元凶
『……見えてきた』
私は急いで見えてきた祠へ駆ける。
(紫……いや、今はこちらを優先しなければ。私は博麗の巫女なんだ。私情は挟むな)
しかし、どうしても私は分からない部分があった。
紫は強い。
幻想郷を作ったというのもあるが今の今まで自分の力で生き残ってきた強者だ。
その紫が敗れ、しかも代わりに私に託す……紫が勝てないのに私が勝てると思うのだろうか?
正直なところ自信がない。
(……あくまでも異変は人間が解決しろって事か。本当にあいつは幻想郷が好きなんだな)
祠には1人、退屈そうに胡座をかいて座っている人物がいた。
その人物はロングヘアーの緑の瞳と髪をしており全体的に青い装飾がされたマントをつけた女性だ。
しかも恐ろしいほどの邪気を隠そうともせず放ってる。
邪気をはらんだ女性は私の姿を確認すると
『ふん、逃げたと思ったら次は人間か』
『人間呼ばわりしてるって事は人間じゃないのか』
『……はっ、そうだな。私は人間をやめた身だ。普段なら怒ってるが今はお前の言う通りだよ』
(珍妙な武器を持ってるな……。あの先端が三日月の杖はなんだ……?)
どうしてもこいつがあの紫に重傷を与えた人物とは考えにくかった。
だが、それとは裏腹にこいつならやりかねないという小さい不安もあった。
なにか、こいつを見ていると不安定な爆弾のようなイメージが私に与えてくる。
『今回の……いや、今までの異変の犯人はお前か』
『ほう?そこまで分かってたのか。ま、紫がいるもんな。ここまであからさまにやればバレるか』
『そうか……なら博麗の巫女の名において貴様を退治させてもらおう』
『はっ、よく言うよ。博麗の巫女の名においてねぇ……実に腹立たしい』
『……そうか。私はこんなに幻想郷を滅茶苦茶にしたお前が許せないよ』
私はゆらりと体を揺らす。
トップスピードを出すためのギアチェンジだ。
私は体術を学ぶうちに自力で開発したうちの1つ、最初からトップスピードで移動できる技術だ。
私は音速で女性に近づき拳を放つ。
『っと、危ない』
『……!』
しかし私の拳は躱された。
しかも首を少し傾けただけで綺麗に躱されたのだ。
『ふぅん。博麗の巫女を名乗るだけはあるな』
『……お前』
『ほれ、油断するな命取りだぞ』
女性は軽く私の腹に触れる。
瞬間、私はとてつもない悪寒に襲われ、膝をついてしまう。
『あっが……くっ……』
『これでトドメだ』
女性は杖の先端にある三日月に魔力を灯す。
すると、それを中心に風が吹き荒れる。
(出し惜しみとかしている……場合じゃない!!)
『龍鳳!』
私は"能力"を発動し無理矢理体を動かし両手の掌を女性に向ける。
そして、私の目の前の景色は全て吹き飛ぶ。
地面はめくれ上がり、木々は折れ、岩ですら粉々に砕け散る。
だが、女性は私の背後に立ち
『こいつは驚いた……。お前能力者だったか』
『あの距離で避けるか』
『危なかったけどな。……なるほど、意味もなく逃げた訳ではないか』
なんなのだろう、こいつは。
先程から独り言を呟き、まるでお前なんかは視界にはいっていないと言わんばかりの態度だ。
『……なんなんだ』
『あ?』
『なんなんだお前は!!あそこまで妖怪を引き連れて!私の大切な友人を傷つけ!挙句にここまでの異変を起こして!貴様はいったいなんなんだ!!』
私が激昂し、吐き出すようにぶつけた言葉に女性は初めてこちらに興味が湧いたかのように私を見据える。
そこで女性は先程とはまったく違う表情を作る。
凄惨な笑みだ。
それに合わせて周りに放たれていた邪気がより一層強まる。
『くくっ……なるほど。使命感だけじゃないか。よし、少し話をしよう』
『……は?』
『さて質問だ。お前は紫と親しい間柄のようだがどこまで聞いた?』
『……質問の意図が分からない』
『私に守秘義務は意味がない。全部知っているしある意味においては関係者だ。これなら大丈夫だろう?』
……ますます意味が分からない。
関係者?何を言っている?
あの時の私はものすごく混乱したものだ。
だがその混乱した私でも理解できる答えを彼女は提供してきたのだ。
『私は元博麗の巫女だ。こう言えばお前は理解してくれるかな?』




