第1話:霊感ゼロ、初めてのバズ
ん……、眩しい。
夕焼けが車窓から差し込む。
寝ぼけまなこのまま、俺は辺りを見渡す。
乗客は俺だけだった。ガタンゴトンと揺れる電車の中で、いつの間にか眠っていたらしい。
それにしても気持ちのいい眠りだった。何も考えなくていい、あの感じ。
そうだ、目が覚めたのはスマホの通知のせいだ。
ポケットから取り出したスマホの画面を見て、俺は眼を細めた。
眩しかったのか、それとも数字に驚いたのか、自分でもよく分からない。
10,297再生。
「……マジか」
昨日アップした動画だ。俺が幼少期に体験したお化け体験を語ったやつ。
正直、そんなに怖くもない。動画のネタがなくて苦肉の策として捻り出した、ただの思い出話。
でもコメントが止まらない。
「3:24、後ろに何かいる」
俺は動画を開いた。3:24に飛ばす。
自分の顔が映っている。喋っている。背景は自分の部屋だ。本棚、ベッドの端、カーテン。
何もいない。
「いや普通に怖い」
「語りがうまい」
「続き出して」
語りがうまい、は正直嬉しかった。でも3:24が引っかかった。もう一度再生する。
やっぱり何もいない。
コメントに返信しようとして、やめた。下手に否定するより、曖昧にしておいた方がいい。これはコンテンツだ。
それに、やった、と思った。素直に。YouTube始めて半年、初めての1万超えだ。同時に、心霊?とも思った。俺、霊感ゼロなんだけど。
家に帰ってすぐ、俺は慌てて動画編集ソフトを立ち上げた。
次の動画はどうしよう。今まで再生数が伸び悩み、色々なことにチャレンジしてきた。
その結果が雑多なチャンネルだ。初めて伸びたオカルトというジャンルに絞って頑張ってみるか?
悩みあぐねているとLINEのメッセージが来た。
後輩の蓮だ。
蓮「1万再生おめ!動画見たよ、普通に怖かったw」
こいつ、こういう時だけ反応早いよなと半ば呆れつつ、ちょうどいいなと思い、蓮に何か怖い話のネタはないかと聞いた。
俺「ありがとう。次どうしようか迷ってる。何か怖い話ない?」
蓮「あるよ」
返信が速い。
どうやらこれは、蓮の実体験らしい……。




