光の残影
戦いの朝に
戦士は思う
恋人のことを
故郷に消えた幻が
追想のように、蘇る
ああ、天国よ
あの荒野を走った
段々畑の先に
君がいる
僕のキスを受け止めて
くれた
君の声を忘れない
そして、戦いがやってくる
剣を持って、仲間が、一人一人とうたれて
仲間には一人一人愛する者がいた
僕は、必死に剣を振るった
故郷のためじゃない
愛する人のためだけに
それを知る人はいないか
愛する人を失わないためだけに戦った戦場を
絶命の瞬間に友は、最愛の名の人を呼ぶんだ
ごめんって
彼が、愛した人は、何て言うか
何て、いっても、僕にはわからない
あの空遠くで、光のように光っている
髪をかき上げる仕草がいいんだよ
て言った。
どこまも、無垢な瞳をした友の目が血に染まる
こんな悲しみを、どうしてか!
神様
どうしてなんだ
愛する人を守るためだけに生きたあの友が
どうして死ぬんだ。
光を追って
残影を追いかけた
きっと子供に帰って、初恋のあの子の家の前で、自転車を止める
こんなときめきを、信じていた。
なのに、どうして、友は死んだんだ
夢を語る友の瞳は美しかった
それは、故郷に帰って、牧場をやりたい
あの子と
て言った
それなのに、なんで、あいつの心臓に剣が刺さったんだ
理解しがたい
神様
あなたが彼を見捨てた理由を知りたい
僕らにだって希望があるんだ
誰か、救ってくれ
剣は、希望を捨てること
しかし、剣を持たないと、誰も守れない
それが戦争だ
段々畑があったんだ
そこで、野菜を育てる
そんな彼女が好きなんだ
そう言って、散っていった命を
神様
取り返せない時間が過ぎていくんだ
戦況は過酷だって知らせが来た
一時撤退しろって
僕は、戦場を離れて。
多くの友の血が、無残に消えた戦場に。
何て友の恋人に言ったらいいんだよ
花を手向けたい
故郷で、恋人が言ったんだ
泣きながら
僕はかける言葉が無くて、彼の面影を抱きしめる彼女に、心の中で、すまないと言って、去るしかなかった
戦争よ
悲劇を笑うな
みんな愛する者のためだけに死にたいんだ
しかし、生きたい
誰だってそうだ
僕は、戦況が過ぎて、一時休戦すると、故郷へまた戻り、友の家へ行った
家族がいて、どういう死に方をしたんですか?
と母親が訊いてきた。
僕は彼は、恋人の名を叫んだ
と言った
母は気丈を崩し、泣き崩れた
僕は、かける言葉も無く、その家を去ると、独り、酒場へ行った
静かな時間に、音楽が流れている
悔しくて
やりきれない
僕は、そして、愛の意味を考えた
答えは出ないけど、彼は、愛そのものだった
光の残影が瞼の裏に走り、僕は泣くしかなかった。




