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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第1章-関係-
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回復魔法

 次に知らない設定が種族である。

 そもそもミリエトラルらを取り巻くのはあくまで人族だけであった。

 しかし、3歳になって初めて魔族のメティアに会った。

 つまり、魔族という設定は「俺、知らない」設定なのである。

 その魔族で分かったことがあった。


 まず人族のように怪我はするが、血は流れず、魔力が漏れ出るようだ。

 魔力で動かしてるからなのか、人族に比べて魔族は身体的(しんたいてき)に弱い。

 メティアや魔族を含めた級友と鬼ごっこで走るだけで、魔族組は揃いも揃って息が絶え絶えになる。

 体力がヘボい。

 大人になればある程度改善されるというが、この状態がある程度改善されてもヘボいものはヘボいだろう。


 さて、そんな魔力で身体を動かす魔族だからこそ、魔法の扱いは凄いところで、級友の魔族は難しいと言われる回復魔法(ヒール)が使えていた。

 初めて見たときは鬼ごっこのときに――誰かが、覚えた魔法『突風』でも使ったのだろう――突然割りと大きめの木の枝が飛んできて、級友の二の腕を切った。級友は半泣きだったが、回復魔法が使える別の級友が直ぐに傷を塞いでいた。

 このように、即回復させるものは魔族かもしくは回復魔法に特化した魔法使いでしか出来ないと、先生から聞いた。

 大抵はじわじわ回復させるものらしい。


 この回復魔法についてのイベントがあってから、俺は自宅で回復魔法を実践練習した。

 なにせ、姉さんがチャンバラをせびってくるのだ。

 生傷は絶えない。

 そして怪我をすれば俺が治すということが分かって、姉さんは大張り切りで俺に木剣を当ててくる。


 一日に何回も回復魔法をすれば分かってきたが、ある一定の法則があるように見えてきた。

 俺が反撃するため、姉さんも割りと怪我をする。

 女性だからとくに念入りに回復魔法を使うのだが、水属性の回復魔法だとじわじわ回復するのだ。

 なお、姉さんはその間、急かすこともなく寧ろしなだれかかってかかってきて、姉さんの吐息が耳にあたる。

 また姉さんは思春期に突入しているためか、胸も膨らんできており、それが俺の腕に当てられる。

 多分きっと素でやっているんだろう。

 きっと深い意味はない。

 信じられるか、これでも血縁関係のある女性なんだぜ。血縁関係が無かったら、襲いかかってたよ、俺。


 閑話休題。


 姉さんに水属性の回復魔法を当てるとじわじわなのに対し、火属性のフィルタを使った状態で回復魔法を当てるとじわじわではなく、直ぐに傷が塞がった。

 更に姉さん曰く、身体の怠さも取れたという。

 潜在属性に合わせた回復魔法が必要なのではないかという推測だ。

 なお、身体の怠さが取れたと言ったその日は元気が有り余り、俺は生傷を増やした。


 この推測を確かめるように毎日一日の終わりに、姉さんに火属性の回復魔法を使用した。

 彼女は毎日の顔とか表情とか身体がツヤツヤするようになっていた。

 母さんから「シスは何故あんなに色艶(いろつや)が出ているのか」と聞かれたが、一応知らないと(とぼ)けておいた。


 で、俺はというと『十全の理』の『四属性王(エレメンタルマスター)』が起動して魔力パスが接続され、全属性使えるようになったとはいえ、元の潜在属性は無属性だ。

 だから、火属性や水属性の回復魔法を使用してもじわじわ回復だった。

 ダメ元で無属性にしたらじわじわでもなく即回復でもなかったが、回復魔法としての役割は果たしているように見えたので、良しとする。


 で、これを魔力で出来ているという魔族――特に親しい魔族のメティア――に掛けてみたいと思ったが、メティアらは俺が回復魔法使えるとは知らないし、勝手に掛けても色艶よくなるだけで意味が無い。

 ただ、予測だと魔力で身体を構成しているのであれば、属性回復魔法で極端な話、千切れても傷口合わせて属性回復すればくっつくと考えている。


 人族は魔力で動かず、血、筋肉、骨などを総動員して動かしているが、魔族は聞いたところによると魔力と骨で動き、申し訳程度の筋肉があるそうだ。

 つまり、潜在属性に合わせた魔力を当てると、それを急速に取り込むのではないだろうか。

 と、仮説を立ててもメティアも級友も怪我しないので掛ける相手がいない。

 当然、無ければよいがもしメティアが怪我をしたら、実験してみようと思う。


 人間相手に実験なんてなかなかえげつないことだが。

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