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Star Sorcery ~First Dream~  作者: 龍くん
1章

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サイド愛莉その4

魔物が跋扈していた富士樹海

少し前に掃討され静かな森となっていたはずだった

しかし、森からけたたましい音が響く

音が響く近くにあるのは二つの存在

太く長いものと、小さく素早いもの


太く長いものにより、木がなぎ倒され、水飛沫が舞う

小さく素早いものにより炎が舞い散る


太く長いものの名は、水大蛇

小さく素早いものの名は、綾瀬愛莉

この二つの存在による衝突は勢いを増していく




上から巨大な影が迫る、綾瀬はそれを避け、その隙に攻撃を仕掛ける

「フレアボム!」

その魔法が水大蛇の横腹に当たり、炸裂する

しかし、その魔法は水大蛇の表面を少し焦がしただけだった

(思ったよりダメージが入らない…外皮が硬い...?)


直後水大蛇が尻尾をなぎ払うように振り回した

すぐさまに愛莉は距離を取る


水大蛇が逃がさないと言わんばかりに水のブレスを吐く

それを避けながら、愛莉は隙を探す

(属性の相性が悪いのがもどかしい!)

戦闘が始まってすぐの時だが、水大蛇が放った、水のブレスを魔法で相殺しようとした

しかし、水のブレスは魔法障壁も容易く破壊する威力を誇り、これを相殺する炎の魔法は、使えなくはないが避けてから本体に直接叩き込んだ方が、効果的にダメージを与えられるだろう


水のブレスは木を貫通するほどの破壊力だが、直線にしか飛んで来ない為、避けるのは容易い

それよりも尻尾等で直接叩かれる方が避けづらい


「今!」

水のブレスを吐き終わったタイミングで、もう一度魔法を叩き込む

「フレイムスピア!」

今回は貫通力が強い魔法だ

炎の槍が形成され、水大蛇目掛けて飛んで行く

それは狙い通りに外皮に弾かれることなく体に刺さった


しかし、刺さった炎の槍が白い煙を出し始めながら萎んでいき、消えた


(消えた…!?いえ蒸(・)発(・)した!)

刺さった魔法が蒸発したということは体内の水で消火したのか、水魔法で消し去ったのか、それは分からないが、炎魔法の強みであるやけどや延焼等の効果がほとんど意味ないということだ

(それに、デカブツ相手の有効策の体内から焼くが使えない)

普通の大蛇相手だったら丸呑みしようとしてきたところに炎魔法を叩き込めばかなりの有効打を与えられるが、炎属性よりかはましだが、水属性ということはその戦法も使えないということ、つまりは真っ正面から動かなくなるまで戦う必要があるということだ


(なら、まずは尻尾を切る、その後動きが鈍くなってきてから頭を狙う!)

まず狙いを尻尾に定めた愛莉は、そのために必要な魔法を詠唱する

「燃え盛る炎よ、我が求めに応え、敵を穿つ武器とならん、フレイムマルチウェポン!」

愛莉の周りに剣、槍、斧等の様々な武器が生み出され、浮いている

この魔法はあくまでも炎を武器の形にする魔法そのため、持って使うということは出来ない


しかし、今の愛莉にとっては好都合だった

なにせ、機動力を落とさず使えるからだ


愛莉と共に複数の武器が赤色の軌跡を残し舞う

確かに水大蛇は強敵だ、水のブレスは容易く愛莉の体を消し飛ばすだろう、その巨体による攻撃は容易く愛莉の体を潰すだろう

しかし、そ(・)れ(・)だ(・)け(・)だ(・)

それだけ気を付ければ、特に問題はない相手だ


事実、愛莉は水大蛇が尻尾で攻撃したと同時に伸ばした炎の槍で貫き、炎の槍が蒸発して消えると同時に、水大蛇を両断出来るだけのサイズまで伸ばした炎の剣と斧で尻尾を切り落とした


水大蛇が悲鳴のようなものを上げた

「よし!次は頭!」

その隙は逃さないと言わんばかりに愛莉が叫ぶ


しかし、愛莉目掛けて赤い何かが飛んでくる

「なっ…!」

それが血だと気付いた頃には、近くの木に叩きつけられた後だった


飛ばされていった愛莉の方向に水大蛇が向くと口に魔力が集中する、ブレスだ


愛莉は詠唱をする暇もなく、自身が使える最も強い魔法のひとつを使う

「フレア·バーストフレイム!」

人一人がすっぽり入ってしまうような大きさの炎が生まれ、その炎が水のブレス目掛けて一直線に飛んで行く


水のブレスと炎の塊がぶつかり、そして爆発した

周りのものを吹き飛ばすほどの爆発だ

そのおかげではあるが水大蛇から距離を取ることは出来たが


(痛っ!これは骨が何本かいってそうね)

木に叩きつけられた衝撃と爆発に巻き込まれたことで少なからずダメージを負った

(よし、手は動く。足も、なら問題は無さそうね)

自分の状況を確認し立ち上がる


(血…?なるほど周りの水も操れるのね、今まで使ってなかったのは、私の魔法で蒸発してたから?

どのみちこの怪我じゃ長くは戦えない、なら…!)


「火力全開で!」

そう勢い良く叫ぶと、今までの隙を狙う消極的な立ち回りではなく、積極的に攻め始めた


そんな愛莉に危機感を感じたのか水大蛇も負けじと攻め始める


愛莉が魔法を放つ

「フレイムスピア」


いくつもの炎の槍が生み出され、水大蛇の外皮に刺さる。そして

「バースト!」

その言葉と共に炎の槍が爆発する

水大蛇の体内から焼こうとしているのだ


しかし、そこに深紅の塊が飛んでくる

それと同時に水大蛇の口に魔力が集まる

血を操った魔法で動きを止めて、ブレスを当てようとしているようだ


しかし、水大蛇が操る血から逃げながら、愛莉はニヤリと口を歪め、叫ぶ

「それを待っていたわ!」


愛莉は水大蛇の方に方向転換し、詠唱する

「燃え盛る炎よ!今ここに、破壊のなんたるかを知らしめせ!フレア·エクスプロージョン!」


水大蛇の上から炎の塊が落ちてきた

そして爆発した

水大蛇の全身を覆うほどの炎に包まれた


しかし、愛莉にはひとつ違和感があった

水大蛇のブレスを暴発させるつもりで魔法を放った。しかし、そんな様子はなかった

その答えはすぐにわかった


水大蛇が地面に向かってブレスを吐く

そしてそのまま一直線に愛莉を狙ってきた

違和感を感じてたためすぐに避けられたが


地面に当たった水が勢いよく吹き上がり、炎を鎮火した


水が雨の様に降り注ぐ

そこに佇むのは尻尾が切り落とされ、全身が軽く焦げているものの、未だに倒れる気配が無い水大蛇



(まだ、倒れない…!?これ以上の火力は私には…)

そう愛莉が考えてると、後ろから声がした

「大丈夫?」

そこに立っていたのは生徒会長の氷華だった

「なんの用?」

余裕のない感じで愛莉が聞くと

「すごく大きい音と魔力の反応があったから確認」

氷華が淡々と答える

「……あれ、大蛇じゃない。水大蛇?」

「私が知りたいわよ!」

そう話してると水大蛇が降り注いでる水をこちらに飛ばしてきた

愛莉が横に、氷華が後ろの無事の木の上に飛び移った

「あれは私が倒しても――」

「あれは私が倒す!!」

「……そう分かったわ」


愛莉は水大蛇に向かっていった

その後少ししたタイミングで後ろでなにかをしていた氷華がこちらに話しかけてくる

「愛莉!試験はこのまま続行する。ただし、後から来る先生が監視といざという時の救援をする」

そのまま氷華は続ける


「ひとつアドバイス。心が望むなにかを強くイメージして。その先にきっと答えがある。武運を」


そう言うと、氷華はどこかへ立ち去って行った


氷華からアドバイスを受けた愛莉であったが

(心が望むもの…?何それ)

良くわかって無いようだった


だが、何かにかすったような気がする

しかし、深く考えてる余裕はない


先程は水大蛇は強敵だがそこまで警戒する必要はない、と結論を出したがあくまでも平常時で、油断しなければの話だ

今の怪我を考えれば、決して楽勝とも勝てると断言出来るような状況でもない


だから、心が、ではなく今必要なのは、あいつを一撃で消し炭出来る火力だ


水大蛇の水と血を操る魔法を、魔法で打ち消しながら、噛みついて来る攻撃を避けながら、考える



一撃で消し炭にするにはどうすれば良いのか


自身のもっとも強い魔法では届かなかった

なら、それ以上の威力の魔法が必要になる



通常、魔法を使うためには、魔法の名前と詠唱が必要になる。一部詠唱がいらないような、ものすごく簡単な魔法もあるし、慣れてくれば詠唱破棄といったこともできるが、しかし、魔法名を知らず、詠唱も知らなければ使えないのだ

愛莉は一撃で消し炭に出来る魔法は知っている。が、詠唱はおろか魔法名すら知らない


なら、そ(・)れ(・)以(・)外(・)の魔法


心核魔法。コアマジックとも言われる、魔法を扱う者たちの奥の手


1年生のこの時期ではまだ授業の範囲外、愛莉自身習得のきっかけすら掴めていない

それをここで習得する。いや習得しなければ勝てない


ここで逃げても試験に影響はない、いやあそこまで追い詰めた時点でトップクラスの成績だろう。だけど、それは諦めるということだ


(諦める?冗談じゃない)


ここで逃げるのは、すなわち妥協だ


(妥協?そんなの…)


「ふざけんじゃないわよ!」


その言葉と共に目の前の何かが光った

だが、目に映ったものではない

ただ不思議な感覚だった


本能に任せその光…いや、炎に手を伸ばす

すると、その炎が勢いを増す感覚がした

心の奥底で、決して消えない炎が


今、燃え盛る


不思議と何をすればいいか、何を唱えればいいかは分かった

「我が身に宿りし不滅の心(火)よ、尽きぬ炎よ、溢れし業火よ!我が身を糧とし、全てを燃やし尽くせ!不滅の心(イモータル・フレイム)!」


愛莉の全身から炎が吹き上がる

この炎は愛莉の心そのもの

故に愛莉が諦めない限り、この炎は決して消えない


しかし、この炎は強すぎるため愛莉の体をも蝕む

そのため、長時間の使用は難しいだろう


だが、今この時にそんな時間は必要ない


愛莉は水大蛇の方を向き

「悉く燃やし尽くせ!バーニング・フレイム!」

身にまとう炎を種火に魔法を放つ


水大蛇は水のブレスで迎撃しようとした

しかし愛莉の放った炎に近づいただけで、水のブレスは蒸発した


そして着弾し、炎が丸く膨れ上がった

衝撃が周りの木々を揺らした

その後、けたたましい爆発音が樹海に響き渡った


水大蛇は僅かな破片を残し、跡形もなく消し飛んでいた


「はぁ、はぁ…」

愛莉が身にまとっていた炎が消え、その場に倒れこむ

「綾瀬!大丈夫か!」

近くで待機していたらしい先生が近づいてくる


しかし、疲れ果てた愛莉はそのまま意識を手放した

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