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ユーリ まどろみの中で

「ささ、マスター。どこにダンジョンを造りますか? 人里離れた山の中で少しずつ力を溜めていく侵略系ですか? それとも敢えて人々が多く済む街の近くでスリルを楽しみながら一発狙いで行きますか?」


 空中をふわふわと漂いながらそう喋った(・・・)のは一匹のねこ……背中に悪魔のような羽を生やししっぽの先だけ白い……だ。


 どこか興奮した様子でそう言うと、何かを想像しているようで、目を細めてあーでもない、こーでもないと言っている。


「絶対に嫌! 私はもう自分の足でどこへでも行けるの。かび臭い地下に引きこもって暮らすなんて絶対に嫌!」


 どこか泣きだしそうな表情で叫ぶユーリ。それは心からの声であった。


「で、でも、“ダンジョンマスター“はダンジョンの外じゃ“村人“より弱くなるんだよ。ダンジョンの中でもステータスとしては高くない方なんだから」


 クロネコは必死になって説得する。


「嫌! だったら真職なんていらない。べつにその通りにしなきゃいけないわけじゃないんでしょ」


 目端に涙を玉にしながらユーリは叫ぶ。


「女神様~、これは“ダンジョンナビゲーター“の仕事の管轄外ですよ~」


 クロネコは器用に黒電話の受話器を耳に当てながらどこかに(・・・・)鳴きごとを言う。


「代わってくれるかしら」


 そんな声が漏れると、ユーリは心臓を掴まれたように呼吸が出来なくなる。


 その声には聞き覚えがある。一度だけだが、忘れることのできない。


 美しくも恐ろしく軽やかなようで威厳のある声である。つまり、人の出せる声ではない。


「もしもし? 聞こえているかしら? もしもし?」


 受話器がこちらに渡されていて、普通の人のように話しかけているのだからシュールであった。


「き、聞こえています! あの時の女神様ですよねっ!ありがとうごじゃいまふ」


 後半は涙混じりでとても言葉になっていなかった。


 最早対応の外のようでクロネコはふて腐れてゴロンと横になっていた。


「……そなたに与えたのは罰です。それに対し感謝をするとはそなたはマゾなのですね」


 女神の返答もまた辛辣であった。


「オホン。よくお聞きなさい。私は本来世界に干渉することはできません。今こうしているのはこちらに不備があったからです。とは言え長時間こうしてはいられないのです」


 一旦そこで話を切る女神にユーリも自然と姿勢を正し、真剣に聞く態勢になる。地面に直で正座するのはどうかと思うが、女神に対する敬意の表れであったので仕方がない。


「“ダンジョンマスター“はまだこの世界に適応されていない真職“だったのです。なにゆえそなたに宿ったのか……。まだしっかりと仕様は固まっておらぬ。そなたから何か希望があれば聴きましょう」


「一応お聞きしますが、別の真職に変更することはできないのですか?」


 それはしごく真っ当な疑問であったろう。だが応えは、


「ならぬ。真職とは魂に刻まれるもの。どうしてもと言うならば出来ぬこともないが、そなたが“そなたではない別の何か“に変質するであろう。これは“そなた“への罰なのです」


 であった。


「そうだ! 女神様! 私を中心とした相対範囲をダンジョンとすることはできませんか!?」


 しばらく沈黙が続いた。それは5分のようにも1時間のようにも思えたが、実際はそれほど長くはなかったのであろう。


 女神が笑いを堪えてい(・・・・・・・・・・)た時間である(・・・・・・)。誰も知る由もなかったが。


「いいでしょう。元々はこちらの不手際だったのですから。」


 その声が聞こえると、ユーリの頭頂部から螺旋状に光が覆っていき、足元まで覆われたところで消えた。


「そうそう、ダンジョンマスターは人類の敵ですから気をつけなさい」


 その声が聞こえるか否かというところでユーリの意識が途絶えた。最後に見えたのは、首にかかる、闇をも吸い込みそうな艶のある黒いネックレスだった。




「……はっ、夢か。」


 背中の汗がひどい。この世界に来たばかりの頃の夢だった。


 最近女神様への感謝の気持ちが薄れていたかもしれない。後で神棚に祈っておこうと思うユーリ、露店から帰ってきたところで寝オチしていたらしい。


 なぜか半裸なことに疑問を感じながら、水を飲みにいこうとして、外がどうにも騒がしいのに気づいた。

 

 この世界において“ステータス“とは能力そのものではなく、能力の補正値です。例えば筋骨隆々の男と、細身の少女の攻撃力が120だった場合、出せる腕力は同じではなく、それぞれの元々の身体能力に1・2倍。少女が両手でやっても男は笑ってみていられるだろう。


 身体能力を鍛えることと、ステータスを鍛えることのどちらも重要だということになります。


 体力や魔力は参考の数値であり、心臓や首をやられれば体力がいくらあろうとサクッと死にます。


 器用さは本来の意味とはべつに、ステータスの補正具合にも影響します。不器用で攻撃力が強い人に肩を揉んでもらうのは大変危険です。


 真職のレベルは対応する行動をとることでレベルが上がり、ステータスが上がります。ステータスは真職が解放されることで発動。100を基準として、男女で攻撃力と器用さに優劣があり、真職の種類によっても各ステータスに優劣がある。


 体力

 魔力

 攻撃力

 防御力

 魔法力

 器用さ

 素早さ

 運


 ステータスの項目は以上8つ。

魔法力は魔法の攻撃力と魔法への対抗力のどちらにも影響するためお得だが、真職は選べない。

となると、真職を得る際のリアルラックがやはり重要ってことか。


 

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