第二章:献身という名の免罪符
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二日目の朝、太陽は残酷なほど鮮やかに昇った。
昨夜までの「なんとかなる」という淡い期待は、カイトの短い悲鳴とともに霧散した。
食料を探しに岩場へ向かったカイトが、鋭い貝殻か、あるいは突き出た岩の角で足の甲を深く切ってしまったのだ。
「……っ、クソ、油断した……」
水着の足元、砂に滴る血が、彼が昨日まで見せていた「万能なヒーロー」の虚像を壊していく。私は動転しながら、パーカーを脱いで彼に羽織らせ、自分の水着の上に着ていたTシャツを引きちぎって、彼の足をきつく縛った。水着姿になった私は、自分の控えめな胸や細すぎる足が露出していることに、場違いな羞恥心を覚えた。けれど、今はそんなことを言っている場合ではない。
「大丈夫だよ、カイト君。私が、代わりに行ってくるから」
そう言ったものの、現実は甘くなかった。
彼が昨日いとも簡単にやってのけたことが、私には何一つできなかった。
森に入れば、生い茂る草木に肌を切り、得体の知れない虫の羽音に怯えて足がすくむ。海岸で貝を探そうとしても、どれが食べられるものか分からず、ただ泥の混じった砂を弄ぶだけ。
結局、夕暮れ時、私が持ち帰れたのは、渋くて食べられない野いちごのような実が数粒と、わずかな水分だけだった。
拠点に戻ると、カイトは焚き火のそばでぐったりと横たわっていた。
傷口が化膿し始めているのか、彼の顔は赤く火照り、苦しげな呼吸を繰り返している。
「ごめん……カイト君、私、何も……」
私の声は震えていた。
昨日、彼が私を守ってくれた。それなのに、私には彼を助ける力がない。
眼鏡は曇り、髪はボサボサ。私は、ただの荷物だ。彼一人ならもっとうまくやれたはずなのに。
「……サキ……謝るなよ……」
カイトが掠れた声で笑おうとする。その優しさが、今の私には何よりも辛かった。
熱に浮かされる彼を前にして、私は自分の中にある「女」という機能を、唯一差し出せるカードとして意識した。私にできること、彼を少しでも楽に、幸せにできること……。
私は、熱で震える彼の身体を抱きしめるようにして、彼の下着へと手をかけた。
「サキ……? 何を……」
「いいの。私にできること、これくらいしかないから。……ごめんね、役に立てなくて」
カイトの身体は驚くほど熱かった。私は跪き、彼の熱をその口の中に含んだ。
初めて体験する、男性の荒々しい質感と、潮の香り、そして熱。
カイトは熱に浮かされながらも、抗えない快楽に身体をのけぞらせた。彼の指が私の短い髪を掴み、喉を鳴らす。
「あ……っ、サキ、おまえ……」
激しく悶え、荒い息をつくカイト。私はただ必死だった。自分の無力さを許してもらうための儀式のように、彼の全てを受け入れた。
やがて、彼は震えながら私の口の中に全てを吐き出し、力なく砂の上に沈み込んだ。
出し終えた後の解放感からか、それとも極限の疲労からか。
カイトの顔からは苦悶の表情が消え、穏やかな、規則正しい寝息が聞こえ始めた。
私は口の端を拭い、彼にパーカーを掛け直してやった。
その瞬間、私は自分がもう「ただの女子高生」には戻れないことを、静かに悟っていた。




