人と別れて。
「ではな。元気での。」
そう老技師は言った。
「そちらもお元気で。」
久しぶりにぐっすり眠れた次の日。
調整に体が対応したらしく、老技師から動いてOKというのをもらった。
「あぁ。そう。餞別代りだ。」
そういい、煙草を一本差し出してきた。
「若者よ。生きろ。希望を捨てるなよ。」
老技師は最後にそう言った。
「はい。老技師もお元気で。」
そういって俺は外に出た。
老技師と別れ、俺の向かった方向は海だった。
あのゲームの影響じゃないが、故郷に帰りたいと思ってしまった。
海を超えた先なので、港を目指してもう止まった時を刻む街を歩く。
ちなみにあの老技師のいた場所は俺が倒れた場所の近くだ。
だからほとんど位置は変わっていないと考えていいだろう。
なんというか久しぶりに静かに一人でいる気がする。
つい昨日まで人と一緒にいたからだろうか。
そんなことに感傷しながら歩く。
とりあえず今欲しいのは食料と水だ。
老技師のところにいたときは頼ってばかりで、水なんかまともに探してないから水がほとんどない。
その水が手に入れられるかもしれないという希望もあって海に向かっているのだが、おそらく途中で今持っている水は尽きる。
それまでに一度補給をしなければ。
かなりいきあたりばったりだなと思って、また歩き続けた。
「あぁクソ。めんどくさいな。」
ようやく街から出ようかというときに、運の悪いことに水がつきかけている状況で俺は迂回を迫られそうだ。
敵の自立型二足戦車だ。人型ロボットのようにしか見えない。ガン◯ムみてぇだ。
大型のライフルを手に持ち、右肩に速射榴弾砲を乗せている。
前、手に入れたグレネードランチャーなんかでは到底、太刀打ちできない。
下手に手を出したりするより命優先で迂回した方がいいだろう。
水が少ないからあまり迂回はしたくないが、しょうがない。
とりあえずとなりの大通りに出ようかと思ったが、放射能でいかれたとはいえ最先端のAIを搭載しているやつだ。相当迂回しないとな。
そう思ったとき、そいつの頭部がゆっくりと旋回を始め、周りを見渡し始めた。
やべぇな。
はぁ。はぁ。はぁ。
あの場所からかなり逃げた。
まさか、あの距離から検知されかけるとは思いもしなかった。これからはもっと警戒すべきだな。
…死にかけたけど、意外と急がば回れだ。
本当に運のいいことに装甲車があった。
扉は空いていて中が多少荒らされていた。
あの老技師が開けたのか、それとも周辺にまだ人がいるのか。
どっちにしても幸運だ。
ちょうどなかった水がかなりあり、食料もほんの少しとはいえあった。
とりあえずバックパックに入るだけ入れた。
これから水を補給できる機会なんて次いつ来るかわからないからできるだけ取っておかなければ。
十分に水を補充した後、また海を目指して歩いた。
水を補給してから8時間ほど歩いただろうか。
体感時間だからもっと長いかもしれない。
気づけば海についていた。
ここらへんは少し放射線が強いらしく、自立兵なども人がいないと思っているせいか一体もいなかった。
まぁ、放射線の濃度が高ければ高いほど俺も危険なんだが。
とりあえず海、というか港を探索する。
「えっ。」
目をこすってまた見てみるがやはりない。
船がない。
どういうことだ。
これでは故郷に帰るなんてことはできない。
海の向こうにある故郷には帰れないのだ。
「はぁ。」
ゲームのようにはうまく行かないな。現実はつらいわ。
だがまぁ、いいだろう。
希望を捨てるな。
老技師の言葉を思い出し、希望を持って施設を見ることにした。
おそらく船に乗せるものの保管施設を確認する。
施設の中はかなり屋根が高く、暗かった。
そして入って一番に見えたのは段ボールの山だった。
「多すぎないかこれ……。」
おそらく20メートルはある天井にもう少しでつこうとするほど高く積まれた段ボール。
それが見える範囲だけで20列以上。
尋常じゃない量だ。
これを全部見るなんてのはできないのでとりあえず勘で一番小さく、だけど頑丈そうなの段ボールを取った。
それを開けてみる。
中には一つのUSBメモリ。
……なんだこの、何かありますよ感満載のUSBは。
とりあえずそれを手に取り、懐に入れた。
またいつか見れるときに取っておこう。
その後、軽く他のを見たがよくわからない電子部品ばかりだった。
故郷に行けないことが決定したので次に俺が向かった先は戦争前の大国だ。
おそらくもう国家としてはもう崩壊しているだろう。
だが、多分一番発展していた国なので何かあるかもしれない。
あと、一度行ってみたかった。
徒歩でいける距離ではないが、時間ならあいにくたくさんある。
こんなやることも何もない暇な世界だしな。崩壊前の言ってみたい場所に行ってみよう。
俺は港に背を向け、そちらに向かって歩き出した。
港から離れて数時間。
もう時間感覚が壊れたので正確な時間なんてわからないが、街についた。
ところどころかけている建物が多く、脆かったんだろうなと思う。地震なんかが少なかったんだろうな。港で手に入れたUSBの中がきになったので見るためにそこら辺のビルに入る。
普通の会社のビルで、二階に上がると爆風で飛んだらしいデスクがたくさん乱雑にあった。
そのうちの一つの比較的きれいなデスクの前に立つ。
ここは予備電源が通っているだろうか。
通っていることを祈ってボタンを押した。
……無理か。
さすがに無理だった。
まぁ。こういうのもある。いつか見れる日が来るさ。希望を捨てずにいればな〜。
というか今まで通っていることが多かったが、これが普通なのだ。
都市なんかでは予備電力があるだろうが、ここはただの田舎街だ。
しょうがない。
俺はビルを出て、あるき始めた。
「おぉ!」
おそらく、こんな世ではもう見られないものを見れた。
それがこの飛行場だ。
ところどころ陥没しているが、滑走路として機能する状態で残っている滑走路なんていくつあるだろう。
さらにはヘリポートまで。
戦争が始まってから、滑走路なんて一番狙われる場所だ。
確かに田舎とはいえ、まだ残っているとは。
格納庫にはレシプロ機に大型の双発飛行機。輸送用の飛行場だったのだろうか。
いや、世界的に売れた飛行の練習機が数多くあることを見ると、練習場だったのかもしれない。来る途中で大学のような建物もあったし、練習場で間違いないだろう。
そして、俺が見たことのある型式のヘリだってあった。
これを見て俺は素直に思った。
「そういえば、俺ってヘリの運転を多少かじったんだよなぁ。」
ヘリの中は俺の知っている型式とは若干違うらしく、意味わからないボタンだらけ。
だが、エンジン起動ボタンと操縦桿なんかの簡単な操縦系はわかる。。
それ以外は……飛べればなんでもいいか。
まぁそんなことはどうでもいい。
一応背中にそこらへんで見つけたパラシュートはつけている。
このまま大国まで遊覧飛行だ!
そう思いながらエンジン起動ボタンを押した。
だが、豪快なプロペの回転音はなかった。
俺はもう一度ボタンを押した。
またまたエンジンの始動音はなかった。
俺は次は連打した。
それが功を制したのか、エンジン音が鳴った。
「しゃい!」
これで遊覧飛行だ。
喜び、ガッツポーズをすると、エンジン音が消えた。
「え?」
そして一つのとてもわかり易いランプが点滅する。
〈燃料無し〉
畜生!
ヘリに乗って大国へ飛ぶという夢は燃料という現実で崩れ去った。
畜生!
あの後燃料補給はできないかと探したが、燃料のタンク自体が空だった。
畜生!
燃料は貴重だったしな。
畜生!
まぁ、しょうがねぇか。希望を捨てずに…
畜生!
そんなことを思い、奮い起こしてまた歩こうとした。
が、耳を弾丸がかすめた。
風を切り裂く音が聞こえ、反射的に近くの遮蔽物に隠れた。
どこだ。どこから……。
そう思い、少しだけ頭を出した途端に弾丸が飛んできた。
「狙撃兵か。」
こんな世の中だ。
どうせ、自立型のAI狙撃兵だろう。
放射線でシステムがいかれたのか、普通だったら当てるだろうにそこそこ外しているが。
俺は勇気を出して頭を出して銃を構えた。
大丈夫だ。俺の愛銃はマグニファイヤがついてなおかつ精度がスナイパーライフル並だ。それに相手の制度はあまり良くない。
そう言い聞かせ、敵のスコープ反射と発泡時の煙とマズルフラッシュを探す。
さぁ。撃つか狙ってこい!
じっと構える。
まだか。まだか。
……俺はスコープを覗き、少し位置を探った。
だが、敵はその瞬間を狙っていたらしい。
一瞬で右腕を撃ち抜かれた。
かなりの策士な上にいい腕をしている。
だが、あいにくと俺は軍に改造された身だ。
腕に弾丸一発食らった程度で出血などしない。
腕にも防弾装備は装着済みだ。
俺はまたスコープを覗き、狙い続けた。
「いた。」
管制塔の一番上。射角的にギリギリ隠れれば撃たれない位置だ。
俺はにやりと笑う。
遮蔽物にまた身を隠し、一度呼吸を整え、風を図り、ゼロイン調整をする。本来は観測役がいてすることだが、俺は独り身だ。
ゼロイン調整を終えると、俺は一気に頭を出し、敵の頭に照準を合わせる。
瞬時に引き金を引く。
静かだった飛行場に一発の銃声が響き渡った。
火薬のにおいがゆっくりとやってくる。
スコープ越しに敵が倒れたのを確認し、しばらくの間目を話さなかった。
「…ん?」
だが、さっき撃った目標に疑問を覚えた。
撃った瞬間、どす黒い赤色が飛び散った。ガラスにも少し付着している。
「自立兵じゃない。あれは……。」
人だ。
俺はそいつのところに向かって走った。
そいつは頭から血を流し、目を開けたまま死んでいた。
銃を固く手に持ち、引き金に指をかけたまま。
脳を焼かれた奴だ。
殺すことだけを考え、死んでいく。
非人道的だとさんざん叩かれた敵の奴隷兵。
こいつはとっくに終わった戦争に取り残されていたのだ。
「…すまない。そしてどうか、安らかに。」
殺した本人ができることじゃないが、俺はそいつの前で手を合わせた。
こんな世界で生きようとするやつ。
戦争に取り残されたやつ。
様々な人がいる。
戦争が始まる前まではもっといろんなやつがいたんだろうな。
そんな、今更だけど大事なことをを思い出した。
なんか変な感じが個人的にはしてしまった。今までと違う感じがあるかもしれません。すいません。読んでくださりありがとうございます。今後もお願いします。評価等お願いします。




