望まぬ昇進
ダークマターを食した翌日の夕方、現在進行中で読書をしている。
なるほど…モンスターの体内自体には魔力はないのか。胃腸や肝臓とかには魔力はなく、血液とかに魔力は入ってるんだな。
「ん?どうした、かるかん?」
『シュルル、シュルシュル。』
「胃腸って何、って?うーんとねぇ…栄養を吸収する場所かなぁ。俺たちの体みたいなものを溶かすのが胃で、栄養を吸収するのが小腸だな。」
『シュルル?』
「胃の中に入ったらじゃあ死んじゃうのか?胃液っていう液体があるんだけど、それに触れない限りは大丈夫だな。だからもしかるかんが何かに食われたら、絶対に胃液に触れちゃいけないぞ。」
『シュルル〜。』
「いや、そんなことそんなに起こらないだろ。」
こんな風に勉強をしているのが地味に楽しい。やっぱり勉強は一人じゃなくて複数人とやるに限る。
…そういえばさっきからベランダが騒がしいような。
「うわぁ!またあのハトだ!」
合格通知をしに来てくれたハトに似ている、が別個体だろう。なんとなくわかるんだよなぁ。
「ちょっ、窓コツコツやめてヨォ!」
『クルッポォ!』オエッ
「…相変わらずきったねぇ出し方しやがる!どれどれ…」
【ギルド設立のお知らせ】
同じギルドメンバーで五回以上クエストをクリアしたためギルドが設立可能になりました。
あなたのパーティメンバーの過半数が設立に賛成したため設立が確定しました。
ギルドの本拠地の場所はこちらです。
「…なんか勝手に決まってるぅ。」
なんか、ギルドなんてモンが設立してるんすけど…
別に俺は良いんだけど、なんかデメリットとかないのか?そのギルドって…
「ん?なんだこの札は?」
学生証に似たカード。ギルドメンバー証って書いてあるな。
「えーっとなになに?【ギルド幹部】?」
…え?ダメだろ。
設立はまだ目を瞑るけど、え?幹部?何勝手に上級職に設定してんだよ!
「…今度会った時初手で声かける前にぶん殴ったろ!」
良いよな、別に。だって俺知らないんだもん!勝手にできて勝手に幹部になってるんだもん!
幹部なんて、絶対めんどくさいもん!これ以上やること増やしたくないもん!
「いや、ね?推薦とかで使えるとかなら渡りに舟っすよ?でもこっち大学の推薦入試ねぇんだよクソボケガァ!」
『シュル、シュルル…』
「え?顔が怖い?そりゃそうだろッ!勝手に決められたらキレるよ!お前はわかるか?学校休んだ日に係決めで、勝手に学級委員にされてる時の絶望を。一週間のうち一日を集会で放課後無くなるんだぞ?それと一緒だよ!」
『シュルル、シュルル!』
「かっこいいから良いじゃん?そりゃなぁ、女子にかっこいいって言われたらうれしいよ?でもな、ヘビに言われても嬉しくないんだなコレが。」
「シュルル…」
「あ。」
しまった、流れに任せてかるかんに酷いことを言ってしまった…
いくら相棒だとはいえ、流石に言って良いことと悪いことがあるな。
「すまん、すこし言いすぎた。その、嬉しくないって言ったけど、ほんとは褒められると嬉しくなるもんなんだ。だから…嬉しくないなんてのは嘘だ、すごく嬉しい。…ありがとう。」
『シュルル〜!』
「ああ、頑張ってみようと思うよ。ありがとうな!」
かるかんが優しくてよかったといつも思う。ほんと、あの洞窟で出会ってよかった。俺以外の冒険者と出会っていたら殺されていたかもしれないからなぁ。
こんなに優しい子が殺されるなんてどうかしてるしな。
ちなみに、ギルドメンバー証と一緒にあった紙にはこのカードに魔力を込めるとギルドに転移できると書いてあった。また今度使ってみよう。
ガチャッ
それはそうと二人が帰ってきたみたいだな。
「おかえり、晩飯はできてるぞ。」
今日はチキン南蛮です。
結構真面目に作ったからぜひ味わってほしい。ちなみにタルタルソースはかるかんが作りました。
異物混入したりしないかって?俺が見てたから大丈夫!
「おお、ありがとう。と、その前にコトハに話があってだな…」
「ん?どした?」
「その、今日が部活のオリエンテーションの日でね。カレンちゃんと二人で見てきたんだけど…」
「え?そうだったの?」
今頃にオリエンテーションかぁ。意外とおそいな。
「アンビアスと私、部活に入ろうと思うんだ。」
「ほうほう、それで?」
「帰りが遅くなっちゃうかもってことだよね。」
「そういうことだ。それで、その間コトハは大丈夫か?」
そんなに気遣わなくても良いのに。元はと言うと不注意だった俺が悪いんだし。
あ、でもコレだけは聞いておかないとな。
「別に俺は大丈夫だよ。ただ、もうそろそろ食料が尽きそうだから買い物行っても良いかな?」
「ん?別にそれぐらいなら良いと思うが?」
「私も別にそれぐらいなら大丈夫だし、むしろ買い物ならじゃんじゃん行っちゃって良いよ。」
意外とあっさり承諾されたな。
「ていうか二人はなんの部活に所属するんだ?」
「魔法薬学部だな。」
「魔法薬学ゥ?」
「そう、料理と同じで鍋を使うしちょうど良いかなぁって。」
「なるほどなぁ。冒険者の知り合いに精通してる人がいるけど今度連れてこようか?」
「いやいや、そこまでするほどじゃないさ。ほとんど趣味って感じでやっていくつもりだし。」
「そうか、また会いたいってなったら教えてちょ。呼ぶから。んじゃ、飯持ってきますわ。」
でも、そうかぁ部活かぁ。
俺も復学したらどっか入ろうかな?
入るとしたらどこが良いんだろう。やっぱり友人がいるからって理由で魔法薬学?でも、工作できる部活があるならそこに入ってみたさもある。超常界とは変えて運動部に入るのもありだな。ワンチャン、部活設立しちまうか?
「お待たせしました〜チキン南蛮でございやす〜!」
「コトハ、ごめんだけどこのカードは何?」
「ん?どしたアンビアス?…あー、それなぁ。なんか、ギルドができてたっぽくていつのまにかメンバーになってたわ。」
「か、幹部って書いてますけど…」
「なんかなってたわ。」
「え?幹部になったのか?コトハが?」
「え、うん。なんか勝手に決まってた。」
「そのカードと一緒に手紙入ってなかったか?」
「ん?入ってたぞ?」
「見せてみ。」
「え?うん。わかったけど…」
カレン、どうしたんだ?
ていうかなんで手紙が一緒に入ってたってわかったんだ?
「お前、ちゃんと読んだか?」
「え?ギルドができましたってだけだろ?」
「裏面読んでないじゃないか…」
「う、裏面…?ちょっと返してくれ!」
手紙の裏を見る。よーく見ると四行だけ文字が書いてあった。
設立祝典は明日執り行う予定なので幹部以上の方は必ず出席お願いします。
必要なもの:交通費 ギルドメンバー証 やる気
集合場所:ギルド本部
解散場所:貴方のギルド事務所
…やっぱり面倒ごとじゃねえか。
「ギルド本部ってどこにあるんだ?」
「多分ここで言うところの本部っていうのは極東本部のことだと思うから公共魔導車に乗ってニ時間くらいかなぁ。」
「二時間も掛かるのかよ…」
「早めに寝た方がいいぞ。」
「じゃあ、飯食って風呂入ったらいつもより早めに寝るわ。」
「そうしろ、買い出しとかは私たちでやっておくから。」
「恩に着る。」
この後ちゃんと助言通りすぐ布団に向かったわけですが、設立祝典で何をするのか気になりすぎて全然寝れませんでした。右手首に俺を寝かせ付けようと温かいかるかんが巻き付いてくれて眠ることができたけど、寝不足になってたらチトセはどうしてくれてたんだろうなァ、ああ!!!




