7話 謎エネルギーの可能性
嵐によって損傷した枝や幹の回復。
普通は長い時間をかけて自然に治っていったりするものなのだろうが、俺はそんなまどろっこしいことはしない。
何故かって?
それは、この世界には謎のエネルギーがあるからだ!
それで成長出来るんだから、回復も出来んじゃね?と俺は考えた。
ていうか、出来るだろ。
試しに風で折れてしまった小枝の先にエネルギーを集めてみて『治れ~!』って念じてみたら、折れた場所から新しい枝が生えてきた。
やったね! 成功だ!
でも、その治した周りの枝からも風て散ってしまった葉っぱが生えてきたり、無傷の場所が成長してしまった。
つまりこれは治癒能力というよりはただ成長して生えてきたみたいな感じなのでは?
だとすると、亀裂が入ったり、裂けてしまった枝や幹にも同じようなことをしたらそこからまた新しい枝が生えてくるだけなのでは?
いや、それはそれである意味『再生』したとも言えるか。
う~ん、判断が難しい。
別に、枝くらいだったらそういう再生方法でも問題はない。だが問題は幹が例えば裂けてしまった時。
そこを再生しようとしたら、裂け目が塞がるんじゃなくて裂け目から新しい幹か枝が生えてくるのではなかろうか?
それってなんか違くね?
しかも、仮にそうならなくて普通に元通りにくっついたとしよう。
でも、先程の枝の再生?成長?で分かったのだがエネルギーをそこにピンポイントで集めて作用させるのは難しい。
再生箇所付近も成長してしまい、くっついた場所付近がが変な感じに変形してしまう可能性がある。
それはいやだ。
となると、…どうしようか?
そもそも俺はこれ絶対に回復とか再生じゃなくて成長だと思うんだよね~。
変形覚悟でやっちゃうか?
……………。
いや、止めておこう。ここは一番安全な策のほうが無難だ。
今回の嵐で、末端の小枝が何本も折れた。それを使えば、ピンポイントにエネルギーを集める練習になる。ついでに小枝も治るので一石二鳥。
うん、一番安全で無難な策。
ただ、裂けたり、亀裂が入ったりしてる場所は違う方法で治したほうがいいのかもしれないが…。
まあ、とにかく練習してその結果次第だな。
その間になんか思い付くかもしれないし。
というわけで、俺は末端の小枝を使って練習を開始した。……結構難しい。
エネルギーは今まで成長の時にしか使っておらず、それも大雑把にやっていた。
根っこの時も、とにかく延びろ~、とやっていたのであまり参考にならない。
地道に練習するしかないか~。
このエネルギーを知覚するのも、色々やってたら簡単に出来るようになったし。なんか熟練度や経験値みたいなので色々出来ることが多くなるんだと思う。なら、ひたすら練習するしかないな。
しっかし、ますますこのエネルギーがなんなのか気になる。
俺の知識にはないやつだし。この世界の殆どの物にあるってことは、やっぱり特別で必要不可欠なエネルギーなんだろう。
この世界は全てこのエネルギーで出来ている、とか?
……あり得なくもない話だ。
このエネルギーを使えば不思議な力が使えるかもしれない! 魔法とか超能力とか!
火の玉放ったり、風の刃で切り裂いたり、触れずに物体を動かしたり!
おお! 夢が広がる!
だとすれば熟練度や経験値があるのも理解できるかも! それが定番だからな!
じゃあどんどん練習して、このエネルギーを自在に操れるようになろうじゃないか。
まあ、そのためにもコツコツ練習を…、お! 今上手く行った! ちゃんとピンポイントにエネルギーを集めて枝を再生させた!
でもこれじゃ、相変わらず再生か成長か分からないな。
なにか区別できる基準みたいな物があればいいんだが…。
あ、また上手く出来た。
やっぱり熟練度や経験値みたいなのがあるんだな。
これくらい正確に出来れば十分だろ。
問題は、これが成長なのか再生なのか…、
おっ! いいこと思い付いた!
確か、それなりに太い枝もいくつか裂けてたからそれ使って実験しよう!
先ずはそのままエネルギーを集めて再生させてみて…あ、裂け目から新しい枝が生えてきた。やっぱりこうなったか~。最初にぶっつけ本番でやらなくて正解だったな。
でも、これで終わりじゃない。
次は裂け目をできるだけくっつけた状態でやってみる。
くっつけるのにサポートがいるからそれは枝を動かしてやる。具体的には裂け目をくっつけた状態でぐるぐる巻きに。
そしてそこにエネルギーを集中!
さあ、どうなる?
て、うおっ、くっついた! 裂け目から新しい枝が生えてない! 裂けてた先の枝の感覚もしっかりある!
これ成功じゃね?
いや~、よかった~。
じゃあ太い枝とかも同じ要領で…、うん、バッチリ!
これで大体は元に戻ったかな?
で、あとは少し裂けちゃった幹の上のほうなんだけど…。
幹だから、太くて頑丈なんだよな~。
枝巻き付けてもびくともしないし。これくっつけるのは無理じゃね?
しゃーないか。このままいこう。
ピンポイントって言っても幹がデカイからどうしてもそこ周辺ごと再生することになっちゃうし。多少の変形は覚悟しよう。
それじゃホイッと。
…あ、ヤバッ。これエネルギー消費半端ない。
ていうか、気づかなかったけど枝の修復にもかなりのエネルギー使ってた! しかも幹の再生はそれ以上にエネルギー消費が激しい!
これ貯蓄分持つかな?
…なんとかいけそうかな?
まあ、最悪地下からまたちょっと貰えばいいや。
よし、憂いもなくなったし一気にいっちゃおう!
エネルギーが集まると幹の裂け目が少しずつ隆起して繋がっていく。
やはり元通りには無理だったようだ。
最終的にはそれなりの大きさのコブが残ってしまった。
よく、大きい木とかで見かけるようなやつ。
これで修復は完了だな!
全部が全部元通りという訳にはいかなかったが、それは小さな問題だ。
それよりもエネルギーの可能性が分かったんだ。それを含めればマイナスよりプラスのほうが大きいだろう。
でも、思ったよりエネルギー使っちゃったな~。貯蓄していた総量の半分を切ってしまった。
ここから、生命維持分を引くとかなりの損失だ。
やっぱり地下からエネルギーを貰うしかないか?
空気中のエネルギーでは全然足りないし、そこら辺の生物から吸収しようにも先の嵐で全滅しちゃってるみたいだし。
…周りの魂が殆ど感じられない。
でも、地下からのエネルギー供給は結構リスキーなんだよな~。あんまり吸いすぎると、いくら自動的にこの大地からエネルギーを吸い寄せてると言っても封印に影響が出てしまうかもしれない。
封印解けて中のヤツが出てきたらヤバいだろうし…。
でも、地下からの供給が一番手っ取り早くて楽なのは確かだ。
うーん、悩む。
まあ、半分切っただけで一気に成長する前の貯蓄量よりは遥かに多いからな。しばらくは大丈夫だと思うし、ここはゆっくり貯めるべきなのかもしれない。
焦りは禁物。別に焦る理由もないしゆっくりいこう!
ーー主人公成長日記
主人公=種族不明 大きい黒い広葉樹
サイズ、太さ=変化無し
再生が可能になった。 エネルギーの使い方が上達した。 幹の上部に割りと大きめのコブが出来た。