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136/136

136.正義と、死神

 怒髪天を衝くジェネレクスは剣を構えて、

「【瞬(またたき)】」

 最前列にいた橙瀧の目前に刹那で移動し、無数の斬撃を繰り出す。


「思いきし牙を剥きやがったな……それでいい! 【竜牙殺到】ッ!」

 これを橙瀧は同数の激流拳の雨で相殺する。


 するとジェネレクスは矢継早に、

「【竜牙殺到】ッ!」

 拳の雨を橙瀧へ浴びせる。だが橙瀧はフットワークで容易く回避する。


「……何故当たらない!?」


「さぁな。あと、当たらないことばかり気にしてちゃあダメだぜ」


 ジェネレクスの右で朱い金属光沢が輝く……チョルヒは三倍速で飛び回り、四方八方からジェネレクスを射線に重ね、銃を三倍速で連射する。


「【セイクリッド・フィールド】」

 弾丸を防ぐため、ジェネレクスは半球状のバリアを展開する。

 直後、バリアは破砕し、ジェネレクスは魔力球と大量の弾丸の両方を受ける。


「そーくると思ったわよ。全方位バリアで楽して防ぐってね」


「……【ウンディーネ・スペリオル】!」


 ここからジェネレクスは周囲にミストを展開する。

「【モンスターコール:ビートル5】」

 シュラはお構いなしに【グングニルビートル】を百体召喚。即、突撃を命じた。


「助力しましょう、シュラさん。【スピード・コール5】」

 カブトムシたちはヴァイスからのバフを受け、急加速してジェネレクスへ接近する。


 今のジェネレクスはミストの効果により、速度を測り、防御の最適なタイミングを読むことが出来る。

「【サラマンドラ・マグナ】」

 そのタイミングで彼は燃え盛る右拳を突き出す。


「アタシも行くよー! 【スピード・コール3】!」

 カブトムシたちはミストの範囲外にいるリュートのバフも受け、さらに加速。ジェネレクスは夥しい数のカブトムシに刺突された。


「範囲外の人の行動は予測出来ない――君のそれの裏をかかせてもらったよ。……これ君が考えた作戦なんだから君が言ってよヴァイス君」


「生憎、私には作戦を決め台詞として明かす文化はあまりないので。では、このまま攻勢を強めましょう。【アタック・コール5】」


 ヴァイスは他七人に攻撃力へのバフを付与。そして全員はジェネレクスを囲み、猛攻を仕掛ける。


 ジェネレクスは多種多様な超強力スキルを豪勢に乱発し応戦。だが全て八人に突破され、傷つけられてしまう。


「何故、何故俺の技が通じない……!?」


 ジェネレクスの剣を押し返しつつ、ネロアはこう返す。

「あなたの技はもうお見通しですよ。だってもうあちこちで見ましたから!」


 触れたモノの記憶を読み取り、それを再現する――それがジェネレクスのスキル【時神の傳承】。

 ジェネレクスは左腕に、ロジスティクス・サーガ全プレイヤーの記録を蓄積した英雄譚樹で作った蔦を装備している。

 それによりジェネレクス、ロジスティクス・サーガ各国のプレイヤーのスキル(※化神官の固有スキルを除く)を全て使用することができる。


 つまりジェネレクスの戦闘方法は、多国籍にスキルが混ざっていることこそ異端ではあるが、個々で切り取ってみれば『既知』。

 そして数々の戦いを乗り越えてきた八人にとっては『対策可能』なのだ。


 ヴァイスは他の七人を後援しながら、

「あなたの能力は先の戦いである程度把握しています。

 非常にシンプルですが、わかってしまえばなんてことありません」


「……たわけがァッ! 『マリンブルー・ビーム』」


 と、ジェネレクスはヴァイスへ剣を向けて、詠唱する。しかし、何も起こらない。


「何故技が発動しない……まさか!」

 咄嗟にジェネレクスはシュラの方へ向く。シュラは『違う違う』と指を振って言う。


「残念、今回消されたのは『そもそも』だよ」


 ロジスティクス・サーガ内、神域的空間にて。


「よし……遅れてすみません。ア・ドネザスオグさんの仕掛けがあまりにも巧妙で、大幅に時間がかかってしまいました」

 と、英雄譚樹へのアクセスを禁止にする作業を終えて、文神ユールコアは言う。


 よくやった。と、レソカーラ・シュクペバー神はユールコア神を褒めて、

「これで最後の旧化神官、ジェネレクスは大幅に弱体化するだろう。

 ……ところで、お前はどうするんだ、ホイプペメギリ?」


 未だプレイヤーたちへの援護を行わず静観を貫き通しているホイプペメギリは言う。

「今俺に手助けできることは何もない。仮に出来たとしても、死を司る神が来るなんて縁起が悪いだろう」


「相変わらず根暗だなぁ……」


 地上にいるジェネレクスはひどく狼狽えた。自身の強さの源である英雄譚樹を封じられた故に。


「というわけで、君が今出来るのは『死に方を選ぶ』だけになったね」


「んじゃ、さっさと観念しなさいよ。変な遅延行為しないで」


 八人の視線の焦点に立つジェネレクスは、輝きを失った英雄譚樹の蔦を見て、


(そんなはずがない! 俺は、誰にとってもの幸せを願っていた、正義なのに……!)


 現実を拒み、


(俺は正義だ……今の世界に勝って当然なんだ……だから、俺は絶対に屈さないッッ!)


 理想を望んだ。


「【ブライソード・ファランミリオ】ッ!」

 まだ自分が持っているスキルは使える……ジェネレクスはランニバーニの【魔剣士】最強の魔法を詠唱。

 彼を中心に光の剣が何百万も生成され、全方位へ拡散される。


 八人は各々の手段で剣から身を守る。


「負けが確定しているくせにまだ抵抗するかアイツ!?」


『先程より脅威はありませんがッ、これでは迂闊に攻められません!』


『案ずるな、俺が『絶対』を貸してやる!』

 八人の頭中に理神レソカーラ・シュクペバーの声が伝わる。

 直後、八人は神威的な光に包まれる。


「これは……バリア?」


「何でしょうこれは……もの凄く力が湧いてきます!」


『これは絶対秩序のエネルギーだ。バリアなんかじゃない、奴を誅すための力だ!

 さぁ、行け、人々よ……俺の力を用いて、放て!』


「「「『「「「「【理神の正義】!!!!!!!!」」」」』」」」


 八人は秩序のエネルギーを纏い、ジェネレクスへ駆ける。


「神頼みも程々にしろ、遅れ人どもめぇッ!」

 ジェネレクスは光の剣を絶えず全方位に射出する。しかし神威纏う八人の化神官たちの前に、光の剣は全て塵と化してしまう。


 朱い残像を残す斧、青く綺羅びやかな双刀、黄の究極の魔弾、緑の鮮烈なレイピア、橙に煌めく最強の拳、紫の覇気を放つ槍、これらをジェネレクスは間断なく受ける。そして……


「「これが本当の……正義だ!」」

 必死を翻す黒い邪剣と、大命を導く白い聖杖が、真正面よりジェネレクスに迫る。


「違う、違う違う……違う! 俺は間違っていない、劣っていない、潰えてはならないッ!」

 

 ジェネレクスは最後の足掻きとして、剣へ己の魔力をありったけ引き出し収縮させ……

「俺が正義だ! 【レジェネクロノ・ストラッシュ】ッ!」

 眼前の黒白の脅威へ振りかざす。


 二つの技は激しく相克し、周囲へ混沌としたエネルギーの輝きの奔流を放つ。この圧力に耐えきれず城は崩壊する。


 そして、光と塵埃が落ち着くと……ジェネレクスは息絶え絶えの体で両膝をつき、身体中にオーラを纏った状態で『健在』していた。


 神域にいる理神レソカーラ・シュクペバーは、ひどく青ざめた。


「馬鹿な……俺の力が通らなかっただと……!」


 奇跡が起こってしまったのは、相克の刹那の時だった。

 ジェネレクスの『消えたくない』という意思が英雄譚樹が持つ力そのものと共鳴し、彼を完全無敵の体へと作り変えたのだ。


「どうやら世界そのものは俺に味方したようだ……!」


 多大な愕然と疲労で動くことが出来ない八人の視界の中で、ジェネレクスはゆっくりと立ち上がる。


「さっきはよくも俺のことを散々に愚弄したな……楽に死ねると思うなよ遅れ人ども!」


「お前みたいなダニが俺の前で『死』を語るんじゃない」


 ジェネレクスと八人の化神官はさらに驚いた――特にネロアは、驚喜した。


「ホイプペメギリ様!」


 死神ホイプペメギリは無言でネロアの傍らに移り、


「俺が司るのは『死』、それ以上も以下もない。だから俺は他の神のように贅沢な物は与えてやれない。だから与えられるのは、これしかない」


 混沌めいてうねる刃を持つ剣を、ネロアの側の地面に突き立てる。


「……いいえ。これでいいですよ。僕はこれが一番嬉しいです」


 ネロアは突き立てられた剣を引き抜く。

 その柄から、師の温もり、優しさ、想いが流れてくる。

 けれども彼女はこの感慨に浸らず、毅然として、ジェネレクスへ歩み寄る。


「ま、まさかそれは……させるものか!」

 ジェネレクスはネロアの歩みを止めるべく、魔法を放とうと手のひらを彼女にかざす。


「それこそさせるものか!」

 ジュリクスはその手を銃で撃ち、無理くり引っ込ませる。


 さらに橙瀧とヴァイスがジェネレクスの体にしがみつき、身動きを封じる。


「ジタバタするんじゃないぞ貴様ッ! 最後くらい強いところ見せてみろッッ!」


「さあ早く、為すべきことを為してください……ネロア・ルォーナピアナさん!」


 ネロアはジェネレクスと適切な間合いを取ると、両手で柄を握りしめ、剣に黒蒼の闇を

宿らせる。

 剣先をジェネレクスの心の臓へ向けた状態で、腰をひねり力を溜める。


「やめろ、やめろ、やめろ……助けてくれぇぇぇぇ!」


 そして一切の慈悲なく、

「【死神の滅殺】」

 ジェネレクスを一閃する。


*


 俺たちが言う『創生』、そちらで言う『サービス開始』。

 一番驚くべきことは、それから数十年しか経っていないことだったな。

 この小さい世界には、その小規模さえ不釣り合いなほどの少数の民草と、おぼろげな条理があった。何のためにあるのかわからないほど、活気がなかった。


 だが、ある日を境に、この世界は変革を遂げて栄えた。

 おぼろげな条理が、定義され司る役目を担わされた頃からだ。

 

 時間の進行を定義し、時神ア・ドネザスオグに司らせた。


 改善の機知を定義し、機神トドッバ・マに司らせた。


 生命の栄達を定義し、命神キトァミァに司らせた。


 娯楽の絢爛を定義し、音神マダキウポオーベーに司らせた。


 厄災の表裏を定義し、災神ジャグガパゼバに司らせた。


 学術の発展を定義し、術神イイキュフォアグに司らせた。


 死滅の輪廻を定義し、死神ホイプペメギリに司らせた。


 文明の表現を定義し、文神ユールコアに司らせた。


 八神の規律を定義し、理神レソカーラ・シュクペバー……俺に司らせた。


 そして、この世界にあの世界の住民を渡来させられる橋が架かった。その橋の名前は『ロジスティクス・サーガ』。

 お前がこの小さな別世界を観測し、『VRMMO・アクションRPGゲーム』として、大勢の人々をこちらに案内してくれた。それで今日のこの世界の繁栄があるんだ。


 ジェネレクス・アメジクス。アイツのそこのところだけは可哀想だったかもしれん。せっかくこの世界の真理の中核に気づけたのに、まともに相手にされなくてな。


 いや、絶対可哀想じゃないか。これが真実とバレたらあっちの世界でやりづらくなってしまうからな。


 ……確か、今回の件は大規模なシステムエラーとして始末し、半年間メンテナンスするんだったか。

 ならこっちの世界には五年、来訪者が来ないのか。

 じゃあそれまで俺たちはその間大陸をまた遊びやすいように整えておく。もちろんア・ドネザスオグへの説教も並行してな。


 おっとすまない、話の流れがいつの間にか変わってた。


 今までも、これからも、俺たちに務めを与え、人々による素晴らしい賑わいを見せてくれてありがとう。別世界にいる秀才、ロジスティクス・サーガ運営開発代表……ああ、本名で呼ばれるのは恥ずかしかったか、お前。

 では、改めて……ありがとう、創神R・L・F。


*


 現実世界における半年後。

 『ロジスティクス・サーガ』はサービスを再開した。


 全プレイヤーがログアウト不能になるという騒動の影響はやはり凄まじく、総プレイヤー数は半減した。


 けれどもゲーム内の状況は着々と元通りになる。


 機国イズセラは全チームが正真正銘本意で団結し、イアンに徹底破壊された【鋼都】を修復していった。


 術国イペファワエゼもエロイースと学級長『四人』が才を振るって、先の内乱含めた諸々の被害を回復させた。


 時国ランニバーニでは、ジュリクスは復興を進めるのと並行して、自ギルドの権力を他七ギルドにある程度譲渡し、比較的合議制に近い政治体制へと改革した。


 災国カメセスコアは、またシンプルに戦乱状態に戻った。


 音国エホシャドチグパもほぼ半年前と同じ。

 微小な変化としては、リュートがアブソをちょっとだけ優しく扱うようになったとかそうじゃないとか。


『文国ヨヤアサも前のままかな。ボクの身の回り事情だと、ネタ収集先のデカい所が無くなって筆の速度が落ちたことかなぁ』

 と、シュラはチャットを介して愚痴を言う。


 それを聞いてネロアは尋ねる。

「この前の件はどこかしらネタにできなかったのですか?」


『うん。しようと思ったんだけどねぇ。けど事件性を帯びた直近の出来事はあまり扱うべきじゃないって編集が、ね』


「言われてみればそうですね。本当に傷ついたり、よく思っていない方もいますからね」


『そうだろう。して、君の方は今どうしてるんだい?』


「こちらも前のままですね。強いて言いますと人口が半分になったことです」


『本当に『強いて言ってる』ね。それ八国全部に当てはまることだもの』


 ですよね。とネロアが言った後、二人はクスクスと笑った。


『あ、そういえば……ネロア君、今ヴァイス君の命国ミレアがどうなっているかは、わからないかい?』


「さぁ、わかりません。さっきから僕もそれが気になっていまして……」


 その時、ネロアの書斎の扉をドカドカ叩き、


「大変なことになったぞネロア!」

「ミレアの軍が国内で確認されました!」

 アンティルとレイザックがこう報告しつつ大慌てで入室した。


「どうやらミレアも前の通りらしいです」


『そうだね。サービス再開したての浮かれたところで進撃する。ヴァイス君の初手らしい鋭い策だね。

 ……それじゃあ、邪魔しちゃ悪いからボクは切るよ。また近い内に会おう、ネロア君』


 シュラとのチャットを終えた直後、ネロアはウキウキした様子で二人へ向いて、


「では行きましょう! アンティルさん、レイザックさん!」


「「は、はい!!」」


 こうして、死国内でネロアの軍と、ヴァイスの軍による三度目の戦いが勃発した。

 なお、この勝負の結末はシュラのヨヤアサ軍が突然乱入したことで有耶無耶になったという。


 そして、この戦いをきっかけにトードイスムカとミレア……もとい、八国全土の戦いは再燃し、ロジスティクス・サーガは三度目の隆盛を迎えるのだった。


【終わり】

ロジスティクス・サーガ・データベース


■キャラクター紹介

【ジェネレクス・アメジクス】

 分類:ピープル(旧化神官)

 所属:時国ランニバーニ

 レベル:100

 ジョブ:【魔剣士】/【化神官】


 時国ランニバーニの旧化神官。

 現行のプレイヤーを『遅れ人』と見下し、絶滅を望んでいる。

 この人格の元となったプレイヤーの意思を歪んだ形で引き継ぎ、ロジスティクス・サーガ世界を統一した後、現実世界の侵攻を企てている。

 

 ランニバーニの【魔剣士】は、王道の勇者のように、近距離・単体の相手は剣で、遠距離・多数の相手は魔法で対処する戦法を取る。

 彼の最大の能力はスキル【時神の傳承】。効果は触れたものの記憶を読み取り、それを再現できるというもの。

 今回の戦いにおいては、【英雄譚樹】で作った蔦を装備し、それを元に全プレイヤーのスキル(化神官のものを除く)を発動できるようになっている。

 これにより、通常ではありえない連携技を繰り出したり、比類ない対応能力を持つようになった。

 

 名はジェネレート、ジェネレーション、ジェネシスなどの様々な言葉に王を意味するラテン語レクス(Rex)をくっつけたものです。

 姓はアメジストのもじりです。


 名前、能力、正確とともに、わかりやすいラスボス(それもイベント戦のテイストが強い)を意識して作りました。



【創神R・L・F】

 分類:神

 管理国:なし


 このロジスティクス・サーガの万物を創造した神。

 理神レソカーラ・シュクペバー以上に滅多に姿を見せたことがない……というより、こちらは本当に誰にも姿を見せていない。


 その正体は、ゲーム『ロジスティクス・サーガ』の制作・運営スタッフの代表者。

 まさしく神の気まぐれのような偶然から、この世界に小さな世界が、衛星のように付随していることに気づいた。

 それから、のちの理神レソカーラ・シュクペバーと協力し、ある程度そちらの文明を整備した後、現実世界とその小さな世界を接続し、ゲームとして提供していた。



■あとがき(2025年3月執筆)


 本作をご拝読いただきましてありがとうございました。作者です。


 本作は今から約五年弱前、2020年8月から、私なりのVRMMO小説を書きたいという思いから、何回か間隔を空けて連載しておりました。


 ざっくり時期を分けますと、


・CHAPTER1~4の第一期(2020年8月~同年9月)

 本来はここで話を閉じるつもりでした。


・CHAPTER5~8の第二期(2020年11月~2021年8月)

 せっかく作っておいた設定(特に災国、機国、術国関連)をしっかり回収したくなったため、話を延長することにしました。


・CHAPTER10~真の完結までの第三期(2022年4月~同年5月)

 ここで第一期の時点でうっすら考えていた真のエンディングを書き切りました。


 ……という感じです。


 そして今回、作品ジャンルを意識して『リマスター』という名の本作の加筆修正を実施いたしました。

 ここで、過去にもっさり構想してましたが本連載には組み込まなかった『CHAPTER9 ストラグラー家の乱』を新たに執筆して追加しております。



 ここからこのあとがきの本題に移行していきます。


 何故、今回、約三年前に完結した作品を加筆修正しようと思ったのかといいますと、人の成長は…………未熟な過去に打ち勝つことだとな……と、思ったからです。


 正直な話、この作品は読者の方々からはもちろん、私から見てもお世辞にもいい作品とは言えない代物でした。


 2021年8月あたりに外部サイト経由で頂いた感想のとおり、設定がだいぶ粗かったり、登場人物の言動や感情に不自然不適切な部分が多かったり、そもそも文章が下手(てにをはがおかしいなど)だったりと散々でした。


 前二つはその時から至極その通りだと思っていました。

 ところが良くないことに、最後の一つについては『奇をてらった』みたいなことをのたまって、当時はあまり真に受けていない部分がございました。


 ただし一応、最後の一つを含むこれらの感想を受け止めて、続きを書いていたのですが、完結ブーストを含めても想定よりPVは伸びないし、評価ptの平均値も星2.5という散々な結果で完結を迎えてしまいました。


 その悔しさを胸に、別作品『カンナギイヤサカ』などを新たに執筆はしていたのですが、こちらも胸を張って言える良い結果は得られず(ネット小説大賞一次通過止まり)というところでした。


 これを受けて、上述のとおり未熟な過去に打ち勝たないと、これから何をしてももう自分はまともな結果が残せないと危機感を募らせ、今回の加筆修正作業に乗り出しました。


 そしてこの作業をしての感想ですが、「マジで何してたのコイツ」という具合です。

 どうしてこんな言葉使いをしたのか、お前設定覚えてんのか、そもそも誤植多すぎだろ。というぐらい、ツッコミどころが満載で、作業しながら自分で自分にキレていました。


 特に、加筆修正後で言うEP.16~21は、作業前は描写抜けまくりの状態でわずか一話で片付けられていたという始末で、新たに五話かけて補強しなきゃいけなくなった労力の分も含めて、相当カチンときてしまっていました。



 そんな過去の私への怒りを含む、大まかに言うと三つのストレスに耐えながらどうにか、新エピソード含む加筆修正を終えました。

 ただ、未熟な過去に打ち勝ったかというと、確かに勝ったには勝ったと思いますが、満足のいく成長には繋がっていないと自覚しています。


 感情や状況表現の幅の狭さ(正直、真面目にカウントしたら三十種類くらいしかないと思います)、描写の奥行きの無さ、キャラクターの理解度・解像度の不足、誤字脱字の多発……etc

 物書きとしての細かいスキルが欠けまくっていることには気づけはしました。ですが、今回の長い加筆修正を経てもそれを改善することは叶わなかったのです。

 

 

 今回の未熟な過去に打ち勝とうとした動機と、上述の三つのストレスの二つ目は、『近い内に次回作を執筆したいから』です。

 現在の私の最新作、『カンナギイヤサカ』がネット小説大賞を一次だけとはいえど、通過はできたので、次なるステップをその作品で行いたいと考えています。


 それを実現すべく、今回の『試練』を受け入れたのは、次回作はキチンと読者に認められるような作品にしたいからというわけです。


 公式情報によりますと、今年のネット小説大賞は4月24~7月23日とのことでした。

 ですのでそれに間に合うように、また違ったアプローチで上に挙げた問題点を解消しつつ、まとまった量の話を公開できるように頑張ります。


 まず、自分が強化すべきところは感情や状況表現の幅でしょう。『喜んだ』とか『怒った』とか直接的な表現が多かったり、やたらと目を使った感情表現に頼りまくっていましたので。

 それからキャラクターの設定の突き詰めですかね、もう主要人物の大まかなイメージはできていますし、なんならタイトルもうっすら考えていますが、キチンと練らないと後が困りますから。


 これ以外にも色々話したいことはございますが、あとがきはダラダラやるものではないので、ここで抑えておきます。


 とにもかくにも改めて、ここまでご拝読いただきましてありがとうございました。

 もしよろしければ、『六人の娘が異世界から帰ってくるだけの話』などの過去作と、次回作にも目を通していただけますと幸いです。


 


 ……おっと失礼、書きそびれたことがありました。

 加筆修正中に感じていたストレスの内の三つ目は『本が読めていない』ことです。

 ただいまざっとカウントしたところ、買ったけど積んだままの本が42冊もありました。

 こちらをキチンと勉強として読んでから、次回作の制作に乗り出さないと絶対にダメでしょう。


 なお、この長ったるい感想は加筆修正前に読んだ自己啓発本の『決意は公開したほうがいい』というものに基づいていたりします。


 では今度こそ、親愛なる読者の皆様、ここまでご拝読いただきまして、本当にありがとうございました。

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