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王都ダンジョン【百鬼夜行】へようこそ!  作者: 藤原キリオ
第三章 最高位冒険者たち
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33:【混沌の饗宴】vs【百鬼夜行】



『さてシュテンさん、これから【混沌の饗宴】の三人が四九階層のボス戦……つまり【百鬼夜行】との従魔戦となるわけですが、どういった展望を予想されますか?』


『まずポイントは、あの三人が全員で戦うのか、白虎獣人の一人で戦うのか、という所だな。今までの戦いを見る限り後者になる可能性が高いが』



 これまでの探索で九割以上の戦闘がベン爺一人で行われている。

 レレリアとフェリクスはその補助であり、役割分担ははっきりしていると観客の皆も思っていた。

 しかし強敵揃いの【百鬼夜行】相手にもベン爺一人で戦うのか?という疑問もある。



『仮に【混沌の饗宴】が三人掛かりで戦うとなった時、アダマンタイト級三人を相手に従魔の皆さんは勝てるのでしょうか』



 ポポルの質問は観客にしてみれば危うい橋に思えた。ギョッと目を見開く者もいる。

 「お前らアダマンタイト級パーティーに勝てるのかよ」とでも言うような挑発にも捉えられるからだ。

 しかしシュテンは何も気にせず答える。



『あの三人が連携したとして勝てるのは……まぁ十体も居ないんじゃないか?しかもその数体が四九階層で出る確率など相当低い』



 「数体は勝てるの居るのかよ!」と観客たちは驚く。

 もちろんその数体の中にシュテンも入っているのだろうが、アダマンタイト級三人を相手に一体で勝てる魔物が存在するという事が信じられないし、それを従魔にしているビーツに改めて畏怖した。

 真面目で実直なポポルの、遠慮のない質問は続く。



『では仮にベンルーファスさん一人で戦う場合はどうでしょうか』


『それこそどの従魔が出るかによるが……四九階層だと言う事も考えれば、八割・九割、白虎獣人の勝利となるだろう。相当運が悪くなければ、だがな』



 そう言ってシュテンは不敵に笑う。

 その笑いは勝てるものなら勝ってみろという笑いではなく、相当運が悪くて自分が選ばれたらいいなぁという期待からであったが、それを知る者は観客の中に居なかった。





 ボス部屋へと入った【混沌の饗宴】の三人は、そこがこれまでのボス部屋と違う事を確認する。戦うべきボスがおらず、部屋の中央にパネルがあるのみ。

 三人はパネルへと足を運びながら最終確認を行う。



「ホントにベンさん一人でいいんスか?相手は【百鬼夜行】だけど」


「その為に来たようなもんじゃからの。わがまま言って申し訳ないがとりあえずワシに戦わせてくれ」


「そりゃ俺は楽できて万々歳だけどね」


「さすがに【三大妖】とか【副長】とかの幹部クラスがきたら参戦するわよ?ベン爺一人がやられた後に私ら二人掛かりでも勝てないと分かればアイテムロストしちゃうんだし」


「端からワシ一人では絶対に勝てんと分かればそう言うわい。ま、それは選んでのお楽しみじゃな」



 笑みを浮かべながらベン爺がパネルの前に立つ。

 このパーティーのリーダーは発起人のレレリアとなっているが、パネルを操作するのはベン爺だ。実際に戦うのがベン爺なのだから選ぶのもベン爺という事だろう。



「そんじゃいくぞい」





 パネルを操作するベン爺の姿がモニターに映るのを、観客たちは固唾を飲んで見守っていた。

 今度はどの従魔が出てくるのか、【混沌の饗宴】は勝てるのか、賭け札を握り見る者もいる。



『さあ、人数を三人と入力し……従魔スロットが回った!おっ!祈りもしないでストップを押すっ!』



 【紅の双剣】が四九階層を突破してから恒例となっていたスロットへの祈りをしない事に「さすがアダマンタイト級、誰でも来いという表れか」といった声が上がる。

 解説席に座ったシュテンは「祈りで確率が変わるわけでもあるまい」と澄ました様子だが、そう思うのはむしろ少数派だった。



『スロットが止まって出たのは……髑髏の絵柄!?これはヌラさんですか!?』


『いや、ガシャだな』


『ガシャ!従魔ナンバー六四!スケルトンのガシャ!』



 髑髏の絵を見てポポルが真っ先に思い浮かんだのは以前に解説で一緒になったエルダーリッチのヌラだったが、どうやらスケルトンのガシャらしい。

 【鬼軍副長】でもあるヌラが四九階層で出る確率は何千分の一という確率なので、それで当たったら大騒ぎだったのだが。


 観客もヌラでなかった事に少しホッとしたような残念なような様子だったが、シュテンの『やっと出て来たか』という少し嬉しそうな声に、幾人かの冒険者が怪訝な顔をしていた。





 光の中から骨で構成されたガシャの姿が現れる時、すでに【混沌の饗宴】の三人は距離をとっていた。

 正確にはレレリアとフェリクスは壁際まで下がり、ベン爺のみがガシャから十メートルほど離れ対峙している。



「スケルトンか」



 そう言うベン爺の声は少し残念そうだが、油断するほど甘い者ではない。

 すでに戦闘モードに突入しており、目には見えない闘気が体を覆っている。構えはないものの眼光は鋭く、いつ何が起こっても対処出来るよう集中している事が見てとれた。


 ガシャは右手にミスリル製と思われる直剣と、左手にこれまたミスリル製のバックラーを装備しており、鎧などはない。アクセサリー等も含め、見えるのは人骨のみだ。

 剣と盾はビーツに下賜されたものだろう。その時点ですでに最下級アンデッドにあるまじき姿だとベン爺は集中を深めた。


 光から完全に現れたガシャは、眼球のない空洞の目でベン爺を見ると、剣と盾を体側に降ろし一礼した。

 それを見たベン爺も慌てて同じように一礼し、構え直す。

 まさか城内で行う模擬戦よろしく、礼儀を持って魔物と相対するとは思わなかった事に少なからず動揺するが、それも一瞬の事ですぐに気持ちは戦闘に向けられた。


 改めて構え合うガシャとベン爺。

 左足を半歩前に、右足を半歩開く。バックラーは胸の前に出し、剣は突きも払いもいけるように力を抜き後方から下げる。

 ガシャのその姿を見て、襲い掛かるような低い姿勢をとっていたベン爺は確信する。


 ――強い。



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