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斑鳩先生から告げられた衝撃的な真実。それは大学病院を出てからも僕の頭を支配し、身体中に鉛のような絶望を増殖させていった。
超新星が消えて闇に包まれた並木道を、僕とレイは俯きながら歩く。このあたりはまだ病院の敷地内で、入院患者の憩いとなるようにと、まるで森の中のように木々が生い茂り、くねった小道が続いている。
僕はその東京にしては静かすぎる雰囲気と鼻につく濡れた地面の匂いに、どこか遠い国の深い森のなかへ来たかような錯覚を覚えた。
そこでは学校も勉強も超新星も冬眠病も関係ない。ただゆっくりと時が流れて、コハクやレイと山小屋で暮らしながら、たまにミソラさんが淹れたコーヒーを飲む。それはどんなに有名な大学に入ることよりも、たくさんの友達に囲まれて青春を過ごすことよりも、僕にとっては幸せに満ち溢れた理想の暮らしだ。
しかし大学病院の明るすぎるLED街灯が、僕を残酷で冷たい現実に押し戻した。
斑鳩先生によれば、これまでコハクを苦しめていた「冬眠病」は病気ではなく、超新星のエネルギーによる延命作用なのだという。
本来ならコハクは、生まれて間もなく死んでしまうほどに身体が弱かった。しかも特定の病気によるものではないため、医学では絶対に原因を究明することも助けることもできない状態だった。
ところが、首がすわる前に消えるはずだったコハクの命を超新星の光が救った。彼女本人すら気づかないうちに、止まりかけていた身体の働きを再生し、僕がやったように「命」を吹きこんだのだ。おかげでコハクはクラスの中心にいそうな美少女までに成長し、中学生の制服を着て僕やレイに出会うことができた。
まるで冬眠するかのように突然深い眠りについてしまう原因は、超新星エネルギーの強弱にあった。超新星からのエネルギーが強まっているときはコハクも目覚めて活動ができるが、そのエネルギーが弱まると命を繋ぎとめておくだけの力しかなくなる。だから誰もが、彼女が予測できない眠りの発作に侵されていると勘違いした。
超新星は存在すらしなかったコハクの人生の筋書きにページを与え、綴り紐でとじた。だがその筋書きは初めからページ数が決められていたのだ。
「超新星からの光がなくなれば、コハクさんの身体はおそらく長くは持たないでしょう……」
研究室で斑鳩先生からこう言われたとき、僕は否定したい気持ちに反して納得をしてしまった。先生の説明は、すべて筋が通っている。レイもきっと同じ思いだったに違いない。
そんな無言のままの僕らに、先生は最後まで諦めずに研究を続けると約束してくれた。しかし光の消えた夜に再び星が輝くのとは違い、コハクを救う一縷の望みは必ずあるとは限らない。
超新星が死ねば、コハクも死ぬ。彼らは一心同体なのだ。
僕の「命」の吹込みが、今のところコハクに対して行った最後の延命措置だった。明日の夕方には、彼女はもう二度と目覚めなくなってしまうかもしれない。
とにかく、残された時間は少なかった。




