決意
昨日の出来事を思い返しては背筋が凍った。
カーテンを閉め切り、窓はちゃんとカギをかけている。
さっきだって確認した。けれど怖くて5分毎くらいにカギが締まっているか確認してしまう。
どうしてこんなことになったんだろう。
この思考は何回目だろう。
考えても考えても答えは見つかるどころか遠のいていく。
こんなことになるなんて、思いもしなかった。
誰だって思わないはずだ。
私が悪いんじゃない。桜木君が異常なのが悪いんだ。
考えたらまた涙が出てきた。
「もうやだよ…」
うじうじしてる場合じゃないのに。
でももう少しだけこの気持ちに整理をつけるために涙を流したかった。
落ち着いたら、ちゃんと冷静に考えられるようになったら今後のことを考えよう。
「薫~まだ起きないの!?もうお昼だよ!」
母の声が聞こえてハッとする。
時計に目をやると針がもうすぐ重なろうとしていた。
「起きてる!!」
大丈夫、昨日のは夢。
そう言い聞かせて何事もなかったかのように部屋を出た。
昼ご飯の支度は済んでいるようで、机の上には母と私、二人分のご飯が並んでいた。
椅子に座りご飯を一口食べて思わず泣きそうになってしまった。
この日常が、今脅かされている。
桜木亮太、たった一人の男のせいで。
父がこの場にいたら、もう少し心強かったのかもしれない。
けれど父は海外出張中。頼ることなんてできないのだ。
父は小さいころからほとんど家にいなかった。
家族を支えるために頑張ってくれているのだ。
最近、ようやくわかった。昔は全然いない父が大嫌いだったけれど…
「ちょっと味が濃すぎたかしら」
母は自分が作ったおかずを一口食べてそう呟いていた。
「全然。おいしいよ」
「え?」
普段おいしいなんて全然言わないから驚いていた。
当然だ。こんなことにならない限り、日常の有難味になんて気づかない。
母の前で平然を装うことで、少し冷静になれた気がする。
警察に行っても意味はない。
よくストーカーなんかで被害届を出しても注意で終わることは聞いたことがある。
変に事を大きくして桜木亮太を刺激すれば面倒なことになる。
確実に私がこの歪んだ関係を終わらせる。
時間がかかってもいい。安全で、確実な方法をとらなければ。
そのためにもまずは油断させないと。
桜木亮太と仲良くなんてしたくないけれど、仕方ない。
ある程度デートにも付き合ってあげて、メッセージもちゃんと返す。
それから信頼を得たところでさっさと手を切ってやる。
そうすれば私は晴れて自由の身になるの。
そうなれば母に心配をかけることもなくなるし、私の心配事も減る。
もし失敗したらとか、面倒なことは今は考えないでおこう。
母には心配かけない。私一人で最初からなかったことにするんだ。
一人胸の中で決意をした。
やっていける。私なら大丈夫、一人でも最善を尽くせる。
そう信じていた。




