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王都ダンジョン【百鬼夜行】へようこそ!  作者: 藤原キリオ
第三章 最高位冒険者たち
32/170

31:【混沌の饗宴】vs四九階層



「「「うわぁ」」」



 声を揃えた三人は【アイテムマスター】レレリア、【白爪】ベンルーファス、【怠惰】フェリクス。つまりはアダマンタイト級パーティー【混沌の饗宴】だ。

 彼らが四九階層″ゴブリン王国″に着いた第一声がそれである。



「ゴブリン多すぎでしょう」


「こりゃ一苦労じゃのう」


「ビーツもすごい階層作ったもんだなぁ」



 王都を完全再現した街並みと、そこに群がるゴブリン。

 アダマンタイト級冒険者である彼らを唸らせる階層であることは間違いない。

 弱くとも数が揃えばやっかいなゴブリンというメジャーな魔物の恐ろしさは、手練れの彼らだからこそよく知っている。ましてや獣王国の王であったベンルーファスは国内のゴブリン被害などいくらでも受けて来た身なのだから。



「どうする?裏道行くか?」



 王都の裏道など知り尽くしているフェリクスが提案する。

 彼は隠密・偵察を基本としている為、裏道や抜け道はお手の物なのだ。



「いや、大通りを真っすぐでいいんじゃない?その方が早いし」


「しかしこの量を倒して行くのは骨が折れるぞい」


「ベンさん一人じゃ無理だよな。俺も加わるか」



 この階層に来る冒険者のほとんど全てが大通りを進む事をしない。

 相手が弱いゴブリンと言えども群がられて死ぬのが目に見えているのだ。

 回り道をして大通り中央の安全地帯――ダンジョン【百鬼夜行】の場所まで行き、そこからまた回り道をして王城を目指すのが常道。

 しかしレレリアは時間が掛かるからと中央突破を狙った。



「私が行くから、打ち漏らしをベン爺とフェリクスお願いね」


「えっレレリアがやるの!?」


「せっかくの王都の街並みを消さんでくれよ?まぁダンジョン内の構造物じゃから復活するのかもしれんが、観戦者の王都民を敵に回したくはないぞい」


「分かってるわよ!」



 そして彼らはレレリアが先頭、両脇をベン爺とデイドに乗ったフェリクスが挟むという今までに見なかった布陣で王都の南門をくぐった。





『なんと【アイテムマスター】レレリアが先頭です!小柄な少女の両脇に巨躯の白虎獣人とマンティコアというまさに【混沌の饗宴】、新布陣にてゴブリン王国に臨むようです!』


『やっとあの白虎以外が戦いそうだな、楽しみだ』



 モニターから流れる実況音声からは、ポポルと、今日の解説役である【三大妖】シュテンの嬉しそうな声が聞こえた。

 屋敷内ホールと庭園の観戦者はシュテンの登場に騒ぎになったが、今ではモニターに映る【混沌の饗宴】を食い入るように見ている。

 なにせ今までの探索はほとんどベン爺の戦いのみで切り抜けて来たのだ。

 ましてや見た目が少女のレレリアが先頭に立つとなると、どういった戦いになるのか想像がつかない。


 ややあって彼らは大通りを早歩きで進み始める。

 当然のように群がってくるゴブリンに対してレレリアは着ているツナギのポケットから何やら取り出すと「そおい!」とゴブリンに投げつけた。

 それらは飴玉のような赤い玉。

 観戦者たちが何だ?と疑問に思ったのも束の間、ゴブリンの足元に落ちたそれらはボン!とそこら中で爆発を起こした。



『なっ!レレリアが投げたアイテムが一斉に爆発!これは……!』


『ふむ、あの小さな玉であれだけの爆発を起こすというのは予想外だな。魔法陣を刻んだ魔石というわけでもなさそうだ。不思議なものだな』


『これがまさしく【アイテムマスター】の実力なのかーっ!』



 観戦者が唖然となる中、モニターでは【混沌の饗宴】は大通りを真っすぐ進んでいた。





 徒手空拳のベン爺や密偵向きのフェリクスは基本的に一対一に強みがある。

 しかしレレリアはどちらかと言うと広範囲殲滅型というべき戦い方が多かった。

 悪く言えば、味方をも巻き込みかねない被害の出し方と言うか、嬉々と作ったアイテムを嬉々と使用する変人である。

 その事をよく知っているベン爺とフェリクスは「いつもの事だ」と動じる様子はない。



「そおい!」



 周囲のゴブリンを屠った後は、前方のゴブリン集団に向けて、今度は紫色の玉を投げつける。

 山なりに投げられたそれは、地面に着くなりゴブリンを覆う煙となり、多くのゴブリンを包み込んだ。

 すぐに倒れ込むゴブリンが続出する。

 毒だ。それもマタンゴなどの魔物が通常使う毒よりも致死性が高い。あっという間にゴブリンの命を奪っていく。



「うわぁ」



 フェリクスは面倒そうにそう呟くと、デイドにお願いして、風魔法にて前方の毒煙を払ってもらう。

 自らの進む先に毒を撒くバカがどこに居るのかと。ああ、ここに居たかと。


 時折、大通り沿いの店舗から彼らの横腹を突くように襲い掛かるゴブリンも居たが、フェリクスとベン爺が瞬殺し、それらの数が多い時はレレリアが嵌めたブレスレットからなぜか炎の槍が飛び出し、ゴブリンを焼く。袖口から暗器の如く矢が出る場合もある。

 モニターを眺める観戦者たちには誰も理解できない。

 見た事も聞いた事もないアイテムや魔道具が怒涛のごとく使われる様は、もはや「歩く武器庫」とでも言うべきもので、改めてレレリアがアダマンタイト級冒険者である事を認識させられた。



 やがて王都中央の安全地帯へと辿り着いた【混沌の饗宴】は休憩もそこそこに王都北側の攻略を目指す。

 通常、ここから王城への攻略というのは東西から回り込み、裏道を抜け、ゴブリンの監視の目を掻い潜り、王城へと辿り着くというものである。

 なぜなら安全地帯から真っすぐ北側に向けて大通りを進み王城へ、というルートはゴブリン騎士団が道を封鎖しているし、鎧を着こみ帯剣したゴブリンが隊列を為している。

 それを突破したところで王城前広場に陣取るゴブリンキングと近衛兵に正面から立ち向かうはめになる為、難易度が桁違いなのだ。


 では【混沌の饗宴】はどのルートをとるのか。

 もちろん正面突破である。

 反対意見は面倒くさがりのフェリクスのみであった。



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