別の次元の異世界古代大陸の話⑥
「……ッ! この者たちは……!?」
ルヴィス達のいるところへ近づいてきた何か、それは真っ黒な全身甲冑の鎧に身を包んだ――ように見える、騎士のような姿をした人型の存在であった。
肌の露出が一切無い為、当然ながら顔も全く視えないが、フルフェイスの兜にある目元のスリットらしき部分が、やけに煌々と黄色く発光している。それだけでなく、鎧の方もルヴィスとサフィアの星銀鎧装のように、ところどころ幾何学的な光のラインが流れるように浮かび上がっていた。また、どちらの騎士らしき者も、その手にはパルチザン型の槍を携えていた。
「何、コイツら! もしかして、オデュロみたいな中身の無い甲冑のモンスター!? 彷徨い歩く鎧ってヤツ!?」
「いえ、あの鎧騎士たち、れっきとした生命反応があります! 魔影とか亡霊、傀儡の類じゃありませんよ!」
「何ッ!?」
生体感知魔法で即座に確認したフランジェリカがそのように告げたことで、他の仲間達全員が驚きの表情を浮かべる。
(まさか、この世界にはまだ生き残っている者達がいたというのか!? だったら……!)
そう考えたルヴィスは反射的に構えた剣を降ろすと、近寄って来た二人の前へと出ていった。
「あー、すまない! 私達は旅の者で、外にいる怪物から逃れる為にこの宮殿へと入った! 無断で侵入してしまったことは謝罪するが、けして貴方がたを脅かすつもりはない!」
出来る限り真摯に、敵意が無いことを伝えるつもりでそう告げたルヴィスであったが、
「――――――」
「――――――」
当の鎧騎士のような姿をした二人は、じっとルヴィスを見つめただけで完全に無言のまま、何も返事をすることはなかった。
「……うーん、そもそも俺ちゃん達の言葉ってコイツらに通じるのか?」
「でしたら、私から話しかけてみます。今の私にはメレシュタリカから翻訳の加護を得ている状態なので、何とかなるかもしれませんわ」
そうコメットは言うと、彼も前に進み出てはルヴィスの隣へと並んだ。
「夜分に申し訳ありません。お二人共、私達は外の怪物より避難する目的で、やむを得ずこの建物へと立ち入りました。貴方がたに危害を加えるつもりはけしてありませんので、少しで構いません、どうかこの場所へ滞在することを許してはいただけないでしょうか?」
そして、コメットもまた誠意を持って二人へ話しかけるも、
「――――――」
「――――――」
相変わらず、彼らからの返答は一切無かった。
「ええと……この人たち、ちゃんと聞いてる? というか、解ってる?」
「うーん、困りましたわ。流石に全く無反応となると、どうしようも……。そもそも、このような黒鎧の騎士なんて、私のいた時代では覚えがありませんし……」
「……何だって?」
コメットの台詞にルヴィスが眉を顰めていると、今までノーリアクションだった黒鎧の二人がようやく動きを見せる。
だが、その動きとは槍を構えるという、明らかに外敵に対する戦闘態勢へ移行したものであった。しかも二人が手にした槍の切っ先からは、なんと荷電粒子の魔力による眩い光刃が発せられた。
(……ッ! あの槍の刃! まさか、俺のクリティカルブレイドと同じ……!?)
「兄さん!」
そして何の警告も無いまま、槍を突き出し襲いかかって来た二人の黒鎧たちに、ルヴィスとサフィアが即座に飛び出しては迎撃に掛かる。
兄妹はそれぞれ二人いる黒鎧のうち一人ずつを相手取る完全な戦闘状況へと陥った訳だが、そんな黒鎧たちの槍裁きはアダマンランク冒険者である二人を以てしても、容易くは退けられない程に凄まじいものであった。
「くっ、早い! そして強い……!」
(この鎧騎士たち、もしや私たちと同じような武器防具を装備している……!?)
魔力の火花を散らす超高速のラッシュを互いに叩きつけ合った後、実際に対峙した手応えからルヴィスとサフィアのどちらも、相手が只ならぬ要素を有していることを感覚で以て理解する。これは敵側の素の実力もだが、まるで自分達と酷似した加護なり強化を受けているように思えてならなかった。
「ソニックウェイブ――ッ!」
しかしそれでも、ルヴィスはあくまで相手を無力化するに留める為、峰打ち用の特技――圧縮された空気塊を投射する攻撃を放つ。だが、黒鎧の槍兵はそれをあっさりと防ぎきり、生半可な技など通用しないという事をはっきりと思い知らせてきた。
「不随の波動よ、パラライズショック!」
「足枷を嵌めよ、スローネス!」
直後、ある程度の距離を取ったジェドとフランジェリカが後方から、状態異常と弱体化の魔法をそれぞれ放つ。ところが、その魔法はどちらも確実に二体の黒鎧らへ直撃したというのに、真っ向から弾かれてしまった。
「ちょっ、完全にレジストされた!?」
「だったら! ――轟け、ボルテックス!」
それに対し、フランジェリカは畳みかけるように電撃を投射する。しかし、それさえも明らかに当たっておきながら、敵がノーガードであるにも関わらず無効化されてしまった。




