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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第1章-人生の分岐点- I
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鬼の拳骨



 気付いた時には学校の保養室だった。

 おろおろと心配していたメティアが、俺とテトの母さんを呼んだようだった。


 そして俺とテトは母という鬼を見た。


 喧嘩の始まりを事細かに根掘り葉掘り聞かれた。

 喧嘩の始まりはテトの所為だった。

 血みどろバトルになった原因は俺だった。

 釈然としないが、俺が七のテト三で決着がついた。

 やり過ぎたのがいけないらしい。


 釈然としない態度が母さんの気に障ったらしくごちんと拳骨された。

 テトの拳より痛くない筈なのに、とても痛かった。


 俺のその姿を見たテトは、

――ごめん、やり過ぎた。

 と、謝ってきた。


 テトの方が身体はボロボロだ。

 多分肋骨辺りも折ったと思う。

 少なくとも、磁力の同極化でテトの左腕は折った。

 それなのにテトは「やり過ぎた」と言ったのだ。


 テトがやり過ぎなわけがあるか、と思った。

 何故なら喧嘩やってるとハイテンションになって気付かないだろうが、実際に俺はやり過ぎた。


 回復魔法(ヒール)で傷は塞がり、骨折も治るだろう。

 だが、痛みは消えないし、普通であれば骨折も治るとは限らない。

 俺が使用する属性回復魔法は、潜在属性に合わせて使えば、色艶よくなり疲れも吹き飛び、骨折もあっさり治るが、俺と姉さんしか知らない技術だ。


 それなのに、知っていることを前提で、ひたすら相手の骨を折って無力化を目指した。

 テトは怖かっただろう。

 俺は、骨が折れた激痛と骨折が治らないかもしれない恐怖をテトに与え続け、じわじわと嬲った。


 ただの魔族だったら死んでいた。

 それも何回も何十回も何百回も、死んでいた。


 更に今だから分かるが、十全の理の「蟲毒街都(ヴェナムガーデン)」が起動していた。

 つまり、じわじわと麻痺毒(パラライズ)も混ぜて殴りあったのだ。


 流石チートの塊の『十全の理』。術者の思考をガン無視で、自動起動する。

 いや、きっと、俺が殴られたから術者を守護(まも)るために、自動で起動したのだろう。


 設定上の『十全の理』もそんな(まほうじん)だった。

 そういえば設定の後期になると『十全の理』が擬人化してたが、最終的にそうなることは勘弁して欲しい。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 とにかく、俺はやり過ぎた。

 謝罪で済まないレベルだった。

 だけど、謝罪した。

「こちらもやり過ぎた。ごめん」と。


 対して、テトは、

「謝るなよ、言い過ぎたのはこっちだし、先に手を出したのはこっちだ。そっちが怒るのは当然のことだよ」

「何言ってるんだ、謝るのは当然だ。

 こっちは間違いなく肋骨と左腕と右足を折ってるんだ。テトは大人しく謝罪を受けろ」


「いいや、断る。ミルこそ、僕の謝罪を受けろ」

()なこった」

 テトは犬歯をむき出して威嚇する。

「ああん? またヤるかテメェ」

「おおぅ? 上等だ、今度は俺の本領の攻撃魔法込でヤってやるぜ」

「言ったな? 言ったな? 五体満足でテメエの姉ちゃんに甘えられる日になると思うなよ」

「実力見合わず尻尾を股に挟んで逃げた負け犬が、今度は俺に噛み付くのか」


 今度は俺とテトに鬼の拳骨が落ちた。



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