日常に帰ろう
翌朝。
カウベルルとタイガルルに挨拶をしてマヌルの里を出発したユーレイ達は、神王殿でも挨拶をして今日は一緒にと力丸とショウを連れて人世に降りた。
狐神達は真っ直ぐ稲荷山へ。
陽の光も緑も眩しいキツネの社に着いた。
「キツネ殿、ありがとなぁよ」
「礼には及ばぬ。儂は帰って来ただけだ。
響、モグ。身体に戻す。此方に」
「「はい♪」」
「他の者は此処で魂を馴染ませておけ」
「此処ならキツネ殿の加護があるからよぉ」
「其れは言わなくてよい」「いやいや♪」
ソラ達は、そのやり取りを微笑ましいと思いつつ眺めていた。
オフォクスはそんなユーレイ達をチラリと睨んで社に向かった。
「睨まれたよな?」「そうだね」
「恥ずかしかっただけだぁよぉ。
気にせんでええ、ええ」
笑って瞑想を始めた。
勿論、修行ではなく魂を人世に馴染ませる為の基底維持だ。
「ショウと力丸は犬のままなのか?」
「うん♪ 僕は犬の方がいいの~♪」
「ま、俺も犬での修行を続けたいからな」
「力丸はオヤツを食べたいだけだろ?」
「なっ、失礼なヤツだなっ」
「でも楽しみなんでしょ?」
「そーだけど!
コイツにだけは言われたくないんだっ!」
「なんで?」
「まだまだなクセにナマイキだからだっ!」
「だって兄ちゃんもコドモだよ?」
「そーだけどっ!」
「ね、僕たちも瞑想しない?」
「あ……」
既に皆、瞑想していた。
暫くして――
〈ジョーイチ♪ 久しぶりだな♪〉
――上から声が降ってきた。
「ん?」上を探す。「タカ!?」
慌てて口を押さえる。
〈そっか♪ 分離してもらえたんだな?♪〉
〈ああ。けっこうな人数が生きてたぞ♪〉
白い虎神の背から降りてペコリ。
相棒にはニヤリ。
〈そっか♪〉〈ナンジョウさん、誰?〉
〈カケル、修行してろよな〉〈気になるし!〉
〈ジョーイチがナンジョウ?〉〈だよ♪〉
〈そんじゃあ俺も そう呼ばせてもらうぞ♪〉
〈そうしてくれ♪ 弟はホウジョウだ♪〉
〈ん♪ ホウジョウ~♪〉飛んで行った。
〈カケル、集中切れ過ぎだ。
あの男は俺の相棒。タカだ。
モグラに食われたんだよ〉
〈ふぅん〉
〈モグが何日も姿を見せなかったのは分離する為だったんですね?〉
〈ソラまで瞑想やめちまったかぁ?〉
〈すぐに再開しますよ〉
〈何しに行ってたかどころか、モグが離れてたのすら俺は知らん。
けど、そうなんだろうな。
ま、無事で何よりだ♪〉
〈そうですね〉
―◦―
〈ホウジョウ答えろよ~♪
その美人は奥さんなんだろ?
紹介してくれよ~♪〉
〈瞑想の邪魔だ〉
〈タカ、私が分からないの?〉男になる。
〈ゴウちゃん!?〉
〈そうよ♪〉戻した。
〈結婚してたよな?
それで引っ越して……〉
〈引っ越した後で結婚したのよ♪
だって男女逆転しなきゃならなかったから♪
それで……ヒカルは? ダメだったの?〉
〈旦那か? 俺、顔とか知らないんだよなぁ〉
〈知らないってねぇ……そっか。ギリギリ女の子してた頃しか知らないわよね〉
〈まさか! あの光子ちゃんだった光ちゃん!?〉
〈その『まさか』よ♪
だから子宝にも恵まれたの♪〉
〈まだゴッチャのを分けて合わせてってしてる最中だったからなぁ。
そのうち来るんじゃないか?〉
〈そ♪ それならいいわ♪〉
〈って……ホウジョウとヒカルちゃんを会わせるのか?〉
〈生きてる人の法律なんて関係ないわ♪
私達は3人で夫婦するのよ♪
それを確かめてからホウジョウとも結婚したんだから~♪〉
〈そっか♪〉
〈まぁ私の相棒その1と その2なんだから相性は よーーーく分かってるわよ♪〉
〈引っ越してからはヒカルちゃんと?〉
〈そ♪ 祓い屋は続けてたのよ。
だから……ね〉
〈そうか、それでか。
ゴウちゃんを護り抜いたんだな……〉
〈そうなのよね~。
ちゃんと男になったんだからって。
私は一緒に戦いたかったのに……〉
〈無事だろーからよぉ、そんな暗い顔すんなって〉
〈そうね。ヒカルは強いもの〉
〈だよ。
じゃあ俺も瞑想すっ――ん?〉
〈あら♪〉
「響ちゃん、モグ。終わったのね♪
久々の身体は どう?」
「ちょっと重~い」「犬が喋った!?」
「タカ、何も気づかないの?」
「んん~~~ああっ!」
「操られてても護っていたのよ。
それに分離も大変だったと思うわよ。
感謝しなさいよね」
「そっか。操られてたのか……けど俺は生きてるんだよなぁ。うん。
やっぱ伝説の先生が言ってた通り渡竜さんは優しくて強い人なんだなぁ」
「僕は犬のモグ。
だから~、そのヒト知~らない♪」
タタッと響の後ろに隠れた。
「「伝説の先生って~」」サイオンジを見る。
「ヨシさんトコに弟子入りした時には、と~っくに亡くなってたからなぁ。
最強の祓い屋先生のコトだよ。
会ってみたかったよなぁ」
「「そこに居るけど?」」
「へ?」
「サイオンジ~♪ 弟子入り希望者~♪」
「じゃなくて! 雑賀咲先生だっ!」
「だから~♪ サイオンジ♪」
「へ???」
「静かにしねぇかよぉ。
オイラが雑賀咲 晃斎だぁよ。
拒みゃあしねぇから勝手に修行すりゃあええだぁよ」
片目を開けてニヤリ。
ナンジョウもサイオンジの近くで手招きしている。
「ありがとーございます!」腰直角!
そして飛んだ。が振り返る。
「その可愛い嬢ちゃんは?
ヨシさんじゃないよな?」
「響ちゃんよ♪
ちょっかいだしたらソラにボコボコにされるわよ♪」
睨んでいるソラに笑みを向ける。
「ゲッ! 出しませんからっ!」
―◦―
静かになって少ししてキツネが人姿で社から出て来た。
「皆、少しよいか?」
「キツネ殿よぉ、改まって どうかしたのかぁよ?」
「これからの祓い屋活動なのだが……頼みがあるのだ」
「遠慮なく言ってくれよぉ」
「ふむ。
人世には未だ多くの堕神が居り、神の欠片持ちは無数に存在する。
神の魂は、人世生物の魂より大きい。
其れを無理矢理 人世の生物の魂の内に込めておるが故に不安定となる。
不安定が故に、神を内包したまま怨霊と化し易い。
今後は怨霊を成仏させるだけでなく、神を内包する者をより早く探し、力を導いてやってほしい。
怨霊と化する前に救ってほしいのだ」
「分かってるよぉ。輝竜サンの活動をオイラ達 祓い屋にも、ってんだろ?
任せとけやぃ♪
生き人もユーレイも、動物も動物霊も、弟子入りは拒まねぇよ。
仲間増やして、どんどん探し出してやらぁよ。
動物は輝竜サンの家にも預けていいんだろ?」
「稲荷山も受け入れる」
「ありがとよぉ」
「内包しておる神も欠片も生きておる内に切り離す方法が確立した。
切り離し、神力の写しを込めるが故、魂は安定し、祓い屋としての活動にも支障は与えないと約束する。
だからサイ、頼んだぞ」
「おぅよ♪」
「それと……此処にも来てくれ。昔の様にな。
モグもな」
「夜通し話そうなぁよ♪」「うん♪」
銀毛の美狐が社の扉前に現れた。
「娘神様が来たなぁよ♪」
「そのようだな。如何した?」
「ドラグーナ父様がお呼びです。
お話しなさりたいそうです」
「そうか。直ぐに行く」
「そんじゃあオイラ達も公園に戻ろうなぁよ」
「はい!」一斉。
「サイ――」「龍神様とゆっくりなぁ♪」
ユーレイ達は笑って瞬移した。
〈後でまた来るよぉ♪〉
〈サイオンジ! 私達は!?
そんなに遠くまで行けないんだけど!
まだ身体に馴染んでないんだからっ!〉
返事ではなくショウが戻った。
「忘れてた~♪ 連れてく~♪
けどモグは行けるよね?」
「ショウありがと~♪」ぱふっ♪
「ショウ兄ちゃ~ん♪」ぴとっ♪
「ま、いっか♪
キツネ様またね~♪」瞬移♪
―◦―
〈モグ、兄ちゃんアッチ♪〉〈行こっ♪〉
響を残して走って行った。
〈久しぶりの公園だわ~♪〉深呼吸~♪
〈響ごめん!〉ソラが飛んで来た。
〈仕方ないわよ、気にしてないし♪
あれ? お兄は?〉
〈もう帰ったよ。
義姉さんに会いたいからって〉まっしぐら♪
〈そ♪ それじゃあ邪魔しても悪いし~、ライブハウスに行きましょ♪〉
〈そうだね。久々に普通のバンド活動だね♪〉
〈うん♪ 今なら歌わせてもらえるかな?〉
〈掃除してるんじゃない?〉
〈じゃあ手伝ってからね♪
行きましょ♪〉
身体を具現化したソラと手を繋いだ響は、神世の穏やかな陽射しに慣れた目を細めてアスファルトの熱で揺らめく街へと駆け出した。
まだ全てが元通りではなく建築中のビルも多く見えるが、一時は更地ばかりになっていたのだから十分に日常の風景と言えるだろう。
〈やっぱり日常がサイコー!♪〉〈そうだね♪〉
授かった命のことは
すっかり落ち着いてからでいいよね♪
そんな事も思いつつ――
―◦― おしまい ―◦―
これにて『ユーレイ武勇伝』も終わりです。
神世という常識の外に行き、異界にまで踏み込んでしまったユーレイ探偵団ですが、無事に人世の日常に戻れました。
スッキリしない宿題だらけの終わり方になってしまいましたが、それでも、この先きっと闇禍も退治できるし、地星は未来を掴み取れますので不安なんてありません。
ですから~、、大団円という事にっ!
お読みくださり ありがとうございました。
m(_ _)m




