忍者と言えば秘密の符丁
慶次郎が立ち上がるまでに四半刻かかった。
口元についた泡を井戸端で拭っている後ろには托鉢でもしているような姿勢で智円が待っていた。
「支度は出来ましたかな。お相手を待たせてはいけませぬ。今日は初めての会合故」
そう。
本来の趣旨を忘れていた。
二人で歩いていたのはこの先にある赤城神社の境内。
そこで秘密の会合があるのだ。
ここの所多くの仕官希望者が大胡に押し寄せてきている。
先の敗戦の折り、仁将との噂、大分尾ひれがついて関東中に響き渡ったようだ。
慶次郎の敵陣中央突破など全くかすむほどの噂である。
今日は大胡の諜報組織の立ち上げ会合である。
慶次郎の献上した(涙)三万貫文でまずはそれを立ち上げた。全てに先駆けて情報を操るのが常識。
「遅れて申し訳ござらぬ。物影より監視の目があり、それをまくのに手間取りました故」
「いいのいいの。僕も今来たところだからさ~。ちょうど美味しい蕎麦湯を貰って待っていた~」
いつものお気楽返事は政賢。
その前に車座を作るように十名程の個性豊かな連中が座っていた。
「それじゃ始めるね。第一回大胡内閣調査室会議~」
「殿様。その、内閣調査室とは?」
「観音様がそう名前つけてくれた~」
「納得しました」
銀髪幼女の遊び相手ね。この大胡一家は。
「じゃあ。皆さん、自己紹介お願いしま~す」
政賢の言葉に皆が自己紹介を始めた。
智円が統括責任者
(大丈夫か?)
真田幸綱が諜報部門責任者
(こんな大物スカウトして来たんかい!)
内務防諜部門責任者は風施
(灰色のイメージの坊さん。フランスの秘密警察作った人の親戚?)
真田素ッ破頭目の石堂
(渋いダンディな上忍)
歩き巫女のノノウ桜女
(伊勢熊野の歩き巫女統括)
商人に顔が効く御師の花屋藤吉
その他サンカの頭目やらなんやら色とりどりである。
「助かっちゃうね~。真田のゆっきーが来てくれたんで素ッ破が使いほ~だい」
「我らが出来る事ならばなんでも」
「ありがたいね~。それで隣の女の子は?」
「揚羽と申します。伊賀からの出稼ぎです」
この時代でも出稼ぎがあるのか?
いあいあ。
伊賀は元々傭兵集団。
雇われて戦や間諜に使われていた使い捨ての駒。
「そ~いえば慶次ろちゃん。君も甲賀出身だよね。だからここに呼んだんだけど、てへっ」
「はいっ! 追い出されました!」
一斉に皆の視線が。
痛い、痛いぞ慶次郎。
「忍びなの?」
「いえ~。単なる百姓×樵です~」
「それでも戦の時は戦うのが伊賀と甲賀の民でございますれば」
ダンディな石堂という素ッ破の頭目が注釈を入れてくれる。
「ふ~ん。その子、揚羽ちゃんだよね。僕十二。体の大きさからすると同じくらいかなぁ? だったらお友達になってよ~」
なんともお気楽な殿様。
どこぞのシンドバットなんかが出て来る冒険マンガの主人公を感じさせる。笛で精霊は出せないようだが。
それに対して揚羽。むっとしたふくれっ面で
「十四。今年で十五」
と答えた。
「……本当は四十超えたが……」
聞き逃さなかった。
耳はいい慶次郎だ。四十倍だ。「二倍!二倍!」どころではない。
とするとこいつも奴らの同類か?
でも意識が重なっている?
怪しい、怪しいぞ!
もしや。
追っ手か?
ここは確かめるしかない!
慶次郎、どうするのだ。待て! 待つんだケイー!
すっくと立ちあがり慶次郎。
揚羽を指さして叫んだ!
「こいつはサバを読んでいる! 信用できぬ。できぬわっ! 殿さま、ここは放逐するのが吉。正体は化け物……」
「何か言ったか。この偽甲賀者」
気付くと揚羽という女忍者を指刺した腕に、その伊賀者、揚羽が蝶のように止まっていた。
常人の視力を複眼にした(してない!)目ですら追いつけなかった素早さ。
やはりただものではない!
そう言おうとした時、気づいた。
自分の喉元がやけにキリリと嫌な感触が。ついでに血の臭いもする。
「こ、こいつ。忍刀が通らない! 化け物はお前だろう!」
どうやら本気で怒って喉首を掻こうとしたらしい。オトロシーオナゴ
「そこそこ~。意味わからない争いはいけませんよ~。今日のご飯は抜きです!」
途端にシュンとなる二人。
ちょっと似たもの同士らしい。
その後、これからの方針を話し合い、分掌を確認してお開きとなった。
その帰り道はやっぱり智円と揚羽、そしておっちょこちょい慶次郎の三人での会合となった。
「山」
「川」
古典的な符丁。
「谷」
「山」
「浩」
「子」
皆が頷く。
これで本人確認終了。
「リーフさん。やっと会えました。心配していました。絶体絶命と聞いていたもので」
揚羽、もといアゲハ中年×少年(!?)は馴れ馴れしく智円に縋りつく。
仮面マエダーノーマルはめまいがする。
未来ではLGBTQは当たり前田のクラッカーだったが、ノーマルには刺激が強すぎる光景だ。
「中身女の美僧」と「中身アラフォーの男の娘?」が絡み合う図。
きっと村の腐ガァルは喚声を上げるであろう光景。
作者も遠慮したい。
「絶体絶命? 何のことであろうか? 未だ拙僧は……」
こいつトコトン、ロールプレイを楽しんでいやがる。
「成程。これから拙僧に何かデンジャラスなことが起きるという事でござろう」
既にこのカオスがデンジャラスだと言いたい慶次郎。
「具体的な事は書いてなかったんです。だからあなたの転送先に出来るだけ近くを選んだのですが。よかった~。まだ間に合うのですね」
「お心遣い感謝致す。では今まで起きたことを纏めていこうではござらぬか」
その後様々なことを確認しあった。何度も慶次郎の首に忍刀が刺さりそうになりながら。
首元からピュイピュイと小さな赤い噴水を出しつつ、悔しいが偽銀髪幼女にDEFあげて貰っていて感謝した慶次郎であった。
「あにさ!」
「あによ!」
「よしっ! 符丁は合っている。それでは内密の話を」
「ねえねえ。この作品ずぇ~ったい、商業化目指していないでしょ?」
「是。これだけパロディ入れ申すと出版社からお呼びは掛かる事能わず」
「しかし智円の姉御。そういう趣味があるとは作者という存在も知らなかった様子ですねぇ~」
「是。あの存在のことはよく調べ申した。足利学校の蔵書に人物名鑑があり申して……」
「えっ。そんなに有名なの?」
「過去改変犯罪者リストなるものが紛れ込んでおり」
「こ、ここにも追手がかかっているのですわね!」
「どこで追手がかかるかはあの存在にもわかっておらぬ様子。覚悟を決めておきましょうぞ。皆の者」
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