プロローグ
初投稿で、初執筆です。一応友人に読ませた後で投稿しますが、至らない点が多いと思います。
「か、金を出せ!」
男の声が店内に広がる。店内にいるのは、陸と男を除けば店員だけだ。おそらく、トイレにいた自分には気づかなかったのだろう、と陸は思った。
(しかし、せっかくの休日にコンビニ強盗とは俺も運が悪い。いや、強盗現場に警官が居合わせるこの男も似たようなものか…。)
陸は自分の運のなさに悲観するが、更なる不運が彼を待ち受けているとは思っていなかった。
陸はトイレに戻って同僚に電話を掛け、コンビニの場所と強盗にあっていることを伝える。
「俺が取り押さえるから手錠を持ってきてくれ。」
陸はなるべく音を立てないようにこっそりと強盗の背後に回る。
店員は男の右手に握られている刃物にひどく怯えているようで、強盗の言葉も耳に入っていないようだ。
(気付いていないな…よし。)
陸は後ろから強盗の左膝に蹴りを入れると男の右手を左手で掴み、自分の方へ向かせた。そのまま床にに押し倒す。体制を崩した男はあっさりと捕まった。
しかし、陸にとって誤算だったのは、男が左手にも刃物を持っていたことだ。
男は苦痛に顔を歪めつつも、陸の心臓目掛けて左手を突き出す。
陸は咄嗟に体を捻るが、完全に避け切ることは出来ず、胸に刃物が突き刺さる。
幸いにも、避けようとしたことで、心臓から少しずれた位置に刃物は刺さったが、出血が酷く、長くても10分で死んでしまうだろう。
最寄りの病院までの距離を考えた陸は、自分が間に合わないことを悟った。
せめて店員だけでも殺されないようにしなければならない。
陸はそう判断すると、強盗犯の首を絞め上げる。
男はどうにか陸の手を振り払おうともがき、陸を左手の刃物で突き刺す。
しかし、陸は痛みを気力で耐え、全力で男の首を締め上げた。
男が意識を失うのと、陸の視界がぼやけ始めるのはほぼ同時だった。
「救急車を…」
陸がそういうと、ハッとしたように店員は電話を手に取る。
陸は次第に黒くなっていく視界の中、自分の心臓の動きが、少しずつゆっくりと、そして小さくなっていくのを、店員の必死な声とパトカーの音と共に聴いていた。
陸、享年25歳であった。




