日常の崩壊
卒業式の日、式が終わり学校内で友達と写真を撮って、男子から何度も呼び止められて告白されて、正直くたくただった。
いい加減帰りたい。
そう思いながらやっとの思いで校門の前に立った時だった。
「柊さん!」
また私を呼び止める声がする。
「はぁ…」
やっと帰れると思ったのに。
そう思いながら振り返るとクラスメイトの桜木君がいた。
彼はクラスでも静かな方で目立たない。
けれど一応名前と顔は覚えていた。
なんたって唯一三年間同じクラスだったんだもん。
嬉しいか嬉しくないかで聞かれると別に嬉しくはなかった。
私は彼に興味がない。
「よかった。まだいたんだね。」
声をかけられてハッとする。
先ほどまで少し遠くにいたけれどもう目の前にいた。
走ってきたようではぁはぁと息を切らしていた。
「えぇ、今から帰ろうと思っていたのだけれど…」
貴方に邪魔されたのよ。とは口が裂けても言えずこの言葉は飲み込んだ。
「その、呼び止めてごめんね。俺、柊さんに話があって」
少し逸らされた目線、緊張している声、赤く染まる頬。
言われなくてもわかる。告白だ。
今日だけで何度この場面に遭遇するのだろう。
少しめんどくさく思いながら私は気づかないふりをした。
「どうしたの?」
「あ、実は俺、柊さんのことが、好きなんです。こんなこと言われても困るよね。ごめん」
「ありがとう。嬉しい。」
言われなれた言葉だった。もちろん断ろうと思っていた。
私は誰とも付き合う気はないし、そもそもタイプでもない。
「でも、ごめんn…」
ごめんなさい。そう言おうとした瞬間手で口を塞がれた。
「むぐっ」
イラっと来て手を噛んでやろうかと思ったけれどそれもかなわなかった。
「ねぇ、柊さん。俺の言うこと聞いてくれない?」
耳元でボソッとつぶやいた桜木の声は先ほどのバカみたいな間抜けな声とは違い、ドスの利いた低い声だった。
「じゃないと俺、柊さんにひどいことしちゃうかも」
そういうとどこに持っていたのか、ナイフをちらつかせてきた。
私はこの場を逃れるために頷くことしかできなかった。




