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「コハクと、レイ……」

「あっ、ヒカリくん!」


 僕の姿を見つけて、コハクは嬉しそうに手を振った。


「あら、知り合い?」


 カウンターからミソラさんが身を乗り出して尋ねる。


「はい。一応、クラスメイトで……」

「ふーん」


 ミソラさんは僕の気持ちを察したようにそう言うと、


「じゃあ、サービスしなくちゃね」


と二人をテーブル席へ案内した。


「平川くんのお友達かしら?」

「はい! 雨野コハクです」

「邑朋です」


 メニューを持っていったミソラさんに、向かい合って座るコハクとレイが答える。


「やっぱりあなたたちが、コハクさんとレイくんなのね」

「どうして私たちのことを知っているんですか?」

「娘から話は聞いているわ。私は鯨川ミソラ。ここの店長よ」

「鯨川って、もしかしてミナミちゃんの……」

「そう。二人とも、娘と仲良くしてもらってありがとうね」

「いえいえ」


 3人がテーブルで話し込んでいる間、僕はソイラテの淀んだ白色を見つめていた。

 なんでコハクとレイが、二人だけで『喫茶 まどろみ』に来るんだ。僕との約束を断ったのって、レイと会うためだったのか。

 僕は胸の奥が苦しくなっていく感じがした。


「ヒカリくんは、よくここに来るんですか?」


 僕を置いて、二人とミソラさんの話は続く。


「ええ。春にはじめてここに来てから、ずっと常連よ」

「えっ、春から……?」


 コハクの言葉は小さく縮んだ。しかしミソラさんの元気な声にかき消される。


「うん。だから二人にもサービスしちゃうよ」


「いいんですか?!」「ありがとうございます」


 コハクは驚き、レイは頭を下げた。

 注文をとってカウンターへ戻ってきたミソラさんは、うつむく僕に声をかける。


「待ってて、もう一個椅子を用意してあげるから」


 しかし僕は、


「いいんです」


とミソラさんの提案を断って、席を立った。


「今日はもう帰ります」

「え? ……そう」


 ミソラさんもテーブルにいるコハクたちの姿をみて、僕の気持ちに気づいてくれたようだ。


「ねえヒカリくん! ヒカリくんもこっちに来て一緒に……」

「ごめん、コハク。このあと予定があるから、僕はこれで。また夕方にね」


 本当は予定なんてない。

 しかし僕はこのまま二人といる気にはなれず、呼び止めるコハクを置いて『喫茶 まどろみ』を出る。


「ヒカリくん!」


 追いかけようとしたコハクの肩に手をのせて、レイは首を横に振った。

 そうして僕は、白い空に包まれた猪島公園を、あてもなくただ早足で歩き続けた。


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