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プロローグ

連載始めます。

よろしくお願いします。なるべく毎日更新を目指します。

 空読みの魔女。彼女はそのシワシワの体とは裏腹に、どこまでも空と生きる魔女であった。そんな魔女に育てられた少女、アイラ。彼女もまた、空を眺め、天気とともに生きる者であった。


「ばっちゃんー、また転んだー」

 空を見ていて足元をよく留守にするアイラはよく転ぶ。今日もまた空を低く飛ぶツバメの行く先を見ていて、畑のふかふかとした土に足を取られ、頭からめり込んだ。

 前半分土だらけになったアイラを見て、魔女はからからと笑う。

「なんだい、アイラ! アッハッハ! 土だらけじゃあないか! また何か見つけたんだね?」

 うん、とアイラはエプロンについた土を払う。頬についた土はそのまま。

「ツバメがね、ひくーく飛んでたの。あれ、なんで?」

 ああ、と魔女は微笑んだ。シワシワのカサついた手でアイラの頬についた土を拭ってやる。

「あれはね、もう少しで天気が悪くなるからだよ。少し空気がベタベタするだろう? ツバメの餌となる羽虫たちも、そのベタベタする空気で翅が重くなって、高く飛べなくなるのさ。ソイツらを食おうとツバメが追うけれど、低い所に餌がいるからね。だからツバメも低く飛ぶのさ」

「ふうーん」

 ほら、と魔女は雲が出てきた太陽を指さした。そこには、太陽の周りにぼんやりとした光の輪が出現している。

「太陽に傘が出てきただろう。あれは上空に薄い雲が出てきて、太陽の光を通り抜けるときに光が折れ曲がって光の輪になるのさ」

 どら、と彼女は少し曲がった腰に手を当て、村へと続く道を歩き出した。慌ててアイラもついて行く。

「ばっちゃん、どこ行くの?」

「明日は雨になるからね。今日中に収穫できるもんは収穫しちまえって、言いにいくのさ」

 太陽の周りに光の輪ができたら、その翌日は雨。



「わ、ほんとに雨だ」

 翌朝、アイラは窓のカーテンを開けて呟いた。しとしとと穏やかな雨が降っている。これはすぐに止みそう。アイラはほっと息をついた。しかし、魔女は上空を鋭い目つきで睨んでいる。

「これは天気が荒れそうだね。アイラ! 雨戸を閉めるよ」

「え? なんで?」

 バタバタと雨戸を閉めて回る。しとしとと降っていた雨はやがて弱まっていったのに。


 南から生暖かい風が吹いている。そして、その風はいきなり西へと方角を変え、急に肌寒く、そして強くなった。アイラは雨戸の間から空を見上げた。急に空が暗くなって、慌ててバタンと雨戸を閉める。

 ゴロゴロ……。遠くで雷が鳴り始め、突如として大粒の雨が降り始めた。

「ばっちゃんの空読み、すごーい!」

 本当に大荒れの天気になった。


 そんな、無邪気に笑って、彼女の背中をいつまでも追いかけていられると、思っていた。

 けれど。

 空読みの魔女が、死んだ。彼女は空を読み、未来の天候を予測し、多くの人々の生活の支えとなっていた。

 たくさんの村の人々がその家を訪れ、別れの言葉を掛けていく。どさどさと土が上から被せられ、還る支度が終わった頃、一人の少女は真っ赤になった目元を何度も擦りながら前を向いた。彼女の首元には、白いもふもふとしたキツネのような生きものが、慰めるように巻きついている。

「……おい、アイラ。涙で前が見えないからって、オレはお前の足元の石を教えてやることはできないからな。……前を向けよ」

 甲高い少年のような声。アイラは、ばっちゃんの相棒だったもふもふとした彼をぎゅっと抱きしめ、頷いた。

「……私が、ばっちゃんの後を継ぐ……!」




 


生マフラーですね。暖かいのかくすぐったいのか。

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