ユーリとカレン
スンスン、と寝ているはずのユーリの鼻が動く。
甘い香りだ。大好きなフレンチトーストとは違う。もっと淡い、爽やかな甘さだ。だがとても落ち着く香りだった。
コーヒーとパンの焼く香りは目覚ましよりも効果がある、とも言われる。匂いは脳に強く働きかけるのだ。
とまれ、ユーリもいつもの寝起きの悪さが嘘のように覚醒し、起きてそうそう、心臓に悪い結果となった。
視界を埋め尽くしたのは肌色、肌色、肌色だ。
ユーリ自身が暑くなって脱ぎ捨てる癖があるのはわかっている。だが、カレンはそんなことはなかった。
事後? 事後なの?全然記憶にないんだけど! もったいない!!
酷くパニクるユーリは正直であった。その身じろぎが伝わったのかカレンがやわやわと目を開く。
ユーリは寝顔を見られる珍しい機会だったのにしまったと思ったが、すぐに驚きにつつまれる。
「イオリ!」
目を覚ましたカレンは寝ぼけた様子も見せずにユーリの背に手を回しギュッと抱きしめたのだった。
……泣いてる。
何がどうなってるかわからないユーリだったが、とにかくカレンの背をぽんぽんと叩くことしか出来なかったのだ。
しばらくして落ち着いたカレンは腫れた目元を恥ずかしそうにしながら事情を話し、ユーリもカレンが戻って来ないんじゃないかと思って不安になったのだと話す。
「なんですか、それ! 私は今までつみあげてきたものをほうり出して着いて行くことを選んだんですよ!」
カレンは怒ってーーー幾らかは照れ隠しだったがーーーそう言い、恐れながらも自分が暗殺者だったこと、そこをやめてきたことを話す。
ユーリは驚くには驚いたが、それほどではなさそうだった。
「私ね、初めてカレンに会った時からカレンはずっとカッコイイと思ってた。でもカレンちゃんも普通の女の子だよね。今日のカレン可愛い」
「ユーリだからだよ。幻滅した?」
パチクリと目を見開くユーリ、
「ああ、そういう。違うの。カレンの新しい一面を知るのが嬉しくてどんどん好きになっちゃうんだよ」
「私を殺した
責任、t」
何か言いかけたカレンの唇に自分の唇を重ねて言葉を遮る。
「ゴメン、その台詞はちょっとヤバい。外部からの力でこの世界が消されかねないから」
「???」
「なんでもない」
困ったように笑いながらもう一度唇を重ねた。




