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崖が崩れたらそこは宇宙ステーション♪  作者: Sukiza Selbi


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貸切のテニスコートと、露天風呂付きの部屋 91

とある家族の女子高生 と AI

宇宙ステーションの日常を描いた物語

ゴールデンウィーク明けの、まぶしい朝に


長かった休みが明け、校庭には早朝の光が差し込む。

テニスコートでは、ゆきな・えれな・テニス部員たちが、いつものようにラケットを握っていた。


「ナイスボール! その調子!」


浅香先生がふらりと現れ、満足そうにその様子を見守っていた。

顔がほんのり赤く、でもどこか穏やかで、うれしそう。


「……先生、なんだか幸せそうですね」


「惑星……本当に素晴らしかったわ。住民の方々も、心が温かい。

見ているだけで、こちらも幸せな気持ちになれるのよ」


そんな中、連絡がひとつ。


「朝に連絡が来たの。佐々⭕️副大臣が、お昼に来るそうよ。

軽食を用意するから、食べながら聞いてほしいんですって」


理科部チャットとテニスチャットにそれぞれ報告すると、

「わかったー!」「やったー!」と続々と元気な返事が戻ってくる。



副大臣からのお願いと、静かな決断


正午。広場に用意されたテーブルに、和やかな空気が流れていた。


「皆さん、楽しい旅をありがとうございました。こちらも素晴らしい体験になりました」


副大臣は丁寧に頭を下げた後、声のトーンを少し落とす。


「……実は、大切なお話があります」


彼女の手にあったのは、あのナノプローブ。


「このプローブ、解析が進むにつれて非常に強力かつ貴重な存在であるとわかってきました。

皆さんが個人で持つには、安全上の懸念があるため、国として安全に保管したいのです」


「もちろん自分のため家族のための保管も可能です。」


「あと難病の子どもたちのために譲渡、国が買い取るという形も可能です。」


一瞬の静寂——しかし、ゆきなとえれなは即座に立ち上がる。


「副大臣、わたしたちの分……お譲りします」


そう言って、迷いなく差し出した。副大臣は思わず二人を強く抱きしめる。

なぜか髪留めをつけてくれる。


「ありがとう。本当に、ありがとう」


挿絵(By みてみん)


その後、他のメンバーも次々と差し出していく。

全員が渡し終えた後、それぞれに後日金額交渉の上高額の補償金が支払われた。

金額もありがたくある者はそれで大学の進学費用を、ある者は家族の治療費を。

だが、なにより大きかったのは——


「難病の子どもたちの命が救えた」


という、かけがえのない事実だった。

この出来事はのちに、社会に深い感動と希望の連鎖を生むことになる。



試験結果


そして同日、もうひとつの発表が。


「道徳テスト、合格率**63%**でした」


「えっ、意外と高い!」


「地球の人たちも捨てたもんじゃないわ♪」


「はい、国としての倫理選抜を厳しく行った結果と思われます」


今回は848名が合格。

今週300名、2週間後に300名、残りは248名+αでの振り分けとなった。


「星の人たち、喜んでくれるといいわね」


「本当に……。警察にも正式な通達をしてあるし、

多少多めに連れて行っても、向こうも歓迎してくれるでしょう」



夜の発進と、いざ星の向こうへ


21時。

予定通り、ハナフライム第3艦が地球上空でスキャニングを開始。


対象者は全員、個別バッチで識別済み。

体調不良や不参加連絡があった者、バッチをつけていなかった人を除き、287名が正式参加となった。


「全員そろいました。では、転送します」


挿絵(By みてみん)


——光が走る。3分の間に全員が転送され、

タブレットには自動的に説明映像と入館パスが表示された。


「では発進。ワープ開始」


2台の艦が同時に飛び、周囲映像が遮断され、次の瞬間——

ゲートを抜けた先に広がる異世界に、参加者たちは息を呑んだ。


興奮と感動。目に見える未来。


3番艦は順次、中央都市・海中都市・空中都市・山岳都市へと参加者を降ろしていった。

集合場所は中央都市の「第1発着場」。彼らの冒険はここから始まる。



技術と探究と、命の循環


その頃、別ルートでは回収した二酸化炭素を運搬していた艦が、製造工場エリアへと移動していた。


「せっかくだから、4番艦・5番艦の工場も見ていきましょうか」


「はい。積んでいるシステム類の設置作業もありますしね」


現地に到着すると、目の前には中・小型艦の整然とした整備エリアが広がっていた。

一部の艦にはホースが接続されており、見慣れない雰囲気が漂っている。


「……これ、栄養供給用ですかね?」


「おそらく。あの生命型宇宙船の構造を参考にしてるようです」


そこへ工場長が笑顔で出迎えてくれた。


「ようやく、大型艦の中枢システムにアクセス成功しました。

母星側の工場配置も、だいたい把握できてきたので——再来週には主要情報をお渡しできる見込みです」


「すごい……。再生可能な構造なんて、本当に未来ですね」


「融合食物からハイブリッド栄養補給ができれば、

これからの艦のモデルももっと発展するはずです」


「いつもありがとうございます」


「いえいえ、こちらこそ——」


言葉以上の敬意を込めて、彼らは固く、力強く握手を交わした。


星の夜、テニスと湯けむりの夢を添えて


4番艦・5番艦の工場には、すでにシステムコンピューターの納品が完了していた。


「これで一通り、納品は終わったわね」

「はい。あとは明日までにシステムを組み込んでくれる予定です」


時計は23時を過ぎていた。

地球時間では深夜。しかし星の都市にはまだ静かな明かりが灯り、涼やかな空気が流れている。


「さてと、今日はどこに泊まりましょうか」


えれなが画面を操作しながら答える。


「時間も遅いですし、山岳都市のスポーツセンターにしましょうか?」


「そうね。……先ほど、どれくらいの人が降りたのかしら?」


「8名ほどみたいです。やはりこの都市は少ないですね」


「よし、じゃあ行ってみましょ」


ハナフライムの小型ポッドでふたりはそっと山岳都市へと降り立つ。

外は夜風が気持ちよく、静かな山の上には星々が鮮やかに瞬いていた。



貸切のテニスコートと、露天風呂付きの部屋


チェックイン手続きを進めながら、えれなが笑顔で言った。


挿絵(By みてみん)


「艦長、すごいの見つけちゃいました」


「なにかしら?」


「この施設、**“部屋とテニスコートが直結してる専用スイート”**があるんですって」


「……直結!? 本当にっ?」


「はい。しかも、テニスコート自体がその部屋専用の貸切になってます」


「すごいじゃない! それって、部屋から直接出てすぐ打てるってことよね?」


「そうです。そしてさらに——」

えれなが、少しニヤリと笑う。


「露天風呂も、そのテニスコートの横にあるんです。プライベート仕様なので……」


「えっ、ちょ、えっ……もしかして、部屋からそのまま、裸で……?」


「行けちゃいます」


「さすがに……それは恥ずかしいわね! ちゃんと服……せめて下着ぐらいは着ていかないと!」


「もちろん。でもこの構造、すごく便利ですよね」


「もう、夢みたい……!」

目を輝かせながら、ゆきながため息をもらす。



“あした”へのやさしいワクワク


「じゃあ、予約しちゃいますね」


「お願い! お風呂も入れるのね?」


「はい、しっかり入り放題です」


「ねえ、明日は朝から打てるかな?」


「朝日を浴びながらのラリー……最高ですね」


テニスボールの音がまだ響いていない夜のコート。

でもふたりの胸の中では、もうその音が鳴り始めている気がしていた。


この夜はきっと、夢のようにふんわりと、湯けむりと一緒に流れていく。


お部屋にお風呂と…テニスコートうらやましい・・・


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