終わりの始まり
高校を卒業した日、俺に初めて彼女ができた。
見た目は勿論可愛くて、性格だって最高だ。
頑張り屋さんで、優しくて、照れ屋さんで、非の打ち所がない。俺にはもったいないくらいの…
そう考えると俺は君とは釣り合わなかったのかもしれない。
最初から決まっていたのかもしれない。
こんな俺を君は許してくれるかな…
どうしてこんなことになってしまったんだろう。
苦しい、痛い。薄れゆく意識の中で彼の顔を見た。
彼に私はもう映っていないみたい。
あの時、私の選択が間違えていたのかな…
考えても、もう仕方のないことかもしれない。
あぁ、神様。もし貴方が本当に存在しているのならどうか私を助けてください。
彼、桜木亮太から、私を開放して…
至って普通、格別頭がいいわけでも、悪いわけでもない桜木は普通の高校に入学して、普通の高校生活をそれなりに満喫していた。
学校行事はちょっとめんどくさいし、そういうのって大体周りの奴はリア充ばっかで友情より恋愛優先だからいつもぼっちだった。
何の取り柄もない桜木が、彼女なんてできるわけないってずっと思っていた。
それと同時に、桜木と同レべルな奴らになんで彼女ができるのかが理解できなかった。
別に、羨ましがってるわけでは決してない。
なんてひねくれたことばかり言っていたらあっという間に終わってしまったのだ。
俺の青春は。
もう戻ってこない。
なんて時間を無駄に生きていたんだろう。
そう思いながら卒業式を終えて門を出ようとしていた時だった。
「桜木さん、待ってください!」
俺の名前を叫びながら小走りで走ってきた女の子がいた。
柊薫。同じクラスの女子だ。
桜木は勿論この子を知っていた。
なんたってクラスのマドンナ的存在だったのだ。
勿論足を止めて振り返った。
「ど、どうしたの??俺になんか用?」
なるべく平然を装って返事をした。
はぁはぁと息を切らしながら柊は俺の目の前で足を止めた。
しばらく呼吸を整えて、それからすっと息を吸うと柊は衝撃的なことを発した。
「あの、桜木さん!私、ずっとあなたのことが、す、好きでした!!付き合ってください!」
一瞬頭が真っ白になった。
「え」
柊さんが俺なんかを好き?え?嘘だろ??
こんな、青春最後にこんな素晴らしいことがあっていいのか??
いや、普通にうれしい。
「俺なんかでよければ…」
断る理由がないので俺は迷わず返事をした。
「嬉しい…」
手を頬にあて小さくつぶやいた柊を見て、夢なんかじゃないのかと心の中で思った。