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トゥールとアレセンシアの本  作者: 川島 蛍
11/17

声の主2

スミレの花を辿りながらしばらく進むと昨夜見た小川より大きく流れの早い川辺へと辿り着いた。

背の高い樹々が光を遮り足を休めるには都合の良い場所になっておりルアにミーゴ、トゥールも渇いた喉を潤す為揃って川に口を付けゴクゴクと喉を鳴らしながら水を飲んだ。


「あぁ、うまいっ。」


ミーゴのわざとらしく大袈裟な言い回しがトゥールの気持ちを少し軽くするのと同時にルアの表情も和らげていた。

ルアは相変わらず無口だったがトゥールはなんだか打ち解けれたような気がして嬉しかった。

ミーゴのおかげでその場の緊張がほぐれるとそれぞれのお腹が大きな音を立て空腹を知らせ、ルアは顔を赤らめながら恥ずかしそうに下を向いていた。


「お腹空いたね。」


トゥールはルアを気づかいわざと明るく振る舞うとミーゴに目配せをしてみせたが、ミーゴがそれに気付く訳もなく、口を大きく開けて黙ってこちらを見ているだけで空回りに終わってしまった。


「あっちに食べれそうな実がある…」


ルアは赤らめた顔をトゥールに見られないよう背けながらトゥール達を案内した。

しばらく歩きルアの言う通りに茂みの中を入って行くと食べれそうな木の実などがなっている場所を見つける事が出来た。

最初の木はトゥールの腰ほどの低木で枝先に付いた橙色の実は爽やかな香りを放ち見ているだけで口の中に唾液が込み上げるとトゥールは待ち切れずその実を一つ捥ぎ取り親指と人指し指でつまみ口に放り込んだ。

実には沢山の果汁が含まれ鼻に抜ける酸味と舌に残る甘みにトゥールは夢中になって実を食べ始めた。

思い返してみるとここに来てから殆んど食事をしていなかったトゥールの胃はいつも以上に食料を欲していた。

ひとしきり橙色の実を食べると次に見つけたのは細く途中で折れた木の間から生えた奇抜な色をした無数のキノコ達だった。

キノコをは小さく不規則に生えており奇抜な色が枯れた木を明るく照らす電飾のように見えた。

トゥールは珍しいキノコに思わず手を伸ばしかけると、それを見たルアが慌てて止めに入った。


「は、離れろっ!」


ルアの声に驚き、振り向いたトゥールにキノコ達は沢山の胞子を飛ばし辺りは煙に巻かれたように視界が悪くなった。

胞子を吸い込んだトゥールは激しくむせ返ると鼻の奥がムズムズし始めくしゃみが止まらなくなってしまった。


「ハッ、ハァッ、ハァックションッ!!これ何なのっ!?」


トゥールは痒みを取ろうと鼻を必死に指でこすりながらルアに聞いた。


「そいつ達はくしゃみ茸だ。身の危険を感じて大量の胞子を飛ばすから近くで吸い込むとくしゃみが止まらなくなる。」


「そんな〜、もっと早く教えてよ…はっ…くしゅん!!」


トゥールはくしゃみをしながらもう一度キノコを見てみるとキノコ達には一つ一つ顔がありいかにもといった感じで皆こちらを睨みつけていた。

その中でも一番派手な配色のカサの部分が少し欠けたリーダーらしいキノコは不機嫌そうにトゥールへ話かけてきた。


「おい、相手に迷惑をかけておいて謝りもしないのか?」


そう言うと周りのキノコ達も口々にヤジを飛ばし始めた。

声や見る限り中年ぽいキノコ達はトゥールへ不満を述べ謝罪を求めていたが一斉に喋っていた為、誰にも何を言っているのか伝わる事はなく、一通り喋ると気も晴れたのか何事も無かったように静かになった。


「近づいてゴメンね!」


トゥールは一言キノコ達に謝ると急いでその場を後にした。



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