただけだぞ?」
「え、そうなんですか?」
全く許劭の事を、重要視していないのに驚く。
「ああ、しかも彼奴は橋玄様の紹介だから、嫌々仕方なく面会に応じましたとばかりに、露骨に見下した態度をとった嫌な奴でな。
腹が立ったんで剣の柄を握って、抜剣するフリをした途端、血相を変えてペラペラ囀り始めた挙げ句、言った内容は橋玄様の二番煎じと来たもんだ。」
ハンッと嘲りの声を漏らし、
「そんなちょっとした脅し程度で、音を上げる胆の小さい臆病者且つ、父祖の遺名や遺業に縋っているだけで身のない、「※墓の中の骨」の様な小人なんぞ、誰が敬うモノか。」
吐き捨てる様に、嫌悪感を示した。
※(父祖の遺業・遺名を墓碑に記すのが、この時代は普通であり、転じてその墓碑に記された、遺業・遺名という遺産の中でしか活動出来ない事を指し、意味は自身は中身の無い(骨)無能なので、就業・仕事も碌に出来ずに、自力で生きていく生活能力もない、父祖の臑を齧っているだけのスネ○ゃまの意)
「まぁとはいっても俺の場合、一応橋玄様の紹介で会った以上、貴公の様に論破して辱めると、紹介元の橋玄様にまで累が及んで、要らぬ迷惑を掛けてしまうし、小人に付き合うのが阿呆らしくなって、大袈裟に喜んだフリをして、とっとと帰ったがな。」
苦笑いして肩を竦める。
(う~ん、事実は小説よりも奇なりってか?
許劭って確か、「後漢書」とかに記されている人物だったっけか?
またまた原本作者に依る、自身の父祖をヨイショする為の、名家礼讃て言う印象操作の一環かよ)
三国志の覇者・曹操は、自分の父祖(名家閥)が見出したんだ!といった、アピールをしたかったんだろ~なぁと、曹操の話を聞いて予測する糜芳。
史実としてコ○ンは、橋玄に関しては恩義を感じており、丁重に弔っている記録が有るが、許劭に関しては一切そういった類の話が無い事から、コ○ン自身が許劭を全く評価していなかった事が窺える。
それはさておき、
「おっといかん、話が大分逸れてしまったな。
話を戻すが糜芳殿、貴公は許家だけでなく、袁家にも狙われているぞ。」
「ハイ?袁家が僕を?何故に?」
全く予想外の敵?に、目が点になる糜芳。
糜芳の死角になる左側(基本的に刀剣類は、左腰に差して右手で抜くのが世界共通なので、正面・右側の敵には抜いた状態の流れで、スムーズに対処出来るが、左側の敵の場合は、抜いた後左に身体を方向転換する必要があり、タイムラグが発生する為、死角となる)に侍っている、従僕兼暗部の護衛隊長のイーが、ピクリと極僅かな反応を示した。
「単純明快な事だよ。
貴公を許家が刺客を放って襲ったと装って、許家の失脚を狙っているのさ袁家は。」
「成る程、袁家からも刺客を放って、それを許家に押し付ける魂胆ですか・・・厄介ですね。」
質の悪い厄介事に、嫌そうな表情を浮かべる。
「ご名答、その通りだ。
袁家の場合の厄介さは、成功しようが失敗しようが、全く問題ない事だからな。」
「そうですね。
刺客が僕を襲ったという事実が必要なだけで、僕自身の生死は関係有りませんからねぇ。
そうなると、確実に襲撃が有りますか・・・ハァ。」
溜め息混じりに正解を導き出した糜芳。
チラリとイーに目配せすると、「申し訳ありません、中座させて頂きます」と退室していく。
「しかし良くそんな情報を、入手出来ましたね?」
「まぁ、コレも単純明快と言うか、何というか。
袁家より最前からちょくちょく、「協力する」・「手伝わせてくれ」と言って来て、「だから行動予定を教えてくれ」だのと、あからさまに魂胆見え見えな探りが入ってきてなぁ。」
アホなのか?正気か彼奴等?といった、呆れ果てた顔で話す曹操。
コ○ンの監視役を務める夏侯淵も、「・・・ば、馬鹿過ぎる、オツムがパーとしか思えん」と、有る意味恐れ戦いていた。
「確かに脳足りんのパーな所行だが、ポンポン実行出来る兵力・財力は有るから質が悪い。
大方、中央での三公復帰と、地元の汝南郡筆頭名家の、復権を目論んでいるんだろうがな。」
「ああ、同郷且つ中央でも大家の、許家が転ければ、自動的に袁家が浮上するという訳ですか。」
袁家に依る襲撃計画の動機を知って、理性的には納得する糜芳。
感情的には、「ざけんなよ呆けぇ!?」であったが。
「まぁ、そういう皮算用だろうな。
此方としてはそんなアホの皮算用に、乗る謂われはないから・・・っと、コレを使ってサッサと豫州を通り抜けてくれ。」
懐から徐に、一巻の竹簡と割り符を取り出して、卓の上に置く。
「え~と、コレは?」
「竹簡の方は、太尉となった親父殿直筆の書簡で、貴公と惇達の身分保障をする、証明書の類だ。
そしてその割り符は、軍で緊急時・非常時の際に使用される、城市や関での通過手続きをせずに済み、そのまま通過出来ると共に、必要なれば軍需物資(軍馬・食糧等)も徴発出来る、最上位のシロモノだ。」
それぞれの品物の説明をし、
「俺の方から袁家に探りを入れた所、「一週間は待って欲しい」とほざいていたから、それ以前に豫州を突破すれば安全だ。
帰りの方も、それらを上手く活用すれば、問題なく徐州に帰還出来るだろう。
場合に依っては、俺が袁家に偽情報を流せば、簡単に引っ掛かってくれるだろうし。
帰還してから、割り符は返却してくれれば良い。」
往復路の方策を添ずる。
「あ、ありがとうございます!曹嵩様には感謝の言葉も有りません!
洛陽でお会いする際には、キチンと曹嵩様に礼をさせて頂く所存であります!」
殊更に曹嵩の2文字を強調して礼を述べ、快活な笑顔を浮かべる。
「え?俺は?」
「え?孝道に沿って曹操殿も、曹嵩様の為に行動なされたのでしょう?
それならば、曹嵩様に感謝して恩義を返すのが、当然だと思うのですけども?」
「うぐっ・・・ぬぬぬ・・・確かに。」
糜芳の指摘に唸り、ショボンと肩を落とすコ○ン。
(あ、やっぱりコイツ恩義を被せて、歌曲を強請る腹積もりだったんだな・・・油断も隙もね~な)
半眼で見つめつつ、脳内で確信する。
「ふむう、やむを得んか。
ならば、親父殿の為に此度の恩返しとして、一肌脱いで貰えぬか糜芳殿?」
「はぁ、僕で出来る事でしたら喜んで?」
曹操の曹嵩の為のお願いに、首を傾げる。
「お、おい、操兄!厚かまし・「黙れ、淵。」
突然のおねだりに、夏侯淵が制止しようとするも、ズンと来るような重い口調で遮られ、沈黙する。
「貴公は確かウチだけでなく、何進大将軍閣下とも懇意であったよな?」
「ええ、幸いにもご縁が有りますけど・・・?」
なんじゃらほい?と益々首を傾げる。
「貴公だから腹を割って話すが、実は親父殿はな、悪行にまみれた十常侍達と決別して、独自の派閥・勢力形成を目論んで、目下実行中なのだ。
無論親父殿の行動理念は、貴公が先の添の葬儀で「名士の鑑」と評してくれた、曹騰義祖父様の如く、漢王朝の為に尽力する事だ。」
実父の極秘裏な行動を伝えつつ、
「はぁ成る程、左様で・・・?」
「親父殿の行動理念は、今まさに何進閣下が実施している事と合致しており、手を結ぶ余地は十分にあると思うのだが、糜芳殿はどう思う?」
「それならば、その通りですね。」
「だろう?其処でだ・・・糜芳殿から何進閣下に、それとなく伝えて貰い、親父殿と何進閣下が手を結ぶのを、手伝って貰えないだろうか?頼む!」
頭を下げて、糜芳に仲介役・橋渡し役を依頼する。
糜芳がチラリと夏侯淵を観ると、ポカーンとしているので、本当に極秘裏な話しの様だった。
(ふ~ん曹嵩のおっちゃん、そんな事を模索していたんかいな。
温厚篤実で一見すると、お人好しの優柔不断に見えるけど、芯はしっかりしてたんだなぁ。
ウチの竺兄に良く似た人物だったんだ・・・けども)
好意的に観る糜芳だったが、
「はい、協力するのは吝かでは有りませんが、現状では曹嵩様と何進閣下の貫目(重量の事で、この場合は格を指す)が違い過ぎて、不可能です。」
現実をキッパリと諭す。
現代風に例えたら大手企業の社長と、起業して間もない新米零細社長が、対等の業務提携を結ぶに等しい話に相当するのである。
常識的に考えて、不可能に決まっていた。
「傘下に入るというのなら兎も角、同盟関係に成りたいのなら、余程の手土産が必要となりますよ?」
「具体的には如何程だ?」
「う~ん、そうですねぇ・・・十常侍達が根刮ぎ失脚するぐらいの、特級情報ですかね~。」
「「無理に決まってんだろうが!?」」
糜芳の要求レベルの高さに、曹操と夏侯淵がハモってツッコミを入れる。
「いや~それでも、最低でもってぐらいですけど。」
「はぁ!?それで最低位?と言うよりも、そんな特級情報を持ってるんだったら、とっくの昔に十常侍達を排除しとるわ!?」
無茶苦茶な話しに憤る。
「そ、そんなにですか糜芳殿。
嵩叔父上も太尉(軍部事務系トップ)ですし、何進様は大将軍(軍部実務系トップ)ならば、格付けで云えば決して見劣りがしない筈ですが?」
夏侯淵が疑問符を浮かべて、糜芳に問い質す。
「確かに役職的にはほぼ同格ですが、曹嵩様と何進閣下では、圧倒的な差が有りますので。」
「圧倒的な差、ですか?」
「んなもん、純粋な権力の大小の差に、決まってんだろうが淵。」
夏侯淵の理解の遅さに、嘴を挟んで解答する曹操。
「曹操殿の仰る通りです。
何進閣下は軍部からの支持と、兵権に拠る軍事力を持っています。」
何進の持つバックを述べ、
「名家閥は長年の世襲と、人脈に拠る政治力を保有しております。」
名家の持つしぶとさの源泉を述べて、
「宦官閥は主上個人に侍る、威を借る狐的な擬似権力と、合法・非合法を問わず得た、豊富な資金量に拠る、影響力を持っているのです。」
主上の個人的使用人連中が、何故政治に関わっていられるのかを述べる。
「それぞれがそれぞれに何らかの力=権力即ち、自分の意見に従う又は、従わせるモノを持っているのですが、曹嵩様はどれも持ち合わせておりません。
それらを以て、圧倒的な差と言っているのです。」
「な、成る程、確かに糜芳殿の仰る通りですな。」
糜芳の噛み砕いた解説に頷く。
「ふむう、当面は無理・・・か。」
「残念ながら何進閣下には、現状として趙忠達と抗争してまで、曹嵩様と結ぶ利が全く有りません。
今の所僕が出来る恩返しは、曹嵩様の思想・人柄を閣下に伝えて、友好的な関係を構築する、手助けぐらいのモノですね。」
精一杯出来る事を、提示する糜芳。
「いやそれでも十分だ。
糜芳殿、改めて宜しくお願い申す。」
曹操は再び頭を下げた。
「お任せくださいませ。
丁度洛陽で何進閣下に、お会いする予定が有りますので、その折にでもお伝えします。」
ドンッと胸を叩いて了承する。
「うん?会う予定が有るのか?
と言うか貴公、今や時の権力者となった何進閣下に、ポンポン気軽に即面会出来るという、何気に凄い事をサラッと言っているんだが?
面会するのに、月単位掛かる者も居るというのに。」
感心半分、呆れ半分で糜芳を見つめるコ○ン。
「はぁ、そうなんですか?
今まで大体呼ばれて、洛陽に着いたら直ぐさま会っていたので、イマイチ判らないのですが。」
全くピンと来ずに、首を傾げる。
「なんと!?そんな迅速にか!?今回もなのか?」
「あ、はい、「洛陽に到着次第、何時でも良いから直ぐに来てくれ、場合に依っては此方から伺うから、宿泊先を教えといてくれ」と、言われてますけど。」
「もう完全に国賓扱いじゃねーかよそれ!?」
糜芳のⅤⅠРな待遇に、思わず大声を上げた。
「何をどうしたら時の権力者に、そんな国賓扱いされる事になるんだよ一体・・・。」
「いやまぁ色々と有りまして・・・。
ぶっちゃけ曹操殿が、極秘裏な話しを腹を割って、話してくださいましたので、僕も腹を割って話しますが、実は許家を潰す算段を着けておりまして、その打ち合わせで会う予定です。」
曹操の信頼を、進めている策謀を話す事で返す。
「はい!?許家!?許劭個人じゃなくて、現役の三公がいる許家自体を潰すだと!?一体どうやって?
そもそも個人同士の諍いなのに、大将軍が関与するってだけでも、おかしいだろうが!!」
至極真っ当な意見を絶叫するコ○ン。
「はぁ、僕としては許劭だけ潰して、解決するのならそうしたいのですが、向こうは家ごと敵対する様なので、禍根を残して数世の災いを、子孫に齎すのは悪いと思い、一族一門丸ごと潰す算段を思い立ち、実行に移す所ですね。
後、閣下が協力してくださるのは、僕の策謀が成功しても、失敗しても国益に繋がるからです。」
ポリポリと頭を掻いて、いや~と苦笑する外道。
「ちょっと待てちょっと待て、ちょっと待って!?
一族一門丸ごと潰す算段って何!?何で個人の諍いが国益に繋がるの!?・・・訳が判らん!!」
降って湧いた謎ワードの連続に、混乱したのか、頭をかきむしって吠える。
「まぁ、策謀の起点として、許劭を利用します。
あ、ご安心ください、今回の件は主上からも、了解済みとの連絡が来ておりますので!」
笑顔で親指を立てて、安全をアピールする。
「安心出来る要素が、何処に在るんだよ!?全っ然欠片もねーだろうが!!
主上!?主上も一枚噛んでいるのか?本当に?
淵!!絶対にヤバいぞコレ!?お前も絶対に他言するなよ!?ヘタに漏れたら、ウチら一族一門の首が簡単に飛ぶぞ!」
鬼気迫る勢いで、夏侯淵に厳命する。
「しかし、主上まで巻き込むとは・・・貴公の思考は一体、どういう構造をしているんだ?」
「極々普通に考えているだけですがね~?
利用出来るモノを、利用しているだけですよ。」
あっけらかんとした口調で、
「独り善がりの利益は、誰からも相手にされず協力を得られませんが、関わっている人達にも、キチンと利益を提供すれば協力を得られるので、そういう風に考えた結果なんですが。」
自分の行動スタンスを述べる。
「いや普通に主上を利用しようとする時点で、大概おかしいぞ貴公は。」
「はぁ、そんなモンですかね?」
イマイチ理解出来ず、キョトンとする糜芳。
現代人の思考回路を持つ糜芳は、後漢時代に於ける忌避感があまりなく、徒労的な迷惑・損益にならなければ、皇帝だろうが何だろうが、自分の敵対者でない限り、(ほんの少~しの迷惑は掛けるけど)相互利益になれば良し!の考え方を持っていた。
「すいません出自が庶民な者で、雲上人の考えが、イマイチ理解が及ばないのですよ。」
「う~ん・・・そんなモノか?
そう言われると、俺も庶民の考えはイマイチ理解が出来んから、貴公の事を言えんのだが。」
糜芳の適当な言い訳に、なんとなく納得する。
「まぁ、それはそれで良い。
これ以上下手に策謀を聞けば、取り返しの効かん事になりかねんし。」
これで今までの裏話はお終いと、暗に宣言する。
そうして話題を変えて、雑談をしていた糜芳と曹操・夏侯淵だったが、雑談の内容が周囲の近況から、自然と政治関連に戻り、やがて次代皇位継承の話題になっていった。
「・・・という訳で、今現在宮廷内は、外戚の大将軍何進閣下を後ろ盾に持つ長子・弁皇子と、最近驃騎将軍になった董重閣下を後ろ盾に持ち、名家・宦官閥の支持を受けている次子・協皇子とに、2分している訳だ。」
「へ~、そうなんですね。」
得意気に宮廷事情の詳細を話すコ○ンに、コクコクと相槌をうつ。
「さて、貴公はこの状況をどう観る?
無論、年功序列だの長幼の序を考えずにだ。」
ニタァと、悪戯っぽい笑みを浮かべて質問する。
「おいおい操兄、不敬が過ぎるぞ?」
「何、只の戯れ言だ戯れ言。
他人の口の端に上る訳でも無いのだから、細かい事は気にするな・・・さて如何に?」
「先に曹操殿の意見を伺いたいですね。」
参考に聞きたいと曹操に返す。
「俺から観れば、4分:6分で協皇子の方が、多少有利と見立てるな。」
「ほう、理由は何ですか?」
「貴公が先程言った通り、名家閥の政治力と宦官閥の影響力の、双方を両脇に抱える董重閣下の方が、何進閣下よりも強いと観た。
後は横の繋がり(一族一門等の人脈)も考えれば、もう1歩、3分:7分でも良いぐらいだな。」
忌憚なく冷静な分析を述べる。
「では、貴公はどう観る?」
「はい、僕の見立てでは、10分の割合で何進閣下が圧倒的に有利かと。」
「なんと!?その理由はなんだ?」
「単純明快に何進閣下が、軍事力という最強の権力を有しているからです。
如何に強大な政治力・影響力を得ている将軍でも、崇高な家柄・血筋を持っている名家でも、莫大な資産・財貨を持っている宦官でも、剣で首をはねられたら終わりですから。」
はっきりと言い切る。
どちらかと言うと、軍政家や政治家に観られる何進だが、実は圧倒的な武力も有している強者だった。
本人が武人肌でないのと、基本的に文治タイプなので武力行使をあまりせず、柔弱なイメージが付いている節があり、後に地盤を引き継いだ形の董卓とは、正反対な印象を持たれていた。
「う~む、しかし軍事力で言えば、虎賁・羽林を抱えている両派閥も侮れまい?
それに驃騎将軍という、大将軍に次ぐ軍部の大物、董重閣下も居るぞ?
それらが有って、10分は流石に無かろう?」
いくらなんでもと、渋い表情を浮かべる。
(ええ~?あの曹操がすっとぼけた事って・・・ああ、そういや今は未だ独立してねーから、中央の価値観に、ドップリ浸かってる状態なのか)
ピントのズレた発言をする、乱世の姦雄様に驚いた糜芳だったが、今は治世の最中な事を思い出したので、
「派閥の勢力分布が入り乱れて、指揮系統の統一も成されておらず、実戦経験皆無の烏合の衆、虎賁・羽林を合わせても精々1万程の軍。
黄巾賊の際に凡将・崔烈と愚将・張純を推した、人事に暗く、マトモな軍政・実戦経験を持つ、指揮官・司令官が皆無な、軍事音痴な派閥首脳陣達。
驃騎将軍という、軍部の大物将軍であっても、自身の将軍府(軍団設立)を開いておらず、一兵卒も兵力を持っていない、紙面上の将軍・董重閣下。」
協皇子側の軍事力と、
「指揮系統は何進閣下に一元化され、派閥自体は麾下の将軍達に依って、有るものの整然としており、実戦経験も一定に有る正規軍、約20万。
名将と名高い、皇甫嵩・朱儁・盧植様の3将軍に加えて、張遼殿を含めた有能な指揮官に、軍政・政治に長けた荀攸殿・何進閣下自身。
大将軍府には数万の兵力を有し、有事の際には涼州からは董卓将軍、并州からは丁原将軍、他にも精鋭中堅兵団の孫堅殿といった、兵力約10万を持つ面々が、すぐさま駆けつける程の、太い人脈を持つ将軍・何進閣下。」
弁皇子側の軍事力を比較して、
「両方を比較して両派閥や董重閣下に、1分でも分が有ると言えますか?」
きっちり現状と現実を伝える。
因みに、分かり易く現代風に、董重と何進両者の戦力比較を例えると、
兵力:董重→見た目や装備は立派に見える、実銃を持った実戦処女の、サバゲー集団約1万VS何進→見た目は粗野そのもの、ギラギラした目つきの、実戦経験済み(殺○)のプロ軍隊約20万
指揮官・司令官:董重→第2次世界大戦で、汚名を残した迷将・痴将がズラリVS何進→第2次世界大戦で、後世に謳われた名将・知将がズラリ
(迷・痴将と名・知将共に、皆様各自の想像・妄想にお任せ致します)
トップ:董重→実質的社員ゼロ、工業系で言う1人親方、もしくはジョイントベンチャー(合弁会社)の名目上のトップ、商業的にはペーパーカンパニー(ダミー会社)の、公的書類上記載されている、実在すら怪しいUMAな社長VS何進→社員約数万、工業系で言うスーパーゼネコン(最大手総合建設企業)のトップ、商業的には地方にも有力企業を傘下に持つ、コンツェルン(財閥)やグループ企業のCEO
・・・である。
悲しいぐらいの質量共に、戦力差は歴然としており、トップの董重に至っては、ヤーさん用語でいう「お勤め要員」(ヤーさんが経営する店舗・会社で、ガサ入れ(警察に依る捜査)が有った時に、身代わりに出頭しタイーホされて、刑務所に服役する専門の人)にしか観えず、寂寥感がハンパない、悲惨極まる有り様だった。
それはさておき、
「・・・確かに、コレは歴然としているな。
僅か2~3年で、これだけの勢力を築いた何進閣下は傑物だが、逆に僅か2~3年で、それだけの勢力拡大を許した、名家・宦官連中の愚物っぷりが際立っている・・・ハァ。」
情けないと溜め息を吐き、頭を抱える。
曲がりなりにも、派閥に所属している身の為、忸怩たる思いが有るようである。
「糜芳殿の指摘通り、こりゃ弁皇子で決まりだな。」
「ええ、ほぼ確実かと。
それに、皇室の将来を考えれば尚更ですしね。」
「うん?皇室の将来にも良いと?
スマンが先史を省みて、梁冀の如く外戚専横に成ると、踏んでいるんだが違うのか?」
首を傾げる。
「ええ、何進閣下が専横を振るうのは不可能です。」
「へ?なんでだ?」
「曹操殿が先程言われた様に、何進閣下には横の繋がり(朝廷・地方・地元に出仕している、一族一門・親類縁者)がありません。
つまり、梁冀の様に朝廷内で根を張り、一族一門を要職に据えて幹の如く、親類縁者を登用して枝葉の如く、権力を伸ばす事が出来ないのです。」
「ふむふむ。」
糜芳の話に相槌を打って頷く。
「加えて麾下に入っている、皇甫嵩将軍を始めとする御歴々方は、何家ではなく何進閣下個人についており、かなり真っ当な政をしているからこそ、名家・宦官連中に愛想を尽かした、憂国の士である御歴々方は従っているのです。
専横に走れば御歴々方はこぞって、閣下の元を去ってしまい、閣下の勢力は瓦解する事でしょう。
即ち、閣下は強権を持つ独裁者ではなく、言わば真の名士が集う、連合体の盟主に過ぎないのです。」
「う~む、形態的には宦官閥に近い・・・か。」
腕を組んで思考するコ○ン。
「そうですね、細かい所は別にして近いですね。
まぁ実例で言えば、曹操殿の亡き義祖父様・曹騰様の跡を継がれた、父君・曹嵩様が家は継いでも、実権は継げなかったと同じく、何進閣下の直系でも実権を継ぐ事は有りえません。
次代の有力者に権力が移譲され、世襲に依る権力移譲の無い、現状は何進閣下一代の勢力ですね。」
過去の専横を振るった、外戚の様には成れない、出来ない事を解説する。
「成る程、しかしながら移譲される次代の有力者が、何進閣下と同・・・え!?待て待て待てよ!?弁皇子殿下か!!
そうか!!移譲される最有力候補は、弁皇子殿下になられるのか!
皇室の将来を考えればという、貴公の言っていた事はこの事なのか!!」
ダンっ!!と卓を激しく叩いて立ち上がり、興奮した表情で詰め寄る。
「ご名答でございます。
このまま順当にいけば、次代は弁皇子殿下に移譲される事でしょう。
弁皇子殿下には、名家・宦官連中の手垢が付いておりませんので、両者に軍事力を悪用されず、正しく皇室・国家の御為に振るえると有らば、皇甫嵩将軍以下軍部は喜んで従いましょう。」
弁皇子に何進の持つ実権が、移譲された場合の軍事的利点を述べて、
「又、民部でも蔡邕殿を筆頭に、徐々に色々な部署を掌握しつつあるとか。
後進の人材も育っている様ですし、次代に移譲される頃には、私利私欲に走る名家連中抜きで、蔡邕殿或いは荀攸殿達で民部を遺漏無く、皇室・国家の安寧の御為に回せる事と成りましょう。」
政治的利点を述べる。
「となれば・・・親政か!弁皇子殿下に依る、外戚・名家・宦官の横車・邪魔をうけない、帝の親政が復古するという事か!!」
立った状態でウロウロしつつ、吼え哮る。
(落ち着けよコ○ン、五月蠅いし。
しっかしいや~俺の予測通りなら、ホントにすげ~わ、霊帝は。
ホンマもんの賢人だわ)
側でワ一ワ一喚くコ○ンを余所に、白アン○ンマン顔を思い浮かべ、感心する糜芳。
この状況に持って行ったのが、霊帝と判断する根拠としては、黄巾賊討伐の総司令官に、霊帝自身が何進を選んだ事である。
霊帝自身も即位した時には、義母の実家・竇氏が、外戚として威を振るっていて、泣かされていた事実があり、宦官を利用して排除したぐらいは、外戚を快く思ってはいなかったと思われる。
そんな折に黄巾の乱が勃発し、ダブルアホ共が推した凡愚2将が敗退、責任の押し付け合いをダブルアホ共がしている最中、従兄弟で地方名家出身の董重ではなく、商家出身のド素人外戚・何進を推したのである。
普通に確率的に言えば、地方名家の董重を推すのが常識(軍務経験が有るor親類縁者に軍務経験者がいる可能性が有るから)で有る。
但し下手に功績を与えると、竇氏やそれこそ梁冀の二の舞に、なってしまう可能性も高かった。
逆に何進は前述の通り、出身がネックで専横を振るう事なんぞ、到底不可能な立場な為、霊帝としては安パイな存在であった。
但し軍務ド素人で、親類縁者も以下同文な為、討伐に成功する可能性はバイタルゼロに近かったが。
しかし案に相違して、皇甫嵩・朱儁・盧植が、「アホ共に振り回されるぐらいなら、例え賎民(奴隷と同等)出身でも、未知数の何進の方がマシ」とばかりに、召集に応じて活躍、討伐を成功させる。
同時に何進も商家出身をフルに活用し、軍政に目覚ましい活躍を見せ、大将軍の地位を確立する。
それ以降、霊帝は何進を重用して、何進の勢力に属する人物も、手厚く保護し始めた。(失脚した盧植を、尚書(人事部門のトップ)に任命等)
今度はアホ共がやらかした民部案件を、何進に尻拭いさせていると、「アホ共より余程何進の方がマシ」とばかりに、蔡邕・荀攸等が参入して活躍、民部でも実績を作る。
結果、部外者の何進に後始末をして貰い、専門家の面子丸潰れになった、誇りだけ高きアホ共は、「下賎者にやって貰わんでも、自分で出来たのに功績を奪われた!」と騒いで逆恨みし反目、敵愾心を抱いて益々離れていった。
そして今現在、「何進の出自なんぞどうでもいい、国家(皇帝)の為に尽くせるのなら、些事である」をモットーに、何進と弁皇子を旗頭とする皇帝派と、「自分達がいてこその国家(皇帝)、自分達の繁栄が国家の繁栄」をモットーに、董重と協皇子を傀儡とする非皇帝派の野合連合(名家・宦官の寄せ集め集団)に、中層部以上はキレイに分かれていた。
・・・コレ、10年単位とか、何代もかけてとかなら兎も角、僅か3年足らずで、この状態に成っているのである。
僅か3年未満で、意図的にこの状況を作るのも大概だが、自然とこの状況に成るのは、天文学的なレベルの超常現象に成ると思うのは、穿ち過ぎだろうか?
それはさておき、
(マジで後2~3年生きていたら、Xデーが発生してアホ共を処断、皇帝親政を行って、後世の評価が180°変わってた可能性があんぞこれ、スゲーよ白アン○ンマン)
褒めつつも、愛と勇気を恐れない糜芳。
(売官制とか諸々そうだけど、たら・れば・イフ付きで、ホントに後一歩が惜しいんだよな~)
未来を知っている為、霊帝の秘めた才能を惜しむ。
そして、脳内思考をしている糜芳を尻目に、未だに興奮状態が続いて騒ぐコ○ンが、「やかましい!いい加減落ち着かんかい!!」と、夏侯淵に張り飛ばされて退場したので、自然解散となる。
丁度日が暮れだしたので、食事を部屋で済ませた後、早朝から豫州を爆走して駆け抜ける為に、サッサと就寝に就いたのであった。
続く




