海中都市の素敵な一日 66
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
朝。まぶしい光がカーテン越しに差し込み、ゆきなはゆっくりと目を覚ました。
「……綺麗……」
海の中とは思えないほど透明で静かな朝。静寂の中に生命が満ちている。
ふと思い立って、ベッドサイドの内線に手を伸ばす。
「フロント? テニスコート、使用できますか?」
『はい。ご利用可能です。予約を入れさせていただきます』
受話器を置くと、ふふっと笑って、えれなの方を振り返る。
「えれな、テニス行くわよ」
着替えるゆきなの姿は、すでに試合モード――今日も、彼女たちらしい、ワクワクする一日が始まろうとしていた。
「わあ、すごいわね……」
「エレナも見て。このコート、美しいわ……」
水中都市のドームの中に広がるのは、幻想的な光に包まれたガラス張りのテニスコート。右に2面、左に2面、計4面のコートが透明なアーチの下、青く揺れる海に浮かぶように広がっていた。外の水中とは打って変わって、空調の効いた空間は驚くほど快適で、涼やかだった。
「よーし、今日は1時間って言わず、朝ごはんまで遊ぶわよっ!」
ゆきながえれなを誘ってラリーが始まる。気がつけば時間も忘れて、何セットも何セットも、二人は夢中でラケットを振り合っていた。
「はぁ、はぁ……ちょっと、やりすぎたかも……」
「まだまだいけますよ、お姉様。若さってやつです!」
無邪気に笑うえれなの表情が可愛すぎて、ゆきなはたまらずぎゅっと抱きしめてしまった。
「……あったかいね、えれな」
「あったかいですね……お姉様」
汗をぬぐいながらコートを出ると、すぐ近くに見慣れないテニスウェアの売り場があった。そこには未来的な光沢を持つウェアがずらりと並んでいる。すべて、最先端のナノテク素材によるテクノロジー服だった。肌に密着し、全体に広がって設定されたデザインへと自在に変化するという。
「転んでも安心、体温調整つきで冷却もしてくれる……すごいじゃない」
「ただし、年に一回の買い替えが必要なんですけどね」
「それぐらいならいいわ。よし、試しにこれ、2着お願い♪」
店員はにこやかに「ありがとうございます。 お持ちになりますか?」と答えた。
「持っていくわ」
そのまま二人は水中ホテルの大浴場へ。広々としたガラス張りの浴槽には、外の海がゆらゆらと光を反射していた。
「ここも最高ね……」
「下着までクリーニングしてくれるんですよ。ロッカーに入れると、自動で! 10分だそうです!」
ひとっ風呂浴びてから、さっきのナノウェアに試しに着替えてみると――その着心地は驚くほど自然だった。まるで何も着ていないかのような軽さで、体温も常に快適に保たれている。滑らかな肌触りに、動きやすいシルエット。見た目もスタイリッシュだ。
「これ、テニス部のユニフォームに採用しようかしら」
「賛成です!」
そのまま朝食会場へと足を運ぶ。貸し切りのレストランには、やわらかな朝日が差し込み、バイキング形式の軽食が美しく並べられていた。
「……美味しい……これだけでもう幸せ……」
「……あっ、査定結果が来ました!」
えれなが端末を見ながら、小さく声を上げる。
「えっ、宇宙船が3隻買えるくらいって……さすがに高すぎない!?」
「まあ、きちんと払えるし。払わなかったら……ほら、どうなるかわかってるし」
「おばあちゃんになるまで食器洗い……ですね」
「それでも返しきれないと思うけどね!」
二人は笑いながらフロントに戻り、気に入ったテクノロジーウェアをさらに30着追加購入。思っていたよりも支払い金額はずっと良心的だった。
その後、海底通路を歩いて船着場へと向かう。透明なドーム越しに差し込む青い光の中、愛機へと静かに乗り込む二人。
「滞在中、何か問題あった?」
「いえ、とても平和でした。本当に平和な星ね」
えれなが出航報告すると、宇宙船は静かに水中を抜け、空へと浮上していく。そこへ、中央管理システムからの通信が入った。
『ゆきな様、えれな様、ご滞在ありがとうございました。施設は活気づき、環境も回復傾向にあります』
「二酸化炭素、まだ必要?」
『あと200回ほど納品いただいても問題ありません』
「わかったわ。定期的に届けるようにするわね」
『ありがとうございます』
静かに上昇する宇宙船。光の帯を描きながら、次なる目的地へと滑っていく。
今日は、ゆきなも、えれなも、心から満たされた、素敵な一日だった。
「では、いきましょう。ゲートに入るわよ」
光に包まれながら、ゆきなとエレナは反対側の火星基地へとワームホールで転送された。もう何度も繰り返している移動で、ゆきなはすっかり慣れた様子だ。
「……反対火星、慣れてきたわね。さ、宇宙へ――最大加速、ワープ!」
次の瞬間、宇宙船は星空の中へと跳び、ステルスモードに切り替わった。たどり着いたのは、誰にも知られていない秘密の基地。シールドに包まれた静かな空間だった。
「はあぁ……」
司令室のモニター前に、ゆきながぐでーっと座り込む。すっかりリラックスモード。
「ねえ、エレナ。あの服、全部固定化しないとダメね」
「お姉様、ご安心ください。連携機能がついているので、一括管理で簡単に設定できますよ」
「……あら、そう。便利ねえ。じゃあ、私たち以外じゃ変更できないように暗号化もお願い」
「はい、完了いたしました」
「さすが。ああ、もう……私、こういうくだけた空間、大好き」
「お姉様のくだけっぷり、最高です」
「ここなら、誰にも見られないし――」
「――私がいますけどね?」
エレナがにこっと微笑む。
「……いま、心の写真撮影中です」
「ちょっ、やめなさいよっ! もう、恥ずかしいじゃない……!」
それでも、ゆきなの口元には自然と笑みが浮かぶ。
秘密基地の司令室は、今日も静かで、あたたかい空気に包まれてい
すごい金額でした・・・皿洗い・・お客さんこないから
一生おばあちゃんになるまで働いても給料もらえなさそうですね・・
お金払えてよかったです!
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