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24/37

fragile 6


*この話はやや大人風?です。

直接的な表現は避けたのでR指定はしませんでしたが、苦手な方はゴメンナサイ。






「ごめん…中で」


荒い息のまましばらく抱き合っていたが、息が整うと北条は申し訳なさそうにそう言い、身を起こした。

一瞬でも離れているのが耐えられないかのように悠香も体を起こし、北条にぴったりと寄り添う。


そのまま北条の頬の手を伸ばし、愛しそうに触れながら悠香は言った。



「大丈夫」


「大丈夫って…?」


北条も乱れたままの悠香の髪の毛を手で背に梳き流しながら聞き返す。




——子供が出来ても大丈夫、という意味なのか、それとも…?


と内心首を捻りながら


「そりゃいざって時には、責任取るつもりだけどさ。

だけど責任やなんかで一緒に居たい訳じゃなくて、その…」


珍しく口ごもる北条の唇にそっと指を押し当て、悠香は柔らかく微笑んだ。


「だから大丈夫よ。

今日はそういう日だから」



その言葉に北条は妙な引っ掛かりを覚えた。

しかし、それが何なのかまではわからず、軽く眉を顰める。


「智…?」


「っ!」



——さっきまで、悠香は俺を「智」とは呼んでいなかった。


「…悠香?」


恐る恐る顔を覗きこむと訝しそうにしつつも、にっこりと笑い返してくる悠香。



「俺の事…分かる?」


「…?どうしたの、一体」


あぁ、ダメだ。

こんな聞き方じゃ確かめられる訳がない。

自分に舌打ちしたい気分になりつつ、北条は質問を変えた。


「じゃあ初めてキスした時の事、覚えてる?」


途端に耳まで真っ赤に染める悠香の様子に、まさか…?と北条の期待も膨らむ。


「忘れる訳ないわ。あんな…人前で」

悠香の言葉を聞き終えるや否や、北条はがばっと彼女に抱きついた。


「ちょっ…智?」



悠香の額に、瞼に、鼻先に、唇に、キスの雨を降らせながら北条はメチャクチャに彼女を抱き締めた。


「智、苦し…」

「悠香」


彼女の頬を両手で挟み、真剣な瞳で北条は囁くように小さな声で言った。


「お帰り」



何故かその瞳が、彼の表情が、今にも泣きそうな子供のようで、悠香は少し困ったように微笑んだ。


なんて言えばいいのか分からず謝罪の言葉を口にすると、北条は静かに首を降り


「お帰り」


と繰り返した。


「…ただいま」


そう悠香が口にした瞬間、北条は一瞬目を閉じた。

そして次に目を開けた時には、それこそ満面の笑みを浮かべ悠香を見つめた。


その瞳の中にはもう翳りも悲しみも見出す事は出来なかった。


   * * * * * *


「記憶喪失だった記憶がない?

えーと、ややこしいな。

とりあえず、この数日間の記憶がないんだな?」

智の問いかけに悠香は複雑な表情で頷いた。



「全くないという訳ではないの。

何がどう、という具体的なものではないのだけど…とても悲しかった事は覚えているわ」


理由はどうあれ、悠香の記憶が戻ったと言う事で、2人はお互いに簡単な状況説明をしていた。



そんな中、ポツリポツリと悠香が言うには…具体的なシーンや台詞は全くといって良いほど覚えていないのだが、何故だかとても悲しかったのだという。


「心臓が鷲掴みにされてるみたいに苦しくて、心細くて、寂しくて。

足元さえ見えない暗闇の中、1人置き去りにされた心地がしてとても…恐かった。


でもすぐに智が来てくれて、そこだけ日が射したみたいに明るくなったの。

無条件でこの人の側にいれば…智が傍にいてくれたから…大丈夫だって思えた。

あなたがいてくれる限り、これ以上悪い事は起こらないって」


ふんわりと微笑む悠香の髪の毛を一房取って、キスしながら北条は


「俺もさ、ホントは恐かったんだ。

記憶喪失って聞かされて、俺の事も覚えてないかもって考えたら…足が震えた。

会いたいのに会いたくない、なんてすごい葛藤してさ」


と打ち明けた。


「ごめん…なさい」


「悠香のせいじゃないって。

俺が…まだまだだっていうだけなんだから。

あぁもう、せっかく「帰って」きたんだからそんな顔しないの!」



目を伏せてしまった悠香に、少しばかり慌てて北条は話題を変えた。


「でもさ、一体なんだって突然記憶が戻ったんだろうな?」


北条が口にした瞬間、明らかに悠香の様子が変わった。


「…悠香?」


「え?さ、さあ…。

どうしてかしらねぇ、ホント」


珍しくどもったりなぞして、落ち着かなさげに目線を泳がせる悠香。


そんな彼女の様子にピンと来た北条は、意地の悪い笑みを浮かべながら


「えー、そんなに良かった?

なら、もう1回」


悠香の腰に自分の腰を押し付けた。

その瞬間、暗がりでもはっきり分かるほど悠香は顔を真っ赤に染め


「誰もそんな事言ってません!

もう…調子に乗らないの!」


と北条のおでこをペチンと強めに叩いた。



「…いつもの悠香だ」


自分の肩に顔を埋め、ホッとしたように呟く北条を、悠香はしっかりと抱きしめた。


     

   * * * * * *


コレくらいなら…大丈夫ですよね?

…ね?(汗)



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