表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
村の魔女が皇帝へ成り上がる〜千年の魔工帝国史  作者: かずや
ノルン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/9

建国と皇帝の即位


 髪を結われ、化粧をされ選んだドレスを合わせる。

 小物なんかも当てがわれる。

 ノルンにとって未知の体験だった。


「ノルン様はスタイルが良いので、ご自身を強く見せる方向でいきましょう」

 メイド長のヒスイがヨウメイに指示をしつつ、ノルンを華やかにしていく。

「あの……ヒスイさんはずっとブランカ公の館で?」

「ヒスイで結構ですよノルン様、そうですねぇ……もう四十年程になりますか」

「四十年!?」

「ふふ、生きた時間は六十ですが先代ブランカ公から今のブランカ様にお仕えし続けましたが、此度の危機が一番の出来事でございます」

 此度の危機、ネクロマンサーによるブランカ領乗っ取りの事だろう。

 一歩間違えれば領は滅び南からワグナス領の拡大、引いてはコスモス地域への拡大になっていた。

「私達メイドも街の者と同じく動けない状態であったのをハルト様が救って下さったのですよ」

「ハルトが?」

「館が戦場になり出した時、私達は正気に戻りましたが何が起きているかさっぱりでした、その時ハルト様が風を操り外に出してくれたのです」

「そんな事が……」

「私達メイドは戦うなどは出来ません、主の身の回りのお世話しか出来ないからこそ今ノルン様に尽くすのです、それが希望の源となるのならば」

「メイド長のお考え通りです、私達は力はありませんが力ある者をお支えする事が力でございます」

「ヒスイ、ヨウメイ……ありがとう」

 また一つ守りたい者が生まれた、ノルンは一つ一つを噛み締めていた。


 ——ブランカ広場

 街の祭事を行う広場だが既に人が集まり熱気がある。

「お前達!式典は昼からだ!落ち着けい!」

 レオンが揉みくちゃにされていた。

 レオンは顔が知れたブランカ公の義息子であり、街を救った英雄の一人だ。

 先頭で指揮を取るつもりが騒ぎの中心になってしまい困っていた

「ぬぅぅまさかこんな事になるとは」

「おいレオン、お前は館からノルンが通る道の整備しろ!ここは俺が見てやるよ」

 空から声が聞こえてきた。

「ハルト殿!」

「俺なら飛んでるから大丈夫だ、道を頼むぜ」

「了解した!」

 もう一人の英雄、しかも妖精のハルトが現れ広場は熱狂した。

「すげぇな……とりあえず人を誘導して」

 少しずつハルトは自分に付いてくるよう誘導して広場にスペースを作る、空いたスペースに大急ぎで大工達が式典の祭場を作っていく。

「……なぁノルン、これだけ人々がお前を待ってるんだ、エレノアも鼻が高いだろうよ」

 ハルトは遠くの館を見ながら呟いた。


 ——ブランカの館会議室

「……これで、我らの代に出来る引き継ぎの調印が済んだのう」

 コスモス村村長は息を吐く。

「村長殿、これまでの我が領との平穏を見守って下さり感謝致します」

 ブランカ公は頭を下げる。

「なーに、ノルン、ハルト、レオンの若き英雄が生まれたのも運命じゃ、お主もよく身を引く決断をしたものじゃ……」

「私は残りの人生を若き英雄に償い支えるのみです」

「……惜しい事言うの」

「惜しい?」

「間違いなくブランカ公は名君じゃった、儂らは直接の関わりは無かったが、お主が居なければとっくにワグナス領とされていたじゃろう」

「……そうでしょうか、私の力不足と復讐に駆られた愚かな心の弱さが……」

「ホッホッホ、お主は立派じゃよ先代ブランカ公と同じくな」

「父を知っているのですか?」

「……まだ、儂の名は言ってなかったのぅ、儂の名は」

 村長は息を吐き、遠くを見てブランカ公に告げた。

「ゲイリー・ブランカ、お主の父の弟じゃよ」

 ブランカ公の目が見開く、コスモス村村長が父の弟つまり叔父になる。

「なっ!父に兄弟が居た等聞いた事は……!」

「ホッホッホ、儂はブランカ領から抜けた身じゃ、つまり領土落ちの罪人じゃからの」

 村長は語った。

「簡単な話じゃ、儂は幼き頃家出したんじゃよ。身分に縛られて嫌になる思春期のよくあるやつじゃ、お主の父はそれを全て一人で受け止めてくれた、自分の分まで自由になって来い!なんて言いよってな!」

 ブランカ公は開いた口が塞がらなかった。

 もし本当ならばブランカの家系図が変わる、そして領土落ちと言う罪……無許可で抜ける、ましてや領主の家系の者が。

「ホッホッホ、皆には黙っててくれよブランカ公、儂はコスモス地域コスモス村の唯の村長ゲイリーじゃ」

「何故……明かしたのですか?」

 村長は天井を見て言った。

「お主が儂の兄と同じように一人でブランカを背負おうとした、儂も逃げるのを辞めようと思ったそれだけじゃ、我らが皇帝を共に支えるのじゃ」

「……はい!叔父上!いや……ゲイリー殿」


 ——式典の時間まであと一時間

 それぞれの想いが重なっていた。



 式典までもう僅かとなり、広場はブランカの街からコスモス地域の村人まで合流し人で溢れかえっていた。


「お母さん、ノルンお姉ちゃんが皇帝?になるんだよね?」

「そうね、凄い事なのよ」

「もう遊べないの?」

「それは……」

 ミナは返事に詰まる、一国の皇帝。

 今までのように村女でも一介の魔女でもない、「様々な地域や人を導く存在」になる。

「……カイ?あなたが大きくなってノルン皇帝に仕える事が出来ればまた会えるわよ」

「大きくなって?」

「そう、体を鍛えて勉強して……きっとノルンさんはあなたを忘れたりしないもの」

「……頑張る!」

 今はそれしか言えなかった、ミナも少し前までは同じ村に住む恩人、だけど気さくに喋る仲だったノルンが遠くに行った気がするのだから。


 ——ブランカの館、入り口側

「レオン!どうなってるんだ!」

「ハルト殿!よ、予想外でした!」

 レオンとハルトは押し寄せる群衆を抑えきれずに居た。

 想定外に人が広場に集まって、館から広場に続く道まで傾れ込んできている。

「ブランカ領ってこんなに人がいたのか!?」

「これはコスモス地域だけじゃなく、東西の近隣地域や領からも来てます!ワグナス領だけは監視してますが!」

 あまりに人が集まり過ぎるのも危険がある、ハルトは魔力で吹き飛ばそうかと考えだしていたが……

「絶対に魔力暴力はいけませんぞ!全てが水の泡になります!」

 レオンに先制されてハルトはおとなしくなる。

 (だが、この中でどうやって広場まで……!)


 ——ガコン


 その時だった、館の扉が開かれ厳かな空気を漂わせながらブランカ公が姿を現した。

 手には剣を持っている。

 威厳あるブランカ公の姿に歓声が湧く、しかしブランカ公は鎮まるまで剣を高く掲げて止まった。

 次第に人々は不思議に思い出す、なんで動かないのだと。

「義父上……?」

「レオン、待て……もしかして待ってる?」

 入り口近くから次第に歓声が消えていく、広場の方も異変を感じたのか静かになっていった。

 押し寄せる程に居る人の群れが静まって空気が張り詰める……

 そしてブランカ公は動き出した。

 少しずつ歩を進め、次に数名の近衛兵が現れる。

 これは護衛の為にと打ち合わせ通りだった。

 

 そして、「皇帝」が姿を見せた。


 ドレスアーマーに身を包み、しっかりと前を向いて凛々しく見える。

「ノルン……」

「ノルン殿……」

 ハルトとレオンは息を飲む、押し寄せた群衆も同じ思いだろう。

 とても神聖な気配がする、服なのか化粧なのかノルンそのものが発する気なのか。

「気高さと柔らかさ」を感じる皇帝に道を塞ぐ人々は分かれていく、ブランカ公の先導で広場までの道を進めていく。

 期待や不安、羨望や評定様々な目がノルンに降り注ぐ。

「ノルンお姉ちゃん!」

 道の途中で声が上がった、カイだった。

 その声に反応したノルンは声の方を向く。

「僕大きくなったら守りに行くからね!」

 その言葉にノルンは優しく笑いかけた。

 その笑顔が人々に火を付ける。

 次第に収まっていた群衆は「ノルン」と合わせるように声を出していく、だが先程みたいな混乱は無い。

 むしろ統率されたように皆がノルンとリズムよく一つになっている。

 壮観な光景だった。

「ハルト殿」

「なんだ?」

「私は全身全霊でノルン皇帝の為に尽くして参ります」

「……ああ、俺も妖精らしくない生き方をしてみようかね」

 二人の胸に熱いものが宿っていた……


 ——広場の祭壇に登り、集まった人々を見てノルンは出来るだけ顔を見た。

 この一人一人に生活があり命がある。

 全ては守れないかもしれない、だが全てを守る為に選んだ道。

 ノルンに後悔は無かった。

 葛藤は勿論あったが色々な人と出会い話をして、想いを知った。

 今を生きる皆を見ながら先を見据えた心、彷徨いながらでも触れていく事を違う。


「国として在るべきは人」


 ノルンの口上に人は耳を傾ける。


「生活の基盤になる土地の安全、食の供給生産それに外敵からの防衛、私の全てを懸けて戦う事をここに誓います」

 拍手が起き出した、ノルンはぐるりと見渡せるだけ見渡しブランカ公から剣を譲り受けた。

 天に高く掲げて言い放った!


「この時を持ち!ライベクトル帝国の建国!そしてノルン皇帝即位する!!」


 ライベクトル帝国、「光の方向」と言うコスモス地方の古い言葉からノルンが選んだ名前だった。


 この瞬間、国が起こった。

 そして民衆の大歓声に包まれる。

 新しい国の始まり、初代皇帝ノルンの口上はこの先記される帝国史の始まり、零年目の一行目として残り続ける事になる。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ