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獣人族の立ち位置

 少し短めです。


 突然の大声に皆の動きが止まる。

 俺にとっては周りの喧騒もそこまで変わらない。が、気になるのはその“語尾”。


「じゃみゃだニャ。さっさと散るのニャ」


 二度目の声が響いた時には、周囲に居た奴らが次々と消えて行った。

 皆一様に厭悪(えんお)を隠そうともせずに。


 中には舌打ちを打つような者や、あからさまに罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせる者もおり、この人物の学校内での立ち位置をある程度把握することが出来た。


「大丈夫かニャ? 今のうちに脱出するのニャ!」


 人の壁が消え去った先の声の主と初の御対面。


 その女は腰に両手をやり、ニッと笑って見せる。

 口元から見える八重歯が特徴的であり、その女をやんちゃ娘であることを証拠づけるかのようであった。


 しかし、その勝気で整った顔つきも去ることながら、俺が注目したのは頭でぴくぴくと動く“それ”。


 汚れ一つない艶やかなシルバーカラーの頭髪と同じく、ピンと立つそれは俗に言われる“ケモ耳”という奴であろうか。腰のあたりから同じく、銀の尻尾が見え隠れしている。

 その女は人間よりも動物に近いチョコンと黒い鼻をヒクヒクとさせ、返答はまだかという顔を此方に向けている。


 腰にあった腕を、たわわに実った双丘の下で組む。それを強調するかのように。


 …………考え過ぎか。


「助かった、有難う。それで、脱出って言っても何処へ行くんだ?」


 俺は席を立ち、質問を投げかける。


「特に場所は決まってニャいけど、取り敢えず此処から離れるだけでもいいんじゃニャいかニャ?」

「確かにそうだな。おいアスカ! 少し場所を移そうか」

「助かったのぉ~」


 教室から出て行く女に付いて行き、途中で助けを求めるアスカを拾っていく。

 アスカは半べそで此方に両手を上げて向かってき、俺へと飛び込んでくる。

 

 ふっ、アスカも漸く自身の気持ちに嘘を吐くのを止めたのだな。


 俺はアスカの頭をひと撫でして、手を繋ぎつつ教室かか退散して行く。


 後ろ未だにあの女への文句が聞こえるが、何か人の悪い部分を一気に見たような気がして気分が悪くなった。




「ここはアタシのお勧めの場所ニャのニャ」


 そう言って女は柵に体重を乗せて空を見上げる。


 現在、俺達は教室棟を離れ、今は使用されていないという廃棟の屋上へと来ている。


「もう一度言うが、有難う。助かった。改めて自己紹介させてもらうが、俺はアベル。元々冒険家として旅をしていた」


 という事にしておこう。


「私はアスカなの! アベルと同じく冒険者やってたの!」


 そう言ってアスカが一歩前に進み、手を上げてはにかむ。

「べ、別にあれはアタシの気まぐれニャ。次同じように助けると思ったら大間違いニャ!」


 女は林檎の様に紅潮(こうちょう)した顔を隠すようにそっぽを向くと、続けて


「アタシの名前はノルン。アベルと同じく苗字はニャいのニャ。見て分かる通り獣人族ニャ。そのせいでさっき見たいニャ扱いを受けてるけどニャ」


 そう言って微笑むノルンの表情は痛々しい。

 アスカもそれに気が付いているようで、何とも言えない顔をしている。



 魔界に獣人族は居なかった為、詳しい事は分からないのだが、獣人族は気性が荒く暴力的で、魔法が特に苦手。強いものには直ぐに尻尾を振り発情すると言われている。


 しかし、これは偏見であり、そもそもこのようなデマを流したのはエルフで、獣人族の身体能力に嫉妬してしまったが為である。と、以前ヴォイド(精霊王)が苦い顔をして言っていた。



 エルフもエルフで魔法面に関してはピカ一の才能を保持しているというのに、情けに話だ…………。


「なに、気にするな。獣人であろうが人間であろうが、魔族であろうがエルフであろうが何も変わらない。生きとし生ける者の価値は皆平等だ。それに、お前は獣人の癖にエルフ以上の魔力を保持していると思うのだが違うか? という事で、これから宜しく頼むぞ、ノルン」

「カッコいい事言おうとしてそうでもないのがアベルらしいの~」

「煩いぞ」


 俺の脇腹を突くアスカの脳天に手刀をお見舞いし、ノルンを見やる。


 彼女は唖然とした顔をして


「…………あ、有難う」

「ん~? 声が小さいの~。もう一度お願いするのぉ」



 前方で楽しそうに(はしゃ)いでいる二人を見て、心が洗われて行く。



 この世界でファミリーネームが無い者は親に捨てられたか、それを捨てざる終えない状況に立たされた者であるのが大概だ。元から無い者は元々存在しない。


 俺は笑っているノルンを見て、いつか壊れてしまいそうだと感じつつ、こいつも俺が守ってやらねばと、と頭に過る。


 …………だが、俺の一番はアスカのみだ! 浮気など絶対にせんぞ!!


 ノルンに首を絞められているアスカを助けるために、俺は駆け足で二人に寄って行く。



 ――これが、ここに来て初めて出来た友達との出会いである。





「ノルン、あんた胸でか過ぎなの。分けるの!」

「は、はぁ?! 何言ってるのニャ! いだだだだだだっ!!」

「おいアスカ、流石にそれは……」

「アベル?! 何時から其処に!! みニャいでえええええ!!」



 今日も空が青いな…………。




 読んで頂きありがとうございます!

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