自立型兵器と住宅街と本。
あの農業工場から出て早数日。
「なんでこんなに…」
ここは特段激戦地でもないはずだが、自立兵が集結していた。
数は…まぁ数えられないほどはいるだろう。少なくとも見つかれば死ぬ。
未だにAIたちの中では戦争は続いている。俺ら人間がいなくたって…な。
とりあえずほかの道を探そう。話し合いも通じるわけがない。
俺はそいつらを避け、目的地の方角に歩いた。
前にもあったように狭い路地裏に隠れながら進み、角に当たればゆっくりと先を見る。
それをずっと続けた。
……いくらなんでも多すぎる。
自立兵は皆最初に見た集結地へと歩いていた。
普通、特別警戒状態でもここまでの量はここら一体に集まらない。どこかへ攻撃を仕掛けるのならわかるが、それでもいくらかは防衛用に残すだろう。それに、そんな司令を出す人間だっていないだろう。システムによる作戦立案だって最終的には人間の手による承認が必須だ。
何かがおかしい。その何かが分からずむず痒い。
…激戦区でもないこの場所にはたいてい一機しかない、基本は防衛に徹する自立型二足戦車だって来やがった。
俺はもうあいつには追われたくない。
だが、残念ながら人間の好奇心は特にこういう状況じゃとても良く刺激される。俺はこの大量集結の理由が知りたいと思った。
といっても何かの命令が下されたっていうほど簡単なわけじゃないだろう。もう軍なんてとっくに滅んだ。
なら何が起きたと考えられる。
システムの作戦立案は人間の手による承認が必須。もっと言えば軍の上の人間のIDが必須。だが、識別IDなら死体と一緒にいるだろう。つまり、理論上は見つけて手に入れさえすれば俺だってできる。なら、他の誰かが好奇心か何かでやった可能性だってありはするはずだ。
だが、こんな世界で生きているやつが戦争を今更激化させるか?その戦争で世界が終わったことなんて今生きているやつが一番わかっていることだろう。
「頭が痛いな。」
自分から考えておいて予想以上に複雑だったらしい。
そんなことを思っている間にも奴らは続々と集まっていた。
まずい、ですめばいいが、そうも現実は甘くない。
下手に動いて見つかるよりかはここからいなくなることを願って隠れている方が良いだろう。
それに俺はここで阻止しなくてもいい。阻止するのが軍人かもしれないが、軍人は誰かを守るために戦うんだ。別に誰かが死ぬわけじゃない。
路地裏で集結しているのをただ見ているだけだったが、予想以上の数が来た。
途中までは路地裏で耐えていたが、しばらくすると数が増えていき、今はビルの一番上の階に隠れながらいる。
隠れながら見ていればいるだけどんどん規模が大きくなる。
しばらくすると自立兵は装甲車に乗り始めた。
装甲車はここから数えられるだけで35台あった。
1台につき5人が乗る。つまり最低でも175もの兵がどこかへ移動するということだ。
何の大作戦だ?
さらに自立型二足戦車に、GAU-8戦車。自立兵だけでも相当な兵力だというのに、一体この圧倒的な戦力でどこへ行くのだろうか。
今のご時世、電気だって燃料だって貴重だろうに。
有限な資源を消費してまでもうずっと戦闘していない場所に攻め込んでどうするのだろう。
AIはそんなに頭が悪かったはずはないが。
とりあえずこのまま俺は見ていようと思った。
この集結を見ていたが明らかに流れが変わった。
有人機体が来たのだ。いや、有人機体だったはずの機体が来た。
RD-2 エオツリ
自立型二足戦車に似た見た目だが、武装が根本的に違う。
自立型二足戦車は腕にライフル一丁と右肩に榴弾砲。
前線での砲撃支援なんかを主とするのが自立型二足戦車だが、エオツリは違う。
腕に対歩兵用機銃と対戦車用機関砲を使い分ける大型ダブルバレルライフルに右肩に小型ミサイルの発射ポッド。左肩に小型三連迫撃砲。
エオツリは最前線で人が乗り、歩兵と一緒に戦い、支援し、迎撃する。
一言で言えば最強の汎用型の機体だ。
だがその武装のせいでAIを乗せたときにもしもが起これば破壊は難しい。だから人という安全弁が乗る、有人機体なのだ。
だが、なんでこんな不毛な世界に有人機体が?
なんで人が当たり前のように従軍している。
まだ大国の連中は戦争しているつもりなのか?
核に爆撃で滅んだはずじゃないのか?
本当にどういうことだ。
頭が混乱してくる。おかしいと確実にわかる事実を脳が否定する。
だが、俺はそれでも機体を見る。嫌でも事実をこの目で見る。それでわかることがきっと…。
「コックピット…。」
コックピット。人間が乗り、機体を操縦するための場所。エオツリにとっては安全弁であるはずの場所。
それが今目の前にいる機体には存在していなかった。本来であれば機体の胸部の前後に少し突き出た場所があるはず。それがこの機体には存在していなかった。
人がいない。それはこの機体にとってはブレーキがないも同然。
誰だ。こんなアホなことをやったやつは。無人機は危険だ。そんなことははるか昔から言われていたことだろう。ただでさえ世界中からの反対を押し切って無人兵器の生産をやっていたというのに、自分でかけていた一番の枷をなぜ自分で完全に取る。
「ふざけんじゃねぇ。」
結局、戦争を激化させるのは上層部だ。いつだって、これは変わらないのかもな。
これ以上、世界の腐りを見たくないがためにビルの壁によりかかり、弾薬の整理をしていると、無人兵器たちはどこかへ進軍した。
どこに行ったかなんて知らないが、まぁいい。
今更死者なんて出やしない。
さっさと目的地に向かって歩き出した。
さっきの危機的状況はどこへ行ったのか。今は平穏そのものだ。
俺が今いるこの場所は核爆弾の爆心地だ。
今まで歩いてきた場所はあくまで一般的な爆薬を使った爆弾を中心として、ところどころ放射線を出す爆弾だけが落とされた。
だがここ違う。ここは大国の一番大きな補給路。
それを破壊するために大型の核弾頭が落とされた。
おかげでここの放射線濃度が尋常じゃない。おそらく長くはいられない。
運が良いのか悪いのか自立兵は放射線で近づくだけで動きが鈍る。
おそらく大きな補給路ということで輸送路にもなっていて、それなりに栄えていたのだろうが、現在はそんな姿見るものもなく、更地、というよりクレーターのようになっている。
そんなクレーターの中心地を避けながら歩いていた。
「ん?」
ぽつ、ぽつと雨が降り出した。
死の雨だがな。
ゆっくりと歩いていたが、全力で走り出し、少なくともクレーター部から離れた。
なんとか逃げ切り、まともに生き残った建物が徐々に見えてきた。
ここは住宅街らしく、マンションが大量に並んでいた。
そういえば今までマンションを見なかったな。
住居侵入罪を堂々と犯しましょう。いや、違う罪になるのか?
まぁ法なんてとっくに意味をなさない。今更だ。
とりあえず位置口から入って一番最初の部屋、101号室に入る。
中は3LDKだ。まず玄関とキッチンが同じ部屋にあり、次に居間。隣に寝室と思われる部屋があった。一般的、と言われるマンションじゃなかろうか。
まずは、食料だ。キッチンの冷蔵庫を開ける。
中には合成肉と合成野菜。
「おっ牛乳。」
といって牛乳と同じ成分と匂いを入れただけの偽物だが。
少し開けてみる。
「くっさ!」
においからして腐ってやがる。さすがに飲めない。
俺はその牛乳を元に戻し、居間に入った。
そこにはパソコンデスクと小さなテーブル。それと本棚があった。今じゃ珍しい紙の本だ。確かに一定の需要はあるとはいえ、ここまでの量はあまり見ない。
本棚を見てみるが、生粋のオタクだったのかもしれない。
個人出版と見られる薄い本がたくさんあった。
それと分厚すぎるわけではない文庫本。
小説に漫画、ライトノベルと多種多様だ。
ところどころ俺が電子だが、読んだことがある本があった。
俺は適当な本を一冊手に取る。
題名は「最後の桜に」
…たまにはゆっくりと読書ぐらいいいだろう。
俺は寝室のベットに座り、ページをめくり、読み始めた。
静かな部屋に紙をめくる音だけが小さくなった。
「ふぅ。」
本を読み終わった。
久しぶりの娯楽だった気がする。
内容は一言で言えば恋愛物。
幼いころに桜の下で幼馴染の男子に好きだといい、男子から、二十歳になった時、返事をこの場所で言うといわれた。
何ともロマンチックな話だ。
二十歳になった時、二人は別々だった。
そんな二人が偶然会い、少しずつ近づいていく。
最後には男子の方から「返事遅くなったけど…」
と切り出し、結果、付き合いましたと。
ハッピーエンドだった。
戦争が始まる前はこんな個人間の物語もあったのだろうか。
経験したことはないが、心の底から。
愛おしく、美しいと思った。
読んでくださりありがとうございます。最近、前みたいな書き方の物語じゃない気がしてきました。読んでくださっている方々はどう思いますでしょうか。前と違う書き方なので面白く感じないのではと思っています。よければ、違う。などの一言でいいので、感想を教えてもらえると今後の話展開などもさらに考えます。よろしければお願いします。




