百鬼夜行
『おい、見ろよアレ。ありゃ山の四天王の1人、星熊勇儀じゃねえか?』
『本当だ。最近思う存分暴れて負け無しっつーガキだろ?』
『よく周りを見ると結構な妖怪が集まってんな……。こりゃ面白くなってきたぜ……』
妖怪の軍勢がとある場所を目指し、移動する。
弱い妖怪であれ、強い妖怪であれ、ありとあらゆる妖怪達が集っていた。
それの会話を聞いている私がいた。
私がいる場所は、妖怪の軍勢の真上の空だった。
空気を踏みつけその場に立っていたのだ。
(……妖怪側の界隈じゃかなり有名な妖怪まで来てるのか。一筋縄ではいかない。この場合は闇討ちして確実に1匹ずつ消していくのがセオリーなんだろうが……)
『……時間がない。ここで足止めをするしかないな』
私は深く深呼吸すると拳を握りしめて妖怪の軍勢の中へと飛び込む。
私は地面に着陸するとまず近くの妖怪の首を手刀で切り落とす。
『おい、手前……』
私の姿を確認した妖怪が私に触れようとした瞬間、左手の裏拳で体に風穴を開けた。
次に私は脚を高く振り上げて、振り下ろす。
その衝撃で地面がめくり上がり周りの地形を変えていく。
『オォォォォッ!!!』
私は駆けていた。
次々と近くにいる妖怪を殴りつけ、叩きつけ、手刀で切り裂き、妖怪を殺していく。
その様子に戸惑っていた妖怪達も気付く。
———こいつは危険だと。
『こいつ1人だけだ!全員でやっちまえ!!』
妖怪達が雄叫びをあげて襲いかかってきた。
私は目の前にいた妖怪の顔を握りつぶすとすぐにその妖怪の足を掴み振り回す。
触れた妖怪は勢いよく吹き飛ぶ。
だがすぐに掴んでいた妖怪も消失してしまう。
『チッ、妖怪の体の方が持たなかったか』
そう舌打ちした瞬間背後から巨大な妖怪が拳を振り下ろしてきた。
私はスレスレでその拳を躱すとその腕を掴み巴投げをする。
吹っ飛んだ妖怪はそのまま地面に墜落し下にいた妖怪達を下敷きにする。
その場から私は跳躍すると仰向けに倒れている巨大な妖怪の腹めがけて着地する。
勢いよく着地したため、巨大な妖怪の腹を突き破ってしまう。
周りに妖怪の血が舞う。
『やるじゃねえの人間』
『……っ!』
私はその声に反応するようにとっさに自分の腕を胸元まで動かし防御の構えをとる。
それと同時に蹴りが胸元めがけて飛んできた。
私は勢いを殺すことが出来ず宙に飛ばされてしまう。
『鬼……かっ……!』
私は歯ぎしりをする。
(まだ見渡す限り数は十分の一も減っていない……こんなところで時間を食う訳には……)
『いかない!』
私は右腕に力を集中させる。
私の"能力"としての力をだ。
『博麗参の型・空鳥』
私は何もない空間に拳を叩きつける。
すると景色にヒビが入る。
ヒビはどんどん広がっていき、やがて視界全てにヒビが入る。
やがて世界が割れる。
『うわぁぁぁ!地面が割れたぞ!』
『なんなんだアイツ!滅茶苦茶だ!』
『落ち着け!ここで全滅したらそれこそ問題だぞ!分かってるのか!?』
『空飛べる奴は飛べない奴を救出しろ!』
(……やはり誰かに命令されて動かされているのか。……皮肉なもんだな、普段いがみ合ってる妖怪達が私という強敵の前に手を組む……か)
『……妙だな。何かを見落としているような……』
その時、再度世界が揺れる。
ズン!と音と共に大きな地震が続く。
『……どういう……事だ?妖怪の軍勢はまだ……』
『大変よ』
『紫!どういう事だ!?こいつらは……』
紫は私の背後に隙間から身を乗り出し私の肩を掴む。
『いいから聞いて、急いで今から祠に行くの』
『おい、だからなんで……おい、お前……』
紫は腹部から出血していたのだ。
決して深くはない傷だがそれでも出血量が酷い。
『私の事はいいの……!いいから急いで……!』
『〜〜っ!!分かったよ!!』
『……いい子ね。ここは私に任せてちょうだい』
私は宙を蹴り、空中を駆ける。
全速力で。
『……ごめんね。結局貴女には辛い事ばっかり押し付けて。せめて貴女には名前だけでもあげたかった』
妖怪の軍勢で空を飛べる妖怪達が叫ぶ。
『逃すかぁ!追え追え!』
『地上で動ける奴らは急いで目的地へ急げ!もう作戦は始まってるぞ!』
紫はスッと目を細めると能力を行使し、空を飛ぶ妖怪達を地に落とす。
『ダメよ、あの子の元には行かせないわ。絶対に』
『紫……無事でいてくれよ……。絶対に間に合って帰ってくるからな……!』




