暴走
デートの次の日から柊さんは積極的にメッセージをくれるようになった。
他にもおはようとかおやすみも送ってくれる。
デートに行ったのは正解だったかもしれない。
いや、正解だったんだ。
こんなにも柊さんが俺に夢中になってくれるなんて嬉しいな。
そう思いながら携帯に再度目をやった。
何度も何度も見返してニヤついた。
「柊さんが俺のことを愛してくれている。」
その事実を口にしてボッと顔から火が吹きそうになった。
改めて考えてみるとすごいことだ。
平々凡々な俺がマドンナを一人占めできているんだから。
「むふふ」
自分でもきもいと思うが変な声が出た。
将来を誓い合ったも同然。
彼女が俺のもとから離れるなんてことはあり得ない。
そう信じていた。
だってそうだろう?
こんなにも愛されているんだ。
毎日毎日おはようからおやすみまでひと時も忘れることはない。
ずっとメッセージを送って、それが返ってくる。
こんなにも幸せなことがあるだろうか??あるわけがない。
「愛してるよ。柊さん。いや、薫」
目の前で下の名前で呼べばどんな顔をするだろう。
きっと喜んでくれるだろう。
顔を赤く染めて、それから薫はこう言うんだ。
「ありがとう、桜木君。ううん、亮太君」って。
なんて可愛らしいんだろう。愛しい、愛しいよ。
大好きだ。こんなにも誰かを思ったことはない。
気分が高揚する。恋とはなんて素晴らしい物なんだろう。
そりゃ今まで馬鹿にしてきたさ。
体育祭でも文化祭でも彼女彼女。そんな奴らを馬鹿にしてきた。
でも仕方のないことだったんだ。
友情なんて足元にも及ばない。
これ以上の幸せが、感情があるだろうか???
存在するのなら今すぐにでも教えてほしいものだよ。
今すぐにでもこの気持ちを伝えたい。
なんで薫は四六時中俺の目の前にいてくれないんだ。
寂しい、薫がいないことがこんなにも寂しいなんて知らなかった。
もう俺は薫なしじゃ生きていけない。
薫、薫。
まるで前世から知っているような気がするよ。
それくらい呼びなれた名前だ。
桜木薫。
あぁ、素敵な響きだ。こんなにもしっくりとくる名前があるだろうか?
俺たちはきっと生まれる前から付き合うことも、結婚することも決まっていた。
そういう運命だったんだ。
俺は薫がいないと生きていけない。
きっと薫もそうなんだ。
薫だって俺がいないと生きていけない。
なんて素敵な関係なんだ。
俺はこの喜びを誰に伝えたらいい?
この幸せを誰にぶつけたらいい??
「あ、そりゃあ薫だよね」
今すぐ会いに行こう。
きっと彼女も喜んでくれるだろう。