新たなる生活
いつぶりの投稿なのでしょう?
わたしは、ご飯に向かうため扉の方へと足を進める。
だが現実と夢とでは体を動かす感覚の違いか、大きさが違うためか、何だか動き辛い。
「わたしのゆめなのに、わたしにやさしくない。」
そう理不尽に思い呟きながら、扉を開け、廊下に出る瞬間、膜のようなものから出る感覚に襲われた。
そして、唐突に周囲が騒がしくなった。下の階から声や足音、様々なものが聞こえてくる。
「あれ?とびらをあけたときに、こんなに、うるさくなかったのに」
何だか不思議な感覚で、扉を開けたまま、わたしはもう一度、部屋と廊下を行き来してみた。
「おぉ~おもしろい」
どういう仕組みかは分からないが膜のようなものを越えると途端に音が消えるようになっていた。
何だか魔法みたいだと思いつつ、現実でも遮音性のある建物なんかもあったし、夢でそういうものがあってもおかしくないね。だが、大変便利だ、現実でも是非とも実装して欲しい。
だが、それよりも、ご飯が食べたい。
ポメスープって言ってたけど、わたしの記憶ではそんなスープは食べたことがない。一体どんな味がするんだろう。そんなことを考えながらもう一度扉を通り抜け、廊下へと出る。
しかし、扉を出たところで困った。
それはとても至極当然なことで、わたしはミュラという子の姿になっただけで、この家のことは全くもって記憶にない。だからキッチンやリビングの場所など知らないのだ。そして廊下に出たことで気が付いたのだが、扉が多くどの扉に入れば、ご飯を食べられる部屋へ行くことができるのかわからなかったのだ。その上、先ほど出てきた扉のことを考えればわかるように、音が廊下に漏れないような仕様になっている部屋だと一部屋ごとに開けてみなければわからないのだ。だが案の定、廊下には活気のある声や物音が響いているので、その方向へ行けば人に出会えるはずだし、もしかしたら、キッチンやリビングかもしれない。
「よし、いってみよう」
今思ったけど、かなり大きい家だなぁ~。
もしかして、お金持ちの家なのかな?だとするとハウスキーパーや使用人みたいな人たちもいるのかな?
けど、お姉ちゃんが呼びに来てくれた時点で執事やメイドさんとかは居ないんだろうな。
ちょっと残念。
そして、わたしは声の聞こえてくる方向へと廊下をトボトボと歩いた。
すると階段があり、下に続く階段から様々な声が聞こえてきた。そして一つ下の階へ行き、声のする近い部屋に足を進めた。すると部屋の中から渋い男の人の声と若い男の人の声が聞こえた。
「この件は一刻までに先方に伝えておいてくれ」
「わかりました。至急遣いの者を出します。」
ん?思ってたのと違って忙しそう。これは外れの部屋みたい。ご飯にありつけそうにないや。そう思い別の部屋を探しに、そこから立ち去ろうとすると、ちょうど扉から出てこようとしている焦げ茶色の短髪の青年に声をかけられた。
「ミュリエラお嬢様?」
わたしはその声に耳を傾けたが、知らない名前だし、放っておいて取り敢えずは、ご飯を探しに行こう。
「ん、ミュリエラ様!?」
すると部屋の中にいた渋い声の主の声も聞こえた。
「お嬢様、どうしたのですか?ギルド長から見学するとは伺って居ませんが?」
これは、わたしに言っているのかな?そんなことを考えているとグレーの髪色をしたオールバックの渋いおじさんが出てきた。
「私も通達は受けていないが」
声も渋めだが顔も渋めだったよ。
「もしかして、お嬢様、探検ですか?ですが、ここはギルド関係者以外立ち入ることの許されない場所なので申し訳ありませんが、探索は他の場所でお願いできませんか?下手に案内すると、ギルド長にも、お叱りを受けてしまいますし、お嬢様も楽しくないと思います。」
あれ?ギルド!?わたしの家じゃないの?
「ルティ、お嬢様をマナミアの元へ連れて行って差し上げ、立ち入りの出来る範囲での護衛とミュリエラ様の案内の指示を出しておけ。」
ダンディーなおじさんマジ有能だよ。グッジョブシールをプレゼントしたいくらいだよ。
「わかりました。マナミアに護衛とお嬢様の案内の指示を出しておきます。」
そう言うとルティという青年は、こちらへ向かってきた。
「お嬢様、マナミアの元へ案内いたしますのでこちらへ」
ルティは廊下に出て、手で案内する先を示し導いてくれる。だが、わたしは、わたしの家ではなく、ギルドの関係者以外立ち入り禁止の場所という事実に、まだ混乱していた。ここはギルドなの?さっきの部屋や、わたしのお姉ちゃんは?次々と出てくる疑問に答えを出せないままルティについて行く。そして、わたしは混乱しつつ、ルティに聞いてみることにした。
「ルティさん、きいていいですか?」
すると、先ほどまでニコニコして案内をしてくれていたルティは一瞬、驚いたような表情になり、すぐに元のニコニコに戻って口を開いた。
「お嬢様、私はお嬢様とは立場が違いますので敬称は必要ありませんよ。ルティとお呼びください」
立場!?さらに混乱してきた。わたしは引きこもりで、社会に出て、上の立場になるといった経験が全くないので、こう言うとき、なんと言って返せばいいのかがわからない。すると何かを察したのか、ルティは話題を変えてくれた。
「それでお嬢様の聞きたいこととは何でしょう?」
今回は聞きたいことが事前に探していたから。すぐに出てきた。
「ごはんを、たべにいきたくて、でも、ばしょがわからなかったの、だからいきかたおしえてほしいの」
拙いながらも言葉にしてみた。
「なるほど、だから探索していたのですね。ですが、それならば、この北棟ではなく南棟ですね。転送陣は、ご使用にならなかったのですね?」
ん?北棟!?南棟!?棟別で管理されているの?じゃあ西と東もあるの?それに転送陣って何?もしかして扉のも魔法陣みたいなのがあるの?取り敢えず返答しないと怪しまれるかも。でも怪しいことなんてしてないけどね。
「おねえちゃんがさきにいってしまって、てんそうじんの、つかいかたがわからなくて、あるいていこうとしてたの。」
まぁ嘘は言ってない。お姉ちゃんが先に行ったことも、転送陣の場所さえ知らないのだから、当然使い方なんて物はわからないのであるのだから。必然的に歩いて行こうとするのも。
「なるほど、ではマナミアに案内するように伝えますね。ついでに転送陣の使い方も教えるよう言い含めておきますね。」
ふぅ~なんとかなった。ご飯の場所もわかって、尚且つ、転送陣とかいう便利な物の使い方まで教えて貰える。一石二鳥だね。すると両開きの扉の前でルティが足を止めた。
「では、お嬢様、少々此処でお待ちください。マナミアを呼んで参ります。」
そして、ルティは扉の中央にあった飾りだと思っていた赤い石に右手にした指輪を翳した。何をしてるんだろう?すると赤い石は一瞬光り、続けてルティが言葉を発した。
「ルティ・アルバンス入室許可を願います。」
すると扉の中央にあった赤い石だと思っていた石が緑色に変化し一瞬光った。なんか電子解除式のドアみたい。そんなことを思っていると、
「ルティ・アルバンス入室します。」
そう言うと、ルティは扉を開け、中に入ると、そして直ぐ様こちらに振り向き直し、扉の中に誘ってくれた。
「どうぞ、お嬢様」
すると中には正面にソファーと机があり、奥には執務机と執務椅子に座る一人の黒髪セミロングの女性居た。この人がマナミアさん?美人さんだ。
「お嬢様がいらっしゃっているの?」
ゆったりとした仕草でルティに向けられていた表情を、わたしの方に向けながらルティに問う。だが、わたしを見た瞬間、その問いの答えが来るより速く、ルティに向き直し、ルティを怒った。
「ルティ・アルバンス、貴方は、お嬢様を、こんな姿で連れ回していたの?」
その形相と言葉に、わたしは戸惑った。そしてルティの方へと顔を向けた。ルティも、わたしと同じように何を言われているのかが、わからないといった表情だった。
「その表情から察するに、全くもって理解できていないようですわね。」
すると、彼女は執務机の隣にあったクローゼットから上着を取り出して、わたしの方へと向かってきた。わたしも、困ってルティの方へと視線を向けるも唖然としている。そして近くまで来た彼女は上着を、わたしに着せながら耳元で囁いた。
「お嬢様、寝間着姿で異性と共に出歩くのは感心いたしませんよ」
あぁ~なるほど。起きたままの姿で出歩いてきたから、寝間着のままだったよ。すると、わたしに着せ終わるとルティを、もう一度睨みつけた後、用件事項を聞く。
「ルティ、この姿で、お嬢様を連れてきた理由と用件を述べてください。」
彼女はかなり、ご立腹のようだ。ルティが可哀想になり、わたしが弁明する。
「おねえちゃんに、おこされて、ごはんによばれたの。けど、さきにいってもらって、てんそうじんのつかいかたが、わからなくて、あるいていこうとしてたときにぐうぜん、ルティにあったら、マナミアさんのところにあんないをしてもらうことになったの。だから、ルティをおこらないであげて」
だが、マナミアは優しそうな表情で、わたしを諭した。
「事情はわかりました。しかし、私が、ルティに怒っているのは女性への配慮に欠けていたからですので、ですが、お嬢様も次からは着替えすませた後に部屋の外に出るようにしてください。それとお嬢様、私はルティと同様に敬称は付ける必要はありません。では、ルティ、私のところへに訪ねて来た用件の説明を」
そうなんだ。誰に付けて誰に付けないかが、イマイチわからない。
「グラムより、マナミアへの指示です。お嬢様の警護と案内の引継、転送陣の使い方の指導をお願いします。」
グラムってあのダンディーなおじさんのことかな?
「わかりました。お嬢様の警護と案内の引継、転送陣の使用法の指導ですね。」
指示を出したときに復唱するのは、規則なのかな?
「では、私はグラムの指示がありますので、お嬢様、マナミア先に失礼します。」
そう言うと扉の外に行ってしまった。
「では、お嬢様、一度部屋に戻って着替えましょう。」
すると、執務机に置いてあった皮帯が巻かれた手帳みたいなのを腰辺りに付け、壁に掛かった剣をベルトに取り付け、廊下に案内してくれた。
「マナミア、ここははなにをする、ばしょなの?」
わたしの部屋へと行く道中、疑問に思っていたこと質問してみた。なんせ、わたしには、家だと思っていたら、立ち入り禁止の場所があり、棟別に管理されていて、おまけに転送陣なんて物が必要なほど広いと思われる不思議な場所という認識でしかないのだから疑問に思っても仕方がない。
「ここはお嬢様の祖父であるジオ・シュミット様が作られたギルドという場所で協会の設立、解散や協会に所属する組合の斡旋、ギルドに所属する協会や組合、ギルド会員、もしくはギルド本部や支部などが所属する国や領からの依頼などをギルドにて募集し、斡旋する場所です。」
わたしのおじいちゃんが創った場所で、仕事や人材を派遣、斡旋してくれる場所ってことだよね?難しい話をされた。
「じゃあ、ギルドにしょぞくしないひとはどうなるの?」
ふと、疑問に思ったことを口走ってしまった。
「協会や組合の所属になっている場合、協会や組合を通して支援などを受けることも可能です。ですが、何処にも所属しない場合はギルドが支援を行えないので独自に解決して貰うしか方法はございません。」
少し驚いたような表情をしつつ、マナミアは答え得てくれたが、考え込んでしまった、わたしの顔色は晴れないようで、さらに言葉を紡いでくれる。
「ですが、有事の際などでは、所属する、しないに問わず国や領からの要請があれば支援いたしますよ。」
ちょっと理解するのに時間が掛かりそう。けど大まかには理解できたと思う。
「けれど、正直、お嬢様は先ほどの話を理解されたのですね。新人の子達に話すように、少し難しく言ってしまいましたが、奇遇だったようですね。」
ゆったりとした笑顔でそう言うマナミアに対して無碍なことは言えない。
「ありがとう、マナミア。わかりやすかったよ」
でも、十分に難しかったよ。と心の中で呟いてしまった。そんなことを話しているうちに、わたしの部屋に付いたらしく、マナミアが扉の前で立ち止まった。
「お嬢様、失礼ですが、扉を開けて貰っても宜しいですか?」
あれ?わたしの部屋ってマナミアの部屋みたいに鍵してなかったよね?いっぱい出入りしたし。となるとルティの指輪みたいのが必要そうだけど、わたし持ってないよ。
「マナミア、わたし、ルティがもってた、ゆびわもってないよ。」
わたしの部屋の扉もマナミアの部屋の扉と同様に石が、はめ込まれていて、赤色をしているのでで入れないのかもしれない。
「大丈夫ですよ、お嬢様。部屋の主や、魔石に登録されている方は指輪は必要ありません。」
なるほど。だからお姉ちゃんは入って来られたのか。
「それに加え、有事の際以外は指輪があっても、その部屋の主が許可を出さない場合も同様に入れません。」
ルティが許可を願ったのも、そのためだったんだ。有事って病気や寝込んだ時かな?
「じゃあ、マナミアにきょかを、だせばいいの?」
ここで許可を出してしまった方が、また閉めて魔石に指輪を当てて許可出さないといけないし。
「いいえ、許可を出した物と共に入るか、部屋の主と共に入れば問題有りません。それに部屋の外からでは許可が出せないので、お嬢様に開けて頂くほか有りません。」
結構プライベートは守られるんだ。これは部屋で自堕落な生活をしていても問題ないという言質をいただきましたな。ムフフ
そしてわたしは扉を開け、マナミアを部屋へ招こう思い部屋の中に向いた視線を廊下へ戻そうとすると、なんとお姉ちゃんがベットの付近で座っていた。
「おねえちゃん?」
お姉ちゃんは、わたしの声に気づき急いで振り向いた。
「ミュラどこに行ってたの?ご飯も食べに来ないし、部屋にもいないから、探しに行こうと思ってたんだから、それに部屋着のまま外に出たの?」
心配を掛けてしまったようだ。これは謝らないと。
「おねえちゃん、ごめんなさい。」
そう言うと、お姉ちゃんは抱きしめながら頭を撫でてくれた。
「無事で良かった、どこに行っていたの?それにマナミアも居るけど?」
あ、そうだ。マナミアを忘れていた。
「まいごになって、ルティとマナミアにあんないをしてもらってたの。」
掻い摘まんだ説明だが、たぶん合ってるはず。
「その格好でルティに会ったの?駄目じゃないの。けれど、マナミアに怒られたでしょ。」
何故わかったの?そう心の中で叫びながら、お姉ちゃんを見ていると、驚いた顔になっている、わたしを尻目に、お姉ちゃんはマナミアに視線を向ける。
「マナミア、此処までミュラを連れてきてくれて、ありがとう。」
わたしもお礼言わなくちゃ。わたしはお姉ちゃんから離れ、マナミアの方へ向き直した。
「マナミア、ありがとう。」
そう言うと、わたしは、何故か胸の辺りが暖かくなるような感覚になり、家族っていいなと思えてきた。
「ユーリアお嬢様がいらっしゃるということは、着替えや転送陣についても大丈夫そうですね。」
確かに、お姉ちゃんが居れば、大丈夫そうだけど、ここまで案内してもらったから何かお礼がしたいな。それにお姉ちゃんの名前ユーリアって言うんだ。
「おねえちゃん、マナミアといっしょに、ごはんたべたい」
わたしは、お姉ちゃんにお願いするように言った。
「ミュラ無理言わないの。忙しいってミュラが起きたとき言ったでしょ。だから日を改めてお礼も兼ねて誘いなさい。」
なんかギルド全体が忙しいのかな?仕方ないね。
「マナミア、今の件が終わってから改めてお礼をさせてね。」
お姉ちゃんは優しく微笑みながらマナミアに提案した。
「わかりました。ご配慮ありがとうございます。では失礼いたします。」
マナミアはゆったりとした動作で部屋を後にした。
「おねえちゃん、ごはんたべたい」
お姉ちゃんにそう言うと、何故かクスクスと笑うように
「わかったわ。でもまずは、体を綺麗にしてから着替えをしないとね。フルーム」
お姉ちゃんがそう言うと、わたしのまわりに水で出来た動物達が出てきて、わたしに体当たりしてきた。
「おねえちゃ!?」
言葉を言い終わる前に、小さいクマみたいなのが顔面にぶつかって来た。けれど、痛みや苦しくもなく、全ての動物がぶつかると、全身がさっぱりした。
「おねえちゃん、いまのはなに!?」
興奮気味な声で、わたしはお姉ちゃんに詰め寄った。
「ミュラは、まだ魔法を教わっていないから知らないのね。さっきのはフルームと言って水を操る魔法なの。」
何それ?しかも魔法?転送陣があるから、あるのかなとは思ったけど、詠唱みたいなのは?杖や魔法陣は?色々聞きたくなったが、それよりもクマが可愛かった。それに水の魔法みたいなのに濡れてないし、どうして動物が出て来るんだろう?精霊や妖精みたいなのかな?わたしも使ってみたい。
「おねえちゃん、そのまほう、どうやってつかうの?」
ワクワクしながら、お姉ちゃんに聞いてみた。
「フルームは水を循環させる精霊魔法で、ミュラにはまだ早いかな。ミュラも早く大きくなって学院で一生懸命勉強すれば使えるようになるから、それまでは我慢ね。」
学院ってことは学校だよね。うーん。行きたくない。わたしは勉強が大の苦手で向こうの世界ではよくエスケープしていたのだ。
「がくいんにいくより、おねえちゃんにおそわりたい。」
これは、おねだり作戦で行くしかない。甘やかしてくれそうな、お姉ちゃんなら、きっと頷いてくれるはず。
「ごめんね、ミュラ。魔法の基礎である魔力操作を教えるのは出来るけど、私も学院に所属する身だから、魔法を不用意に教えるのは危険だし、魔法師や騎士などの、その他の資格、称号は学院以外だと取りづらいから、ミュラの将来を考えると、お勧めできないの。」
資格や称号?履歴書でもあるのかな?この夢の世界も資格とか必要なのか。うぐぅ~。けど、魔力操作なら教えられるって言ってたし、それなら良いのかな?
「まりょくそうさおぼえたい。ダメ?」
ここは、上目遣いで首を傾けて、猛烈妹アピールだ。
「それぐらいなら良いかな。けど、途中で投げ出しては駄目よ。」
お姉ちゃん結構チョロい。言った自分自身が罪悪感に駆られてしまうほど。学校で変な虫が付いて欲しくない。清らかなままのお姉ちゃんで居て欲しい。将来的にも甘やかしてくれそうだし。
「ありがとう、おねえちゃん」
魔力操作ってどういうことするんだろう?結構楽しみ。
「体も綺麗になったし、あとは着替えだね。」
そう言うと、お姉ちゃんは扉と同じような石はめ込まれたが壁に手を当てた。すると、観音扉が開くように壁が開いた。細かく壁を見たとしても、普通の壁の模様に合わせた飾りの石にしか見えなかったよ。
「ミュラは、どの服が良いの?」
服?寝間着みたいな、着てても苦じゃない服なら、なんでも良いけど。それに、どんな服があるかもわかんないから仕方ない。
「おねえちゃんのえらんだ、ふくがいい。」
我ながら素晴らしく女子力ゼロの回答である。たぶん普通の女の子なら、喜んで服を選ぶだろうけど、正直、部屋に戻って、すぐにゴロゴロするような、わたしには無縁の事柄である。
「じゃあ選んでくるから、この部屋で待っててね。」
お姉ちゃんはそう言い終わると開いた扉の中へ入っていった。
う~ん。待っててと言われたけど、その間、凄く暇だなぁ~。そう言えば、こんなに広いのに使用人やメイドさんは居ないのかな?衣装部屋みたいな部屋に、お姉ちゃん自身が入って行くことを考えても、少し変な気がするけど、フルームみたいな魔法を使えば簡単に掃除も出来るのかな?それとも、ルティやマナミアみたいなギルドの人が掃除するのかな?職権乱用な気がする。それともギルドの仕事してたみたいだから職場ってことになるのかな?
「ミュラ、この衣装に着替えようね。」
ん?あれってドレスだよね?い、いやだ。コルセットみたいなのしたくない。
「おねえちゃん、ドレスきるの?いたくない?」
何というか、ドレスのイメージがコルセットで締め付けて括れのラインを出すみたいなのを、中世が舞台の映像で見たことがあって、とても痛そうに見えたのだ。
「痛い?どういうこと?」
あれ?痛くないの?お姉ちゃんの反応からして、ドレスを着ることで痛みを感じるような事はないのかな?
「えっと、おなかいっぱいたべて、くるしくならない?」
これで伝わったかな?
「大丈夫よ、ミュラ。ご飯をいっぱい食べても、急に身体は大きくならないからね。」
あれ?意図が伝わってない。そして、どうやって伝えようかと悩んでいる間に着替えさせられていた。
「ミュラも早く一人で着替えられるようになろうね。」
そう言うと、お姉ちゃんは微笑ましそうに、わたしを見ていた。う~ん。まだ一人でドレス着るのは難しそうだけど、お姉ちゃんに教えてもらいながら、着ていけば覚えられそう。それに、お腹の辺りも苦しくない。
「おねえちゃん、ごはん、たべにいっていい?」
身体も綺麗にしたし、お着替え終わったし、後は、ご飯に行くだけだよね?
「ミュラは着飾るよりも、ご飯なのね。」




