幕間十六【すずさの書付~特別祭事】
~二殿の報告書~
本日、鑑の儀に合わせた祭事が無事開催された。
近年稀にみる特別な事業であるため備忘のためここに記す。
宮の外、門前町の大通りに主となる舞台と観閲席を新設。
これは宮で行われる各種祈祷や主となる鑑の儀と、特別祭事における動線を分けるための苦肉の策である。
木材は良質な東北産を墨屋より調達。
予算不足から新設された舞台は八割を安いスギ材、表面の二割を節のないエノヒラ材にて組み上げている。
舞台の大工からは非難轟々であったという。
一宮様による着工前の祈祷を施すことで施工者達をなだめることとなった。
本来であれば施すべき各種彫刻による装飾を省き、無理を言って一月に満たぬ工期で済ませた。
予備費からの捻出も懸念されたが、おおむね予算内で収まる。
沓掛様による圧があったという噂も耳にしている。
巫女の舞の衣装は新規に制作された。
宮様たちは全体祈祷用の物とは別に、個々の舞に合わせた物もすべて新調している。
北方の「いけず池」での漂白を施された高級反物が十巻以上。
紅染めの絹に金糸・銀糸による編み込みを施し、職人街の裁縫屋を総動員して作らせた。
西宮様の衣装については、西宮様が宮入り時に持参した西方の反物で仕上げられている。
一宮様のかぶる薄絹織りの頭巾は南のなんとかいう名手の作品らしい。
制作に一年を要しているという。
初日の舞台における「開闢の儀」は以下の通り
一、開祭の舞:殿の位の巫女による共同の舞。
二、全体祈祷:宮様を中心にした祭事の始まりのご祈祷。
三、祝辞:五家の当主たちによる祝辞。
四、奉納の舞:宮様たちによる舞の奉納(九宮様も含む)。
五、奉納演奏:宮の楽士による演奏の奉納。
六、結びの舞:奉納演奏から続けて演奏付きの殿の舞。
明日以降は一般参賀者による舞台での奉納が続く。
特別祈念札は、特設授与所を門前町内に五か所を設置。
祈念札作成用の紙は良質な墨屋産をまとめて仕入れた。
主に媛の巫女たちの働きにより何とか数をそろえることができた。
特設舞台前の一帯および宮の門への立ち入りにはこの祈念札の提示を求めることとなる。
町内の組合衆には事前の授与を行った。
その時点である程度まとまった数は出ていた模様ではあるが、残りの十日足らずでどれだけ授与しきれるかが問題である。
遠方から宮まで来た者たちの間では、村中の者の分を買って帰る流れが出来てきてはいるらしい。
札の売れ行きに合わせ、あまり期待していなかった既存の護符の売れ行きも好調と聞く。
祭具の修繕・調達についても東北の墨屋の仕切りである。
ほとんどが新調されたため、奉杖、幣飾りどれ一つとってもピカピカである。
十年は使い込まなければ足が出る。
祭事の直接経費には組み込まれていないが、各所の警備も厚くなっている。
舞台周りや宮の門前などは当然のことながら、各関所、街道の警備も増員されているとのこと。
先に出立した、すい様たちの特別部隊をはじめ、武官様方の予算も圧迫している事だろう。
祭事による直接的な収益は限られている。
大部分を占める祈念札の売れ行きは上々ではあるようだが、果たして。
沓掛様の言う「祭事による民の活性化と緊縮感の打破」を願うばかりである。
~特別祭事 予算~
収入の部
五家より特別借入 ── 百六十金
神織神事部予算より ── 百六十金
祈念札販売 ── 四十五金
祈祷・祭具販売 ── 十金
各種寄進・寄付 ── 六十金
合計 ── 四百三十五金
支出の部
祭具準備費 ── 十金
施設設置・祭壇修繕費 ── 七十三金
舞台衣装・演出装置費 ── 百二十五金
祈念札作製費 ── 五金
五家への返済費 ── 百六十金
神織特別収入会計繰入 ── 四十金
予備費 ── 二十二金
合計 ── 四百三十五金




