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拙僧は無節操



 さっきから殺気を感じる。


 いや、殺気とは少し違う。

 だが鋭い視線が慶次郎にいくつも突き刺さっている。

 これでも慶次郎は甲賀滝川一族の一員。

 専門の訓練は受けていないが、間諜を捕えたり自分が間諜を務めたりするくらいはできる。

 そこへきて更に、あいつらに改造人間にされ聴覚もバッタのような、ではない常人の40倍になっている。

 ベルトの風車も超小型原子炉も埋め込まれなかったのは幸いであろう。


 その視線は物陰から発射され、慶次郎とその隣を歩いている僧侶とを行ったり来たりしている。

 これは。

 2人まとめて攫って行く計画でもあるのか??


「智円殿。気づいておられますか?」

(はい)。見られておりますな」

「監視ですか?」

「・・・・」


 いや。

 もしかして!

 この気配は女性?

 先の河越合戦にて大活躍した慶次郎の雄姿が大胡の民に伝わり、遂にモテキが襲来して来たのか??


「ではありませぬな」

「な、なぜ某の心を見透かせまする?」

「……顔がにやけておりまする故」


 慶次郎はすぐ気持ちが顔に出る男であった。



「で、では何故?」

「少し耳を澄ませて見なされ。ゴクリとか、ぐふゅふゅ、という擬音語が聞こえませぬか?」


 慶次郎、先入観が強すぎて気づきませんでした。


 こ、これはもしかして!

 コミカルマーケットにはびこる「ふ」の付く女性(にょしょう)

 つまり……


「見て見なされ。片目だけ壁の穴からこちらを見ている者がおりましょう。あの者は多分拙僧と慶次郎殿の似姿絵を描いて居るのでしょう」

「せ、先だって。「なかなかの逸材だわ!」「競争よ!」との声を聞いたのですが」

「それはあれです。かの女性たちの妄想を如何に絵にて際立たせるかを競争する符丁でありましょう」


 哀れ、慶次郎のモテキは儚くも爆散したのであった。


「それで。拙僧にお話とはいかなることであろう?」


 この禅僧。足利学校で最近まで学問を究め、古今の和漢書を諳んじている。それを実際に日ノ本の役に立てたいと思っていた所へ大胡政賢がスカウトしたのだそうだ。

 もしかしたらこの禅僧が先遣隊員なのか?

 しかし、それにしてはあの偽銀髪幼女とは似ても似つかぬ仕草。


「……智円殿には妹などおりませぬか?」


 少々、真面目ぶって質問する。


「おりまする。不束なやんちゃ者でござるが」

何処(どこ)に、いや何時頃(いつごろ)に在りますでしょうか?」

「と、申しますと?」

「レイヤーっぽくてツンデレ銀髪ツインテロリです」


 これで通じたら確実に未来人であろう!


「そうでござろうな。今頃そうなっておりましょう」


 キタ~!

 的中、キタ~~~!!


「で、では。あの怪しい未来の抵抗組織構成員?」

「怪しいかどうかは分かりませぬが、そう考えてもよろしいかと」

「すると意識の上書きに成功した?」

「是。ということは本隊の転移は失敗したと」

「幽霊になっちゃいました~」


 禅僧、智円は顎に手をやり凛々しい顔を少しゆがめて考え始めた。

 こう見るととてもあの偽銀髪幼女の姉には見えない。

 姉?

 あ~ね?

 ねえね?


 ぇええええ~?


「智円さん智円さん。あなたの中身は?」

「申し遅れました。メイプルの姉のリーフと申します」


 なんだか金貨のような名前である。


「メイプル?」

「日本名でカエデと名乗っております」

「え。じゃあ、あの銀髪は地毛?」

「拙僧共はハーフなのでござる。北米系二世。故にメイプルはその黒髪を隠すべくレイヤーになり申した」


 な、なんと。

 そんな奥深い意味があったとは!

 作者もさっき知ったばかりの真実!!


「あれはコンプレックスの集合体なのでござる」


 コンプレックスという言葉自体が複合体という意味であるが二人ともそんな細かいことは気にしない勇者であるらしい。


「智円さん。こっちへ来て何年になるんです?」

「まだ半年たっておりませぬが」

「え“。女性が男の体にそんなになじめるんだ。半年で」

「コホン。拙僧、もともとこの手のシチュが好みでござって」

「だから志願したと」

「是」


 俯き加減が絶妙で、男でも惚れ惚れする仕草。

 慶次郎も思わず視線を釘付けしてしま……わないのでした。

 ノーマルである。ノーマル。

 ノーマルタイヤ!

 わてはノーマルたいや~!


「それで、《《ふ》》の方々は……納得。それを快感に覚えている人物が目の前にいると。これが真実?」

「そうなりまするな。そして……」


 美僧智円は慶次郎の頬に顔を近づけ、「ふっ」と小声でささやき目を細める。

 途端に周りに薔薇の花が咲き乱れ、物陰に潜む不審者が一斉に倒れる物音。

 そちらに止めの流し目を送り慶次郎に解説をする節操のない禅僧。


「そう。こういった光景を期待していたのですな。あの女性たちは」


 振り返った智円の視線の先には慶次郎の姿はない。

 智円のささやき攻撃にLPとMPを全て削られ、地面を舐めている最中であった。


「慶次郎殿。地面とはそのような美味きものでござったか。次回は言葉にてレポートしてくだされ」





 



いつもお読みくださり誠に感謝しております。

★評価やブックマークをいつもありがとうございます。


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