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プロローグ:深夜、26歳のデスクから

noteで綴られる鋭い恋愛観と、驚くほど当たる占術でファンを持つ「宵闇占術所」のサキ。

今でこそ冷静に運命を説く彼女だが、かつては眼鏡の奥で地面ばかりを見ている、内向的で無力な少女だった。

物語の舞台は、彼女が十七歳だったあの夏。

学校行事のクルージング中に遭難し、クラスメイトの男子・カイトと二人きり、地図にない無人島へ漂着する。

頼れるカイトの背中を追うだけの、無力な自分。

しかし、カイトが負傷し、絶望が島を包んだ時、彼女は「自分にできる唯一のこと」を選び取る。

二日目の夜、彼のために差し出した献身。

星空の下で目覚めた、運命を読み解く予感。

そして三日目、激しい雨の中で分かち合った、初めての熱――。

救助の船が来た時、二人は一つの「秘密」を共有し、肩を寄せ合って現実へと帰還する。

それは、地味な事務職という仮面の下に、一生消えない「灼熱の記憶」を隠し持つことになった、サキの占い師としての原点の物語。


カチカチ、と規則正しいタイピング音が、薄暗いワンルームに響く。

都内、古い雑居ビルの一室。昼間は事務職として書類の山と格闘している私は、夜になると「宵闇占術所」の占い師、サキになる。



noteの投稿画面を開き、私は「秘密」というタイトルの記事を書き始めていた。

『恋愛において、誰にも言えない秘密を持つことは、呪いではありません。それは、自分という存在を支えるための、たった一つの確かな背骨になることもあります』



ふと、自分の眼鏡を外して目を閉じる。

まぶたの裏に浮かぶのは、都会のネオンではなく、あの夏の痛いくらいに青い海と、夜空を埋め尽くした星々の瞬きだ。



今の私を作ったのは、統計学としての占いではない。あの三日間、世界の果てのような島で、一人の少年の体温と、絶望の果てに見上げた星の導きだった。

26歳の私が、今の私を鑑定するなら、きっとこう言うだろう。



「あなたはあの時、自分を捨てて、運命を拾ったのね」と。

これは、誰にも話したことのない、私の「占い師としての誕生日」の記録。


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