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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第1章-関係-
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ホームシック

 5歳になった。


 4歳手前のときのメティアとのイベント以来、イベントは特になかった。

 あるとすれば、また俺が与り知らない設定が反映されているものがいくつかあったり、俺の周りの人間関係がちょっと変化したぐらいだ。


 与り知らない設定については、まずこの世界『本』というものがない。

 いや、あるのかもしれない。

 が、俺が5歳になるまで本というものを見たことがない。

 自宅(ログハウス)にもなかったし、村の学校にもない。

 きっと紙は貴重なのだろう。

 もしくは凸版画技術(とっぱんがぎじゅつ)がなく、手書きか。

 事情は分からないが、とにかく無かった。


 これに困るのはやはり俺で、生前はweb小説にラノベにetc...と、とにかく本を読みまくっていた俺だ。

 本が読みたいという欲求不満がある。

 生前は彼女いないとか女性と話したいとか悶々してたものだが、この世界に来てから女性、もとい姉さんやメティアと話したりしているので、そういった不満はない。

 というか、この世界の姉さんとか幼馴染は必要以上にべったりする生き物なのか。家と学校のホームルームでは姉さんがべったりして、授業始まってからさようならまでメティアがべったりする。


 学校で順調にヘイトを稼ぐ俺。

 俺がなにをした。

 ああ、順調に美人(はべ)らせてハーレム作ってますね。



 とにかく、本もしくは活字が読みたくて仕方がない。

 とくに車でスローにすりおろされる前まで読んでいて、お気に入りに突っ込んでいたweb小説の続きが読みたくてしょうがない。

 主人公が戦いに明け暮れて壊れる寸前になったところで、ヒロインがそれを慰めて性的な意味で合体するまで秒読み! で、「to be continued」で悶々させてくださったあの小説。

 さすがにあれから5年経っている今、とっくに合体は済んで完結しているだろう。

 ほかにも残り3章! と大々的に宣伝していた、大人気小説のあれもとっくに終わっているだろう。

 鈍器と称されるあのラノベや小説10周年記念でイベントをやっていたラノベも読みたい。


 作者がエタるのではなく、読者が世界から弾かれてエターナル読めない、略して「エタない」なんて中々ないわーと苦笑いしようがなにしようが、とにかく読みたい読みたい読みたいと悶々々。

 あの世界へ帰りたいとホームシックになる理由が小説、本とは中々ないのではなかろうか。


 俺が生前、活字中毒を発症させたのが、高校生手前、つまり15歳ぐらいの時だ。

 それまでにこの世界で本に出会えることを祈るしかない。


 因みに、紙がないので村の学校での座学は、基本的にずっと先生の昔話を聞く。

 まあ、黒板といったものもないので、問題ないといえば問題ないが、生徒の記憶力が試されるものだった。

 という訳で、生前に培った四則演算(しそくえんざん)程度は普通に出来るが、この世界の歴史と文化は、正直覚えられなかった。


 あとこの世界の文字もまだ覚えられなかった。

 文章や言語のルールが日本語のように複雑なのだ。

 日本語では漢字・ひらがなや英語とかロシア語とかの外国語の音を強引にカタカナで表現していたが、似たようなのがこの世界の言語でもある。

 紙とかに書けば分かるのだろうが、ぶっちゃけ分からない。

十全(じゅうぜん)(ことわり)』に言語解読をインストールさせるのも一つの手だと思って、俺はすぐに覚えることを諦めた。


 こういった世界にはよくあることだが、四則演算はこの世界にとって理解しにくいものらしい。

 というのも、先生も「乗算」が怪しくて「除算」がほぼ出来なかった。

 口頭で20個の果物を5人で分けるとかは出来ていたが、20個の果物を3人で分けるという小数点が混じるものとかはだめだった。

 なお、計算上では6.666666……である。

 先生でこうなのだから、教えられる立場のメティアや級友は当然もっと理解していない顔つきだった。


 メティアは幼馴染で俺を慕ってくれる子だから、今度四則演算を教えようと考えながらもそのままお互い5歳まで育った。

 四則演算してからメティアを見ると思い出すが、大抵そのあとの実践魔法の授業で忘れる。

 いかんな、この歳でボケ始めたか。

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