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第一章 オアフ島合同慰霊祭

北川詩織防衛大臣は、オアフ島のダニエル・K・イノウエ国際空港に降り立った。ホノルル市の中心部に位置するクレーター、通称パンチボウルに設けられた国立太平洋記念墓地で開催される慰霊祭で、太平洋戦争の戦没者達への献花を行う為だ。


大勢の正装した米軍兵士に見守られながら、荘厳な雰囲気の中で、シュワルツコフ国防長官と並んで献花台に向かっている二人に、突然、一人の男が突進してきた。手に持った拳銃を乱射している。北川詩織は本能的に国防長官の前面に体を入れ、銃口に神経を集中した。頭に銃弾を受けることだけは避けねばならない。自分なら、頭さえ避ければ、致命傷にはならないはずだ。男が放った銃弾を体で何発も受け止めた。


男が更に近づいてくると、詩織は男の胴体が不自然に膨れているのに気づいた。爆弾を巻いているのだ。左手に起爆装置を握りしめている。手を緩めれば瞬時に爆発するのだろう。詩織は体を倒しながら男の足を払って横倒しにすると、右手で男の持つ起爆装置を握りしめ、左手で胸の起爆装置の配線を引きちぎった。男はその間も詩織の体に向けて拳銃を発射し続けた。詩織は男に真正面から対峙しながら、一歩も引かずに銃弾を受け続けた。


詩織はようやく男から拳銃を奪うと押さえつけた男の顔の周りの地面にダン、ダン、ダンと3発連射した。そして、静まり返った式典会場に「フリーズ!」という詩織の大きな声が響き渡った。警護に当たっていた米軍兵士たちが男を取り押さえると、北川詩織は力尽きて芝生の上に仰向けに横たわった。ダークスーツの胸元から覗く純白のブラウスは見る見るうちに真っ赤に染まっていった。


体のあちこちで激痛がしている。もう痛みをブロックする余裕はないらしい。

“銃口を見ながら急所は外したつもりだったが、撃たれた箇所が多すぎる。自分はこのまま死ぬのだろう。”

“折角、新たな人生を踏み出したのに、大した経験もできずに、全てが終わろうとしている。しかも、自分の行動が仲間の人生まで奪ってしまうのだ。”


自分が起こした行動の結果失うものの大きさに気づき、北川詩織は深い後悔に襲われた。だが、同時に自衛官として生きてきた自分には他には選択肢はなかったのだとも理解していた。そして、詩織は意識を失った。


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