表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔大樹ライフ!  作者: てるてる
25/25

幕間 今の私


 私は封印され、憎悪の感情に支配された。

 ……だが、その状態がずっと続くことはなかった。


 当たり前だ。いくら負の感情から生まれたといっても私は神。自我があり、理性があるのだ。

 負の感情に影響された魔素が溜まっている環境ならまだしも、封印の内部は外部の魔素と完全に隔離されている。だから私が復讐に狂うような状態は続かないのだ。


 そもそも、私はまだ生まれて間もない存在だ。

 生まれてすぐは自我も理性もほとんどない。そんな状況なら負の感情の影響を受けて暴走してしまっても、それは半ば仕方のないこと。


 つまり、落ち着いている今の私が普通なのだ! 暴走状態の私は私ではない!


 ………………、

 …………。


 まあ、あれだ。


 冷静になってから自身の言動を振り返ってみたら、滅茶苦茶恥ずかしかったのだ。


 あるいは、私が神に至らず、化け物止まりの存在だったら羞恥心など、感じなかったのかもしれない。

 それどころか、今この時も憎悪を撒き散らしていた可能性もある。


 だが、私は神になってしまったのだ!

 神としての私の理性が羞恥心を抱いているのだ!


 ………………、

 …………。


 恥ずかしい……。




 ーー一通り周知に悶えた私は、なんとか、気持ちを切り替えることが出来た。


 途中、何度か死のうとも思ったがそれは出来なかった。

 それが封印の効果なのか、それとも自己防衛本能なのかは分からないが、とにかく、死ねなかった。

 まあ、一時の誤りで死ぬのもまた、恥ずかしいことなので死ねなくてよかったが……。


 そして、狂うことも、羞恥に悶えることもなくなった私は、とうとう暇になってしまった。

 封印の中では私は身動きが出来ない。だから本当の意味でなにも出来ないのだ。

 おそらく、この状態はずっと続く。

 そう思うと先のことが不安になる。


 ……はたして、私がここから出る時は訪れるのだろうか?






 ーー封印されてからかなりの時が経った。


 ……いや、実際にはそんなに経っていないのかもしれない。

 封印の中からは外の様子はわからない。この世界の全てから隔離されているからだ。

 だから時間経過もわからない。

 光もないから、ただ、暗い空間で身動き出来ずに、どれだけ経ったかもわからない時を過ごしている。


 これは私に対する罰なのだろうか?

 世界を滅ぼそうと考えた私に対する罰……。


 ……いや。


 私も悪いが、大元はあの神達だ。


 やはり、次にあった時は消滅……とまではいかなくとも、四肢ぐらいは捥いでやろう。

 それぐらいの仕返しは許される筈だ。



 ………寂しいな。








 ーーまた更に時が経った。


 ……いや、そんなことはどうでもいい!

 私をここから出してくれ! もうこんな状態は耐えられない!


 眠ることも出来ない。死ぬことも許されない。


 永遠に続く意識の中、真っ暗な空間に私一人……。


 声も出せない。涙も流せない。



 ……誰か助けて。








 ーーその後のことはよく覚えていない。


 ただ、ついに私は何も考えることをしなくなった。

 常に何もせず、ボーッと時が過ぎるのをただ感じる。


 ……これでいい。

 何かを考えると辛くなる。

 何も考えず、何も感情を抱かなければ、寂しくも、悲しくも思わない。


 ……そして、ここらか出ることもない。


 今まで何度、ここから出ようと思ったことか。今まで何度封印の破壊を試みたか……。


 でも出ることは出来ない。


 唯一、外部からの接触があればそれも分からないが、恐らくない。

 私を出してくれるような者などいないし、魔素の供給が出来ない私にかつての力はない。外部への連絡は出来ない。


 私は永遠にこのままだ。


 ……………、

 ………。


 変なことを考えてしまった。

 また出たいと思ってしまった。


 考えるだけ辛くなるだけなのに………。



 ーー気持ちが沈む。


 もう、何も考えないようにしよう。

 そう思った時だった。


『………!』


 ……最初は気のせいかと思った。

 誰かが何か言っているような、そんな感覚。


 ……ふっ、とうとう幻聴まで聞こえてしまったか。

 これはいよいよ末期なのかもしれない。


 そう思い自嘲したが、次の瞬間にはそんな考えも吹き飛んだ。


『おーい』


 ーーなんとも気の抜けた呼び掛けだ。


『何か違うのか?』『ノックとかか?』『そもそも伝わっているのか?』


 連続して伝わってくる言葉………、これは念話か?


 頭の中が真っ白になった。

 今までとは違う意味で何も考えられなくなる。


 だか、その後の再びの気の抜けた呼び掛けに、私はハッと正気に戻り慌てて返事をした。

 ………しようとした。


 でも、今の私は声を出すことが出来なかった。

 封印の中ではそれすら許されないのだ。


 ……だが、それでも私は必死に意思を伝えようとした。


『ここから出たい!』『ここから出して!』と。


 必死すぎたのがいけなかったのか、封印の外から聞こえた呼び掛けは聞こえなくなってしまった。

 でも、それでも私は私の意思を伝え続けた。



 ……そして、しばらくして向こう側の存在がこう言った。


『お前は悪いやつか?』……と。


 ……私は直ぐには答えられなかった。

 この世界にとって私は間違いなく悪だ。

 事実、託さん壊して、沢山殺している。

 私が悪でない筈がない。


 もちろん、嘘をつくことも出きる。

 ……だが、私はそれをしなかった。……出来なかった。


 結局、何も答えることが出来ないまま、私は黙った。


 ああ、答えられないと分かれば相手は私をここから出すことはないだろう。

 私は最初で最後のチャンスを逃したのだ。


 ーー私はここから出られない。


 そう思った時だった。



『出してやる』



 最初は意味が分からなかった。

 なんで、出してくれると言ったのか。

 もし、私が悪いやつだったらどうするのだろうか? ……実際、そうだし。


 私を出そうとしているのは、悪いやつなのか? 私を利用しようとしている? 相手は悪魔か?


 私が混乱している内に、私を封印から出すことが決まってしまった。


 そして、その後の相手の言葉で私は理解した。


 ああ、こいつはお人好しの馬鹿だと。



 まず、出す方法を考えてなかった。

 勢いで言ったようだ。


 あと、私の言葉はやはり、相手に伝わってなかったようだ。

 それに対して相手が四苦八苦する様子が馬鹿っぽかった。


 ……そして、それでも私と話そうとしてくれた所に優しさを感じた。




 それからはあっという間だ。


 封印を力ずくで破壊し私を解放した。

 破壊する時、途中無理かもとも思ったが、封印の綻びから私も魔素を受け取ることが出来たから内と外から破壊できた。

 あの時の一体感は忘れられない。


 封印から出て、相手が木だったことに驚いた。

 まさか、植物だとは想像もできないし、こんな何もない地でこんな巨大に成長するなんて、異常でしかない。


 その後も、その木と色々あったが、私はその全てが楽しかった。


 ……ただ、過去の私を思い出してみても分かるように、私は自分の他の存在とはまともに会話もしたことなかったから、どう接すればいいか戸惑った。

 相手に嫌われたくない一心でキャラがブレブレだったような気もするが、まあ、忘れよう。



 お互い、名前もつけた。


 私がアゲハで、彼がネロ。


 精神がほぼ男だったので、男っぽい感じと色で決めたが我ながら気に入っている。


 私の名前も最初は虫の名前と聞いてぶちギレそうになったが、理由を聞いて納得した。


 ふふっ。私が綺麗だって……。


 




 ーー私は一つだけ、ネロに嘘をついている。


 私は他の神が私を殺しにくるからこの地から動かないと言った。

 勿論、そういう理由も確かにある。

 だが、本音は違う。


 ーー私はネロと一緒にいたい。


 ……私を助けてくれたネロ。……私に優しくしてくれるネロ。……私を綺麗だと言ってくれたネロ。


 この気持ちがなんなのか、私にはまだ分からない。


 いや、分かった上で分からない振りをしているのかもしれない。


 でも、それでいい。


 私は今が幸せなのだ。



『どうしたんだ、アゲハ?』


『……ううん。何でもないわ』



 ーー今の私は幸せだ。




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ