勇者殺しの元暗殺者。~無職のおっさんから始まるセカンドライフ~の感想
【あらすじ】
親に捨てられてから、暗殺稼業を生業とする組織のボスに拾われ、幼少期から暗殺者となるために育てられた俺。
暗殺というのは決して簡単なものではなく、失敗すれば死ぬか殺される生死を懸けた仕事。
そんな生死のやり取りを行う殺し屋として、俺は三十年以上も生き残って人を殺し続けてきた俺に課された依頼は――勇者の暗殺。
この暗殺稼業から足を洗えるという報酬の下、過去最難の依頼に挑み……俺は無事に勇者の暗殺を成功させた。
約束通り、育ての親であり暗殺稼業を生業とするボスから解放されたものの、服はボロボロ、髪はボサボサ、子供の小遣いくらいの金しかない状態。
しかも、幼少期から暗殺しかしてきてないため社会経験はなく、年齢も四十近いおっさん。
金なし家なし職もなし。
とんでもない状態で世間に放り出されたが、これまでの過酷で凄惨で地獄のようだった人生を良かったと思えるものにするため、俺は人生のやり直しを図ることを決意した。
【感想】
主人公は暗殺者として幼いころから育てられましたが、生活環境は悲惨の一言であり、汲み取り式便所と申し訳程度の机しかない牢獄に何十年も幽閉されていました。
外に出られるのは仕事である暗殺家業の時のみ。主人公はそんな環境にいた暗殺者たちの唯一の生き残りでした。
そんな劣悪な環境に置いたらパフォーマンスが下がり、暗殺に失敗する確率が上がるどころか、捕まって情報を漏洩される危険があるのではないでしょうか。
漏洩や逃亡を防ぐために、遠隔起爆する爆弾みたいなのがついているのかと思いましたが、そんな描写はありません。
なので、プロローグ以前の話を考えていなかった系でしょう。なろう小説だからね。
ある日、何時ものように主人公は牢屋から出されて仕事の話をされます。
が、いつもと違って依頼主は主人公の育ての親かつ、主人公を幽閉していた老人であり、依頼内容は勇者の暗殺でした。
この小説の勇者は人類の希望の光であり、最終兵器らしいです。
そんな勇者を何故暗殺するのか、なろう小説になれた皆さんならもうお気づきでしょうが、この勇者はいつもの力を持った只の乱暴者です。
老人の孫娘を乱暴して死に追いやったため、仇討ちのため殺してほしいと慟哭しながら頼んできました。
主人公はその姿を見て、なんで老人が怒り狂っているのか理解できないそうです。
今まで散々人を死に追いやり、その反応を人一倍見て来ただろうに、心が揺れないどころかわからないんだって。
「きっとターゲットだけでなく、周りも皆殺しにしたんかねw」と冗談交じりに読んでいましたが、この後の展開でその可能性が浮上しました。
ターゲットの情報を渡された主人公。勇者は4人組でパーティを組んでいましたが、あくまで殺るのは勇者只一人。主人公も、暗殺の邪魔さえしなければ他の3人には手を出さないそうです。
暗殺の舞台はとある高級ホテル。パーティの最中照明を落とし、暗闇の中勇者を暗殺するそうです。
勇者は実績こそあるものの、主人公の気配に気づかず、主人公評では歩き方も歴戦の猛者にしてはなっておらず期待外れと、まるで勇者と名の書かれたサンドバッグみたいな扱いです。
協力者によって照明が消え、後はさっさと勇者を殺って立ち去れば終わりという段階ですが、何を考えていたのか、暗殺者人生最後の相手だからと、不意打ちせず勇者に姿を見せました。
地の文では、「人類最強の存在に真正面から挑みたくなった」とかほざいていますが、先ほど「無警戒過ぎる」だの「足さばきが成ってない」だの「重心がぶれまくっている」だの酷評した相手に何を期待したんですかね?
あらすじでも冒頭でも「暗殺は命懸けだ」だのほざいていたわりに行動は考え足らずで、じゃあ暗殺した後は自害するのかと言えばそうせず、なろう小説らしくナローライフを満喫します。
挙句の果てに、自分から姿を見せたくせに「顔を見られたから」といって、最初はターゲットじゃなかった勇者の取り巻きを皆殺しにします。
主人公のモットーは「無益な殺生はしない」そうですが、益があるかどうかはナローシュの胸先三寸次第みたいですね。そのため作中の人類に一番益があるのは主人公が自害することですが、主人公がそう思わないのでしません。
最後の仕事である勇者の暗殺を終えた主人公ですが、その場で自由というわけにいかず、何故かまた牢屋に戻りました。
そして、3日間老人も誰も訪ねてこなかったため、牢のある隠れ家を爆破してから自由になったそうです。ここら辺の流れが説明がなさ過ぎて意味不明でした。
暗殺者をクビになった主人公ですが、今後の身の振り方を考えた結果、まっとうに生きることを望んで死んでいった友人に変わって、まっとうな人生を送ることを目指します。
……が、この後の流れはいつもの主人公sugeeが続くため読む必要性が薄いです。
裏社会の常識が染みついた状態で一般人の生活を送ることになるわけですが、常識が通じないせいで苦労する展開ではなく、鍛えられた能力で大活躍して凄い凄いと言われる展開が続きます。
活躍する内容も、俊足を生かして荷物の配達を短時間で終わらすとか、町にビラを5枚貼ったらいつもの3倍客が来たとか、能力に対してやっていることが地味すぎて読んでて退屈に感じました。
これなら従来のなろうよろしく冒険者になるとかの方がまだ読みごたえはあったと思います。
結局のところ、数十年幽閉されて暗殺者としてこき使われていたという前提が全く意味をなしていません。
よりによってサービス業を選ぶも、対人関係が築けないなんて事はないし、立ちふさがる問題は全て今までのキャリアで解決できてしまうため、暗殺者でなく元凄腕冒険者でも話が成り立ってしまいます。
というか、主人公は自身に憧れたキャラにランニング20㎞だの腕立て500回だのトレーニングさせようとするんですが、劣悪な環境にいたのにどうやってそれをこなしていたんでしょうか。
元冒険者設定の方がまだ納得がいきます。
まあ、これはなろう小説によくある「オリジナリティを出そうとして齟齬を考えず設定を差し替えた」だけに思われます。
なろう作家が自身が作った物語についてでなく、書籍化によって金を得ることを考えているうちは改善など見られないでしょう。




